トップページ801
474コメント731KB
モララーのビデオ棚in801板70 [転載禁止]©bbspink.com
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:47:57.89ID:XIDHVl0F0
   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板69
http://nasu.bbspink.com/test/read.cgi/801/1356178299/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
0002風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:49:32.14ID:XIDHVl0F0
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4)一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
  長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
  再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
(5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
   また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
   作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。
※ルールを守っている書き手やその作品に対して誹謗中傷・煽り・否定意見の書き込みは禁止
※誹謗中傷・煽り・否定意見に対しての反論は書き手、読み手共に禁止
 レスするあなたも荒らしです。注意する時は簡潔に「>>2を守ってください」で済ませましょう。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://bbs.kazeki.net/morara/
0003風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:50:54.98ID:XIDHVl0F0
■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
0004風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:51:56.96ID:XIDHVl0F0
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
0005風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:53:04.41ID:XIDHVl0F0
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
0006風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:54:00.52ID:XIDHVl0F0
テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
0007風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:55:12.28ID:XIDHVl0F0
テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
0008風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:56:04.88ID:XIDHVl0F0
テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0009風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:57:03.51ID:XIDHVl0F0
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
0010風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:58:08.21ID:XIDHVl0F0
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/ (     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)
0013風と木の名無しさん2015/03/29(日) 15:40:49.54ID:ps528rx30
保管庫荒らされてるなあ
管理人さん大丈夫ですか?
0014風と木の名無しさん2015/04/02(木) 22:58:46.92ID:/519b1tv0
質問スレから誘導されてきました。これから投稿します。

ジャンル:オリジナル Hシーン:有り グロシーン:無し
攻めと受けの名前は思いつかなかったのでそのまま「攻」「受」で。以上を了承された方はどうぞ。

             ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
0015因果応┌(┌^o^)┐ 1/62015/04/02(木) 23:01:46.51ID:/519b1tv0
「よっし、セックスしよう!」
「やだ」

「えっ」
受の予想外の返答に俺は思わずそう言ってしまった。
「そりゃないって、おい。お泊りして風呂入って一緒のベッド入って前もってローションやゴムまで買い足してさあやるぞって日に、そりゃないって!」
「とは言ってもさぁ……」
受はゴロリと寝返りをうって、俺から背を向けてしまった。
「なーんか、する気にならないっていうか」
こいつ、就寝モードに入りかけてやがる。
「我儘すぎんだろ……」
「あ、でも」
その時受は急に寝返りをうって、俺に顔面を大接近させた。
「俺のこと、その気にさせたらやってもいいよ。でもできるのか?」
受はそう言ってからかうような笑みで笑い、また寝返りをうった。
(あ、なーるほど)
これは拒否じゃない、新手の挑戦だな。俺はそう解釈した。挑戦なら喜んで受けてやろうじゃないか。
「そんじゃ、その気にさせてやるか」
「どーぞ、ご自由に。俺は寝る」
余裕そうな声に加虐心がそそられる。
受の肩を掴んでこちらを向かせた。微かに端の上がっている唇に、キスをする。ちゅうっ、と軽く吸い付いた。
(こっちは、どーかな)
ゴソゴソと手探りで受のズボンを探り、手を突っ込んだ。陰毛の感触を超えると、まだ勃っていない受のそれに手が触れた。
(勃っては……いないか)
勃ってたら面白かったのに。まあ別にいっか。いまから勃たせる。受のそれを掴み、掴んだ手を上下に動かす。受は無反応だ。
(んー、じゃあこれで)
握る力を強めながら、カリ首の辺りに指を絡めた。受のそれが、少し硬くなるのを感じる。この調子だと調子に乗った俺は、人差し指で亀頭の先端をなぞった。
「ん……」
受の内から微かに声が漏れた。それも増々硬くなっていく。よしよし、感じてる感じてる。
「寝るんじゃなかったのか?」
「……うるさい」
受はそのままだんまりに入ってしまった。
0016因果応┌(┌^o^)┐ 2/62015/04/02(木) 23:03:14.13ID:/519b1tv0
そんな事を思いつつも、それを弄る手は緩めない。尿道口を軽く指でくりくりしたりぐりっと先端を圧迫してみたり、ちょっと乱暴に竿全体を手を使って上下に激しくしごいたりもする。
「っ……、うっ……」
受は俺の前で声を漏らさないようにと、必死だ。でも感じてるってバレバレだ。当人はまだ黙っているつもりなんだろう。やがて受のそれから、先走りが零れてきた。
「その気になった?」
「…全然?」
「あっそ」
俺は受のそれから手を離す。先走りのついたその手を、今度は受の尻穴の方に持っていった。
「……!」
受の身体が一瞬びくついたが、構わず尻穴に指を宛てがった。指先でくすぐるように、受の尻穴を撫でる。
中に入れようとするが、流石にローション無しだと中々入っていかない。先走りをローション代わりにするのは量的にもかなり厳しい。
「よっこらせ、っと」
ベッドから少し身を起こして、サイドテーブルに置いたローションを取った。受のお気に入りのタイプのローションだ。高かった。
一旦ズボンから抜いた手にローションをたっぷりと垂らす。垂らした側とは反対の手で、受のズボンをずりおろした。
ローションを塗りつけてやるように手を動かすと、大分受の尻がぬるついてくる。勿論、尻穴もだ。
ぐりぐりと穴をほじるようにしながらローションを塗ると、指はローションを腸壁になすりつけながら奥へ奥へと入っていく。
「……っ!」
受が身をよじらせた。
「あんま動くなって、入んねーから」
突っ込んだ指1本を中で穴を拡張するように回し、ぬるぬるになった穴にもう1本指を滑りこませた。中で指をかきまわすと、腸壁がきつく締め付けてくる。
「は……あ……あっ……」
(やっべぇ、超可愛い)
俺の息子が触ってもいないのに完全勃起する程度には可愛い。強情なところがなんかもう可愛い。
指を奥へ進めていくと、前立腺とおぼしき部分を指がかすった。
「ぁ!」
受がまことしやかにイイ声を上げるのでもっともっと責め立てようとするが、この体勢だと指のリーチが微妙に足りず、どうにも奥まで入らない。どう頑張っても前立腺はかすめるだけで終わってしまう。
「ぅ……っ、……うぅぅ…」
(受にとっちゃ、生殺しもいいとこだろーなー)
0017因果応┌(┌^o^)┐ 3/62015/04/02(木) 23:03:57.04ID:/519b1tv0
そんじゃ代わりにこっちも楽しませてやろうと、俺は受のシャツをずり上げた。左手で受の尻を弄りつつ、右手は受の乳首に持っていく。触る前からもう、受の乳首は硬くなっていて、触るとぷるんってなった。
(完っ全に、発情してる)
ここまで興奮してんなら素直になればいいのに、と受の乳首を指でころころと弄りながら尻穴も同時に責め立てる。
(前も弄ってやりたいけど)
残念ながら俺の腕は3本もない。
「っ……うぅぅうっ……うあっ……!」
(そろそろ、イキそうかな?)
でも前弄り無しじゃ、さすがの受でもイくのは厳しいだろう。
弄ってやろうかな、と思った時、俺はふと「仕返し」を思いついた。
「あ、あのさ…攻、俺「やっぱもーいいや」…は?」
俺がもういいやと言った瞬間と、受が意地の限界に達してねだってきた瞬間は、奇跡的に同時だった。
「お前、する気ないんだろ?だったらもーいいや」
「えっ…、何言って…」
「する気のない奴にアレコレしたってかわいそーじゃん。寝るの邪魔して悪かったな、おやすみー」
俺は受に背を向けた。無論、受が我慢の限界に達しているのを分かった上で俺は一連のセリフを言った。今頃背後で受がどんな顔をしてるのかと思うと、正直ゲスな笑いがこみ上げてくる。
(でも受、発端はお前だからな?)
お前がしょーもないことしだすからこーなったんだ。因果応報って言葉を憶えとけ。
(で、どう出る?)
まさかあそこまで興奮した受が本当に寝るとは思えない。俺も興奮して眠れない。はやく続きしたい。
「……あのさ、攻」
受が俺のシャツの袖をくいくいと引っ張ってきた。
「何?俺寝るんだけど」
「ふ、ざけるな……絶対、わざとやってるだろ……!」
「何が?」
「ごめん……俺が悪かったから……!」
「だから何が?」
「その気になったから、だから続き…もう我慢の限界だから、なぁ……!」
受がいきり立ったそれを、俺の腰の辺りに擦りつけてきた。
「……受?」
俺は受をベッドに押し倒した、
(あ、やばい)
俺ももう我慢の限界。もう少し受のことじらすつもりだったけど、もう限界。受の声がエロすぎて我慢できない。
0018因果応┌(┌^o^)┐ 4/62015/04/02(木) 23:04:42.70ID:/519b1tv0
「いい?受」
受は、真っ赤な顔でこくり、と頷いた。
「よし、そんじゃうつ伏せになれ」
俺の下で、受は大人しく体位を変えた。受の尻の辺りを指で探る。穴の辺りはローションでぐちゃぐちゃになっていて、指を少し挿れると軽く穴が開いたあと、きゅうー、っと締まった。
俺のガッチガチになったそれを、受の尻に軽く触れさせる。それだけでも受が興奮してんのがわかった。
ゴムつけて狙いも定めて、受の尻にそれを入れていく。
「あ……ぁ……あぁっ……!」
亀頭が先に入ってカリで中を押し広げられ、竿に入ると少し穴が収縮し、それが余計に受を喘がせた。
「エロい……」
「うるさいっ……!攻、ちょっと勃たせすぎ……!」
仕方ないだろ、お前で興奮しちゃったんだから。待たされた分、今日はがっつり激しめに行くぞ。
受の尻穴を押し広げながら俺のそれを挿しこんでいく。
「あっ……そこ、いいっ……!」
ようやく受の前立腺に届いたようだ。
「気持ちいい?受」
受は無言で、こくこくと頷いた。(わざとじゃないが)かすめて散々焦らした分、快楽も格別のはずだ。
「はーっ、はぁーっ……」
受は深呼吸をして、俺のそれを自分の体内に馴染ませようとした。息を吸って吐く、それを繰り返す度に、受の肩が小刻みに震え、腸壁も呼吸に合わせて収縮した。
「そいっ」
「!!!!」
ほんの軽い冗談のつもりで、深呼吸の真っ最中の受の中で、少しだけ動いた。そうしたら、肩を大きく震わせて少しの間固まってしまった。
「今動くなっ!少し、待て……!」
「あ、ごめん」
思った以上のリアクションをされた上に、お預けを喰らってしまった。
(すっげぇきゅうきゅう締め付けてくる)
これでお預けとかマジで鬼畜だと思うんだけど。正直今すぐにでも動きたい。
「受、まーだー?」
「辛抱の無い奴だな、本当に!」
「悪い?まあ愛嬌ってことで」
「……勝手にしろっ!」
俺のそれの残りの部分を、受にねじ込むように挿しこんだ。
「んんんんんっ、う……」
「声我慢とか無しだって」
「だ、って……あっ…」
ほら、もう声漏れた。どうせ我慢したって最後はあんあん喘いでんだから。
0019因果応┌(┌^o^)┐ 5/62015/04/02(木) 23:05:21.52ID:/519b1tv0
「それに、俺、受の喘ぎ声、結構好きだけどなー」
「……攻……」
受は耳まで真っ赤にしてしまった。暗がりでよく見えないのが実に残念だ。
「受、本っ当、お前、好きだっ!」
ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、と、受の腰を乱暴に俺は突きだした。
「あ、んんあっ、攻、ちょっと、激しすぎるって、」
「仕方ない、だろっ!こっちも、我慢の、限界っ!」
受の中に一際深く突き刺すと、受は隣に響くんじゃないかと心配になる嬌声を上げて震えた。
「で、こっちは……」
そっと手を這わせて受のそれに手探りで触れると、反り返ってガチガチになっていた。
「うわ、玉も超ずっしり」
「揉、むな……!」
精液を大量に精製して後は出すだけといったパンパンに膨れ上がった玉を、掌の中で弄んだ。
「揉むな、って、おかしくなる……!」
「え、今更?」
「ぅるっさい!だまれ!」
とうとう呂律まで怪しくなってきた。
「受、イキそう?さっき我慢してたもんな」
受のそれを、手でがしがしと擦りながら腰の動きを繰り返す。俺のそれ越しに、前立腺をごりごりと抉るように擦る感触が伝わった。
「あっ……、両方同時は、ダメっ……!」
手元の枕を千切らんばかりに握りしめ、受は枕に顔を埋めた。
「受―、こっち向いて」
受に顔を近づけ、耳元で息を吹きかけながら囁くと、受は最初の数秒は無反応で、その後に少しだけ、赤らんで涙ぐんだ顔をこちらに向けた。
「攻、」
「んっ」
受が何かを言う前に、キスで唇を塞いだ。触れて、重ねて、唾液を垂らして、貪って、
(本当、俺、受の事好きだなぁ……)
ムダに強情なとことか、限界になると素直になるとことか、セックスしてるときの顔とか、声とか、潤んだ瞳とか、なんかもう、本当に、ぜーんぶ、好きだ。
「ぷはっ……攻、俺、いくっ……!」
受のそれが、俺の手の中で震えて、シーツに大量の精を、撒き散らした。
0020因果応┌(┌^o^)┐ 6/62015/04/02(木) 23:06:02.57ID:/519b1tv0
「攻、もう1回」
「ま、まだやんの……?」
「も・う・い・っ・か・い」
身体をすり寄せながら、受は俺の耳元で半ば脅迫のように言った。
「もう散々やっただろ……なんでまだ足りないんだって!」
「その気になったから。俺、まだ満足してないんだけど?」
「お前の性欲どうなってんだよ……底なし?」
どうやら俺は、受の変なスイッチを起動してしまったようだった。
「もう1回くらいできるだろ?」
「そのもう1回、これで何回目?」
「忘れた。じゃあ、生でもいいから」
生でいい、という言葉に一瞬ムラっとした。
「体位も攻のお好きにどうぞ?騎乗位でも座位でも四十八手でも何でも」
あの手この手で受が俺の性欲を煽ろうとしてくる。そしてそれにうっかり乗ってしまいそうになる俺も俺だが。
「受が何つっても、無理なもんは無理。もうその気になれないって……」
「そうか……あ、そうだ」
受が急に布団をまくり上げる。
「どうしたんだよ、受……って何やってんだおい!」
受が俺のズボンを脱がし、中から萎えたそれを取り出した。
「何って、その気にさせてやろうと思って」
受のその言い方は、つい数時間前の俺にそっくりだった。そして受は、俺のそれに軽いキスをした。
「……ああハイ……そんじゃ、その気にさせてください」
因果応報ってあるんだな、と俺は思い知った。
0021因果応┌(┌^o^)┐(あとがき)2015/04/02(木) 23:07:43.74ID:/519b1tv0
以上で終了です。これにて退散いたします。
質問などありましたらコソーリ戻ってお答えします。

              ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
0022必殺☆収録人2015/04/03(金) 05:28:45.43ID:SO5a14f20
>>14
タイトルの「因果応」っていうのは仕様ですかね?
「因果応報」じゃなくて?
0023風と木の名無しさん2015/04/03(金) 07:04:29.26ID:Veemi5yP0
>>22
恐らくID違いますが、仕様です
「いんがおうほもぉ」もしくは「いんがおうほぉ↑もぉ↓」と読んでください
0024風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:17:14.34ID:t4/A/dch0
┌─―─────────────────────┐
│ビデオ棚いっぱいだから整理しなきゃ…コレなんだっけ.|
└v ─────────────────────―┘
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

     ピッ  ∧∧     ∧_∧
        (   ,,゚)ぅ ゛  (    ,)
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |     \
  └────────────┌─―──────)`────────────‐┐
                     │要らないものならダビング用に取っておけばいいな.|
                     └────────────―────────┘
0025風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:18:12.38ID:t4/A/dch0
     ● 2年目 ●

           |                                  |  _______
           |        ______                |  || ̄ ̄ ̄||| ̄ ̄ ̄||
           |          || ̄ ̄ ̄ ̄||        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ||      |||      ||
        ,'| |          ||        ||        |l二二二二二l||  ||      |||      ||
         |.| |          ||        ||        ||_____|||  ||      |||      ||
 サァ始マリマシタ |          ||      .0 ||        ||_____|||  ||    []|||[]    ||
\プリン早食イ対決/⊂⊃   ||        ||        ||_____|||  ||      |||      ||
    ../ /.|――n|  |___.||____||____|l_____l||  ||      |||      ||
   / //||_.n/||.ー‐'                  L二二二二二」|_||___|||___||_
  l'|  ̄| |、 /||. ||/||.          _________,,
  l.|   | |/, '| ||レ!'||  ズズ- ∧∧ /            ∧_∧
  ,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~     (,, ゚◇) ,,          (ωΦ )
  |   | l,, "/~        {  _,ノ         旦と_    )
  |   | |/          ゝ_/            //__ノ
/ ̄ ̄ ̄             {二二二二二二二二}/
                    |__|        |__|
0026風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:19:13.64ID:t4/A/dch0
           |                                  |  _______
           |        ______                |  || ̄ ̄ ̄||| ̄ ̄ ̄||
           |          || ̄ ̄ ̄ ̄||        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ||      |||      ||
        ,'| |          ||        ||        |l二二二二二l||  ||      |||      ||
         |.| |          ||        ||        ||_____|||  ||      |||      ||
 今回ノ挑戦者ハ           ||      .0 ||        ||_____|||  ||    []|||[]    ||
\前回サンマヲ10本丸呑シt   ||        ||        ||_____|||  ||      |||      ||
    ../ /.|――n|  |___.||____||____|l_____l||  ||      |||      ||
   / //||_.n/||.ー‐'                  L二二二二二」|_||___|||___||_
  l'|  ̄| |、 /||. ||/||.          ____ピ.____,,
  l.|   | |/, '| ||レ!'||       ∧∧ /       ___  ∧_∧
  ,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~     ( ,,゚д) -3    ((  ⊂(ωΦ )
  |   | l,, "/~        {  つ日        旦と_    )
  |   | |/          ゝ_/            //__ノ
/ ̄ ̄ ̄             {二二二二二二二二}/
                    |__|        |__|
0027風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:20:07.34ID:t4/A/dch0
           |                                  |  _______
           |        ______                |  || ̄ ̄ ̄||| ̄ ̄ ̄||
           |          || ̄ ̄ ̄ ̄||        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ||      |||      ||
        ,'| |          ||        ||        |l二二二二二l||  ||      |||      ||
        ┌─―──┐  ||        ||        |l_____|||  ||      |||      ||
        │なぁなぁ |  ||       0 ||        |l_____|||  ||    []|||[]    ||
       _└───、r ┘  ||       ||        ||_____|||  ||      |||      ||
    ../ /.|――n|  \ __||____||____|l_____l||  ||      |||      ||
   / //||_.n/||.ー‐'                     L二二二二二」|_||___|||___||_
  l'|  ̄| |、 /||. ||/||.          _________,,
  l.|   | |/, '| ||レ!'||       ∧∧ /            ∧_∧ ズズ..
  ,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~     ( ,,゚д)          (◇Φ   )
  |   | l,, "/~        {  つ日        ヽ、_    )
  |   | |/          ゝ_/            //__ノ      \
/ ̄ ̄ ̄             {二二二二二二二二}/        ┌─'ー─┐
                    |__|        |__|           │んー?|
                                        └─――┘
0028風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:21:10.04ID:t4/A/dch0
           |                                  |  _______
           |        ______                |  || ̄ ̄ ̄||| ̄ ̄ ̄||
           |          || ̄ ̄ ̄ ̄||        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ||      |||      ||
        ,'| |          ||        ||        |l二二二二二l||  ||      |||      ||
        ┌─―───────────────‐┐__|||  ||      |||      ||
        │今俺とお前でこの家シェアしてるじゃん? |____|||  ||     .|||     ||
       _└───、r――――─────── ┌─―─―┐|  ||     .|||     ||
    ../ /.|――n|  \ __||____||____│してるね. ||  ||      |||      ||
   / //||_.n/||.ー‐'                     └───‐r┘.|_||___|||___||_
  l'|  ̄| |、 /||. ||/||.          _________,,  /
  l.|   | |/, '| ||レ!'||       ∧∧ /            ∧_∧
  ,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~     ( ,,゚д)          (ωΦ  )
  |   | l,, "/~        {  つ日        旦と_    )
  |   | |/          ゝ_/            //__ノ   
/ ̄ ̄ ̄             {二二二二二二二二}/ 
                    |__|        |__| 
           /
     ┌─―/─────────────――─┐
     │この状況ってさ、いってみれば同居じゃん?  |
     └───―――――────────┌―――― v┐
                                |同居だね. |
                                └────―┘
0029風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:22:13.94ID:t4/A/dch0
           |                                  |  _______
           |        ______                |  || ̄ ̄ ̄||| ̄ ̄ ̄||
           |          || ̄ ̄ ̄ ̄||        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ||      |||      ||
        ,'| |          ||        ||        |l二二二二二l||  ||      |||      ||
        ┌─―───────────────―┐.__|||  ||      |||      ||
        │野郎二人で仲良く同居してるのってさ、   |.__|||  ||      |||      ||
       _| 余所様から勘違いとかされてないかな?  |.__|||  ||      |||      ||
    ..//└――────────────────┘ __l||  ||      |||      ||
   / //||_.n/||.ー‐'                     L二二二二二」|_||___|||___||_
  l'|  ̄| |、 /||. ||/||.          _________,,
  l.|   | |/, '| ||レ!'||       ∧∧ /            ∧_∧
  ,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~     ( ,,゚д)          (ωΦ  )
  |   | l,, "/~        {  つ日        旦と_    )
  |   | |/          ゝ_/            //__ノ      \
/ ̄ ̄ ̄             {二二二二二二二二}/        ┌─'ー―────――┐
                    |__|        |__|           |されてるんじゃない?|
                                        └─―――───――┘
0030風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:23:17.50ID:t4/A/dch0
           |                                  |  _______
           |        ______                |  || ̄ ̄ ̄||| ̄ ̄ ̄||
           |          || ̄ ̄ ̄ ̄||        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ||      |||      ||
        ,'| |          ||        ||        |l二二二二二l||  ||      |||      ||
        ┌─―───────────────―――┐|  ||      |||      ||
        |このまま勘違いされてたらさ、俺はいいけど   ||  ||      |||      ||
       _| お前までゲイ疑惑掛けられちゃうんじゃない? .|| .||      |||      ||
    ..//└――───────────────――─┘.| .||      |||      ||
   / //||_.n/||.ー‐'                     L二二二二二」|_||___|||___||_
  l'|  ̄| |、 /||. ||/||.          _________,,
  l.|   | |/, '| ||レ!'||       ∧∧ /            ∧_∧
  ,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~     ( ,,゚д)          (ωΦ  )
  |   | l,, "/~        {  つ日        旦と_    )
  |   | |/          ゝ_/            //__ノ      \
/ ̄ ̄ ̄             {二二二二二二二二}/        ┌─'ー―────―──―─‐┐
                    |__|        |__|           |別にお前が気にならないなら |
                                        |我輩も特に気にしないけどね. |
                                        └─―――───―────‐┘
0031風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:24:33.41ID:t4/A/dch0
           |          || ̄ ̄ ̄ ̄||        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ||      |||      ||
        ,'| |          ||        ||        |l二二二二二l||  ||      |||      ||
        ┌─―─────────────‐┐____|||  ||      |||      ||
        │……そうなの?気にならないの?  .|____|||  ||      |||     ||
       _└───、r――――─────┌─―─―‐┐__|||  ||      |||     ||
    ../ /.|――n|  \ __||____||___│ならないよ.|__|||  ||      |||      ||
   / //||_.n/||.ー‐'                └───‐r‐┘..二」|_||___|||___||_
  l'|  ̄| |、 /||. ||/||.          _________,,  /
  l.|   | |/, '| ||レ!'||       ∧∧ /            ∧_∧
  ,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~     ( ,,゚д)          (ωΦ  )
  |   | l,, "/~        {  つ日        旦と_    )
  |   | |/          ゝ_/            //__ノ
/ ̄ ̄ ̄             {二二二二二二二二}/
                    |__|        |__|
           /
     ┌─―/─────────────―――――‐┐
     |俺豆腐メンタルだから やけになって襲っちゃうかも |
     |しれないけど平気?ホントに気にならない?     |
     └───―――――─────――─┌―――― v―――――――┐
              /                |別にお前なら気にしないよ. |
        ┌─―/───────――┐  └───────────―┘
        │そっか。それならまぁいっか |
        └───――――────┌―‐v┐
                          |うん. |
                          └──┘
0032風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:25:28.95ID:t4/A/dch0
           |                                  |  _______
           |        ______                |  || ̄ ̄ ̄||| ̄ ̄ ̄||
           |          || ̄ ̄ ̄ ̄||        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ||      |||      ||
        ,'| |          ||        ||        |l二二二二二l||  ||      |||      ||
         |.| |          ||        ||        ||_____|||  ||      |||      ||
        |,' |          ||      .0 ||        ||_____|||  ||    []|||[]    ||
       __ |   ⊂⊃   ||        ||        ||_____|||  ||      |||      ||
    ../ /.|――n|  |___.||____||____|l_____l||  ||      |||      ||
   / //||_.n/||.ー‐'                  L二二二二二」|_||___|||___||_
  l'|  ̄| |、 /||. ||/||.   ズズ.    _________,,
  l.|   | |/, '| ||レ!'||       ∧∧ /       ,,  ∧_∧  ズズー
  ,,l.|__|,,/ ,,l| ||/~     ( ,,゚◇) ,,        (◇Φ   )
  |   | l,, "/~        {  _,ノ          ヽ、_    )
  |   | |/          ゝ_/           //__ノ
                   {二二二二二二二二}/
                    |__|        |__|
0033風と木の名無しさん2015/04/05(日) 17:26:38.89ID:t4/A/dch0
┌─―─────────────┐
│……これは取っておいてもいい?  |
└v‐─────────────―┘
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

