学校の怪談「旧校舎のガイコツ」

翔太たちの通う○×小▲校の旧校舎には、まだ調教室が残っていた。
しかし10年ほど前から使われなくなり、手入れをする人もなくさびしい有様だった。
子どもたちの喧噪から取り残され、廊下を通るだけでも埃の匂いがした。
今年はとうとう廊下側の窓も取り払われてしまった。

ある日の放課後、翔太は旧校舎に忘れ物を取りに戻った。
「あったぞ、やっぱりここにあった」。
木造の机の脚に、天板の下から立てかけてあった乗馬鞭を手に取る翔太。
グリップのシールに『5-3 △野 早香』と書いてあるのを確かめ、
包皮ピアスをぶらぶら揺らしながら、翔太は急ぎ足で旧校舎から出ようとした。

「かわってくれー」。ハッと振り返る翔太。声変わりした野太い声だ。
しかし、誰もいない。耳を澄ませても、旧校舎の外から放課後の喧噪がするだけ。
確かに、誰かの声がしたのに…。ふいに、鎖の金属音で翔太は調教室に向き直る。
すると引き伸し台に掛けてある全ての物―ガイコツ、鉄枷、鎖―が、明らかに揺れている。
だけど、引き伸し台の近くにある水車も、コウノトリも微動だにしていない。
そこに掛けられたままのガイコツも、鉄枷も、いつも通りだ。「かわってくれーぇ!」

翔太は「瑠美せんせーーーぇぇぇ!」と叫びながら、一目散に逃げ出した。
あとで瑠美先生に教えてもらったところによると、引き伸し台のガイコツは5-3の男の子だそうだ。
12年前の夏の登校日、当時5年生だった瑠美先生が男の子―真性包茎ーへの調教をやりすぎたのだった。
「腐臭がしなくなってからは御線香を上げてなかったのよね。すっかり忘れてた」。
「あちきのオ○ンコに飽きたらず、翔太クンに手を出すなんて許さないからネ!」。

瑠美先生と早香は夏休みの間に二人で調教室を掃除して、ガイコツは1匹も居なくなった。
だが、二学期、翔太が調教室の前を通ると、時々だけど、引き伸し台の方からギッギッギと音が鳴る。