其一

窓のない寝室と対象的に、リビングには
午後の陽の光が爽やかに差し込み、空調の冷たい空気に触れた身体に汗が滲んでいる事に気付く。
…10代の子供に手を出すなんて…僕は何と馬鹿げた事をしてしまったんだろう…。
理性のコントロールが利かず、衝動的になってしまったのはいつ以来だろう。
結子の浮気を見付けた時以来だろうか。
いや、今回はそれ所の騒ぎじゃない。
自分のしでかしてしまった事への嫌悪と後悔に頭を掻きむしる。
…慎二と恭子に今日の事を正直に話すんだ。絶縁されて警察に突き出されても仕方がない…。
どれほどの理由があろうとも、僕がしでかしてしまった事は犯罪に変わりないのだ。

目を閉じ大きく呼吸をし覚悟を決める。
慎二、恭子、今日は休日だから外出していなければ自宅に居るだろう。舞衣ちゃんを車で家まで送って、その時に全て正直に話そう。

キッチンに立ち、棚に並んだ結子が選んだカップを半ば放心したように眺める。
あれほどいとしく大切に思っていたのに、今は全て割ってしまいたい気分だった。
グラスに氷と水を注いでいる時、寝室の扉が空き、僕のシャツを着た笑顔の舞衣ちゃんが出てきた。

どんな顔を向けて良いのか分からないまま舞衣ちゃんを見やると、あまりにも普段と変わらない笑顔を浮かべた舞衣ちゃんがそこに居た。そして僕もつい笑顔を浮かべてしまった。だがすぐに僕の顔から笑顔は無くなる。