     ピッ  ∧∧     ∧_∧
        (*゚д)ぅ ゛  (ωΦ .)
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  |                                |     \
  └────────────┌─―──────)`────────────‐┐
                     │いやいいけど……お前いつこんなの録ってたの? |
              ┌──── ┐────────―────────―─―‐┘
              |ヒミツ〜♪|
              └ ────┘
0035指定席 1/72015/04/12(日) 08:07:58.56ID:yBCezRUu0
オリジナルぷろやきうもの
何か色々おかしいですが仕様です
監督←四番打者的な感じで
モチーフはあるけど実際のぷろやきうとは関係無いです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

チームは連敗続き、ムードメーカーでも二軍から上げてこい。
こんなもんだろう。自分で言うのも情けないけど、他に俺の一軍昇格の理由が思いつかない。
ベンチの中を見渡すと、奥の方にいた超ベテラン強面外野手と目があった。強面で頑固一徹のその人が、
じっと俺をにらみ、そして顎で指し示す。あ、あの。隣に座れということですか? しかも、そこは監督の隣でもあるんですけど。
恰幅の良い監督は基本的には人が良いって言われているけどさすがに連敗中ともあって、
いつもよりずいぶんと厳しい顔をして考え込んでいる。俺のような若手がそこへ座っていいものだろうか。
戸惑っていると、座れ、とその強面殿の瞳が凄んでいる。助けを求めるようにぐるりと周りを見回すと、
皆そろって、監督の横へと視線を向けて、やっぱり俺にそこへ座れと促す。
一体これはどう言ったパワハラなんだろう。
俺は恐る恐る監督の隣に腰を下ろしたが、どうにも落ち着かない。
すると、俺の視界にのっそりと入ってきたのは我がチームの四番打者様。
若くしてタイトルを次々と取った、我がチームの顔どころか球界を代表する大打者だ。そのお方がじっと俺を見ている。
俺は思い出す。そうテレビでベンチ内が映し出されるとき、この人はいつも監督の隣に座っていたのだ
0036指定席 2/72015/04/12(日) 08:09:42.89ID:yBCezRUu0
やばい、さっさと席を譲らなきゃ。
俺は慌てて腰を上げようとしたが、四番打者様の視線の威圧感に腰を抜かしてしまったようだ。
視線の圧力がますます高まっていくのを俺は感じていた。現在、このお方は不調のまっただ中、
チームの連敗の原因もまさにこのお方の不調によるものと言っても過言ではない。
そんな重要人物の気分を損ねるようなことをしたら、俺は、チームはどうなってしまうんだ。
すると、今まで腕を組んで考え込んでいた監督がふっと顔を上げて、
「なんだ、お前。座る場所無いのか」
と四番打者様に対して、屈託の無い笑顔を向ける。四番打者様は無表情のまま、こくんと頷く。
俺は四番打者様の視線の呪縛がふっと解けたことに気がついた。
どうやらただ今、四番打者様の目には監督しか映っていないようなのだ。
「しっかたねえなあ」
監督は苦笑しながら、俺の方を見て、なにもかも分かっているからと言いたげに小さく頷くと、
直立不動の四番打者様を見上げ、ぽんと自分の膝を叩いた。
「ほら、ここに座るか?」
ええっ、何おっしゃっているのですか、監督。俺は我が耳を疑った。そのふくよかな体型は
確かに座り心地はよろしいかもしれませんが、ってそんな問題ではない。
しかし、それが幻聴では無かった証拠に、四番打者様は相変わらず表情を崩さず、
「それでは失礼しますね」
と遠慮なく深々とその太股の上に腰を下ろしたのだ。
0037指定席 3/72015/04/12(日) 08:11:01.97ID:yBCezRUu0
この俺の失態をかばうために、監督は冗談を言ったのだろうか。そして、その冗談にわざわざ四番打者様は乗ったのだろうか。いや、普通は冗談でも実行に移されたら監督は怒るだろう。
だけれども、この二人はと言うと、
「重たいなあ、お前」
「しっかりと鍛えていますからね。食べて飲んで寝てばかりの監督とは違います」
と、この状態がごく当然のものであるかのように会話をしている。
なんだか、体中がムズムズして居たたまれない気持ちで体をもそもそと揺すっていると、
「腰に何か当たってる気がするんですけど、監督」
と、四番打者様が言い出す。未だ独身なのが不思議な端正な顔立ちのこの方が、こんなことをさらりと言うなんて、なんか、なんだか、腑に落ちるような、しかしそういう解釈でいいのか、本当に落ち着かなくて困る。
するとすかさず、
「悪かったな、そりゃ俺の腹の肉だよ」
わざとらしく不機嫌を装った監督の怒鳴り声。
俺と四番打者様以外のみんなが一斉に笑って、一気にベンチのムードが
明るくなった気がする。けど、これでいいのか? 俺は隣をチラチラ横目で様子を
うかがってしまう。
監督の腕は軽く四番打者様の腹に回っている。
四番打者様はすました顔でグラウンドを見つめている。
今日の試合はビジターで、一回の表がこちらの攻撃だ。
「ところで俺は大切なことを今気づいたんだがな」
一番打者が打席に向かうところで、監督が口を開いた。
「これじゃ試合見れないじゃないか」
「大丈夫です、俺が見てますから」
四番打者様はまっすぐ前を見たまま答えた。さすがの監督も渋い顔をする。
0038指定席 4/72015/04/12(日) 08:12:56.20ID:yBCezRUu0
「お前が見ても仕方ないだろ。これじゃサインが出せないじゃないか」
「問題ないです。まったくないです。監督の野球はみんな知っています」
口調も顔色もまったく変わらることなく、四番打者様は何と言われようとも
監督の膝の上から移動する気はまったくないようだ。
監督が、本当にこの頑固者めと呟いたのが俺の耳に届いた。もちろん四番打者様の耳にも届いたはずで、
まったくの無反応と思いきや、ぽん、と監督の手の甲を軽く叩いていた。
わっと歓声が上がる。一番打者が四球を選んで出塁、続いて二番が手堅くバントでランナーを二塁に進めた。
先制のチャンスだ。
「おいおい、なんだかいい感じみたいじゃないか」
試合を見たい監督が必死で首を伸ばしていると、四番打者様は無言で立ち上がった。
ネクストバッターズサークルへと向かっていくその歩調はゆっくりとして、背中が大きく見えた。
最近10試合で打率1割を切る打者とは思えない風格だ。
俺をここに座らせた強面殿が、ニヤニヤした笑みを浮かべて俺の肩を叩いた。
「よくやった」
「え?」
何のことか分からず間抜けにもぽかんと口を開けると、
「まあ、見れば分かる」
と強面殿はうんうんと頷いた。
監督はと言うと、うんと立ち上がって伸びをしていた。
やはり立派な成人男性を膝の上に座らせ続けるのは相当な負担のようだ。
そんなこんなで俺はベンチの中のことに気を取られていて、三番はいつの間にか
凡退してしまっていた。
ツーアウトランナー二塁。そして打者はただいま絶賛不調中の四番打者様。
ようやく自分の仕事だとばかりに張り切って監督がサインを出している。
0039指定席 5/72015/04/12(日) 08:14:16.78ID:yBCezRUu0
先制のチャンスだ。ここ最近の四番打者様だと、変化球をひっかけて内野ゴロばかりなのだけれども、でも、ベンチではみんな期待を越えた確信を持って四番打者様を見守っていた。
狙い球を絞っているのか、四番打者様は追い込まれるまでまったく微動だにしない。そして、対戦投手の決め球である外スラが来た。
一閃。
カーンという気持ちの良い打球音が響いた。
「おおっ」
みんな同じ方向を向いて打球を追う。その行き先はまっすぐスタンド中段へ。
見事な先制ツーランホームランだ。久々のヒットがホームラン。
「おい、お前。よくやった。今日のお立ち台もんだ」
ガッツポーズも何もなく淡々とベースを回る四番打者様に見とれていると、
ドンと背中を強く叩かれた。強面殿がニコニコと笑顔の花を咲かせている。
「ま、実際にお立ち台には上がれないけどな」
そして、ベンチの最前列に座っていた守備固めさんが
「ほら、こっち来い、こっちに座れ」
とこれまたケタケタ笑いながら手招きしてくれていた。
俺はこれ幸いとばかりに強面殿に一礼して、ダッシュで席移動した。
「いやあ、あいつの居場所を無くしたら奮起するかと思ったんだけど、
まさか監督があそこまで大サービスしてくれるとは思わなかったよ」
強面殿の言葉にみんなうなずき、一方で監督は眉をしかめながら
「まったくお前ら、大切な若手に嫌な役を押しつけるんじゃない。
俺だってなあ、あいつが機嫌悪くなっていたからどうしようかと思って仕方なく
やったことなんだからな」
と叱りつけたけど、口元はにやけていて四番打者様の復活を喜んでいることが伝わってきた。
0040指定席 6/72015/04/12(日) 08:15:51.33ID:yBCezRUu0
ずっと監督は四番打者様が四番打者として帰ってくるのを待っていたのだ。
「ナイスバッティング!」
ホームベースを踏んでベンチに戻ってきた四番打者様をみなが拍手で迎え、次々とハイタッチする。
四番打者様は俺に一瞥をくれた。その視線の鋭さに、俺の股間が縮み上がって
祝福するどころではなくなってしまう。
ありがとう。そう聞こえたような気がした。
自分の指定席を空けてくれてありがとうという意味だろう。そういうことにしておこう。
のっそりと監督も立ち上がって、四番打者様を出迎え、こつんと拳で頭を軽く小突いた。
「もう特等席は準備してやらないからな。サイン一つもろくに出せずにこのまま監督不要
ってことになるかと思ったぞ」
「それはないですよ。このチームには監督が必要なんです」
四番打者様はぶっきらぼうに言い放つ。
「だから、監督が首にならないように優勝を目指すのが俺たちの仕事です」
「なんだか目的と手段が逆になってる気がするぞ、おい。まあ、優勝は目指すけどな!」
そして監督は四番打者様にぎゅっと抱きついて、腕に背中を回してばんばんと手荒に復活を喜ぶ。
それに応えるように、四番打者様はその分厚い胸板に顔を埋めて抱き返していた。
なんとなく泣いているような気がしたけれど、抱擁を解いた後はポーカーフェイスで、
何事もなかったかのようにしっかり監督の隣にどっかと座り込んだ。
その後、四番打者様はこの試合でさらにホームランもう一本に、二塁打一本、
犠牲フライと大暴れをし、見事にチームの連敗はストップした。
0041指定席 7/72015/04/12(日) 08:18:02.61ID:yBCezRUu0
もちろんヒロインのお立ち台はこのお方で、
「定位置は渡せないという強い気持ちで打席に立ちました」
と言った。
きっと、チームメイト以外の人たちは定位置というのは四番という
打順だと思っただろうけど、そして、それも多分真実なんだろうけど、
本当の本当に実際の真実は、定位置というのは自分のベンチのお気に入りの席を
指しているに違いない。
もっとも、あの特等席も満更じゃなかったからこそ、物静かに闘志を燃やすことが
出来たのだろうけども。
「癖になると行けないからな。お前等もう二度とあんな悪戯するんじゃないぞ」
監督のお小言に、強面殿が混ぜっ返す。この人、冗談が通じないタイプに見えて、
意外にノリがいい。
「癖になるのは、あいつですか、監督ですか?」
絶句して、真っ赤に染まった監督の顔。ようやく絞り出した答えは
「どっちもだよ! これで納得しておけ」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

