【その一時間半前】

(主人の部屋へ荷物を届け廊下を引き返す黒服の執事の姿)
海外から荷物が届いたら直ちに直接部屋まで運ぶように、と旦那様は仰ったがあの送り主の住所…
外国の特殊な皮製品を扱うショップ、見覚えがある。

(ニ、三の知ってる女性の顔が思い浮かぶがすぐに頭から追い払う)
まあこの館で旦那様が誰と何をしようが、私の案ずるところではないか。

雇い主のプライバシーはすべからく関知しないことだ。おっ…
(と曲がり角でメイドとすれ違う)
二ノ宮実優…。

(表情というより全身から話しかけられたくないと言う雰囲気を発していた、彼女は黙礼しながらあっという間に廊下の奥へ去って)
…まさか、な。
さて。あの娘は今日はおとなしく部屋で休まれているかどうか。
(肩をすくめ執事は別館の寝室に続く廊下へ消えてゆく)