其三
17歳の少女が半裸で、しかも自分の手によりボロボロの状態で床に座っているのだから本来であればもっと慌てふためくべきなのかもしれない。だが、もう取り返しは付かない。
クローゼットの中からシャツ引っ張り出すと、シャツを手に舞衣ちゃんのすぐ側まで近寄り、跪く。
『……怪我はない?』
舞衣ちゃんの肩にシャツを羽織らせ
『……ごめんね……』
深々と頭を下げた
頭を下げたまま大きくため息を付き
『……僕は見ての通り最低だ。
舞衣ちゃんの気持ちを言葉と態度で傷付けて、あげく、舞衣ちゃんの身体も傷付けようとした。舞衣ちゃんの事を(親友の子供として)好きなはずなのにだ。 ……。』
…これ以上の言葉は出て来なかった。これ以上どうすべきかも分からなかった。ただ一つ分かっている事は、自分なんかに想いを寄せてくれている17歳の少女、しかも小さな頃から知っている少女を粗雑に扱い、最低な行為を働いてしまったという事だ。
また一つ深くため息をつき、ゆっくりと頭を起こし、心底申し訳ない気持ちで舞衣ちゃんを見つめる。
いつものように気軽に舞衣ちゃんの肩に触れる事はもう許されない。舞衣ちゃんの肩からずれ落ちたシャツだけに手を伸ばし直すとそのまま立ち上がり
『……飲み物を入れてくるからね
舞衣ちゃんは着替えて、…帰る準備をするんだ。』
立ち上がり寝室を出ようとした時、寝室の扉横の棚上に飾ったままにしてあった結子の写真に目を止め、しばらく沈黙したあとに、気付いてはいたが、気付かない振りをしていた言葉をはじめて重く口にする。
『……そうだね。結子はもう二度と帰ってこない。』
結子の写真の入った写真立てをゴミ箱に投げ入れ寝室を出た。