改行失敗が結構あって大変申し訳ないです。
0042風と木の名無しさん2015/04/16(木) 00:26:06.29ID:slzFn/qG0
皆さん投下乙です
少し聞きたいんですが、今書き込み制限ってどうなってますか?
何か仕様が変わったと聞いたんですが、以前と同じく3レス規制でしょうか?
0044風と木の名無しさん2015/04/16(木) 12:08:35.42ID:slzFn/qG0
>>43
詳細ありがとうございます
大丈夫そうなら後ほど改めて投下にきます
0045サイボーグとビーストの関係 1/72015/04/16(木) 16:20:37.00ID:slzFn/qG0
オリジナル。頭脳系×肉体系。受けが既に出来上がってます。お触りありの本番なし。第三者視点です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「どーしたもんかねぇ…」
寝癖満載の頭を更にくしゃくしゃにしながら溜息を吐く。目の前には苦しそうに息をする患者。
だが残念ながらオレにはもう打つ手がない。
「……アイツ呼ぶか」
オレなりに手は尽くした。やれるだけのことはしてやった。
後はもう対処法を知ってる(であろう)ヤツに頼むしかねえよな。
「ドクター、お呼びだとか」
「おー!忙しいとこ悪いな」
というわけで呼ばれて医務室にやって来たのは『サイボーグ』という仇名で有名なチーム「シエラ」の隊長様だ。
相変わらず造り物みてーにキレイな面してやがるわ。
「構いませんが、どんな用件でしょう」
「お前ならどうすればいいか知ってると思ってな。オレにはもうどうしようもねーんだわ」
「……医療主任に分からないことが僕に分かりますか?」
「多分、お前にしかわかんねーと思うぜ」
小さく首を傾げるヤツを尻目に早速問題の患者がいるベッドへと案内する。カーテンを開けるなり
飛び込んできた光景にサイボーグが目を丸くした。それを見たオレも驚いて目を丸くした。
サイボーグもちゃんとこんな顔できんだなぁ。
「…………彼、どうしたんです?」
そう言って指差した先には全身包帯だらけの大怪我なのに、何故か下半身をガチガチにして
グッタリと横たわるチーム「エコー」の隊長――通称『ビースト』がいた。
「…っはぁ………あ…?」
「やあ。久しぶり」
「え、おま……っ何で、いんだ…っ?」
オレとサイボーグの存在に気付いたビーストがわずかに脚を閉じて前を隠す。
ん?コイツらってそーいう関係なんじゃなかったっけ。
「ひょっとしてこのことで僕を?」
コイツ察しが良くて助かるわー。オレは頷いて事情を説明してやった。
0046サイボーグとビーストの関係 2/72015/04/16(木) 16:22:25.51ID:slzFn/qG0
問題が発生したのは90分ほど前。先日の合同任務で負傷した連中はもうほとんど復帰していたが、
一人だけまだ起き上がることもままならない男がいた。それがビーストだ。
敵も相当手強かったのかいつも以上にダメージを受けてたくせに、その後更にどエラいハードなプレイを
お楽しみになったようで……運ばれてきた時は医療主任としては顔を顰めるしかない有様だった。
厳しく絶対安静を言いつけて休ませてたんだが、回復してくれば当然生理現象としてアソコが
元気になっちゃうこともあるわけで。コイツは体力も回復力も化物レベルだから余計催しちまうらしい。
だが負傷してた肩を固定してあるせいか上手いこといかず、恥を忍んでオレに救援要請してきた。
しょうがないから代わりに扱いてやってたんだが、一向に発射される気配がない。
「ちゃんと感じてるみたいなんだがどんだけやっても全然ダメでなー……
しょうがないからお前さんにご足労願ったってわけよ」
「なるほど」
「っ……全部言うなドクター…」
「んなこと言ったってお前も辛いだろ?もう一時間近くこんな状態じゃねーか。見てる方がしんどいわ」
「……だからって…コイツ呼ぶなよぉ…!」
勘弁してくれと言いたげにビーストが顔を背ける。それを見たサイボーグはやけに難しい顔をして押し黙ってしまった。
あれ?コイツらそーいう関係なんだよな??つーかどエラいハードなプレイの相手ってコイツのはずじゃ…?
かなり気になったがそれは置いといて、まずはビーストの処置を優先することにした。
「原因わかるか?」
「大体見当はつきますが……とりあえずやるだけやってみます」
「――え…っ!?待っ、いきなっり、ぃっ!!」
躊躇もなくそそり立ったモノを口に含まれ、驚いたビーストが身を強張らせた。
サイボーグはわざと音を立てて吸い付きビーストの聴覚を責める。
「っは、っぁ……ぁあ、っぅっく…!」
オレの時とは明らかに反応が違う。別にオレの時は気持ち良くなさそうだったってわけじゃなくて、
声の艶とか表情の蕩け具合がよりエロくなってるっつーか。
うん……やっぱコイツらそーいう関係なんだな。
0047サイボーグとビーストの関係 3/72015/04/16(木) 16:23:38.90ID:slzFn/qG0
「んぁっ!ぅあ、ぁ、先っ…あんま、いじっ……!!」
「――っは……確かに反応はしてますね」
「だろ?」
「この感じだといつもならとっくにイッてるはずなんですが……ねぇ?」
「っひ…ぃっぁ、やっ、それ、やめっ…ん゙んっ!!」
サイボーグは冷やかに分析しつつ鈴口を親指で強く擦る。突然襲った強い刺激にガクガクと揺れた脚を
開かせ、逆の手で全体を激しく扱いてビーストを追い詰めていく。
「待っ…!!っっひぐっ、待っ、て、強いっ!強、すぎっ…ぃ゙い!!」
「仕方ないでしょ?君がここまで我慢しちゃったんだから」
「…ちが……っ我慢、してなっ…!!ぁゔ、あ゙、あぁ゙あ……っっ!!」
「言っとくけど、毎度毎度僕が触ってあげなきゃイけないなんて言われても困るよ」
「――っっ!!っひ……ゃあ゙っ!!ん゙ゔぅー…っ、っ!!」
ビーストが耐え難い快感に腰を浮かせ、動く方の手で頭を掻きむしって歯を食いしばる。
何つー乱れ方すんだコイツは。
「……これでも駄目か。じゃあ次指挿れるから力抜いて」
「っっはあっ、んぁ゙っ、はっ…ぁ、待て、待ってって……待っ――っっ!!?」
粘液塗れだった指に少し唾液を足し、後ろの穴に遠慮もなくぐっと突き立てると
すんなり飲み込んでしまった。ちょっと、どんだけヤり倒してんのよ君ら…
しかし弱ってる相手に全然手加減ねーなとも思ったが、一気に攻め立ててさっさと楽に
させてやろうっていうサイボーグなりの気遣いなのかもしれない。もしくはただのドSか。
「ぅっぁ、はぁっ……ぁぐっ!!っゔぅ…!」
身体が跳ねる拍子に傷が痛むようで、時々ビーストの顔が歪む。そりゃそうだよなぁ…
もしオレがこんな状態になったら発狂して「いっそ殺してくれー!」くらい言ってると思う。
オレ痛いの全然ダメだから。
「なぁ…どうよ?手応えありそうか?」
「わかりません。出来ればここには触れずに済ませたかったんですが」
「ふーん?何で?」
「……余計悪化するから」
へぇ…?これ以上どう悪化すんだろう。
オレは相変わらず玉のような汗を滲ませながら、色んな要素に悶え苦しむビーストを眺めた。
何でこうまでイけないんだろうな…
0048サイボーグとビーストの関係 4/72015/04/16(木) 16:25:17.04ID:slzFn/qG0
あ、でも少し落ち着いてきたっぽいな。トロンとした目でぼんやりと相手を見つめている。
だがサイボーグは視線を外したままヤツをイかせる作業に集中していた。わざと目を合わせないように
してる感じすらする。何つーか…不思議なカップル(って言っていいのか?)だなーコイツら。
「ふー…っ、う、んん…っ」
ふと、ビーストの手が胸元に伸びる。
そのまま分厚く巻かれた包帯を外そうとしてるのに気付いたオレは慌ててヤツの腕を掴んだ。
「おいコラ!何してんだお前!」
「ゔぁっ…!」
「あ、すまん…痛かった?」
「……だから嫌だったんだ」
痛みに呻いたビーストを見てサイボーグがポツリと呟く。疑問に思ってたら、
その答えらしき言葉が怪我人の方から返ってきた。
「……っ…触って、くれ……」
「ん?」
「そんなこと出来ると思う?ドクターだっているのに」
ここまで同席させといて今更オレ気にすんの?と思ったが、どうやらそういうことじゃないらしい。
「頼む……っもう、キツい…から…っ」
「ダメだよ。絶対にやらない」
「……っ!!」
「ほら、ココ触ってあげるから早く出して」
「っはぁっっ!?やめ、そこっ今触っ、たら…ぁあ゙ぁっ!!」
「前も擦ってあげようか?」
「んぐぅっ!!…っひ、ぃ゙……っっ!!」
少し怒った様子のサイボーグが指を奥まで捩じ込み、更に前を荒っぽく扱くとビーストの息が一瞬止まった。
容赦がなくなった強引な責めに目を見開き、仰け反りながら身を捩って喘ぐ。
掴んだままだった腕からもかなり力んでいるのが伝わってきて、だんだん心配になってきた。
「ゔっん、ぁあ゙っ、ぃ…やだ、それっ……嫌、っぁあぐっ!!」
「おいおい…コイツ大丈夫かよ…」
「…………」
「っ……ゃめっ…!!っ、も、やめ……て…ぇ゙っ…!!」
0049サイボーグとビーストの関係 5/72015/04/16(木) 16:26:46.94ID:slzFn/qG0
上手く呼吸ができなくなるほど追い上げられ、耐え切れなくなったビーストがボロボロと涙を零して
懇願し出してしまった。これにはさすがのサイボーグも手を止め、落胆の溜息を吐いて項垂れる。
「くそ……ダメか」
「マジかよ…これでもイけねーの?」
「っげほっ!ごほっ、っぐっぅ、うぁ…!」
苦痛から解放されたビーストはグッタリとベッドに身を埋め、酸素を取り入れようと必死に胸を上下させる。
一体どーなってんだコイツの身体は。いつもヤッてるサイボーグでもダメなんて、そんなことあんのかよ…
……ん?そういえば…
「なぁ。さっき『絶対やらない』とか何とか言ってたけど、もしかしてそれやったらコイツ確実にイけんじゃねーのか?」
オレがそう尋ねた瞬間サイボーグの表情が険しくなる。
「やっぱり。そうなんだな?」
「……嫌です。それだけは絶対できません」
「何で!お前だってこんなに辛そうなコイツ見てて何にも感じないわけじゃねーんだろ?」
「だからですよ。これ以上彼に辛い思いをさせたくない」
「??」
意味がわからん…!コイツら普段どーいうセックスしてんだよマジで!
とんだアブノーマルプレイでもやってんのか?
「…………ぃ…から…っ」
「ん?」
「っ、傷……触って………イかせ、て……くれ…っ頼む……!!」
はぁ!!?
今何て?『傷に触れ』って言った!?
「だから嫌だって言ってるでしょ。第一そんなことドクターの前で出来るわけない」
「はっ……もう…これいじょ……っ無理、だから……はぁ…早、くっ…!」
「っっ……ダメなものはダメ。ねぇ…お願いだから、あんまり聞き分けのないこと言わないでよ…」
半分虚ろな瞳でせがむビーストに、まるで縋るような声でサイボーグが訴える。
コイツがこんなに感情露わにしてんの初めて見たな…
そっちも気になるけど、まず何よりも聞かなきゃならないことがあるぞ。
0050サイボーグとビーストの関係 6/72015/04/16(木) 16:28:56.21ID:slzFn/qG0
「ちょちょちょちょ、何、今のってどーいう意味?」
「……彼はある一定のラインを超えると痛みと快感が繋がってしまうんです。傷口を抉られる激痛と
性的興奮がごっちゃになって、気が狂いそうなほどの絶頂を迎えられるんだと」
「………………そりゃー……また、難儀な体質で…」
それってつまり物凄いドMってことっすか隊長…!!
開いた口が塞がらん。あんなに屈託のない笑顔で皆から慕われてるコイツに、そんなヘビーな性癖があったとは……
はっ!そういやあのスナイパーキッドもそんなこと言ってた気がする…!
「…はー……っ、頼む……助け、て……っ」
「そんな顔しないでってば……」
「……なぁ…っ!!」
「っ……君を苦しませたくないんだよ!」
救いを求めるビーストの声を振り払うように、サイボーグが初めて声を荒げた。
完全な不意打ちだったんでオレもヤツも驚いて固まってしまう。
「え…」
「君がドロドロに蕩けるほど感じてくれるのは凄く嬉しいし堪らないよ。
でも痛みを与えたり乱暴に扱ったりするのが好きなわけじゃないんだ」
……今ので何となくコイツらがどういうプレイしてるか想像ついたな…
「……でも君が、僕を求めてくれるから…僕だけを見てくれるから……それに応えてあげたくなる」
「…っ…!」
「君を喜ばせてあげたい。満たしてあげたい。僕に出来ることなら何だってしてあげるよ。
でも今だけは……こんな状態の君に、更に痛みを与えることなんてできない」
胸の内を全部さらけ出すような告白をするヤツの姿に、普段の冷血サイボーグ要素なんて全くなかった。
コイツもちゃんとこういう熱い感情抱えてんだな……ま、人間なんだから当たり前のことなんだけど。
そういや『サイボーグ』って仇名、完全に見た目だけでつけられたんだったっけ。それも災難だよなぁ。
「……ごめんね。君が大事なんだ…上手く伝わらないかもしれないけど」
そう言ってサイボーグが少しぎこちない笑顔でビーストの頬を撫でた。
泣きそうな顔しちゃってんなーなんて思いながら眺めてたら、何故かビーストの方がブワッと涙を溢れさせた。
0051サイボーグとビーストの関係 7/72015/04/16(木) 16:30:19.25ID:slzFn/qG0
「お、おい!どうした?」
「っ…!ごめんな……付き合わせてんの…わかってたんだ」
あたふたしたオレが手を離してやると、ビーストは何度も目を擦って涙を拭う。
そして時々鼻を啜りながら、ポツポツと語り出す。
「お前が、そういうの好きじゃないのも知ってた……甘えてるってわかってるよ…でも……」
「でも…?」
「……っもうお前じゃないとダメだから…」
「――!!」
今度はサイボーグが驚く番だった。多分ビーストのこういう本音を聞いたのは初めてなんだろう。
「今更手放せねぇよ……誰にも取られたくない…!笑顔とか、優しい声とかっ…
俺だけが知ってればいいんだ……他の奴になんか渡さねぇ…っ!」
大粒の涙を零しながら、添えられた手を大事そうに握り締める。サイボーグもだけど、案外コイツも
こんなに感情剥き出しにするの珍しいよな。いつも笑ってる朗らかなビーストしか知らないオレにとって、
ここまで必死になってヤツを繋ぎ止めようとする姿はかなりレアな光景だった。
「っあーもぉ……っ、本当……こんな俺が好きになっちゃってごめんな…」
自分自身に呆れたような溜息を吐き、ビーストがぐしゃぐしゃの顔のままでサイボーグを見る。
「……好きだよ………なぁ、俺のになって」
あーあーもう!ベソかいて手ぇ握って告白って…ティーンエイジャーかお前らは!!
……でもな、おじさん嫌いじゃないぜ…そういうの。
「やめてよもう…」
ってあれ?何その反応。今喜ぶところじゃないの?
「僕から言おうと思ってたのに、何で先に言っちゃうの」
「っ……!!」
「ずっと好きだったんだ。頼まれたって君を離してなんてあげない」
サイボーグはそう言って、ほんの少しだけ顔を赤くする。
それに気付いたビーストが声を上げるより早く、ヤツに覆い被さって唇を塞いでしまった。
っかー!!何だよコイツめっちゃカワイイじゃん!これがいわゆるツンがデレるってやつか!
うっかりオレまで惚れちまうとこだったわ。だがしかーし。おじさんだって空気くらい読めるんだぜ?
0052サイボーグとビーストの関係 8/72015/04/16(木) 16:41:21.93ID:slzFn/qG0
オレは黙って頷き、ベッドのカーテンを閉めてそこを離れる。
そして邪魔が入らないように手前の医務室で見張っててやることにした。
めでたく通じ合ったわけだし、今ならビーストも例の「痛いこと」されなくてもちゃんとイけるだろ。
「良いねぇ……愛だねぇ」
愛情表現の仕方はちょっと独特かもしれんが、あんな風にお互いを好きになれたら幸せかもな。
あー何か羨ましくなってきたわ。オレももう一回くらい輝いてみてーなー。
「どっかに良い人でもいねーかなー……いねーか。ここ軍だし…野郎ばっかだし」
一瞬浮かんだ希望があっさりとセピア色に霞む。しょうがないから大昔の甘酸っぱい思い出を
引っ張り出して感傷に浸る、一人ぼっちの夕暮れ時だった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


書き込み中に本文長すぎと言われたので改行弄ってたら1レス余分にできてしまいました。申し訳ないです
ちなみに今更ですが68巻の「少佐と隊長の関係」の続きです
スレ占拠失礼しました
0053トヲル獅子(1/6)2015/05/03(日) 00:21:42.17ID:0pVHuyGC0
二年ほど前、こちらが荒れていた時に派生して立った801サロンの別スレに落としたものですが、
再投下させていただきます。

超人獅子に出てくる少年(成長後)と獅子人間体です。
当方残念ながらエロが書けません。
エロ書きバッチコーイだぜ、続き書いてやってもいいぜって方がいらっしゃいましたらお願いします。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「透、久しぶり、随分大きくなったな」
鳳弦は笑顔で走ってきた。透は眩しそうに弦を見つめた。
弦が美山家を出て十数年、透も社会人になっている。身長は弦と殆ど変わらない。
各地を放浪する弦であったが、透には手紙で近況を報告していた。
この再会は透たっての願いだった。
「鳳さん、元気そうだね」
「ああ、元気だよ。ところでなんだい、悩みって」
「会っていきなり?もうちょっとゆっくり話してからにするよ。まずはうちに来て」
透は弦を促して、自分の住むアパートに向かった。
「透も立派に独り立ちしたな。中学卒業と同時に美山家を出たんだろ?夜間高校に通いながら大変だったろう」
「境遇を嘆いたって仕方ないからね。そういう人生なら頑張るしかないよ」
透は苦労を口にしなかった。弦が獅子であることを知ってからは、獅子の前では言わないと決めている。
0054トヲル獅子(2/6)2015/05/03(日) 00:23:55.85ID:0pVHuyGC0
ほどなく古ぼけたアパートに到着した。
「ここが僕の家。どうぞ、上がって」
弦は感慨深げにアパートの外観を眺めている。
「ただの古いアパートじゃないか。そんなに珍しい?」
透の問いに弦は笑顔を返した。
「小さかった透がこんな風に一人で住んで、立派な社会人になってるのが嬉しくてな」

小さな台所と畳敷き六畳間のごく普通の間取りだが、綺麗に整理整頓が出来ている。
「透、綺麗好きだな」
透は座布団を勧め、小さなちゃぶ台に茶を置いた。
「そういえば透は恋人はいるのか?」
弦は座布団をあてて、提供された茶を飲みながら尋ねた。
「それなんだよね」
透も座りながらため息をつく。
「なんだ、悩みってそれか?」
「鳳さんは?恋人はいるの?」
0055トヲル獅子(3/6)2015/05/03(日) 00:25:45.51ID:0pVHuyGC0
一瞬の間があいた。
「…いや、いないよ」
弦は少々硬い表情で笑顔を作っている。
「そう。やっぱりモモ子さんのことがあるから?」
弦はまた言葉に詰まった。
「…うーん、そうなるのかな」
「でもさ、僕思うんだけど、おおとりさんは超人獅子でしょ?
モモ子さんがあんな事にならなかったとしても一緒になるのは難しかったんじゃないの?」
「鳳弦という地球人として、モモ子さんと添い遂げるつもりではいたよ。
地球人の平均寿命と同じぐらいの年齢で、鳳弦という人間はこの世から姿を消すことになったはずだ」
「じゃ、鳳さんじゃなくなった後、また違う人の姿になって、その時は恋人を作るんだ」
透の質問攻めに弦は少し戸惑った表情を見せた。
0056トヲル獅子(4/6)2015/05/03(日) 00:27:12.96ID:0pVHuyGC0
「透、どうしてそんなに俺の恋人にこだわってるんだ?透の悩みは自分の恋人の事じゃないのか?」
「鳳さん、俺…」
「ん?どうした?透、透?」
透が突然涙を見せたので弦は慌てている。
「俺も超人でいたかった。明日虎が羨ましい」
「お前の恋人の話とどう関係あるんだ?明日虎は弟だぞ?俺は透の事も弟のように思っている」
困惑する弦に透が抱きついた。
「寂しかったんだな、透。今までよく一人で頑張った。俺はいつまでもお前のことを見てるよ」
弦は自分に抱きつく透の背に手を回しトントンと叩いた。
透は弦の胸に顔をうずめながらしゃくりあげた。
0057トヲル獅子(5/6)2015/05/03(日) 00:29:10.06ID:0pVHuyGC0
どれくらいその姿勢でいただろう。
弦は透が満足するまでその体勢を崩さないつもりのようだった。
透はそのまま弦に胸に顔を当てて、心臓の音を聞いていた。
地球人に擬態するというのは内蔵までも精巧にコピーするのだろうか。
透は頭を微妙に動かして弦の胸をまさぐった。
あの超人獅子に抱きついているという喜びが全身を駆け巡る。
「おい、透、くすぐったいよ。どうしたんだ?」
透は顔をうずめたまま答えた。
「僕、好きな人がいるんだ。でも言ったら嫌われそうで言えない」
「その人はお前の存在に気づいているのか?」
「うん、良く知ってるよ。だからこそ好きって言えない」
「男なら思い切ってぶつかってみろよ」
0058トヲル獅子(6/6)2015/05/03(日) 00:31:10.31ID:0pVHuyGC0
透は突然弦から体を離した。
「鳳さん、もしモモ子さんと一緒になったとして、地球人がどうやって愛を育むか知ってたの?」
「そりゃ、大体は…」
「経験は?」
「…ない」
「僕が教えてあげようか?」
弦は目を白黒させた。
動揺する姿は鳳弦という地球の青年ではなく、エル77星のただの王子様の表情なのだろう。
「透は男だろう?」
「知らなかったの、鳳さん。地球じゃ男女だけが愛を育むとは限らないんだよ」
透は意味深な笑顔で弦を見つめた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0059風と木の名無しさん2015/05/04(月) 17:21:26.96ID:HWjL7DiI0
トールいつの間にそんな大人になっちまったんだ
0060奴隷オークション 1/92015/05/22(金) 16:06:03.41ID:nziS6hFi0!
※オリジナル、ショタ、男性向けなノリ 傾向やオチはタイトルで予想して下さい

