舞衣ちゃんの唇が僕に触れた。
重なり合うというよりは、ぶつかり合うように触れた唇。たまたま偶然に触れただけなのか、動揺する頭を落ち着かせようとするも、次の瞬間には舞衣ちゃんは泣いていた。
ただでさえ女性の涙は辛いのに、17歳の少女の涙には酷く胸を抉られる。
涙に狼狽える自分の手が今にも舞衣ちゃんを抱きしめそうになるが、中途半端に宥めた所で余計に傷を付けるだけだ。
戸惑う両手を中途半端にかざしたまま見やる事しか出来ずにいた。
涙を流す舞衣ちゃんはとても痛ましく、可哀想で、そしてあまりにも女らしかった。
つい今まで涙に困惑していたのに
これは一体全体どういう事だろうか。
触れてはいけないとずっと堪えていた手がとうとう伸び、舞衣ちゃんを腕に抱きしめた。
『…泣かないで』