(もう感触を覚えてしまったその唇が、強引で優しさを感じさせることなく荒々しく私の唇をこじ開ける)
(私はそれでも拒むことはできなくて、それでもいつものように背中に腕を回すこともできない。離れた唇、一呼吸も置かずに耕司さんからこぼれた言葉は、到底信じたくないものだった)
な…なにを言っているの、耕司さん…
私が耕司さんの「相手」をしているだなんて
一時的な感情なんかじゃないって、わかってるじゃない!
私が好きなのは耕司さん、あんな人なんかじゃない……
きゃっ……っ
(力強く、なんとか耕司さんに伝わるよう、声に力を込めて告げたつもりでも、簡単にベッドに放り投げられてしまう)
(私の腕を掴む耕司さんの力は、今までで一番乱暴と呼べた)
(ベルトを緩めてズボンを下ろし、熱り立つペニスを見せつけてくる耕司さん。私はそれを、ベッドの真ん中でへたり込んで見ていることしかできなかった)
(耕司さんが近づいてくる。私の愛おしい人のはずの彼はが違う人に見える。頭ははっきりしているのに目の前は霞がかったようにぼやけて薄暗い
(今の彼は、私を優しく照らして見守ってくれる彼ではない。かと言って、私が好きな彼ではないのか?いや、違う)
……わかった、それが耕司さんの望みなら、あなたのことは忘れます
でもあなたは?私のことを忘れられるの?
今夜私を抱いたら、もう私の専属も辞めて、ずっと会わないで生きていける?
…と言うのなら、私の目を見てそう言えるなら、あなたの思う通りにしてください
(言い終えて、ぐっと歯を食いしばってきっとした眼差しで彼を見据えた。そのまま私もドレスを手荒に脱ぎ捨てる。上下の下着姿になった私は、仰向けに寝そべり、迫ってくる耕司さんを受け入れるように手を伸ばす)
(こんなの嫌だ、これが最期になるなんて考えられない、耕司さんと離れたくない。まだこんなにも、好きなのに。強がりで口にした言葉をすでに後悔しかけるが、自分が口にしたことだ。ぽろぽろと涙がこぼれるが荒っぽい仕草で顔を拭った)