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


一見何の変哲もないただの倉庫に見えるその建物では、密かな取引が行われていた。
ここで売買されているのは、奴隷。人としての尊厳を奪われ、欲望の捌け口としての道具にされた哀れな人間だ。
男女どちらもいるが、通常では満たすことのできない欲望を満たすため、また単に扱いやすさのため、その大半が未成年だ。
皆一様に一糸まとわぬ裸体に首輪をつけられ、足を大きく開いた体勢で拘束されている。
怯えた顔で涙を流す者、諦めきった表情の者、誰かに調教されたのかひたすら笑みを浮かべ続ける者と態度も様々だ。
中には薬物中毒者もいるのか、涎を垂らしながら焦点の定まらない目で譫言を呟いている者もいる。
一列に並べられた商品の間を縫って歩く客たちは、そんな奴隷達の反応など意にも介さずに物色を続ける。
何しろ、ここに並べられているのは高額商品だ。買う前に品質をチェックするのは当然のことともいえる。
運営側もそれを承知してか、奴隷達の隣には小さなテーブルが置かれ使い捨ての手袋やコンドーム、ローションが用意されている。
客たちは気になった奴隷の体を撫でまわし、中の具合を確かめ、気に入ればテーブルに置かれた入札帳に自分の入場番号と金額を書いていく。
特に人気の高い奴隷の前には数人が並び、近くのゴミ箱は使用済みの手袋やコンドームであふれんばかりの勢いだ。
入札終了時間まではどの奴隷も自由に試せるため、客たちは飲食しながら気軽に空いている奴隷の体を弄ぶ。
0061奴隷オークション 2/92015/05/22(金) 16:06:46.62ID:nziS6hFi0!
そんな中、1人だけ扱いの違う少年がいた。
彼だけは首輪をはめておらず、お仕着せらしき人形のような服をまとっている。
また拘束はされていないが、大型犬用の頑丈なケージに入れられている。
目玉商品なのか、ケージの隣にはスタッフが一人待機していて、時折少年の体をまさぐる客をやんわりと制止する。
「今回のオークションは楽しみだね」
「誰が落札するのかな」
彼だけはサイレントオークションではないらしく、入札帳がない。ドッグタグの代わりに、ケージに学生証のコピーが貼られている。
客たちが商品をいじるのに飽きた頃、放送が入った。
『ただ今をもちまして、サイレントオークションの入札を締め切らせていただきます。ご参加ありがとうございました。
 また、メインステージにて本日の目玉商品のオークションを開催いたします。皆様奮ってご参加下さい。
 サイレントオークションの入札結果につきましては、このイベント後にお知らせさせていただきます』
スタッフ達が入札帳を回収する中、客達はメインステージに向かう。ステージに持ち込まれたのは、あの少年の入ったケージだった。
0062奴隷オークション 3/92015/05/22(金) 16:07:39.73ID:nziS6hFi0!
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。
 本日の目玉商品はこちらの少年、未調教の初物になります」
ステージ後ろのスクリーンに、少年の学生証がアップで映し出される。
「戸籍等につきましては、既に死亡届が受理されている状態となっておりますので警察の捜査の心配はございません。
 また調教は行っておりませんが、展示直前に腸内の洗浄は行っておりますのですぐにお楽しみいただける状態となっております」
知らされていなかったのか、少年は愕然とした表情になる。
「ではこちら、100からのスタートです」
「200!」
「400!」
「いやだ! いやだ! 帰してよ!」
ケージの中で泣き叫ぶ少年をよそに、オークションはどんどん白熱していく。
「他に、他におりませんか! ……では落札!」
カン、と木槌の音がして、久しぶりの高額落札に会場がどよめいた。
「では落札者の方、どうぞステージへ」
司会に招かれてステージに上がってきたのは、でっぷりと太った中年の男だった。
落札金額に沸き立っていた会場も既に静まり返り、少年をじっと見つめている。
……このイベントオークションでは、落札者は必ずステージに上がるという決まりがあるのだ。
「では、こちらの小切手へのご記入と、契約書へのサインをお願いします」
「いやだ! やめてよ!」
恐怖に震える少年の目の前で、小切手と契約書はスムーズに取り交わされた。
0063奴隷オークション 4/92015/05/22(金) 16:08:35.37ID:nziS6hFi0!
「ありがとうございます。
 ではこれより、記念式典を行います」
スタッフがケージを開け、暴れる少年を強引に落札者の前に引きずり出す。
逃げようと儚い抵抗を続ける少年の肢体を、どす黒い欲望にまみれた視線が無遠慮になめまわす。
「まずは首輪の授与ですね。こちらの名前はもう使えませんので、何か適当に名前を付けてあげてください」
学生証の名前を指差し、司会が落札者に問いかける。いつの間にか、司会の横にはドッグタグの刻印機が置かれていた。
「うーん……可愛い顔だし、可愛くて呼びやすい名前がいいな。ユウ、にしようか」
「ユウですね。かしこまりました」
カチンカチンと冷たい音を立てて、ドッグタグが刻印される。それを黒い首輪につけ、司会は落札者に手渡した。
「ではこちらを、ユウ君につけてあげて下さい」
「い、いやだ、やだっ!」
スタッフがもがく少年の髪を掴んで頭を固定し、首輪をはめやすくする。その間に落札者が首輪を取り付けた。
ユウ、と刻印されたドッグタグが無機質な蛍光灯の光を反射してきらめいた。
カメラ映像に切り替わっていたモニターに、その様子が大々的に映し出される。
「これはもういりませんね」
少年の目の前で、学生証に火がつけられた。ライターの火にあぶられて消し炭になって灰皿の底に沈む様を、絶望した表情で少年が見つめていた。
0064奴隷オークション 5/92015/05/22(金) 16:09:24.30ID:nziS6hFi0!
「では、いよいよ貫通式です」
司会が手渡したハサミを手に、落札者が酷薄な笑みを浮かべて少年に歩み寄る。その表情と刃物の輝きに慄く少年の首筋に、無慈悲にハサミがあてがわれる。
じょきっ、じょきっ。
緩慢に、だが確実に衣服を切り刻まれていく様子に、悲鳴を上げることすらできず涙を流して少年は震える。
あらわになっていく少年の肌に、観客達の目も釘づけだ。
数分前までは服だった布きれが少年の足元に散らばり、成長途上のしなやかな肢体が欲望と好奇の視線にさらされる。
「ああ、すまんが手錠はあるかね。後ろ手に拘束してほしいんだが」
「かしこまりました。今お持ちします」
予想の範疇だったのか、すぐさま手錠が用意された。拘束は手錠だけになったものの、恐怖のあまりに膝の笑った少年はそのまま床にへたり込んだ。
すすり泣きながらも必死で慄く体を引きずるように逃げようとする様は何とも哀れで、この場の全員の嗜虐心をあおった。
少年を無造作にうつ伏せになるよう転がし、腰だけを高く持ち上げさせる体勢を取らせた落札者は、そのまま指を秘孔に突っ込んだ。
「いっ、あ、なにっ」
「おお、締まる締まる。やっぱり初物はいいな」
カメラが移動し、指を入れられた少年の尻を映し出す。指から逃げようとする動きが、このアングルからだと誘うように腰を振っている風に見える。
ローションが追加され、ぐじゅぐじゅと卑猥な水音を立てて暴かれる秘部が映し出されていることに気付いた少年が、必死で首を振って抵抗する。
0065奴隷オークション 6/92015/05/22(金) 16:10:25.41ID:nziS6hFi0!
「っひ!?」
と、突然少年が悲鳴を上げてのけぞる。その声は苦痛というよりも快楽のためにあげられたものだった。
「お、ここか」
どうやら、指が前立腺をかすめたらしい。にやりと笑った落札者は、その場所を執拗に責め立てた。
陸に打ち上げられた魚のようにビクビクとはねる少年は、声を殺すこともできず断続的に嬌声を上げさせられる。
快楽に肌を紅潮させながらも怯えの消えない表情が、さらに会場のボルテージをあげていく。
いつの間にか突き入れられる指は3本になっていたが、初めての感覚に翻弄される少年はそんなことに気付く余裕などなかった。
「そろそろかな」
指を抜き、落札者が屹立した己のものを取り出す。くずおれた少年の腰を再び持ち上げ、入口に先端をあてがう。
「さあ、皆様、ユウ君のロストバージンの瞬間をご覧ください!」
「っぃぁああああ!」
赤黒い怒張を一気に全て突き入れられ、今までで一番大きな悲鳴があがる。無理矢理太いものをねじ込まれたため、限界を超えた粘膜が裂けて血を滲ませている。
赤みを帯びていた肌も一気に青ざめ、快感ではなく苦痛に震える少年を労わることもなく、落札者は手錠をはめた腕を引っ張った。
「どうだユウ、分かるだろ? 今、お前は、俺に犯されているんだ」
今までに意識して触ったこともないだろう自分の肛門と、そこに突き刺さった男のものを指で触らされ、少年の顔が絶望に歪んだ。
「やだ……やだ、たすけて……たす、けて……」
腰だけを高くもちあげた上でさらに腕を後ろに引かれて上体を反らさせられる苦しい体勢で涙を流す少年の表情がモニターにアップされる。
会場は、残忍な忍び笑いや囁きで静かにざわめいた。
0066奴隷オークション 7/92015/05/22(金) 16:11:29.33ID:nziS6hFi0!
「よしよし、それじゃあたっぷり中に出してやるからな」
片手で少年の腰をつかみ、片手で腕を後ろに引いたまま、落札者は腰を動かし始めた。
少年のことなど何も考えず、ただただ己の快楽のみを追求するその行為は、セックスというよりも少年の体を道具にした自慰に近かった。
もはや抵抗することもできずにされるがままに揺さぶられ、少年は涎と共に悲鳴まじりの意味をなさない哀願の言葉を垂れ流した。
目の前でかつての自分の身分を奪われ、大勢の人の目の前で男に犯されている事実を理性が受け入れきれず、実際に感じる快感混じりの苦痛との狭間で混乱しているのだ。
そんな少年の目の前に、不意にスタッフの一人が鏡を差し出した。
映っているのは、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった自分の顔、「ユウ」という名前の書かれた首輪、
そして自分を後ろから犯している獣のような表情を浮かべた太った男。
「おらっ、ユウ、出すぞっ!」
愕然とする少年をよそに、突き上げる動きがさらに早くなる。
「やっ、やめてっ、やだああああああっ!」
悲痛な叫びをあげる少年の中にひときわ深く己のものをねじ込み、落札者が吐精した。
ドクドクと中で男根が脈打ち、精液がぶちまけられる感触が、限界だった少年の心に耐え切れないほどの衝撃を与えた。
0067奴隷オークション 8/92015/05/22(金) 16:12:15.17ID:nziS6hFi0!
「……あ……あ……っ」
ずるりと、少年の中から萎えた肉棒が引き抜かれた。完全に閉じきらず血と精液の混じったローションが流れ出る哀れな秘孔が、大々的にモニターに映し出される。
「おめでとうございます! これでユウ君も立派な性奴隷になれるでしょう!」
少年の強姦ショーを満喫した観客達が、笑いながら拍手を送る。
スタッフが、放心状態の少年を抱えて床にあおむけに寝かせる。手錠を外し、首輪に鎖をつけ、膝裏に手を回して股間をさらけ出させる体勢をとらせる。
着衣を整えた落札者が、スタッフから鎖を受け取って少年を見下ろす。落札者を見上げる少年の眦から涙が一筋零れ落ちたが、その瞳はもはや何の感情も映してはいなかった。
「それでは最後に、ユウ君に今後の意気込みを聞いてみましょう!」
司会が少年にマイクを向ける。マイクに拾われないギリギリの小さい声で、スタッフが少年に囁いた。
「いいか、今から言うことを繰り返すんだ。『ユウを、性奴隷にしてくださって、ありがとうございます』」
「……ゆうを、せいどれいに、してくださって、ありがとう、ございます……」
少年の虚ろな声がスピーカーから響き渡る。
「『ご主人様、これからユウをいっぱい犯してください』」
「……ごしゅじん、さま、これから、ゆうを、いっぱい……おかして、ください……」
肛虐の痕跡もそのままに、恥部を自らさらけだしながら卑猥な言葉を並べる少年の姿に、会場中から喝采と拍手が沸き起こった。
0068奴隷オークション 9/92015/05/22(金) 16:12:56.46ID:nziS6hFi0!
「いい子だね、ユウ。家に帰ったらたっぷり可愛がってあげるからね」
いやらしい笑みを浮かべた落札者が、靴底で少年の性器をぐりぐりと踏みにじった。
体重をかけない軽いものではあったため痛みはなかったが、既に壊れていた少年の心を更に砕くには十分すぎた。
「素晴らしい意気込みでしたね。では、皆様、性奴隷のユウ君にもう一度盛大な拍手をお送りください」
ステージに大きな布製のトランクが持ち込まれた。ボールギャグとアナルプラグをはめられた少年が、あられもない体勢のままトランクに詰め込まれる。
最早、少年が普通の人間のような生活を送ることは不可能だろう。所有者の欲望を一方的に満たすためだけの道具として、身も心も凌辱されつくすのだ。
身動きの取れない暗闇の中、タイヤの転がる単調な音が遠ざかっていく司会の明るい声を消していく。
「こちらはお客様のお車に運ばせていただきます。また、今回撮影しました映像データも添付させていただきます。ぜひお楽しみ下さい。
 調教サービス・中古品下取りサービスも行っておりますので、お気軽にご相談下さい。
 他の商品の落札結果につきましては、受付前のボードに表示させていただいております。
 お客様各位でご確認の上、お支払いと商品のお引き取りをお願いいたします。くれぐれもお間違えのないよう――」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0070風と木の名無しさん2015/05/22(金) 21:28:14.04ID:d2ofYfN50
あ、書けた
良いものを読ませてもらいました!ありがとう
ユウ君不憫可愛い
0072風と木の名無しさん2015/05/30(土) 18:16:12.62ID:MuR0+zjV0!
>>71
確認したけど落ちてないよ
0073風と木の名無しさん2015/06/04(木) 17:11:10.42ID:XQOJCz+80
>>45-52
うわああよかったねおめでとう!
くっついてくれて安心したよおおもう
そしてエロくて最高ですありがとうございます!
0074風と木の名無しさん2015/06/22(月) 02:56:48.30ID:RYbF2Xfd0
昇天、六代目三優亭円樂×桂唄丸
病気ネタなので、苦手な方は注意

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「焼香を上げに来ましたよ、唄丸師匠。なんだァ、まだ早かったか。」
いつもの昇天でのように軽口を叩きながら、病室に入ってくるのは六代目三優亭円樂だ。
「五月蠅いよ全く。しかしよくもまあ飽きもせずに来るもんだね。」
「死人の見舞いに何度も来るほどアタシも暇じゃあありませんよ。」
そうは言いつつ、今回の入院では暇さえあれば見舞いに来る。

「お身体の具合はどうです。きちんと眠れていますか」
「食事はもうお召し上がりになりましたか」
「気分は悪くないですか」
これも、毎回繰り返される問答だ。

「ああ、アンタは看護婦かい。悪くありませんよ、眠れていますし。」
心配されているのは痛いほどわかるので、つい元気な振りをしてしまう。
相変わらず、眠りは浅く、体が休まっている気はしない。
本当に復帰できるのかという不安から、さらに眠りが遠くなるという悪循環に陥っていた。

「それはよかった」
含まれた嘘に気付いているのだろう、円樂の表情は強張っている。
「まあなんだ、寝てばかりで退屈しているんだ。少し世間話でもしようじゃないか。」
唄丸は茶を入れてくる様円樂に促した。
「帰ってくるまでちゃんと生きていてくださいよ。」
「さっさと御行きなさいよ。」
0075紫緑 2/52015/06/22(月) 02:59:28.66ID:RYbF2Xfd0
はたして、無事に茶を入れてきた円樂であった。
昇天の司会の話、講演会の話、弟子の話、古典の話、新作の話。
病人食は悪くない味だが毎日だと飽きるだの、不味い菊蔵ラーメンが恋しいだの、とりとめのない話ばかりをした。
話疲れたせいか、リラックスしたせいかはわからない。
唄丸を心地よい眠気が襲った。

「師匠、眠そうですね。」
「…折角来てくれているのに、悪いね。どうも今日は眠くって仕方が無い。」
「いいえ、お気になさらず。お眠りになってください。適当なところで帰りますから。」
「………ありがとう。皆にもよろしく言っておいてくださいね。」
「…ゆっくりお休みになってください。」

やがて、規則正しい寝息が聞こえてくる。
上下する胸は余りにも頼りなく、今にも動きを止めてしまうのではないかと不安になる。
ベッドに収まっている体が余りにも小さく見え、円樂は泣きたくなるのをぐっと堪える。
「アジャラカモクレン、キューライソ、テケレッツノ、パ」
思わず小声で呟く。
ああ、死神が本当に居るのならば、己の蝋燭とこの愛しい人の蝋燭を入れ替えてはくれないだろうか。

いつから、こんな特別な感情を抱き始めたのかはもう覚えてはいない。
この人の落語を聞いた時から、もうこの人に落ちてしまっていたのかもしれない。
尊敬はやがて情愛にかわり、いつしか自分の中で何物にも代えがたい存在となっていた。

お互い家庭もある。子供もいる。
今更己の想いを告げて、どうこうなろうと言う気は毛頭なかった。
密かに思慕し、近くでいつも通り、笑いあっていられればそれ以上望むことは無い。
それで納得していた筈だった。
0076紫緑 3/52015/06/22(月) 03:03:39.79ID:RYbF2Xfd0
この日、唄丸の腕が布団からはみ出したのが悪かった。
ああいけねえ、身体が冷えちまうよと言いながら、布団の中に仕舞おうとその細い腕を手に取った。
その細いこと、軽いこと。
思わず震えてしまった。
残されている時間が余りにも短いことを円樂は悟った。

気付けば、身を乗り出して接吻をしていた。
互いの唇を触れさせるだけの、ほんの短いものだったが、円樂の心臓は壊れんばかりに早鐘を打っていた。
ああ、ああ、とうとうやってしまった。
今までずっと、何十年も、この衝動には上手く蓋をしてきたのに。
もしも今師匠が起きたら、いつも通り何か軽口を言って、笑って誤魔化してしまえばいい。
そうわかっているはずなのに、頭は上手く回らないし、おまけに涙が止めどなく溢れてくる。
情けない、顔を手で覆い嗚咽を漏らしながら泣くしか出来ないのだ。
お願いだ、どうか起きないでくれ………………

「樂さん」

不意に、声をかけられて身体が大きく跳ねる。
顔を見ることが出来ない。
「……おはようございます師匠。一体いつから起きていらしったんで?」
「アンタが私の手を取って、ぶるぶる震えていたあたりからかねぇ。」
起きていた。気付かれていた。
「いやね、ビックリさせた拍子に五代目円樂が迎えに来るのを見られるんじゃないかと思ってね…」
だめだ、何にも面白くない上に声が震えている。
嘘だと言うのが明白だ。
沈黙が流れる。
0077紫緑 4/52015/06/22(月) 03:06:51.38ID:RYbF2Xfd0
「樂さん、顔をお上げよ。…ああ、何だい男前が台無しじゃあないか。」
手ぬぐいを渡され、涙を拭く。
「いや、どうも夢を見ていたようでね。そろそろ本当に五代目が来るんじゃないかね。」
気を使ってくれているのだ、笑いながら唄丸は言う。
ここで誤魔化せ、そうだ、笑っていつものように茶化せ。
師匠が助け舟を出してくれているんだ。乗らないなんてとんだ与太郎だ…

「アンタのことが、好きなんだ。」
思っていることと全く違うことを言うだなんて、これは本当に噺家の口だろうか?
震えて震えて、絞り出すような、何と酷い声だろう。

「ずっと前から、もう思い出せないくらい前から、いや、アンタの落語を初めて聴いた時から、ずっと好きだった。」
やめろ、やめてくれ。
今まで築いてきた、何十年来の思い出が走馬灯のように駆け巡る。
「…どうこうなりたいって訳じゃない。座布団引っぺがされて、馬鹿やって、アンタと一緒に笑っていられれば、それだけでいいんだ…」
ああ、おしまいだ。なにもかもおしまいだ。

「だからさ、まだ死ぬなよ。頼むよ。死なないでくれよ。なあ、唄さん…」
ああ、また泣くなんて女女しいね、私も。
涙腺崩壊で自分も入院しようか、などという馬鹿な考えが浮かぶ。

小さな嗚咽が聞こえてくる病室、やがて唄丸がポツリと呟いた。

「馬鹿だね、待ち草臥れてすっかり爺になっちまったよ。」

(了)
0078紫緑 5/52015/06/22(月) 03:10:28.85ID:RYbF2Xfd0
■後日譚■

「クソジジイめ、禿鷹から不死鳥になりやがって。」
何度目かの唄丸昇天復帰のお祝いだ。
唄丸は上機嫌で菊扇から酒など注がれている。
恥ずかしい思いをして損したと毒づきながらも、唄丸の元気な顔を見られるのが嬉しくてたまらない。

お互いの気持ちが同じだったことをあの日知った。
そして、両者にどうこうなりたいという気持ちがない事も。
しかし円樂にはそれで十分だった。
死ぬ前に、お互いの気持ちを確認し、心を通じさせることが出来た。
これ以上、何を求めることがあるだろうか。
そんな感慨に耽っていると、ふいに唄丸に肩を叩かれた。

「樂さん、今回は色々と世話をかけたね。本当にありがとうよ。」
「いやなに、大したことは何もしていませんよ。ご無事で何よりです。」
「お礼と言っては何だがね、今度一緒に湯治にでも行こうよ。知り合いに良いところを教えてもらったんだ。」

元々仲の良い二人だ。会話に何もおかしいところはない。
円樂の心臓が早鐘を打っていることを除けば、至って普通の会話だ。

「ええ、是非ともご一緒させてください。歌丸師匠には長生きしていただかなければなりませんからね。」
「そうだよ、まだまだ生きなきゃね。」

唄丸が意味深に艶っぽく笑ったのを、円樂は見逃さなかった。
「じゃ、日程についてはまた後で連絡するから。」
足取り軽く仔遊三、行楽の二人に酒を注ぎに向かう唄丸を見て、思わず苦笑いする。

クソジジイ改めエロジジイ。
元気になって何よりだ。
まだまだ一緒に馬鹿やりましょう。

(了)

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

>>74ですが、「紫緑 1/5」が抜けていました…すみません
唄丸師匠の復帰を、心から祈っています
0080夜が明けて[1/7]2015/06/29(月) 13:06:49.30ID:++qbMMUv0
蟲l師の「夜lをl撫lでlるl手」より、銀×辰。エロなし
単行本133-34ページの間にあった出来事の捏造妄想です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

……まずい。待て、出てくるな!!

その声を耳にしたときには、もう、手遅れだった。
木という木、その枝という枝にとまった夥しい数のカラスどもが、
文字通り、辰を喰い殺そうと襲いかかってきた瞬間だった。
翼が、爪が、嘴が。身を守る術を何も持たない辰の身体を、
容赦なく打ち据え、突き、抉った。
声すら上げられなかった。

──たつにい、たつにい。

悲鳴にも似た弟の声が、凄まじい羽音や鳴き声に混じって聞こえた。

──顔を伏せろ、目を守れ。

蟲師の言葉に従おうにも、自分が立っているのか倒れているのかもわからなかった。

(腕が、右腕が、灼けるように、痛ぇ!)
(俺、このまま、死ぬのか……?)

