>>294のつづき。

ドキドキしながら、令は保健室の扉に手を描けた。
まぞ登録をする…保健室の先生に、自分はイジメラレテ悦ぶ変態だと伝えなければならない。そう思うと、指先が震える。
あのキレイな先生に、どんな目で見られるのか?恥ずかしい…
そう思いつつも、幼茎の根に力が入ってくる。息が荒くなっていく。
勇気を振り絞って、保健室の扉を開いた。

「あら、令くん。こんにちは。どんなご用事かな?」養護教諭の蘭が優しく話しかけた。
「…他に人は居ませんか?」
「二人だけで話したいってこと?大丈夫です。今は私たち二人だけよ?」
「………………。」
美少年は顔を真っ赤にしてうつむく。
「……あ、あの………。」必死に声を出そうとするが、声にならない。
「どうしたのかな?」優しく微笑みながら待ってくれる女性教諭の目が、同時に冷静な観察と冷たい笑みが混じっていくのを、目を泳がせている美少年は気づかなかった。

(令くんが、マゾねえ…。)
状態を察して蘭は自然と微笑む。
美少女で通りそうな、美少年。女子たちに大人気。
(…面白くなりそう……まだまごついてる。往生際が悪い。)
クスッと笑みが漏れてしまう。
(先ずは自分の口で言いなさい。ボクはマゾなんです、女の子にイジメテ欲しいんです、て。手助けなんかしてあげない。)
「ぼ…ボク…まぞなので…と、登録して欲しいんです。」
か細い声がわずかに聞こえる。
「よく聞こえないわ。なんて言ったの?」
ハッキリと言わせる。なにしろこれは学校や役所に登録する必要があるのだ。自覚をもって貰わなくては困る。
そして、蘭の楽しみでもある。
自己申告だけではマゾとして登録出来ない。思春期特有の思い込みや性向の勘違いがあるからだ。なのでテストを行う必要があるのだった。
(…私を失望させないでね?)
保健室の魔女は心の中で笑った。