(見知らぬ番号からの着信、卑猥なメール…これで一体何度目だろうか……)
(登録外は全て着信拒否にしていた筈…いつの間にその設定を解除されていたのだろうか)
(着信拒否をしても着信履歴は残る、知らぬ番号から着信があると掛け直すのはいつも自身から……)
(最近この携帯を長時間放置した事はあっただろうか、自分以外にこの携帯の設定を弄る事が出来る人物は…?)
私自身に隙があるのかな…?作ってるつもりないんだけどなあ…
学生の時にコンビニのバイトしてて、そう、覚えてた?
あの時は彼氏とお父さんが順番に迎えに来てくれたらすぐなくなったし。
…ああ、そんな事もあった。下着取られたくらいで騒がなかったけど、
覗かれてた時はさすがに怖くなって警察を呼んだね。
社会人になってから始めたひとり暮らしが、そのせいで結局同棲になったし…。
わた…?よく覚えてるね。そう、渉。このまま結婚するのかなって思ってたけど、うまくいかなかった。
今はあの時別れて良かったと思う。
うん、変なメールと電話くらい。写真も撮られてるけど変なのじゃないよ。
そうだね、当分は。啓輔さんにも出かけるなって言われてるし。でも家だとひとりきりでなんだか不安なの。
新興住宅地は若い夫婦が多いから近所付き合いは楽なんだけど、こういう話を近所にするとすぐ噂になっちゃうでしょ?
引っ越したばかりでやっと慣れてきたし。なるべく誰にも迷惑はかけたくないし。
え?大丈夫だよ。お巡りさんもこまめに巡回してくれるみたい。
うん、啓輔さんも今日は早めに帰るって言ってくれたから。戸締まりもしっかりした。
うん、ありがとう。心配かけてごめんね。お母さんも風邪引かないように。またね。
おかえりなさい。あなたの電話を切ってすぐ実家から電話があったくらい。
お巡りさんが何度か訪ねてきてくれたの。届いたメールや着信履歴を確認させてくれって。
(脱いだスーツを受け取り、ハンガーに掛けながら夫を伺う)
(クローゼットへと腕を伸ばすと、少し高めに留めた髪、膝へかかるプリーツスカートが揺れていた)
ごめんなさい、せっかく早く帰ってきてくれたのに晩ご飯作れてなくて…
お風呂へ入りますか?お腹が空いてるなら何か取りましょうか?
たまには美味しいものを一緒に食べたいかな……