「じっとしてろ!」

声がすると同時に、誰かの手で地面に引き倒された。
訝る間もなく、今度はその誰かの手で布を被せられる。
闇の中、何が起こっているのかもわからない。
だが蟲師が何かをしているのは確かで、あれほど激しかった鳥たちの攻撃が急速に遠ざかっていく──。
0081夜が明けて[2/7]2015/06/29(月) 13:08:07.49ID:++qbMMUv0
────静寂。

自分の荒い呼吸音の他は、僅かの物音しか聞こえなかった。

「……もういいぞ」

蟲師の声がした。
被せられていたコートを捲り上げると、今にも泣きそうな表情で自分の顔を覗き込む弟の顔と、シャツ姿の蟲師の背中があった。
「何を……したん、だ?」
血にまみれた辰は息も絶え絶えに、蟲師──ギンコという名の──に問うた。
問われたギンコはすぐには答えず、まず外套から煙草を取り出すと、火を点け、
ふうーっと長く紫煙を吐き出し、それからおもむろに口を開いた。
「……別に。大したことは何も。ただ、鳥が怯える蟲をちょいと呼び寄せただけ──
だが、辰はその説明を最後まで聞けなかった。
あまりの痛みと疲労とで、意識を先に手放してしまったから。
0082夜が明けて[3/7]2015/06/29(月) 13:09:24.01ID:++qbMMUv0
──卯介、薬箱、重くねえか?
──大丈夫だよ、ギンコさん。

……次に目覚めると、辰はギンコの背に負われ、山を下る最中だった。
怪我のひどい箇所には応急処置がなされ、血もあらかた拭われていた。
「よお。お目覚めかい?」
「辰兄、大丈夫? 痛くない?」
心配ねぇよ、と弟に笑いかけようとした辰だが、上手く行かなかった。
──右腕の感覚が、なかった。
「俺、生きてるのか?」
「あー、死んではないようだがね」
白髪の蟲師は飄々と答える。彼が何を考えているのか辰には今ひとつわからない。
「辰兄、ギンコさんが助けてくれたんだよ」
弟の卯介は、目にいっぱいに涙を溜めながらも、嬉しくて仕方がない、
といった様子で声を弾ませた。病気がちで白い頬も、今は興奮でうっすらと上気していた。
その卯介に、ギンコは声をかける。
「卯介、一足先に村に戻って、医者を呼んでおいてくれ」
──うん、わかった。
卯介は村に向かって足を早めたが、数歩のところで振り向き、
気遣うように兄を見やると、今度は意を決したように一目散に走り出した。
その背中を目で追いながら、ギンコは言った。

──いい弟を持ったねぇ。
──ああ、俺には勿体ないぐらいだ。
  ギンコさん、あんた、家族は?
──いない。
──……そうか。
0083夜が明けて[4/7]2015/06/29(月) 13:10:45.43ID:++qbMMUv0
山の地面を踏みしめる規則的な音だけが周囲に響く。
時折、山鳥が短い声で鋭く鳴くのが聞こえ、そのたびに辰はびくりと身を硬くしたが、ギンコが「心配ない」と背中越しに声をかけた。

やがて、道程の半分ほどを過ぎた頃、辰は重い口調で問うた。

──なぁ、俺、ちゃんと元の俺に戻れるかな?
──ん?
──卯介に聞いたんだろ? 親父のこと。

確かに、聞いていた。
身に宿した腐酒のせいで蟲の側に引っ張られ、その命ずるままに無益な殺生を
繰り返していたという、兄弟の父。
その最後は、人の理から外れて完全に蟲となり、ついに人の目には映らざるモノとなる、
──というものだった。
ギンコは紫煙を吐き出すと、空中にゆらゆらと漂い流れるそれを眺めながら、青年にかけるべき言葉を探した。

『処方通りに光酒を飲んで、精がつくもん食って、しばらく安静にしてろ。そうすりゃ治る』

おそらくこう言えば事足りるはずだが、辰が欲している言葉はそれとは違うはずで。
やがて吸いさしの煙草が終わり、次の一本に火を点ける頃、蟲師は話し始めた。
0084夜が明けて[5/7]2015/06/29(月) 13:12:08.43ID:++qbMMUv0
──話を聞く限りじゃ、なるほど確かにお前さんの行動は親父さんのそれとよく似ている。

──……だよな。
──だが。
──……だが?
──だが、婆さんが死んで、母親が逃げ出して、父親が消えちまっても、
  お前さんはずっと弟の側にいて、守ってきた。……違うか?
──……。
──それに、覚えてるか?
  腐酒の病のことを教えたとき、お前はすぐに弟の身を案じた。
  その治療法を知れば自分のことのように喜んだ。
  ついさっき──蟲に半ば操られてるときでさえ、
  お前は真っ先に、卯介の分の薬を置いていくように言ったんだ。
──……。
──お前さんはいつだって優しい辰兄だったんだし、これからもそうだろうよ。

辰からの返事はなかった。
が、ギンコは自分の言葉が相手に確かに伝わっていることを感覚的に理解していた。
0085夜が明けて[6/7]2015/06/29(月) 13:13:15.70ID:++qbMMUv0
「それにしても重いなぁ」
ギンコは足を止め身を揺すると、背中からずり落ちそうになった辰の身体を負ぶい直す。
「こりゃ割に合わんぞ」
わざとらしくぼやいて見せるが、無論そこに悪意などはなかった。
「その上、上等な洋物のシャツまで血で汚しちまった」
対する辰も軽口を返す。
ギンコの服は、見れば辰の血やら泥やらで台無しだった。
「なぁに、洗えば落ちるさ」
──それよりも。
それよりも、辰の語尾が僅かに震えていることが問題だった。
何と不器用な男か、とギンコは思う。
わざわざそのために、弟の目を遠くにやったというのに。
だから、無粋を承知でギンコは口に出して言う。

「──なぁ、泣いてもいいんじゃないか?」
0086夜が明けて[7/7]2015/06/29(月) 13:15:55.44ID:++qbMMUv0
──その言葉が、引き金となった。

肉親を次々と失い、頼るべき相手もいないまま、それでも弟の前では気丈に振る舞ってきた兄。
実父に殺されるかもしれないという恐怖。いざとなればその父を殺めてでも弟を守らねばという義務感。
そして、その恐れていた父の姿に自分自身が近付いていくことへの不安──。
胸の内でずっとわだかまってきたものが氷解する瞬間だった。
すすり泣きは程なくしてくぐもった嗚咽に変わったが、それが号泣となるのにも時間は掛からなかった。
シャツの左肩の辺りが力いっぱい握りしめられ、そこに大粒の涙がとめどなく零れ落ちた。
背中で声を上げて泣く辰の身体は、日頃ギンコが背負う薬箱などよりもずっと重かった。
だが、彼が幼い頃から背負ってきたもののほうが、遥かに重いはずで。

二人のほかには誰もいない山の中、慟哭が木霊する。

狐が一匹、驚いたようにこちらを見ると、慌てて茂みの中に飛び込んだ。

(少しゆっくり行こうかねぇ……)

ギンコはそれと気付かれぬ程度に歩調を緩める。
ほんの少し──せめて、この家族思いの優しい青年の涙が、村に着く頃に乾いている程度には。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
久々にアニメ観たら再燃したので投下
辰兄は一話だけには惜しい良キャラでした
0088風と木の名無しさん2015/07/01(水) 02:53:19.50ID:L8GVcIuh0
>>80
思わず単行本引っ張り出して読み返してしまった
ごちそうさまでした!
0089旅路に歌と橘を 1/82015/07/02(木) 17:06:23.38ID:y9qsA0470
昇天、六代目三優亭円樂×桂唄丸
>>74の続き、退院後のお話となっています
ぬるめのエロシーンありますが、本番はしていません

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

とある温泉地、とある旅館の一室にて。
「全くもう、今回ばかりはひやひやしましたよ」
いつもの毒はなりを潜め、安堵にゆるんだ表情で円樂は呟く。
桂唄丸何度目かの入院、今回は少し長かったものの、無事に高座と昇天に復帰することが出来た。
「いや、樂さんには心配かけたね。沢山見舞いに来てくれてありがとうよ」
歴代名人のカセットテープを見舞いに持って来たりと、円樂は足しげく唄丸の病室に足を運んでいた。
その見舞いのうちの一回、円樂は衝動的に自分の気持ちを吐露してしまう。
信頼のおける噺家仲間以上の、恋慕の情を抱いているということを。
そして、唄丸も同じ感情を抱いていることがわかった。
円樂は、墓場まで持っていくつもりであった思いを伝えられただけで、もう十分すぎるくらいだったのだが。
互いの残り時間が見えて来たからこそ、唄丸も素直になれたと言えるだろう。

「あたしからの、ささやかなお礼だ。ひとつゆっくりしていって頂戴」
そう笑いながら唄丸は円樂の盃に酒をなみなみと注ぐ。
おっとと、などと言いながら、円樂は実にうまそうにそれを飲んだ。
唄丸が知り合いから教えてもらったというこの旅館は、建物、温泉、料理、酒、もてなし、どれをとっても素晴らしかった。
素晴らしい景色を眺望できる露天風呂につかり、粋な柄の浴衣に袖を通したふたりは、料理に舌鼓を打ち、旨酒を酌み交わしながら、話に花を咲かせた。
一時期は食事を摂れなくなり体を壊した唄丸だが、療養のかいあって今ではうまそうに刺身なんか食べている。
円樂はそれをにこにこと嬉しそうに眺め、酒を飲む。
ああ、これ以上の肴があるかい。
0090旅路に歌と橘を 2/82015/07/02(木) 17:10:32.78ID:y9qsA0470
「いやあ、本当に美味しかった!ご馳走様でした」
「そいつぁ何よりだ。あたしはもう一風呂浴びてくるけど、樂さんはやめときなね。アンタちょっと飲み過ぎだよ」
旅館の仲居さんが布団を敷いてくれる傍らで、そんな会話をする。
「そうですね、あんまり美味しいからって少し飲み過ぎました。先に寝ちまってたらごめんなさい」
「構わないからゆっくりお休みなさい。明日は少し早い電車に乗るからね。じゃあ行ってくるよ」
布団を敷き終えた仲居さんと共に、風呂道具を持って唄丸も部屋を出ていった。
敷かれた二組の布団の内の一組にたまらずもぐりこむ。
思いが同じだったからって別段どうこうなる訳じゃないんだ、一緒に居られるだけで幸せだ…そんなことを考えている内に、円樂は心地良い眠りに落ちていった。
もっとも、その眠りはすぐに破られるのだが。

「し、師匠?!」
「何だい」
「何だいじゃないですよ。あちらに布団があるじゃあないですか」
眠気が一瞬で吹っ飛んだ。風呂から戻った唄丸が円樂の布団にもぐり込んできたのだ。
「人肌恋しい季節になってきたね」
「まだ八月ですよ」
「全く五月蠅いねえ。あたしゃ年中冷え性なんだ、あっためとくれ」
予想外の展開に頭の処理が追いつかない。くらくらするのは酒のせいだけではないだろう。
どうにも私の心臓は、このお方に振り回されてばかりだ。
「…師匠、こんな風にされると、私はどうにも勘違いしてしまいます」
「勘違いじゃないよ。あたしも樂さんのことを慕っているんだ」
夢でも見ているんじゃないのか、円樂は己の理性が崩れる音を聞いた気がした。
「冥土の土産に、こういうのも悪かないだろ」
唄丸は楽しそうにくつくつと笑いながら言う。

思いを通わせたその後のことは考えないように、考えないようにしてきたというのに。
もうどうなっても知らないぞ、ジジイ。
焚き付けて、煽ったアンタが悪いんだ。
0091旅路に歌と橘を 3/82015/07/02(木) 17:12:53.95ID:y9qsA0470
「唄丸師匠」
円樂は唄丸の細い体躯を自分の方に引き寄せる。
「三途の川で、舟が沈んで溺れちまうくらいの土産を持たせてあげますよ」
耳元でそう囁くと、円樂は唄丸を抱き締めた。
硝子細工を触るように、壊れないように、そっと。かつ、強く。
かつて、これほどまでに心を砕いた抱擁をしたことがあったか。
今まで抱いたどんな女にも、したことがない。

「師匠、アンタやっぱり痩せ過ぎです。もっと体重増やしてください」
「そういう樂さんは大分丸くなったねえ。色んなところが」
腹の贅肉をつままれる。分けてあげたいと心底思う。
「酒をしこたま飲んでたせいかね、あったかいよ」
「もっとあたためて差し上げますよ」
そう言うと、円樂は唄丸の唇を塞いだ。
舌を滑り込ませると、驚いたように体が跳ねた。―――やりすぎたか?
「師匠、嫌だったらきちんと拒んでください。…このままでは、私はどこまで行ってしまうか、わからない」
「大口叩いといて今更何言ってるんだい。こうなりゃ好きなだけ付き合いますよ。もっとも、老いぼれだからね。どこまで相手できるかわからないけれど」
「…本当に、いいんですね?」
「くどい!男に二言はありません」
そう言うと、今度は唄丸の方から口づけてきた。
―――ああ、このお方の覚悟を疑うなんてのは野暮な与太郎のすることだね。
合せられた唇を割って舌をすくい上げ、絡め取った。唾液の水音が小さく響く。
この人を、どろどろになるまで甘やかして、気持ちよくさせたい。
円樂は、唄丸の浴衣の帯に手を掛ける。
0092旅路に歌と橘を 4/92015/07/02(木) 17:16:07.59ID:y9qsA0470
「唄丸、覚悟!」
いつものように茶化しながら、浴衣の帯を解く。そうでもしないと、とてもじゃないが心臓が持たない。
「こんな骨と皮、今更見たって楽しかないだろ」
されるがままに浴衣を脱がされながら、半ば呆れたように唄丸は零す。
円樂は掛け布団を脇にやり、唄丸を組み敷く体勢になった。
細い体躯が、薄くつけられた室内灯のもとに照らされる。
「楽しいですよ、とっても」
耳元に口を近づけながら低く囁く。息がくすぐったかったのか、唄丸の体が小さく跳ねる。
耳に、広い額に、頬に、口に、首に、何度も唇を落としていく。その度に一々反応する唄丸が愛しくて仕方が無い。
温泉に入る時に見た時は思わなかった、思わないようにしていた劣情が首をもたげる。
「…ちょっと、あたしだけ真っ裸で馬鹿みたいじゃないか。樂さんも御脱ぎよ」
「黒いお腹がそんなに見たいだなんて、ンもう唄丸さんったら物好きねぇ」
シナを作って冗談を言いながら浴衣を脱いでいると、渋い顔をしてアンタにだけは言われたくないよと零された。
二人とも生まれたままの姿になり、視線を合わせる。この状況が何とも滑稽で、どちらともなく笑い出した。
円樂は再び唇を重ねると、舌と舌を絡めていく。
唇を離し、首筋、鎖骨、腕、薄い胸板、腹にも口づけの雨を降らせた。
重ねた肌からお互いの体温が混ざり、どんどんと火照っていくような錯覚を抱く。
0093旅路に歌と橘を 5/92015/07/02(木) 17:19:02.23ID:y9qsA0470
「っ、はあ、女の気持ちがわかるようだね。こりゃあ噺に役立ちそうな土産だ」
ああ、このお方の頭の中はいつだって落語のことでいっぱいだ。
そういうところも敬愛してやまないのだが、今夜は。今夜だけは。
「落語のことも、他のことも、何も考えないでください。私のことだけ見ていてくれませんか」
円樂は、唄丸の目を見つめながら懇願する。我ながら女女しい頼みだと内心苦笑した。
「何だい、樂さん。落語に妬いてるのかい?」
目を細めながら、唄丸は実に楽しそうに笑った。そうだ、妬いているのだ。老人を夢中にさせる落語に。
「そうです。どうにも悋気が強くってね。今、この瞬間だけでいい。―――岩男さん、アンタのすべてを私にください」
「殺し文句だね。…あい、わかった。アンタのことだけ見ていますよ。泰道さん」
まっすぐ目を見られながらそんなことを言われたら、もう止まらなかった。

円樂は唄丸に口づけ、口の中を蹂躙していく。唄丸の耳に届くように、わざと大きな音を立てながら。
絡めた指と指が時折思いがけず強く握られ、唄丸の良いポイントが段々とわかってくると、そこばかりを執拗に攻め立てた。
長い口づけの後口を離すと、最早どちらのものともわからない唾液がつ、と一筋垂れた。
「樂さん、若いね。先代の意思を継いだかのように馬並みだね」
そんな円樂を恨めしそうに見ながら、唄丸は円樂の昂ぶりにその細い指を添える。
今度は円樂が体を跳ねさせる番だった。ゆっくりと撫でられ、刺激に思わず声が上がりそうになる。
「師匠こそ、よくおっ起ちましたね。生涯現役は落語だけじゃなかったとは、いや流石です」
この齢できちんと勃起していることに少し驚いたが、自分の愛撫に感じてくれているのだと思うと胸がいっぱいになった。
腹から、太腿、ふくらはぎに何度も唇を落とし、屹立に手を添えると手でゆっくりと愛撫し始めた。
0094旅路に歌と橘を 6/92015/07/02(木) 17:22:58.07ID:y9qsA0470
「はあ、人の陰茎ってこんな風になっているんですねえ」
まじまじと唄丸のそれを見つめながら、感動したように円樂は言う。
唄丸は時折びくびくと体を震わせながら、そんな野暮なことはいうもんじゃないと上ずった声で窘めた。
「気持ちいいですか、師匠」
「見りゃ、わかんだろ」
「いや、わかりませんね。顔を隠されちゃあ」
顔を覆っていた腕を優しくどけてやるとその表情はもうすっかり蕩けていて、円樂はまたぞくりと身を震わせる。
「もっと気持ちよくなってください」
そう言うと、円樂はそっと鈴口に音を立てて口づけ、そのままゆっくりと咥え込んでいった。
唄丸は大きく体を震わせ、甘い声を上げた。唾液をたっぷりと塗るように、顔を上下に動かしてやる。
「っ、いけません樂さん。こんなことしちゃあ」
「男に二言はない、ですよね?気持ちよくなかったらやめますけれど、お顔を見る限りそんなことは無さそうですね」
円樂はにっこりと笑うと、また口淫を再開する。口づけの時とはまた違う、いやらしい水音が響く。
時折口を離し、唾液で濡れたそれを手で愛撫してやる。眼を閉じ、快楽に身を委ねている姿がどうしようもなく愛おしい。
本当に悪い奴だ、腹黒、などと喚く声が聞こえた気がするが、全て笑いながら受け流す。
甘い声でそんなことを言われても、私を煽るだけですよ、師匠。

唄丸が目を開けると、満足げな笑みを浮かべ、実に楽しそうに手淫している円樂の姿が目に飛び込んできた。この野郎。
「止めとくれ」
ぴしゃりと唄丸に言われると、円樂は素直に手を止めた。
「すみません、痛かったでしょうか」
それとも、調子に乗り過ぎただろうか。さっと、表情が翳る。
「立ちなさい」
「は」
思わず、間の抜けた声が出る。もどかしそうに唄丸は続ける。
「わからない人だね。やられっぱなしは性に合わないんだよ」
皆まで言わせんじゃないよ、この与太郎。早くしなさいと毒づかれ、円樂は大人しく立ち上がった。
めまいがしたのは、酒のせいでも、急に立ち上がったせいでもないだろう。
0095旅路に歌と橘を 7/92015/07/02(木) 17:25:18.36ID:y9qsA0470
円樂のそれを前にし、きちんと正座をしてことに及ぼうとするのが少しおかしかった。
恐る恐る、といった風に口を近づけると、ゆっくりとその中に収めていく。
「師匠っ…、気持ちいい、です」
勝ち誇ったような表情で、唄丸は円樂を上目づかいに見る。やっぱりわかって煽っていやがるな、このジジイ。
始めはぎこちなかったものの、やがてコツをつかんだのかストロークが深くなる。
円樂が唄丸の頭を撫でると、鼻にかかったような甘い声が漏れ、円樂は思わずぶるりと震えた。
快感、興奮、罪悪感、背徳感、すべての感情がない交ぜになった身震いだった。
まずい、このままだと感極まって果ててしまいそうだ。
円樂は唄丸を自分の屹立より離し、折角だから、といって座って向かい合った。
唾液まみれになった互いの陰茎を近づけると、手でまとめて上下にこすり合わせる。
「ふっ、ん、中々悪くない、じゃないか……はあ、あ」
唄丸は、もう嬌声を隠すことも忘れているようだった。
いつも大勢の人間に向けられて発されるあの色ある声音を、今自分は独り占めしているのだ。
それが男をたまらなく興奮させた。
「そいつぁ、何よりです。ふっ、私も気持ちいい、ですよっ…」
絶頂が近い事を知りつつ、この時が終わるのが惜しく、押し寄せる快感の波に円樂は必至で耐えた。

「―――あたしはもう、達してしまいそうだよ。最後に、どうか口づけをしてくれないか。泰道さん」
「私も、っそろそろ………最後だなんて、やめてください。いつでもして差し上げますよ」
円樂は唄丸を愛おしそうに見つめながらそう言うと、もう何度目とも覚えていない口づけをした。
優しく、激しく舌を絡めながらも、手の動きは休めない。もうどこから水の音がしているのかわからなくなっていた。
飛びきり甘い嬌声が上がったかと思うと、唄丸は絶頂を迎えた。
その声を聞いてしまったら、もう駄目だった。
「―――ッ」
間もなく円樂も絶頂に達した。
お互いの吐き出した精が混ざり合って零れ、ひどく熱く感じた。
0096旅路に歌と橘を 8/92015/07/02(木) 17:28:47.87ID:y9qsA0470
熱い息を吐きながら余韻に浸った後、風邪を引くといけねえと言いながら浴衣を着直して同じ布団にもぐり込む。
円樂の腕の中に抱かれた唄丸は、間もなく規則正しい寝息を立て始めた。
本当に、今にも壊れてしまいそうな心もとなさだ。
だが、確実に今私の腕の中で心の臓を動かし、息をし、体温を共有している。
本当に、これ以上の幸せがあるものだろうか。
円樂は満ち足りた気持ちで眠りに落ちていった。
もっとも、その眠りはしばらくして破られるのだが。

「樂さん、起きなよ。風呂に行くよ」
「へえ、師匠。おはようございます……なんです、まだ五時じゃないですか」
寝ぼけまなこをこすりながら、抗議する。
「老人の朝は早いんだよ。第一、汗かいちまったのはアンタのせいなんだからね。背中のひとつくらい流しなさいよ」
そう言われ、昨晩の出来事が鮮明に蘇って来た。眠気が一瞬で醒める。
「はいはい。おじいちゃん、お風呂に行きましょうねえ」
照れ隠しに、いつもの大喜利でのように冗談を言いながら布団から抜け出、湯を浴びに行くのであった。

これまた絶品の朝食を摂り、東京へ向かう電車へ乗り込んだ。
ボックス席が丁度空いていたので、向かい合って他愛もない話をしながら心地よい振動に揺られる。
ふいに会話が途切れ、円樂と唄丸は窓の外の景色を眺める。
ぽつんと、唄丸が呟いた。
「三途の川で溺れるには、まだまだ土産が足りないね」
そう言うと、唄丸は円樂を見据えながらくつくつと笑うのだった。
ああ、こりゃあこのお方はまだまだ元気そうだ。

楽しそうに笑う男の隣にある車窓の景色が、後ろへ後ろへ飛びすぎる。
風と共に流れてゆく萌える山々は見慣れたいつもの着物の色と重なり、身震いする程美しかった。
0097旅路に歌と橘を 9/92015/07/02(木) 17:31:29.49ID:y9qsA0470
■後日潭■

