お嬢様といっても、見かけは普通の人もいますから、そこは紗友さんの好きなようにしてくれたら大丈夫です。
それじゃ、それでやってみましょうか。
軽く書き出しも考えてみたので、何か思ったことがあったら言ったらください。
(ここは日本一の歓楽街の奥の路地裏にある小さな喫茶店。
深夜にしか開かないその店は、夜の仕事を終えた人間達のやすらぎの場。
今夜も常連客が集まり、コーヒー片手に他愛もない話を重ね、朝が近づくにつれ、一人また一人と帰っていく)
さてと、閉店の時間か。
(最後の一人が店を出ると、ぽつんと店に残ったマスターはカウンターからフロアへと出て、
ソファ席のテーブルに残っているコーヒーカップをトレイに乗せていく。
するとそのとき、入口のドアが開く音が聞こえ、振り返ってみると、そこには一人のこの時間には似合わない女の子が立っている)
いらっしゃい。ウチはコーヒーかオレンジジュースしかないけど、それでもいいかい?
(一瞥してから、すぐ背中を向け、コーヒーカップの乗せたトレイを持ってカウンターの中に戻ると、
客に背中を向けたまま、コーヒーカップをシンクに貯まっている水の中へ、一つずつゆっくりと沈めていく)