(思っていたはずだったが……)
……。
(さっき玄関前で見た光景が頭に浮かぶと、これまで感じたことのない胸が軋む)
(自分でも処理できない感情に、持っていたリュックを玄関先に乱暴に投げ落とす)
(こちらの雰囲気にようやく気付き、視線をさまよわせる様子からも、相手がただの先輩ではないことが分かった)
(だが、妹の嘘に付きやってやることにする)
その…先輩と、何やってたの?
(本当はそんなことが聞きたいわけではないが、止まらない軋みをどうかしてしまいたかった)
(逃げるようにリビングへと入った絵莉を追いかけ、その手首を掴む)
(細く小さな手首だったが、思い切り掴みあげ、絵莉を身体ごと振り向かせる)
絵莉、ちゃんと答えろ
家の前で、何やってたんだ?
(トーンは落とし、低く抑えた声で尋ねるが、掴んだ手首を強く握り、自分から視線を逸らせないようにする)