「この歳になって益々色気が出て来たというのも、何というか少し複雑だね」
女の演技に益々色気が出たと最近評判の唄丸であるが、素直に喜ぶことが出来ないようだ。
「見ているとぞくぞくしますよ、師匠」
『土産』を持たせる度、噺に益々艶が出てきているのを最も間近で見ている男が悪びれもせずにそう言う。
「ふん、相変わらず若いね。血圧上がりすぎてあたしより早く逝っちまうんじゃない」
「いやいや、芸に益々磨きがかかるのは素晴らしいことですよ、師匠」
「…そうかい」
「ゲイだけにね」
まんざらでも無さそうな色を浮かべていた唄丸だが、小声で囁かれた碌でもない洒落に見慣れた渋い表情になる。
「…座布団剥がしに山田くんを呼んで来ようか」
「そいつぁ歓ゲイし難いですねえ」
「いやだよ、くだらない」
二人は顔を見合わせ、秘密を共有する子供たちのように笑った。

自分はこのお方を見送らねばならないだろう。
その瞬間は想像もしたくないが、確実にやってくる。
三途の川で溺れる位沢山土産を持たせるから、どうか向こうで笑って待っていて欲しいと円樂は思う。
それまでに、絶対にアンタを超えてみせる。
アンタが思わず惚れ直しちまうような名人になってみせるから、首を洗って待ってろよ、ジジイ。

リアリストであると自負している男であるが、この時ばかりは名前も知らぬ、姿も知らぬ神に祈るのだった。
願わくば、少しでもこの幸福な時間が続いて欲しいと。
強いていうなら、落語の神か。

(了)

円樂さんがどうにもヘタレになってしまいましたが、師匠のお身体を心配しているからこそ、ということでひとつ…
ふたりのいつものやりとりを見られる日を、首を長くして待っています
スレ占拠、途中でのナンバリングミス、大変失礼いたしました
0098風と木の名無しさん2015/07/10(金) 12:39:32.53ID:wv4zOCdW0
>>74
>>89
御馳走様です…!!
二人の粋な会話と互いを思う心情に禿げ上がりました。
0099風と木の名無しさん2015/07/20(月) 16:19:34.27ID:ORwsyiF60
管庫にてキム×カラに燃え滾ったあまり勝手に三次創作をしてしまいました…
※本家様ではありません

キムタクと唐沢が同棲してるという設定です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



「今週の休み、水族館とか、行きません?」
夕食も終わり、風呂にも入り、あとは寝るだけとなったときに空沢さんにそう持ちかけた。
「はぁ?」
案の定怪訝な反応が返ってくる。
なんだか最近、そういう態度までかわいいとか思っちゃうんだよな俺。
思わずにやけてしまっていたのか、空沢さんはでかい目でジーっと俺を見てきた。
「会社の女の子がこないだ彼氏と夜の水族館行ったらしいんすよ。で、あ、俺も空沢さんと行きてえな〜と思って」
「馬鹿か」
空沢さんは馬鹿馬鹿しい、と言わんばかりに溜息をつき、こっちに向いてた顔をテレビに戻した。テレビの中でよく分からないロボットが戦闘を繰り広げている。
こういう子供趣味のところも可愛いんだよなあ、って俺、さすがに気持ち悪いな。
「どうせ反対されるのは分かってましたから、もうチケット買ってあります」
得意げにふふんと笑い、二枚のチケットを空沢さんの目の前に差し出した。
空沢さんは押しに弱い。ここまですれば断らない。
俺が同居生活で得た一番の収穫だ。
空沢さんはげ、という顔をしたあと少し考える素振りをして、しぶしぶ「……今週末って、いつだよ」と呟いた。ほらやっぱり。
思わず「よっしゃ!」と小さくガッツポーズをし、土曜とかどうすか、と提案した。
0100キムカラ 2/32015/07/20(月) 16:21:47.54ID:ORwsyiF60
(思わずタイトル付け忘れましたすみません)

いざ水族館に入ってみると空沢さんは大はしゃぎだった。
最初は夜の水族館のこじゃれたライトアップや、カップル客の多さに尻込みしていたようだったけど、ぼんやり浮かぶクラゲを見ては「すげえな木村」と何故か俺の名前を呼び、イワシの群れを見ては「なあ木村、俺今度イワシ食いたい」と言い出したり。
「水族館で『気持ち悪い』と『食べたい』は禁句っすよ」と笑いながら答える。
こういう単純なところが可愛いんだよな、マジで。
魚に気を取られて俺の存在を忘れそうだったので、一応デートだということを再確認させるためにも、空沢さんの手を握った。
握ったとたん、尻尾を踏まれた猫みたいにびくりと反応する。
「ば、馬鹿お前何やってんだ!?」
「んー…別に、デートでしょ。いいじゃないすか」
誰も見てませんよ、と小声でささやくと、何か言いたげにもごもごさせたあと押し黙った。
本当に押しが弱い。
コレ、ひょっとしてもし俺以外でもすんなり懐に入れちゃうんじゃねえの?
今は俺以外にライバル特にいないっぽいけど。
急に少し不安になる。毎日一緒に会社行って、帰って、飯食って、一つ屋根の下で暮らしてんのに、こんな心配をしてしまう自分が情けない。
なんだか勝手に複雑な気分になっていると、館内アナウンスでイルカのショーが行われることが伝えられた。
空沢さんの顔がぱあっと急に華やぐ。
「木村、行くぞ!イルカのショー!俺夜のイルカのショーとか初めてだ!」
すっかりテンションが上がってしまった空沢さんは俺の手をするりとすり抜け、さっさと駈け出してしまった。
「おい、何突っ立ってんだよ、行くぞ!」
ぼんやりあっけにとられている俺を見かねたのか、空沢さんはくるりと引き換えし俺の腕を握った。
うわ、俺ひょっとしてこの人からこんな触ってもらうの初めてなんじゃね?
空沢さんは今イルカのショーのことしか考えてないんだろうけど。
グイグイ引っ張られ、ショーの会場まで連れてこられた。
ほんの少し前までは、俺は会社の後輩で、この人は先輩で。それだけだったのに。
0101キムカラ 2/32015/07/20(月) 16:24:06.40ID:ORwsyiF60
いざ水族館に入ってみると空沢さんは大はしゃぎだった。
最初は夜の水族館のこじゃれたライトアップや、カップル客の多さに尻込みしていたようだったけど、ぼんやり浮かぶクラゲを見ては「すげえな木村」と何故か俺の名前を呼び、イワシの群れを見ては「なあ木村、俺今度イワシ食いたい」と言い出したり。
「水族館で『気持ち悪い』と『食べたい』は禁句っすよ」と笑いながら答える。
こういう単純なところが可愛いんだよな、マジで。
魚に気を取られて俺の存在を忘れそうだったので、一応デートだということを再確認させるためにも、空沢さんの手を握った。
握ったとたん、尻尾を踏まれた猫みたいにびくりと反応する。
「ば、馬鹿お前何やってんだ!?」
「んー…別に、デートでしょ。いいじゃないすか」
誰も見てませんよ、と小声でささやくと、何か言いたげにもごもごさせたあと押し黙った。
本当に押しが弱い。
コレ、ひょっとしてもし俺以外でもすんなり懐に入れちゃうんじゃねえの?
今は俺以外にライバル特にいないっぽいけど。
急に少し不安になる。毎日一緒に会社行って、帰って、飯食って、一つ屋根の下で暮らしてんのに、こんな心配をしてしまう自分が情けない。
なんだか勝手に複雑な気分になっていると、館内アナウンスでイルカのショーが行われることが伝えられた。
空沢さんの顔がぱあっと急に華やぐ。
「木村、行くぞ!イルカのショー!俺夜のイルカのショーとか初めてだ!」
すっかりテンションが上がってしまった空沢さんは俺の手をするりとすり抜け、さっさと駈け出してしまった。
「おい、何突っ立ってんだよ、行くぞ!」
ぼんやりあっけにとられている俺を見かねたのか、空沢さんはくるりと引き換えし俺の腕を握った。
うわ、俺ひょっとしてこの人からこんな触ってもらうの初めてなんじゃね?
空沢さんは今イルカのショーのことしか考えてないんだろうけど。
グイグイ引っ張られ、ショーの会場まで連れてこられた。
ほんの少し前までは、俺は会社の後輩で、この人は先輩で。それだけだったのに。
0102キムカラ 3/32015/07/20(月) 16:25:04.21ID:ORwsyiF60
「ここなら水かかんねえだろ」
そう言って水槽から少し離れた席に嬉しそうに腰かける空沢さんを見つめると、すぐに怪訝な顔で「な、なんだよ」と返された。
この人の中で俺の立ち位置はどうなってるんだろうか。恋人、ではないのか確実として。
余計なことばかり考えていると、いつの間にかイルカのショーは始まり、何匹ものイルカがバシャンと大きな音をたてて跳ねた。
「うお!」
あろうことか、俺だけが盛大に水をかぶる。
「あははは、お前ビショビショだな!」
空沢さんがあまりに可笑しそうに笑うので、俺もつられて一緒になって笑った。
俺の立ち位置なんて関係ない。
とにかく俺は今この人と同じ家で同じ飯食って、こうして二人でイルカのショーなんて見に来てる。

楽しかったっすね、と声をかけると、また来ような、とやけに上機嫌に返された。
0103風と木の名無しさん2015/07/26(日) 02:01:28.63ID:19JkLfG90
元ネタは有ると言えば有るけれどぼかして書いています
汚いおっさんが頭の弱い青年犯してます
加えてさらっと食人描写しているので注意です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!




定職も無く、宿も無く、貯金も家族も何も無い
そんな俺の住まいであるこの公園に、あの男が現れるようになったのはいつ頃からだろうか
男はいつもペンキの剥げたベンチの真ん中で菓子を貪っていた
大容量の袋を抱えて黙々と頬張る様を見て、細い身体によくあんなに入るものだと呆れたものだ
手元の菓子が無くなると男はいつも横になり眠りにつく
そして目が覚めると何処かへと去ってしまう
彼は自分と同じように、呑気で気ままな暮らしを送っているようだ
一度だけ彼の寝顔を間近で眺めた事があった
思いの外整った顔立ちで、年齢は20そこそこといった所
短く切り揃えられた黒髪、長い手足、大量の菓子を摂取しているとは思えない痩せた身体
手足を伸ばしてだらしなく寝そべるその姿に警戒心は微塵も感じられない
彼は子供の様に可愛らしい、あどけない寝顔をしていた
Tシャツの裾がめくれ上がって脇腹が見えていた
薄く開いた唇に、時折漏れる寝息に、不思議と胸がざわついた
――そんな自分の感情が信じられなくて、俺はそれを気の所為だと思い込む事にした
0104無垢な獣 2/92015/07/26(日) 02:02:53.34ID:19JkLfG90
今日も相変わらず、彼はいつもと同じようにベンチに座っていた
しかしいつもと少し違っていて、同時にとても異様な光景がそこに繰り広げられていた
「あんた一体なにしてんだよ?!」
それに気づいた瞬間、俺は男の目の前で声を荒げた
「……?」
男はキョトンとした顔で俺の顔を見上げ、不思議そうに首をかしげる
彼の右手に握られていた緑色の物体が地面に落下し、小さく跳ねた
昆虫を模して造られたゴム製の小さな玩具
それは彼が今しがたまで頬一杯に咀嚼していたのと同じ物
「飲み込むな。吐き出せ!」
必死で口を開かせようとする俺に男は戸惑いながらも言われた通りにする
なんだこれは?
大の大人が本気で玩具を口に入れる訳が無い
タチの悪いイタズラか?
俺がいなかったら目撃&ツッコミする人間は皆無だったけどな
「美味い?」
「はぁ?!」
俺がぐるぐると考えていた所、男が口を開いた
「――が、教えてくれた」
口に残った物の所為で最初の部分は聞き取れなかった
男は俺を見上げながら更に話す
「口に物を入れる事、美味いって事だって」
男はまた容器一杯に入った昆虫の玩具を鷲掴みにする
「止めろって!」
それを再び口に運ぼうとしたので、俺は慌てて止めた
男が何を言っているのか理解できなかった
「これ食べ物じゃないし」
「……?」
「恍けてんのか。それとも頭おかしいのかどっちだ」
溜息を付いた俺に男は再び首を傾げた
本当に俺の言った事が分からないといった様子で
0105無垢な獣 3/92015/07/26(日) 02:03:58.66ID:19JkLfG90
かみ合わない会話に感じる違和感
その言動が彼を実際の歳よりも幼く見せる
もしかしたら彼は、俺と同じで成るべくして社会に爪はじきにされた存在なのかもしれない
自由気ままに自分の想うがまま過ごし、その行動に何の責任も課せられず、一般社会とは切り離された存在
己と同じ、底辺で喘ぐ存在
「なぁあんた、ひょっとして本当に分からないのか?」
「何?」
「…いや、別にいいんだ。それよりさ」
固唾を飲んで男と目を合わせる
怪しまれない様ににっこり微笑んで、動揺を隠しながら言葉を紡ぐ
俺を見つめる無垢な黒い瞳
にこりと笑った顔に心臓が高鳴った
彼の寝顔を見た、あの時確かに感じた劣情を再び思い出す
「これ舐めると、美味しいのが出てくるんだけど…どう?」
俺はズボンをずり下げ、己の一物を露出させた
碌に風呂に入っていない為か独特の異臭を放つ、薄汚れたそれ
こんな生活の所為で長い事他人とは”そういう目的”で触れ合っていない
ちょっと遊んで、溜まっている物を吐き出そうか
そんな考えが頭をよぎる
「それ、美味い?」
「あぁ美味いぞ」
でもそれ以上に俺は、目の前の男から目を離せなくなっていた
俺の”美味い”という言葉に男はパッと目を輝かせた
0106無垢な獣 4/92015/07/26(日) 02:05:06.83ID:19JkLfG90
「うぅ…んっ……」
「いいぞ、なかなか上手じゃないか」
跪いて股間に顔を埋める男の頭を優しく撫でてやる
男はチラリと上目遣いで俺を見上げたが、すぐにまた勃ち上がった陰茎に舌を這わせた
アイスキャンディを舐める様な仕草
小さな口から除く赤い舌
己の唾液と俺自身から溢れる先走りで、口元だけに留まらず顎から首筋まで汚すもそれを厭わない彼の姿
稚拙な舌技にも関わらず、久方ぶりの他人から与えられる快楽に俺の身体はすっかり熱を持っていた
「もっと口を開けろ」
強引に男の口に陰茎をねじ込んだ
鼻をギュっとつまむと酸素を求めて喉の奥まで大きく開く
男の頭を抱え込んで乱暴に揺さぶり口内を犯す
「んっ…!ぐっ、うぅ……!」
男は息苦しそうに眉を潜めるが逃げようとはしなかった
端正な顔立ちが苦悶に歪み、妙に色気を感じさせてそそられる
「くっそろそろ出るっ……!」
腰を打ち続けながら絶頂に上り詰める
全てを吐き出す瞬間、男の頭を逃げない様にとガッチリ抱え込んだ
射精しつつも興奮冷めやらずドクドクと脈打つ陰茎
大量の精液を男の口内へ注ぎ込み、一滴も無くなるまで出し切るとようやく俺は男から手を離す
男は出された物を一気に飲み下し、ハァと大きく息を吐いた
「息、苦しい」
荒い呼吸を繰り返しながら男が呟く
「どうだ?美味かっただろう」
「うん、美味い!!」
男は力強く頷いた
唾液やら精液やらですっかり汚れきった顔に無邪気な笑みを浮かべて
思えばこの笑顔に俺は最初から魅せられてしまっていたのかもしれない
0107無垢な獣 5/92015/07/26(日) 02:06:14.41ID:19JkLfG90
口でしてもらうだけなら…なんて浅はかな考えだったと今なら思う
願いが一つ叶えられたら、もっと欲しいとそう思ってしまった
理性では止められなかった
目の前の男の、全てが欲しい――
「――!!」
気付いたら俺は男を地面に押し倒し唇を重ねていた
驚きと警戒で真一文字に結ばれた唇を舐め続け、僅かに開いた隙間に強引に舌を割り込ませる
生暖かい舌のヌメヌメした感触が気持ち良くて、同時に息苦しさで呼吸が上がり、顔も熱くなる
彼の口の中には俺の出した精液がまだ残っていて青臭さと苦みが俺の口にも広がった
同時にTシャツの裾から片腕を突っ込みその身体をまさぐる
薄い胸板の上にある小さな突起に指が触れると、男の身体がビクンと跳ねた
「はぁっ……」
徐に唇を離すと男の口端から涎が糸を引く
男は嫌そうな顔をしてそれをシャツの袖で拭った
上気した頬が赤くて、途切れ途切れの呼吸や乱れた衣服も相まって、さっきよりも更に卑猥
「何するんだ」
「気持ちのいい事かな」
「気持ちいい……?」
厭らしい笑みを浮かべた俺に再び彼は不思議そうな顔をした
小さい子供に言い含める様な物言いで、同時に地べたに仰向けになった彼を組み敷く
「”気持ちいい”っていうのは”美味い”と同じ位…いやそれ以上にいい事だ」
「そーなんだ」
「それに、後で新しいお菓子を買ってあげる。……あんたにとっても悪い話じゃないと思うけど」
「お菓子!欲しい!!」
明らかにさっきと声色が違う
お菓子に釣られてテンションが上がった男に内心ほくそ笑む
己の汚い劣情を隠しながら俺は使い古しの手拭いを取り出した
「少し大人しくしてろ」
それを丸めて男の口の中に押し込み、衣服を手早く全て脱がせる
その身体を仰向けにさせるともう一枚の手拭いで後ろ手に縛り、尻を押し開いた
身体と同じで肉付きの薄いそこに指を一本ねじ込む
彼がくぐもった声を上げようとしたが無視した
0108無垢な獣 6/92015/07/26(日) 02:07:15.72ID:19JkLfG90
「――っ!!」
その衝撃で中がギュッと締め付けられる
無理矢理事に及ぼうと言うのだ、致し方ない反応だろう
「仕方ねーな」
ひとつ溜息を付いて指を引き抜くと、後孔に舌先を這わせた
「んぐっ……!」
震える背中をそっと撫でてやる
滑りのお蔭かさっきに比べれば悪くない反応
ピチャピチャと厭らしい音が漏れ、窄まっていた中が段々緩くなる
背中を震わせる男が感じている物は嫌悪なのかそれとも羞恥か快感か……
「悪いな」
さっきからにやけ顔が止まらない
充分に解れきったと言えないかもしれないが、もう我慢出来ない
俺の陰茎はとっくに勃起し先走りをダラダラと垂れ流している
早く貫きたい、目の前の男を食らってしまいたい
頭の中にはそれしか無い
ズボンをその辺りに脱ぎ捨てて男の尻に陰茎を宛がう
うつ伏せになった男の両肩を掴み、ゆっくりと腰を前進させる
「んんぅ――っ!!」
口を塞がれていてもはっきりと分かる悲鳴
中の締め付けは予想以上にきつくて、彼の拒絶と苦しみを俺に伝えてくる
「きっついなぁ…!まぁ分かってたけどよ」
それに構わず腰を大きくグラインドさせた
彼は、俺に騙された事にようやく気付いたかもしれない
見知らぬ男に強姦されている事実に
「あんたが悪いんだ」
彼に聞こえるように呟く
僅かな罪悪感を封じ込めると、この胸を満たすのは背徳感とそれに伴う快楽
何も知らない子供の様に、単純で純粋で愚かな男を弄ぶ行為
それは禁断の――そして極上の味
0109無垢な獣 7/92015/07/26(日) 02:08:34.88ID:19JkLfG90
「人のいう事をホイホイ信用するなって教わらなかったのか?あ〜初っ端から誰かに騙されていたんだっけ、あんた」
目と鼻の先に転がっている玩具とプラスチック容器を一瞥し鼻で笑う
ズン!と大きく付き上げると彼の身体が痙攣しているのが分かる
ふとその表情が見たくなって繋がったまま彼の身体を反転させた
俺を見上げる瞳は涙でぐしょぐしょになっていて、塞がれた口からは獣の様に荒い息遣いが漏れていた
”痛い”って事は分かるんだろうな、きっと
「いいなその表情。もっと虐めたくなる」
痛みで萎えきっている男の性器に手を伸ばす
男が身じろいで逃げ出そうとするのを抑え込んで、それを上下に緩く扱いてやる
「んっ……」
気が反れたのか体内の締め付けが少し弱まった
それと同時に芯を持ち先走りを漏らす男の陰茎
「気持ちが良いってこういう事なんだよ、分かったか?」
「うぅ……」
是とも否ともつかない曖昧な返事
薄く夕闇のかかった人気の無い公園に、俺の喘ぎと男の唸りとグチュグチュという卑猥な音が拡がっては消える
「うっ!出るっ…出るぞっ……!!」
俺の絶頂は割合早く迎えられた
男の細腰を掴んで欲望の塊を中に叩きつける
ビュルビュルッ!と長く続く射精
久しぶりに感じた人肌の暖かさと快楽に身体が震えた
充分堪能してから陰茎を引き抜くと、ぽっかり空いた男の尻穴から白濁の液体が伝い落ちる
男の方は達するには至らなかったらしい
「こういう事したのは初めてか」
俺が尋ねると男は黙って頷いた
相変わらず泣き腫らした顔で何か言いたそうに口をもごもご動かしている
しかし俺は口の詰め物をとってやる事も拘束を解いてやる事もしてやらなかった
「忘れられない様にしてやる」
汗だくの顔でニヤリと笑い再び男の肩を抱いた
一度火のついた情欲は消える事は無い
満足するまで抱き潰してやろう――俺は己の欲のまま男の身体を貪り続けた
その時、男が俺の事を獲物を見つけた獣のような目で見つめていた事など、俺は知る由も無かった
0110無垢な獣 8/92015/07/26(日) 02:09:45.76ID:19JkLfG90
あれからどれ程の時間が経っただろうか
何度も男の中に溜まった物を吐き出し続け、気付いた時には日はとうに暮れ街灯が明々と灯っていた
「おい」
男の頬を軽く叩く
気を失ってはいなかったが、地面にぐったり肢体を投げ出してぼんやりした表情をしている
俺は脱ぎ捨てたズボンを拾ってそそくさと履くと、男を放置して立ち去ろうとした
俺がこの男にやらかした行為はれっきとした犯罪なのだ
騒ぎ立てられるとまずい
だが、その時だった
「――!!」
不意に後ろから首を掴まれて地面に叩きつけられた
うつ伏せの体勢から、頭を掴まれて無理矢理上を向かせられる
目の前にはあの男が居た
その表情には怒りや悲しみ――等は浮かんでいなかった
「お前、美味そうだ」
弾む声に見える物は、喜び
「な、何だと……?」
状況が飲み込めなくて声が震えた
男の目は爛々と輝いている
上等な獲物を見つけた時の獣の目だ
興奮しているのか男の声が震えている
「きっと、お前、美味い」
「ひ、ひぃっ……!!」
相変わらず男の言っている事が分からない
得体のしれない恐怖で顔が引きつる
怖い!怖い!怖い!
でも逃げる事が出来ない
「あいつが教えた事、もうひとつ、ある」
予感はしていた筈だ
食べられもしない玩具を何の疑問も無く食す姿に
(本人だって自覚済みな)小汚いホームレスの放つ異臭や汚さに眉ひとつ歪めない姿に
この男が普通の人間じゃないのではないか、と感じていた筈だ
0111無垢な獣 9/92015/07/26(日) 02:12:02.97ID:19JkLfG90
「食べる前に、あいさつすること」
端正な顔立ちにアンバランスな無邪気な笑みを男は浮かべる
そして男は異形の化け物へと姿を変えた
「いただきまーす」
本当に恐怖を感じた時は悲鳴すら出ない物か
俺は何も出来ない
ただただ唖然としてその場に存在するのみ
――食物として
「うん、美味かった」


その日、身元不明の男が一人、跡形も無く姿を消した
「あっそういえば、お菓子貰ってない!」
ついでのように男が呟いた


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

801萌えはしてなかった筈なのに、イケメンなのにあほの子な受けが可愛くてつい
致してる割にあんまりエロく出来なかったのが悔しいです
お粗末様でした
0114風と木の名無しさん2015/10/16(金) 07:42:41.78ID:9/JkZECf0!
棚のサイト内検索しようとすると、アクセス権限がありませんってでるんだけど
ちゃんと検索できるひといる?

