(出逢い系サイトに登録されている?私が…?)
(夫の言葉の意味をなかなか理解できぬまま、戸惑いの色を隠せずに……)
(手口を知る事も大事と夫から教えられたアドレス…
青い顔を上げたその先にリビング窓際のパソコンがあった)
(いつもなら料理を調べたりと活用していたが先程感じた物音に怖じけつき、
傍に近づく事さえできない)
そういえば書斎に………
(血の気の引いた唇を結び二階の書斎へと向かう…触れた事のない夫のパソコン)
(デスクトップのスタートボタンをクリックしようとした指先がとまる)
(このフォルダは何…?デスクトップに置かれたフォルダに「AYA」の文字)
(パスワード…?なぜパスワードをかけてるの?何かまずいものでも……?)
(……教えられた出逢い系サイトを調べる事さえ忘れていた)
(家を出る準備を済ませると大きな溜め息をつき、実家へ電話しようとしたその時、
メールの着信を知らせる音が鳴り響く)
……きゃ!
(思わず落とした携帯電話…フカフカの絨毯から慌ててそれを拾いあげて…)
(届いたメールを確認する瞳が、次第に見開かれていく)
(すぐに夫へと電話を掛けたが電波が入らなかった…)
(トンネルのなかなのだろうか、それとも電源を切ってしまったのだろうか)
(正体も明かさぬメール差出人…夫にさえ話した事のない自身の過去、現在の状況まで知っている)
(得体の知れぬ影に震えながらも夫の言葉に引っ掛かりを覚えた)
(交番勤務の警官が個人の携帯番号ばかりか、アドレスなどを訊きたがるのだろうか)
(それに妻の個人情報を警官とはいえ、簡単に他人へと教えてしまう夫にも苛立ちを感じた)
(何かあったらすぐに連絡すること、メール内容を簡略して送ったが夫からの返信はない…)
(こういう場合は無視を決めた方がいいのだろうか、夫にさえ下着姿を晒すのは抵抗がある)
(それに一度飲んでしまうと欲求がエスカレートしていくのは目に見えている)
(家から出るに出られぬまま…そして夫から連絡がないままに、タイムリミットは過ぎようとしていた)