>>537
>>537のつづき

「…鼻っ柱に一撃、ねえ…。誰にやられた?」
真司に聞かれ、竜司は黙りこむ。
家族での食事の時だった。
まさか、養父である真司のお嫁さんにエッチなお願いをしてやられました、とは言えない。
「…言えない相手か…。」真司が苦笑する。
「…ケンカには卒業する時期があってな?
ホントはこれからが面白いんだが、お前はここで卒業なのかもな。」ケンカによるケガと勘違いしたまま、真司はひとり頷いた。
「卒業どきを間違えると…こうなる。」
頭を下げた真司が髪を分けると、縫われた古傷が見えた。
「後ろからバールで殴られた。」子供の頃から暴力に慣れていた。ケンカに勝つためにボクシングをかじり、勝ってはイイ気になっていた。その報いだと苦笑する。
「それでもなあ…俺は相手を殺す気だった。」
発見が早かったのが幸いし、緊急手術。絶対安静の病室の中で、復讐を誓った。
必ず、殺してやる。
退院した足で、そいつらの元へと向かおうとした。それを止めたのは、竜司の父だった。
「ここをやられてな?」と、アバラの一部を指して、真司は苦笑する。「軽く打たれても痛くて動けないんだわ、これが。」
その場所を見て、竜司はハッとした。祐子に蹴られた場所…。真司が竜司の顔色を確認する。
「…そいつとのケンカは止めとけ。それでもかなり手加減してくれてるハズだ。次はどうなるか…。」
真司の隣で祐子がにっと微笑む。竜司はビクッと身体を震わせた。
「…お前のお父さんに殴られてもな、俺は行く気だったんだ。なめられるくらいなら死んだ方がマシだってな。でもな、あの人泣くんだよ…「お前が居ないと寂しいじゃねえか、殺しあいなんてやめようぜ」、てさあ…。」真司の声に涙が混じる。
「…お前になんかあったら、俺はお前のお父さんにあの世でどう謝ればいいんだ…?」
勘違いとはいえ、竜司は頭を下げるしかなかった。
「……ん、湿っぽい話して悪かったな。」真司が照れたように話題を変えようとする。「よし!竜司、久々に一緒に風呂入ろうぜ!男同士裸の付き合いってヤツをよう!」
その言葉に竜司は慌て、遥香はニヤニヤと笑う。祐子はその様子を観察していた。