「あ、あぁ、あぁぁぁ・・・」
育代が手をついて地面の染みを見つめる。それは滑稽であり哀れであった。
「あ、あの、す、すみません」
育代に声を掛けてきたのはぶつかってきた男だった。育代はその声の方を見上げた。
育代が見上げた先にいたのはみゆきの学校の制服を着た少年だった。
「大丈夫ですか?すみません」
少年は謝りながら散乱したビールとつまみを手提げ袋に入れてを育代に差し出した。
だが育代は差し出された手提げ袋を受け取ろうとせず呆然と座り込んでしまっていた。
「あ、あの大丈夫ですか?」
怪我でもしたのではないかと思った少年は心配して育代に声を掛けた。だがその声掛けに
育代は応じず脅えたように声を震わせていた。
「あの・・・」
なおも呼びかける少年にようやく育代は顔を上げた。顔を上げた先に心配そうに自分を
見つめる少年がいる。育代は自分を見つめる少年を見て邪な考えを閃いてしまった。
(そ、そうだわこの子に協力してもらってそれで・・・)
自分を心配してくれているこの人の良さそうな少年なら協力してくれるはず、
そう思った育代は少年から差し出された手提げ袋を受け取るとお礼を言った。
「どうもありがとう」
「大丈夫ですか?あ、あのすみませんでした」
頭を下げて謝り立ち去ろうとする少年を育代は引き止めた。
「あ、ちょっと待って、少し助けてほしいのだけどいいかしら?」
「え?いいですけど何をすればいいんです?」
少年が承諾すると育代は立ち上がって少年の手を引き物陰へと導いていった