(机の上に置かれた数枚の写真。今となっては珍しい紙製のものだ。データ移転ではなく現像したものを
持ってくるということは、相手側も物証を残したくないのだろう。そう推測して、机の上に視線を向ける。
そこには、『やはり』以外の言葉で形容しがたい男性の姿があった。こめかみに痣、唇の端から血を
垂らし、縛られた指の先が不自然な方向に曲がっている。相応の『質疑応答』があったことは想像に
難くない。だが・・・)
・・・殺したと、いうことですか・・・? 彼は確かに同期入社で、それなりに親しくはしてましたが、かといって・・・
(ここで、言葉が止まる・・・。首筋に当てられた男の手が、ナイフのように冷たく感じられたから・・・。
一瞬でも対応を誤れば、殺される・・・。そう感じていた・・・)
・・・それほどの秘密を共有する仲ではありませんよ・・・。それに、彼が本当に犯人だったとして、苦し紛れに
私の名を出しただけかもしれませんよ。ここまでするからには・・・

(男の手とスタンガンが胸に押し付けられている。気持ち悪いことこの上ない。この状況での結論は
『とにかくシラを切りとおす』であり)
物証はあるんですよね・・・? あとこれ、立派にセクハラですから・・・。明日にでも、労働組合に
報告していいんですね・・・?


【んー、ちょっと強情になりすぎたでしょうか。実は「日本での『販売』を手控えるかわりに潜入捜査官を
教える」という裏取引が警察上層部とアメリカ本社とで成立していて、あとは自白のみってことに
しましょうか?】