直し方もよくわからん…
0116伝えない思い[1/3]2015/10/25(日) 22:03:59.06ID:oh5pmuZ80
報道を見て、妄想でもしなきゃやってられない!と思った結果がこれです
生 棒球 G24とG2(とD2) 
CPってほどCPじゃないけどほんのりG24×G2とD2×G2です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「俺、吉信が引退するときは一緒に引退する」
井畑は重くも軽くもない、至って普通のトーンでそう口にした。
高端はそれが冗談や思いつきではないことに気が付きながら、あえて井畑に問うた。
「本気?」
「うん」
井畑は微かに頷きながら肯定した。
十数年、続けて来たこの職業を自分と同時にやめると言う。高端はなんとも言えぬ感情が胸の中に生まれた。
その十数年のうちのほとんどが敵同士だった。昔から交流はあったが深い信頼関係が生まれたのは同じチームになったここ1、2年のことだ。
……深い信頼関係といえば。
「井畑さ、新木と一緒にやめるって言ってなかった?」
井畑が十数年一緒にいた相手、自分よりも深い信頼関係があるであろう新木のことが頭に浮かぶのと同時に、井畑の移籍が決まって少ししてから見た新聞の記事を思い出した。
「……言ったな」
「それ、守らなくていいの?」
井畑は一瞬眉をひそめ、口を固く結ぶ。そして脱力するように、ふぅと息を吐いた。
「あんなの、ただのリップサービス。あいつと一緒にやめる気なんてはじめからないし」
唇に僅かな笑みを浮かべながら、井畑はそう言った。
「リップサービス、ね。新木はそう思ってないんじゃない?」
「あいつだって分かってるだろ。ありえねえことだし」
井畑は目を伏せもう一度、ありえねえよ、と小声で言う。高端は含みを感じ、それが何か、つまり井畑が新木のことをどう思っているのか、を知りたくなった。
しかし井畑は大切な思いであればあるほど、胸の内深くに仕舞い込んで話そうとしないことを知っていた。
きっと正攻法で言っても話してくれないだろう。高端はそう思い、少しまわりくどく誘導することにした。
「俺となら、ありえる?」
「うん。俺はそのつもり」
「へえ。井畑は、新木より俺をとってくれるんだ」
新木に悪いな。長年コンビを組んできてずっと慕ってた井畑が自分じゃなくて、後から来た俺の方ををとるなんてな。
そう言って高端は目を細め、口元に弧を描く。井畑は何か言いたげな表情をして、それでも唇を結んだ。
0117伝えない思い[2/3]2015/10/25(日) 22:04:41.61ID:oh5pmuZ80
高端はさらに追い打ちをかけるように言葉を続ける。
「新木は井畑と信頼関係が築けてたって思ってるよ、きっと。裏切られたって思うかもな。まあそれなら井畑が移籍したときにも思ったか」
「それならそれでいい」
井畑はきっぱりと言った。
「新木に裏切られたって思われたならそれで。その方がいいくらいだし」
高端はこれは井畑の本音で、胸の内深くに仕舞い込んだ思いの一部だと確信した。それをさらに引きずり出すために言葉を紡ぐ。
「へえ。裏切られたって思われたいんだ?」
「……近すぎたから。いろいろと」
「関係性とか?」
「うん。だからリセットした方がいい」
井畑は笑みを作った。
「……あいつは俺のことを忘れた方がきっといいプレーができる」
多くの感情を乗せて、井畑はそう口にした。高端は笑みを浮かべそう口にする井畑のことを寂しく思い、顔をしかめた。
「井畑はそれでいいんだ?」
「いいよ。いつか、離れてやんなきゃって思ってたし」
「そっか」
離れてやんなきゃ、か。
「そういや、新木って井畑と何歳差だっけ?」
「ん?2歳差」
「その差も関係ある?」
「この歳になっての2歳差は大きいだろ。衰え方が違う」
そうか。高端は胸にすとんと落ちる感覚がした。つまり井畑は。
「井畑は、新木を切り捨てるんじゃなくて解放するつもりなんだな」
胸の内深くに仕舞い込んだ思い。これが井畑の新木への思い。先輩として。相棒として。
自分と離れた方が新木は活躍できる。2歳下の新木はまだ衰えもさほど来ていない。
だから、井畑は新木と一緒に引退しない。リップサービスということにしてあのときの約束を反故にする。自分が裏切り者になってでも。
高端は井畑という男を改めて好ましく思った。
「別に、そんなんじゃねえし……」
井畑は口を尖らせそっぽを向いた。それが否定ではなく肯定であることを高端は分かっていた。

「他言無用な」
さっきの話、と井畑はわざとだろう、少し怒ったような顔をして言う。高端笑って「了解」と答えた。
「こんなの話したのはじめてだわ。相手が吉信だから話せたのかな」
先程の表情とは一転して井畑はいたずらっぽい笑みを浮かべた。
0118伝えない思い[3/3]2015/10/25(日) 22:08:56.83ID:oh5pmuZ80
15年10月。自分を取り巻く環境が目まぐるしく変わっていく中で、高端は大きな決断をした。
監督就任、そして現役引退。
それを追うように井畑も現役引退を発表した。高端の右腕としてコーチ専任を選んだのだ。

「本当に、やめたな」
「吉信がやめたらやめるって前から言ってたじゃん」
「そうか。そうだよな」
高端は、「ごめん」も「ありがとう」も今この場で井畑へ伝える言葉としてそぐわないと思った。なので別の言葉を紡ぐ。
「じゃあ改めて、これからもよろしくな」
「おう」
二人は少し照れながらも笑みを浮かべ握手を交わした。


井畑の現役引退会見が終わった次の日、元チームメイトで、元コンビ、元相棒だった新木の元へも報道陣は押し寄せた。
井畑は新聞を開き、新木が自分の引退について語った言葉を目で追う。そして最初の一文を指でなぞった。
"井畑さんは相手にしていないかもしれないけど、ここまで追いつけ追い越せでやってきた。"
「相手にしてないなんて、そんなことあるわけないだろ。自分に自信持てっつの」
変わらないな、と少し笑って、その後、でもそう言わせたのは俺か、と苦笑いした。
次に新木に会うのはいつになるだろうか。電話の一本でもかかってくるだろうか。何を話そうか。
思いを全部話すのは難しいし気恥ずかしい。短く、ごく簡単に、今までの礼とエールを送ろう。
そんなことを考えていたら、部屋の隅で充電していた携帯から着信メロディが高らかに響いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

伝えることはなくてもこんな感じに思ってくれてたらいいなぁ・・・。いつかどこかでまたD2とG2が揃ってくれたらいいなぁ・・・
お粗末様でした
0119獅子の受難【1/2】2015/11/02(月) 22:13:21.79ID:Q87mcWI40
超人獅子萌えが止まらないので投下させていただきます。

溶岩星人×獅子 七×獅子

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

宇宙ロープというのもはどうあがいても切れないものらしい。
獅子が戒めから放たれようとしてあがいたのは何度目だろう。
意識が戻ってからずっと、身を捩らせてどうにか手足を抜こうとするるのだが、全く緩む気配がなかった。
溶岩星人との死闘で身体全体にダメージを追っている為、身を捩らせる事すら苦痛で顔をしかめる。

獅子が捉えられているのは石造りの牢屋のようなところだった。
固い石の寝台の上で、大の字の形で両手両足が縛られていた。

「ハハハ、強くて優しくて美しい王子様がとんだ醜態を晒しているもんだな」
溶岩星人の艶のない声が響く。
「楽しませていただけそうだ」
溶岩星人はサーベルの先を獅子の頬にあて、スッとなぞり、顔を近づける。
「やっと手に入れたぞ王子様」
そう言うと同時に溶岩星人は獅子の唇にむしゃぶりついた。
獅子が首を左右に振って逃れようとするも、星人の口は離れない。
それどころか液体が流し込まれ、そのまま喉に入ってしまった。
と、その瞬間から体が熱くなり始めた。
溶岩星人は獅子から顔を離し、にやりと笑った。
「王子様、どうされましたか?」
「貴様、ふざけた真似を。何をする気だ」
「何がして欲しい?王子様。こんな事か?」
溶岩星人が獅子の鍛え上げられた胸筋をなぞる。
その瞬間背筋に電流が走り、獅子の身体がビクリと反応した。
「感度良好だな。楽しみ甲斐がある」
獅子は息が荒くなるのを必死で堪えながら、溶岩星人を睨み付けた。
「そんな顔で睨むなよ、いじめたくなるじゃないか」
溶岩星人が胸筋を捻りあげた。
「んぐぅぅー」
声を抑えながら痛みに身を捩る獅子。
普段より感覚が敏感になってしまっている分、痛みも半端ない。
「たまらん、たまらんぞその姿。フハハハハ。その姿が見たかった。そしてとうとう手に入れた。ヒヒヒヒ」
溶岩星人がカラータイマーにしゃぶりついた。
0120獅子の受難【2/2】2015/11/02(月) 22:14:56.77ID:Q87mcWI40
「うぁーー」
胸筋どころではない強烈な電流が全身を駆け巡る。
獅子はただひたすら全身を捩らせて耐えた。溶岩星人は執拗にカラータイマーを嘗め回した。
途中何度も頭が真っ白になり、意識が戻り、また真っ白になり…を繰り返す。
溶岩星人は合間合間に下卑た笑い声をあげながら色々卑猥な事を言っていたが、意識に残っていない。
何もかもに靄がかかったような世界…快感、獅子は正常な思考能力を失っていた。
いかに耐えようとしてもどうしても漏れてしうまう喘ぎと溶岩星人の唾液の音。
それらが石壁に反響して空間の淫靡さが増してゆく。その淫靡な空気が溶岩星人を更に興奮させる。
どれくらい時間が経ったのだろう。突然の衝撃音と共に溶岩星人の頭がグタリと獅子の胸の上に落ちた。
ぼんやりと獅子が見上げると…。
「大丈夫か獅子」
「たい…ちょう」
疲れ切っている獅子はか細い声で反応した。
「しっかりしろ」
七は持っていた特殊なペンチで獅子の手足の宇宙ロープを切り、胸の上の動かない溶岩星人を蹴り落とし、獅子を解放した。
「一体どうしたのだ。敵に捕まるなどお前らしくもない。あまり心配をかけるな」
七は獅子を抱きしめた。
七の体温を感じながら、獅子は素直に七に身を預けた。


「隊長、もうやめてください」
獅子が息も絶え絶えに七に訴える。
溶岩星人から助け出した後、七は特訓と言う名の元、毎晩のように獅子をベッドに縛り付けるようになった。
「何を言う。弱点というものが分かったからには鍛えて無くすしか方法がないだろう」
七は再び獅子のカラータイマーに筆を伸ばした。
「あぁぁぁ…」
「我慢しろ、耐えろ。誤解するなよ、これは特訓だ。私が好き好んでやっているものではない」
そう言いながら七はニヤっと笑う。
「まあ厳密に言うと特訓ではあるが、お仕置きでもある。天敵の前であんな無防備でイヤらしい姿を見せるとはけしからん事だ。鍛えなおしてやる」
七はカラータイマーを筆で刺激しながら、顎をのけぞらせて耐える獅子に顔を近づけた。
「そんな姿は私の前だけでしか披露してはならない」
そう囁いて七は獅子の唇に自らの唇を重ねた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0121朋友【1/7】2015/11/11(水) 01:39:17.48ID:aGw7tasv0
羅具ビーにわかですが、テレビでこの二人を見て萌えてしまいました。
お目汚しすみません。畑矢真×語労円です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ッよせっ畑矢真、何する、お前はそんなヤツじゃ」
畑矢真の太い二の腕を必死に掴み、押し倒された語労円は下から睨み上げた。
畑矢真の顔は影になり、平素の柔和な面立ちが今はどんな表情を浮かべているのか、語労円には判別できなかった。
ややして含み笑いと、その吐息が語労円の頬にかかり、畑矢真の顔がいかに至近距離にあるのかを知らせた。
「…へえ、じゃあ、どんなヤツだと思ってたんだ?」
低い声だった。普段の彼からは想像もつかないほどの。
語労円は密かに震撼した。これほどの彼の腕力、そして地の底から聴こえてきたような声音に、尋常ではない事態を今さら感じたのだ。
月光に照らされた語労円の顔を、美しいと畑矢真はあらためて思った。
その通った鼻筋、引き締まった小ぶりの唇、そして、意志を明確に伝える切れ長の瞳。
突然の暴挙に狼狽しながらも、古の武士を思わせる彼の清廉な美は、まったく損なわれてはいなかった。
畑矢真はそんな顔を見下ろしながら、もう引き返すことは出来ないと、自分に杭を打ち込む。
「…お前は、俺がどんな思いで今までお前の側にいたか、知らないだろう」
今まで幾度、この言葉を飲み込んできただろう。
試合に負けて握りしめる拳より、おそらくそれは多かったことだろう。
「どんな思い?」
語労円は、不意を突かれた表情をした。畑矢真はそんな彼の表情を見て、苦笑する。
予想通りだった。彼は自分の気持ちに全く気づいてはいないだろうということは。
不器用な自分なりに、今まで必死に隠し通してきたのだ。そして同時に、猛烈な怒りの感情がこみ上げてきた。
語労円はいつもそうだ。同級のくせをして、常に下にいる。
まるで、庇護されるのが当然と思っている幼子のように。
畑矢真は突如として湧いてきたどす黒い感情をこらえ、語労円を睨むように見つめて、
「…知らないよな、知ってるはずがない」
0122朋友【2/7】2015/11/11(水) 01:40:43.10ID:aGw7tasv0
なおも不思議そうな顔をする語労円に、手を伸ばした。
一瞬、語労円がピクリと震える。
だが構わず、畑矢真は伸ばした手で、語労円の頬に触った。
冷たいその感触を、語労円は甘んじて受けた。
一瞬の震えが嘘だったかのように、見下ろしている畑矢真をじっと見つめ、されるがままになっている。
畑矢真は嘆息した。
やはり、彼、なのだ。
自分は彼には一生敵わないし、そして一生、手に入れることもできない。
それほどに、彼は美しく清廉で、それでいて、狡猾だった。
手に入れることが出来ないと分かっていても、魅かれずにはいられない。
畑矢真は内心の落胆を悟られぬよう、語労円を睨む目を強くした。
すると、まるで合わせるかのように、自分の下からの語労円の強い視線にぶつかった。
「…いったい、何を知らないっていうんだ」
語労円の、月光よりも真っすぐな声が、端正な唇から漏れた。
低くもなく高くもなく、それは畑矢真がよく知る声音だった。
この期に及んでも、冷静なのか?
畑矢真は語労円の顔を注視したまま、読めない彼の感情を読もうとして必死になる。
キック時に見せる、冷静さを通り越した静謐なのか?
時折見てきた、語労円の不可思議なまでの感情を殺した表情に、畑矢真は戸惑った。
ふいに、語労円が微笑んだ。それは、笑みとも呼べないような微かな兆しだった。
唇の端だけにそれを見せ、
「やっぱり、バカだ、お前」
「なにを」
畑矢真が言い終わらないうちだった。語労円が下から手を伸ばし、ぐいっと畑矢真のシャツの襟を掴んだ。
「言いたいことがあったなら、早く言えよバカやろう」
声と同時に、畑矢真の唇に、語労円の唇が微かに触れた。
0123朋友【3/7】2015/11/11(水) 01:41:19.77ID:aGw7tasv0
何が起きたのか分からぬまま、呆然と語労円を見返す畑矢真に、語労円はさらに笑みを強くして、
「チームメイトの間に、隠し事は無しだ…」
言った語労円の唇に、吸い寄せられるように畑矢真は口づけた。
重なった二つの唇は、最初は探り合い、徐々に深くなっていった。
離れるころには、お互い息が上がっていた。
「ッ…は…ぁ」
語労円の濡れた唇から、惜しむように畑矢真の唇が離れた。
唇を離したあとも、顎に添えた指を離さぬまま、畑矢真は語労円を見つめた。
語労円も、上がった息を抑えるように胸で息をしながら、畑矢真を見つめ返した。
「…分かってたのか」
畑矢真の囁くような声に、語労円は微かにうなずき、
「顔に出やすいもんな、お前」
いつもの憎まれ口に近くなった声音に、畑矢真はやられたというように破顔した。
「人が悪いぞ…まあ、お前らしいか」
「ああ」
語労円は言いながら、再び畑矢真に顔を寄せていった。
「いいのか」
自分でも何のことを言っているのかよく分からずに、畑矢真は問いかけた。
「ああ」
語労円のあくまで冷静な声と表情に、畑矢真は、やはり俺はこいつには敵わない、と思いながら、
「こんな、俺が相手で、いいのか」
「ああ」
語労円の声に、手繰り寄せられるように畑矢真は体を再び倒していった。
床の上に、語労円の体を寝かせた。
真上から、語労円の顔と肢体を見下ろし、畑矢真は再び囁いた。
「本当に、いいのか俺で」
すると語労円の手が、畑矢真の分厚い上体の背に回された。
0124朋友【4/7】2015/11/11(水) 01:42:10.53ID:aGw7tasv0
温かいその掌を、自分の背に感じ。
畑矢真はため息をつき、
「…まったく、お前には完敗だよ」
畑矢真を見上げる語労円の瞳が、少しだけ潤んで見えた。
「…ごたくはいいから、はやくしろ」
臨むところだと、畑矢真は体を倒し、語労円の体の上に重ねた。
もちろん全体重は掛けぬよう、いまだ腕で支えてはいたが。
「温かいな」
くすっと笑い、語労円が畑矢真の耳元で囁いた。
畑矢真は語労円の顔を真っすぐに見据え、
「今に、熱くしてやる」
「はやく」
しろと言う語労円の言葉は、それ以上発せられなかった。
再び重なった唇の間から、飲み込めない唾液が溢れる。
湿った音が、静寂のなかに響く。
二つの体が、一つに重なる。
脚を絡め、腕で抱き合った。
まるで最初から決まっていたかのように、静かで完璧な交合だった。
畑矢真が一人で今まで感じてきたような、焦りも苛立ちも、そこには無い。
いるのはただ、二匹の獣だった。
欲求のままに求め合う、二つの魂だった。
服を脱がせ合うのももどかしく、畑矢真は語労円のシャツを引き裂いた。
静寂に響くその音が、求める気持ちの激しさを物語った。
「あゆ…む…ッ」
語労円の名前を初めて呼び、畑矢真は語労円の下着に手を掛けた。
「っあ」
下着に強引に手を入れ、彼の源を引きずり出す。
0125朋友【5/7】2015/11/11(水) 01:42:48.41ID:aGw7tasv0
「やっ…」
抵抗を見せる語労円の手を、畑矢真は掴み、
「いいって言っただろ…」
低く問いかけて語労円の顔を見ると、語労円は耳まで赤くし、目を伏せた。
目をつぶったのを了解と取り、畑矢真は動きを再開した。
「俺も、名前で呼べよ」
強要するように語労円に言い、畑矢真は愛撫を続けた。
体格やプレーに不似合いなほどの、繊細な手の動きだった。
そのため思わず声を抑えられず、語労円はごまかすように彼の名を呼んだ。
「けん…す…け…っあぁ」
震える声で、快感をこらえるように、語労円は唇を噛んだ。
「いいから…聴かせろよ」
畑矢真は強い口調で言い、語労円の唇を開かせるように、再び口づけた。
「…もうっ…お…れ」
おかしくなりそうだ、という語労円の声を、畑矢真は肩で聞きながら、愛撫の手を強くした。
「ほしいって…言えよ」
畑矢真の激しい囁きに、語労円は目を強くつぶり、そして見開いた。
「あっ…」
哀願するような嬌声に、畑矢真は自身の分身に力が漲るのが分かった。
この俺が、男に勃起するとは。
少し苦笑し、それでもそれが運命だったのだと。
この男と大学で出逢ったあの時から。
語労円の手が、畑矢真の体を遠ざけるように、逆に引き寄せるように、力がこもる。
さまよう彼の手首を、畑矢真は握りしめ、
「俺がほしいって、言ってくれ…」
眉根を寄せた、それでも端正なその顔を畑矢真は見つめた。
0126朋友【6/7】2015/11/11(水) 01:43:30.91ID:aGw7tasv0
分身は既に、張り裂けそうに熱を持っていた。
今までのどんな女だって、こんなに興奮させはしなかった。
語労円の瞳から、涙が滑り落ちた。
透明なその雫が、頬を伝い顎に落ちるのを、畑矢真はじっと待った。
「あぁ…ほしい…っお前がほしいよ」
感極まったように、語労円が絞り出すように言った。
畑矢真ははち切れんばかりの自分を、語労円の腰に押し当てた。
驚きに、語労円の目が見開かれる。
「こんなになっちまった…お前のせいだ」
畑矢真は苦笑しながら言った。語労円は目を見開いたまま、恐る恐るそこに手を伸ばす。
手で触られ、畑矢真は目を閉じた。
もうこれ以上は、我慢の限界だった。
「…手で、いいか」
震える声で、語労円が尋ねた。
出来れば、お前の中に入りたい、という言葉を畑矢真は飲み込んだ。
さすがに、それは酷だろう。…まだ。
「ああ、たのむ」
その行為すら、互いの裸を日常のように見ている二人でも初めてだった。
語労円は生唾を飲み込み、一つ息をして、畑矢真の顔を見た。
「…下手でも、かまわないか」
何を聞くんだ、と畑矢真は内心可笑しかったが、平静を装い、
「いいさ…お前に触られているだけで、じゅうぶんだ」
語労円は意を決したように、あらためて畑矢真の分身を握った。
その動きは畑矢真が、普段語労円が自分で処理する時はどうしているのだろう、と不思議に思うほどの拙さだった。
「う…ッ」
畑矢真の欲望を耐える表情を見ていると、語労円も興奮してきたのか、呼吸が粗くなっていった。
0127朋友【7/7】2015/11/11(水) 01:44:42.49ID:aGw7tasv0
「っ…」
徐々に動きを速くした語労円の手に、畑矢真の手が重なった。
もっと強く握れということなのだろう。
語労円はさらに羞恥に顔を赤くした。
「あ…あゆむっ…お前が…すきだっ」
畑矢真は吠えるような声と共に、語労円の掌の中で欲望を爆発させた。
鉄の棒のようになった畑矢真の分身を握りしめ、語労円は呆然とした。
処女でもあるまいに、と畑矢真は頭の片隅で思いながら、シャツを引き寄せ、語労円の掌の上から被せた。
「…すまなかったな」
穏やかな声に戻って言った畑矢真に、語労円は耳を赤くしながら、
「…それは…こっちの台詞だ」
消え入るような声で言った。
普段では考えられない、しおらしい態度の語労円の横顔に、畑矢真は微笑んだ。
「じゃあ、今度はお前の番だな」
えっと言うように振り向いた語労円に、畑矢真は耳元に口を寄せ、
「何も考えられなくしてやる」
言いざま、自分の体を下へ移動した。
「っえ…あ」
語労円の驚きの声を上方に聞きながら、畑矢真は、シャツを引き裂いて現れた彼の滑らかな胸に唇を寄せた。
無駄な脂肪の無い、それでいて弾力のある胸は、驚きと興奮に大きく上下していた。
「いくぞ」
畑矢真は言い、語労円の乳首にねっとりと舌を這わせた。
「っんう」
語労円の吐息混じりの声が、心地よい音楽のように畑矢真の耳に届いた。
小さく形の良い乳首は、畑矢真の愛撫を待ち望んでいたかのように震えていた。
舌と同時に、もう片方を指で摘んでやる。
それだけで、面白いように語労円の体は跳ねた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

