>>750のつづき。

祐子が視線を我が娘である遙香に移した。
「…学園がどんなところか知ってる?」母の問いに、娘が答える。
「淑女になるところ。」
母がため息をつく。
「…貴女には向かないと思うのだけど。」
「お母さんは学園出身なのに?私はダメなの?」遙香が前に出て話し始めた。
「私のオモチャを取ったくせに?お母さんだけがオモチャで遊んで良いの?私だって遊びたい!ちゃんと躾だって出来る!」
「そういう問題じゃないの。貴女には強くて素敵な男性に守ってもらいながら暮らすのが似合うと思う。」
「強くて素敵な男性って誰?そんなヤツ居るの?あなたの旦那さん?ウソだね、あなたはペット見るみたいな目でアイツを見てる!あなたの言ってるような男なんて居ない!」娘に詰め寄られ、母は天を仰いだ。
ああ、そんなことはないの、あの人ならきっと!
「居るわ、きっと居る!」
「居ない!もし居ても、待ってられない!私、自分のオモチャ取るような人と暮らせない!竜司を返せ!私を自由にしろ!」
愛する娘の乱暴な言葉に、ここまで拒絶されてるとは思わず祐子は言葉を失った。
「まって、まって…。」と智子が間に入った。
「急いで結論を出さなくても良いんじゃない?遙香ちゃんは私が預かるし、淑女になるには学園通さなきゃいけない訳じゃない。慌てなくても大丈夫。
竜司くんがどちらにつくかは、本人に任せれば良いんじゃないかな?
二人で躾て、どっちを選ぶか決めさせれば良いと思う。選ばれなかった方は恨みっこなし、てことで。どう?」
母と娘はお互いをにらみ合いながら同意した。