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「ホントに?…本当に?」
もはや怯えるかのようにわたしから目を逸らし懇願する冬司くんにわたしはへたり込んだまま問う
「本当に舞衣、帰っていいの?」
そう問いたくせに、冬司くんの唇が動いてしまうその前に
「舞衣が帰ったらひとりだよ。」
言葉を重ねる。
「舞衣が帰ったらひとりだよ。誰もいないこの部屋でひとりだよ」
「帰ってこないから。結子さん帰ってこないから」
「結子さんがぜんぶ置いて出て行ったのはまた帰ってくるつもりだからじゃなくて」
「ぜんぶいらないからだよ。ぜんぶ」
「冬司くんもいらないからだよ」
もはや冬司くんに口を挟む隙を与えずにわたしは
冬司くんを傷つけるだけの言葉をぶつけた
だって…だってわたしも
じゅうぶんに、じゅうぶんすぎるほど傷ついたから
あの瞬間、顔の向きを変えられ、目が合ったその時
わたしは確かに冬司くんの中に入り込んだと思った。思ったのに
その確証を得る前に、、
わたしは床に転がった
結子さんの影がまとわりつくこの部屋で