美希の両肩に手を乗せながら小百合が言う。

「はい、よくできました。それじゃあ早速、今日のお遊戯をしましょう♪ みきちゃん、皆の真ん中に立ってください?」

 お遊戯という言葉に美希は再び目を開いて動揺する。すぐにトイレトレーニングが始まると思っていた。

 所が小百合は園児のお遊戯まで自分にさせようというのだ。どういう事かと小百合を見ると、意地

 悪く見える笑みを浮かべて彼女は言った。

「言ったじゃないですか。今日はトイレトレーニング体験だけじゃないんです。美紀ちゃんの体験

 入園なんですよ。今日一日、キャリアウーマンとしての美紀さんは捨ててください。

 今はおもらしやおねしょの治らない、恥ずかしい保育園児美紀ちゃんなんです」

 態々恥ずかしい保育園児、とまで強調して小百合は美紀の羞恥をくすぐる。小百合から何かを言われる度、

 美紀は自分が築き上げてきたものが音を立てて削られている気分だった。

 どんどん、自分が取り返しのつかない駄目な存在に貶められている、そんな気がしてならなかった。