(建ち並ぶ雑居ビルを吹き抜ける生暖かい風に煽られ長い髪が頬にまとわりつくのを気にもせず、手に持ったチョークを掲げると無心に煉瓦の壁に走らせる)

…これで、できあがり
(白線が弧を描き、花の形を作り出すと手に付いた粉を払い、壊れかけた椅子に腰を下ろし足を投げ出す)
(花の絵の下に立つ少女…この界隈では暗黙の意味が込められていて)

(白い肌が浮かび上がり、ショートパンツとキャミソールに身を包み膝を抱えて)
(ビルの屋上に取り付けられた照明灯に蛾が呼び寄せられ、はたはたと黒い影が舞うのを目で追いながらお客さまを待ちます)