>>36
其の三b

そして夢を見る
夢の中でわたしは懇願する
「結子さんにするみたいに優しくして」
突き飛ばせなかったわたしが、それでも拒否することも出来なかったわたしが
夢の中で
「身代わりにするなら、ちゃんと結子さんみたいに愛して」
そう言うのを冷めたわたしが見ている
馬鹿だな。“わたし"よ
結子さんの身代わりだからこそ、そんなふうに冷たい目で見られお前は犯されるのだ
だって、だって
結子さんを今でも愛してる冬司くんに、結子さんを蹂躙できるわけない
裏切られて、逃げられて尚
ごめんなさい
夢の中でわたしは謝罪する
わたし、知ってたの
冬司くんが知る、ずっと、ずっと前から
あれは中学の頃
仲睦まじく歩く結子さんと知らない男
わたしに気づいた結子さんは、わたしに口止めした
「舞衣ちゃんが邪推するようなことは何もないのよ。でも舞衣ちゃんが余分なことを言うと、冬司が無駄に傷つく事になるわ、だから。」
まだ幼かったわたしは冬司くんをきずつけたくなくてでも
もう一度、だいすきだと告白した
あの時、、そんな告白じゃなくてきちんと告げてたら
冬司くんの傷はここまで深くなかったかもしれない
でも今更何を思っても
そして案の定、夢の中の冬司くんはわたしを拒絶した。
『お前は結子じゃない。誰も結子の代わりになんてなれない』
なんでわたしの夢の中なのに、こうも思い通りならないか
また流れる涙で目を覚ました