行為の途中ですが、ひとまず終わりますw
お目汚し大変失礼しました。
0128風と木の名無しさん2015/11/13(金) 23:48:24.53ID:m8yepIZZ0
棚の感想BBSの管理人さんはもう見ていないのかな?
宣伝で埋まりつつあるんだが
0129風と木の名無しさん2015/11/22(日) 14:35:27.33ID:FZTcUTjQ0
>>128
宣伝で完全に埋まったスレあるね
新スレ立てるしかないのかな
一応あげとく
0130このさきも2015/12/30(水) 02:04:08.10ID:btFA+Np50
ナマモノ。
某番組で見た同級生に癒されたので。
雰囲気でお読みください(;・∀・)

すみません保管庫に直接投下した為url貼り付けさせて頂きます

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


http://morara.kazeki.net/?130-131
0131このさきも2015/12/30(水) 02:05:56.43ID:btFA+Np50
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

失礼いたしました…
0132tormenting reliever 1/82016/01/16(土) 20:55:09.62ID:eSik5S970
置くとこがなくなったのでここにお焚き上げというか何というか
半生注意。ドラマ「えすてー:redとwhiteのそーさファイル」より不憫管理官受け
※オリキャラ攻め・レイプ・ハメ取り・複数・エロ堕ち注意
とにかく管理官をぐちゃぐちゃにしたかった話です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「……っ…!」
何てバカなマネをしてるんだ俺は。
「ぅ……っ、ふ……」
職場でこんなことするなんて……誰かに見られたらどうする?
「っは………ん、っく、ぅっ!!……っっ!!!」
でも仕方なかったんだ。こうでもしなきゃいつか爆発してしまう。
俺は弾んだ息を落ち着かせながら掌を見る。たった今吐き出した白濁に塗れた手。
つい顔を顰めてしまいながらペーパーで拭い取った。
俺が今いるのはどこかの階のトイレの一室。人気のなさそうなところに慌てて駆け込んだせいで
何階なのかも定かじゃない。そんな余裕もないほど俺は切羽詰まっていた。
若くして出世した者に向けられる妬みや嫌悪感。上層部と現場の意見の違いによる板挟み。
そして何よりS丁の存在。ありとあらゆるストレスに晒され逃げ場もなく溜りに溜まった疲れが
欲求不満となって現れてしまい、急遽発散させざるを得なくなってしまったのだ。
個室に入り、ベルトをくつろげて下着越しに自身に触れる。
あり得ないほど熱くなっていたそれを直接握り込むと手が勝手に動き出した。
逆の腕に顔を押し付けて息を殺しながら解放を促す。とにかく早く済ませたくて乱暴な刺激を与え続けた。
「………チッ…」
忌々しさについ舌打ちが出る。こんなところで自慰をしなければならない無様な自分に腹が立った。
――アイツはあんなに努力してるのに……散々偉そうなこと言っといて、俺は一体何をやってるんだ。
射精後の虚脱感と相俟って激しい自己嫌悪に陥る。
だがこんなことでいつまでも落ち込んでいるようでは管理官など務まらない。
今日の仕事はもう終えたことだし、さっさと帰って休めば気持ちも切り替えられるだろう。
そう思ってまだ少しぼんやりとしたまま個室を出る。
0133tormenting reliever 2/82016/01/16(土) 20:56:11.27ID:eSik5S970
「あれ?I田管理官じゃないですか。こんなとこで何してるんです?」
そこには捜査一課の若手刑事が立っていた。
ここで会うとは予想もしていなかったらしくかなり驚いている。
「…あぁ、急いで入ったんだ。すまない」
こちらもまさか人と鉢合わせるとは思わず、動揺が僅かな声の震えとなって漏れてしまう。
よりによってこんな状況で……最悪だ。
一刻も早くここから逃げたくて彼の横をすり抜けようとした時、何故か腕を掴んで引き止められた。
「何だ」
「何してたんですか?こんな人気のないところで」
「…ここはトイレだろう。やることは一つだ。離せ」
「ナニ、してたんです?こーんなに息切らして」
そう言って彼が取り出したのは携帯電話だった。何か操作をすると、男性の荒い息遣いが聞こえてくる。
「っ!?」
「これ管理官の声ですよね。用足すだけにしては随分苦しげですけど」
「……っ…!!」
ウソだろ……撮られたのか…!?
「ひょっとして、ヌイてました?」
「なっ…!?だ、誰がそんなっ――」
言い当てられて思わず声を荒げてしまう。これじゃハイその通りですと白状してるようなもんだ。
「よっぽど溜まってたんですねぇ…こんなとこでやっちゃうなんて」
「違う!っ、離せと言ってるだろ!」
纏わりつくような視線を感じ、必死に手を振り解こうとするが上手くいかない。
頭だけの管理職と現場で活躍する刑事とでは体格も体力も違いすぎた。
結局逃げるどころか奥の個室に連れ込まれ、壁に押さえ付けられてしまう。
「…っ、おい!ふざけるな!これは何のマネだ!」
「あんまり騒がない方がいいと思うけどなー……ここ、一課のオフィス近いんですよ。
それにまだ他にも残ってるヤツいるんで」
「……!?」
「こんなとこ見られたら色々マズいんじゃないですか?ねぇ……I田管理官?」
背後から耳元に吹き込まれ、思わず身を強張らせる。その一瞬の隙をつき、彼は俺のジャケットを脱がせて腕を拘束してしまった。
0134tormenting reliever 3/82016/01/16(土) 20:57:01.84ID:eSik5S970
「は…!?お前、何を…?」
行為を咎める間もなくベルトを外され、ジッパーまで下ろされる。
そこで彼は身を引いたが、俺は身じろぎ一つできなかった。
「ハイ。離しましたよ?」
「……っ…」
「行かないんですか?……あ、そうか。動いたら下脱げちゃいますね」
「くっ…!」
どうすることもできず、横目で睨みつけるのが精一杯だった。
確かにこんな無様な格好で出ていく訳にはいかないし、上手く逃げおおせたとしても
めちゃくちゃに結び固められたジャケットを自力で解くことは不可能に近い。
この男に見つかった時点で退路は断たれていたということか……もう己の不運を呪うしかない。
「ところで、もうスッキリしちゃいました?」
「…何…?」
「こんなとこで出さなきゃいけないくらいギリギリだったんですよね。一回だけじゃ物足りないんじゃないですか?」
そう言うなり男の手が下半身に伸びる。下着の上から揉みしだくように触れられたが、
熱を放ってまだそう経っていないからか反応が思わしくなかった。
「…止めろっ……どこ触ってる…!!」
「おかしいなー…さっき出したからダメみたいですねぇ。どうしましょう」
不満そうに呟いて、彼が手を後ろへと滑らせた。
柔らかくもない尻の肉を解しながら、時折窄まりを布越しに刺激してくる。
あまり触られたくない部分なのに……思わず身体がビクついてしまう。
「どうも…こうもない!いい加減、っに…しろっ…!!」
「何ビクビクしちゃってるんですか?別に取って食ったりしませんって」
「うるさい離っ……っっ!?」
「あー、ここか。ココが好きなんですね…ふーん」
「……触るな………ぅっ、っ…!!」
男の指がしつこくそこばかりを弄る。声を聞かれたくなくて唇を引き結んだが、どうしても上手くいかなかった。
「んっ…ふ……ぅっく…」
「…管理官って結構エロい声してるんですね」
「ひっぁ…!!」
0135tormenting reliever 4/82016/01/16(土) 20:57:56.11ID:eSik5S970
耳元に囁かれるのと同時にぐっと指を押し込まれ、思わず小さい悲鳴を漏らしてしまう。
手で口を塞げないことがこの上なく恨めしかった。
「うわ、何ですか今の!」
「っ何もないっ!止めろと言ってるだろ!」
「大声出しちゃマズいですってば」
「ぐ…っ!」
俺は顔を真っ赤にして俯く。もう泣きだしたいほどに恥ずかしくて、逃げ出したいほどに恐ろしかった。
触れられたくない理由……それは単に不愉快だからというだけじゃない。
――俺が、そこの使い方を知っているから。どうなるのかをよくわかっているからに他ならない。
「っ………くそっ…!!」
「――だから、ちゃんと声我慢してくださいね?」
「…え?うわっ!?」
突然視界が回転し、正面がトイレの壁から男のスーツに変わった。俺は意図せず彼と向かい合って立つ格好になる。
彼は俺を抱き寄せると今度は下着の中に手を潜り込ませ、窄まりを直接弄り始めた。
「は…!?っウソ……止めろっ、それは駄目だ!」
「大丈夫ですって。意外と気持ちいいらしいですよ?」
「良くないっ!駄目だって、やっ――ん゙んっ!!!」
必死に首を振って拒んだのに、男は歯を見せて笑った。そしてゆっくりと第二関節まで指を侵入させてくる。
「おー…入っちゃいましたよ」
「……ぁ゙…!!っは、あぅ……!」
「そこまで痛くないでしょ?ってか思ってたよりきつくないんですけど」
「っ…嫌、だ………抜け…っ、抜いてっ…」
「……管理官?」
「はぁっ…ん、っ……抜い、て…くれ、っく…!」
浅い部分で動き回る指に声が上擦る。そこから広がっていく疼きに身悶えた。
実はストレス発散のために色んなことに手を出してみたのだが、一番効果があったのが前立腺マッサージだった。
今までは数ヶ月に一度するかしないかという程度だったが、S丁と関わって以降確実に回数が増えてしまっている。
最近ではもう一回じゃ発散しきれなくて、自分でも嫌になるくらい何度も何度も……
0136tormenting reliever 5/82016/01/16(土) 20:58:51.61ID:eSik5S970
「や、め……ぁっ!ぅんっ…!!」
「なーんだ、管理官もう知ってるんじゃないですか。こんなに感じちゃって」
「……か…んじてない…っ!…っ指…止めろっ…!」
「うっそー。指じゃ足りないの?一体どこまで開発済みなんですかーもう」
「違う!!ふざけたことっ――っ、はぁっっ!!?」
言い返そうとした瞬間に強烈な電気が奔った。男の指が前立腺を探り当ててしまったからだ。
「っ…あ゙、ぁっ!っやっだ、あっ…!!」
「お。当たりですか?噂の前立腺」
「ん゙はっ…!!っ、そこっっ、押すなぁ!!」
「ほら、めっちゃ音してるのわかります?やらしー…」
「ひぃっぅ、ゔぅ…っ!!」
身体を密着させられている分、彼に身を預けて強過ぎる快感に耐えるしかない。
まるで縋り付いて泣いているようで、それもまた屈辱だった。
「嫌っだ、も…やめろっ、ぁ、っあ、あ゙っ!!」
「泣くほど気持ちいいんですか?もうイッちゃう?ねぇ。イッちゃうの?ねぇってば」
「――ぃっ!!!っゃ、うぁ゙…っっ!!!」
男の執拗な責めについていけず、とうとう何かが弾けたような気がした。それは俺が絶頂に達した感覚だった。
「…………っっぁ……は、っ…!!!」
「っわ!……マジ?管理官本当にイッちゃったんですか」
「っ……!!っイ……てない…っふ、ぅっ、ん゙…!!」
「いや、すっごい脚ガクガクしてますけど」
彼の腕がなければへたり込んでいたほどに脱力し、中に入ったままの指を締め上げながら強がったところで何の意味もないのに。
そんな無様な姿を面白がっているであろう男にもたれ掛かって震える俺は、すぐ横のドアが開けられる音を聞いた。
「っっ……!?」
「おー来た来た。ちゃんと撮れたか?」
「もうバッチリ。音も映像もキレイなもんだよ」
「……は…?な、に……それ…!?」
突然個室に入ってきた男の手に握られていたカメラを見て心臓が止まりそうになる。
彼らのやりとりから導き出される答えを信じたくなくて、俺は目の前にいる男を凝視するしかなかった。
0137tormenting reliever 6/82016/01/16(土) 20:59:47.10ID:eSik5S970
「え?わかるでしょ?今のエローい管理官の声とか顔とか、全部録画してましたってことですよ」
「録画…っ!?」
「そうなんスよー。んで、こっからはハメ撮りいっちゃいますんで」
「――っっざけんな!!お前ら、こんなことしてタダで済むと思ってんのか!?」
恐怖でパニックに陥った俺は、身動きが取れない代わりに喚き散らした。まだ人がいるのなら気付いて飛び込んでくるかも――…
「あ、叫んでも誰も来ませんよ。さっきの『残ってるヤツ』ってコイツのことなんで」
「そうそう。で、オレが最後なんスよね」
「だからもう思いっきりヨがっちゃって大丈夫ですよ。ハハッ」
「………っぅ、そだ……そんな…っ」
最後の望みを完全に断ち切られ、目の前が真っ暗になった。
――撮られた。弱みを握られた。こんなヤツらに。
脅される?ネットに晒される?
いずれにせよもう俺の人生は終わりだ――…
「そんな泣きそうな顔しないでくださいよー。お楽しみはこれからなんだから…よっと」
我に返ると、いつの間にか目の前の男がカメラを持っていた。状況を把握するより先に、腰を掴んで引き寄せられる。
何かのキャップが開き、ヌチヌチと粘り気のある音がする。秘部を指で広げられ、そこに熱いモノが宛てがわれた。
「っひ…!」
「コイツのって、短い代わりに太さが凶暴なんですよねー…ちょっと苦しいかもしれないけど、開発済みの管理官なら平気でしょ?」
「……いやだ……やめろ………やめっ…」
「ほら、リラックスしてー……」
「っぅん゙っっあ゙ぁ…っ!!!」
捩じ込まれたモノの圧迫感は凄まじく、押し出された空気が悲鳴に変わる。
身体は拒絶反応を示し、内壁をキツく締めて侵入を阻止しようとする。
だが後ろの男が無理に突き上げようとはせず、時間をかけてゆっくりと確実に押し進めていくせいで結局無駄な抵抗に終わった。
「っあ゙…!!ぅぁ゙、ゔっ……っぐぅ、っっ…!!」
「管理官息吐いて。楽になりますよ」
「もう全部入ったから……ね?」
「……っ、っ、ぁ……あ゙…はぁっ、は…っ、ひ、ぅっ」
侵入が止まってようやく酸素を吸い込んだ。
心臓は狂ったように脈打ち、全身は焼けるように熱く、頭の中は凍り付いたように真っ白だった。
一人では絶対に辿り着けない感覚。まだ理解が追い付かない。
0138tormenting reliever 7/82016/01/16(土) 21:01:15.64ID:eSik5S970
「…あぅ゙……ぁ…はっ……」
「大丈夫ですか?…トンじゃったか」
「もう動いていいかな?」
「ゆっくりな」
「やっ……まって、まだだめ…」
彼らの言葉を聞いて、何とか頼んでみたが聞き入れてくれるはずもない。
後ろの男は入ってきた時と同じくらいの緩慢さで自身を引き抜いていった。
「っあ゙ぁ、あ、抜け…るっ、ぅ……!」
そしてまたゆっくりと根元まで突き入れて、外れそうになるほど引き抜いて。
何度も繰り返される内に圧迫感は快楽へと変わり、悲鳴は嬌声へと変わっていく。
「ん゙…っはぁ、はっ、んん……っく…」
「お?何か声がいい感じに…」
「やっぱり?さっきからI田さんの……I田さんって呼んでいいっスか?ココ、めっちゃヒクヒクしてきてる」
「さすがI田さん。誰に開発してもらったんですか?もしかして自分で?」
「……う、るさっぃ……名前…呼ぶな……この、変態っどもがっ…!!」
――その変態に犯されて喘いでるお前は何なんだよ偉そうに。
そう思われているのはわかりきっていたが、だからこそコイツらにも、自分自身にも怒りがこみ上げてくる。
「へぇ…言い返せるくらい落ち着いてきたんですね。ならもう思いっきり掘っちゃえよ」
「おーし!じゃあいきますよーI田さん」
「――んぐぅ!!っっか、っは……ぁあ゙っ!!」
いきなり突き破られそうなほどの強さで揺さぶられて目を見開いた。
視界に入った目の前の男はカメラを掲げ、興奮した笑みを浮かべている。
「ゔ、ゔっ、ぐっっ!!うあっっはぁっ!!」
「I田さーん…さっきみたいに可愛い声出してくださいよ。せっかく撮ってるんだからさー」
「……いっ…やだぁっ…!!っぁ゙っ、んぁっ、ん゙…っ!!」
「………あー…オレイくかも…っ」
「っっ!?」
「中に出してやれば?ハメ撮りの記念に」
「それイイな…!I田さん、オレの全部受け止めてくださいねっ…はぁ…っ」
「いいわけない!!抜けよっ!!抜けって、あっ!?やめ、腰振るなっ、突くなぁっっ!!」
俺は泣き喚いて必死に拒んだ。だが逃げる術などない。男が絶頂を迎えるために黙って使われるしかなかった。
0139tormenting reliever 8/82016/01/16(土) 21:02:20.97ID:eSik5S970
「ん、んっ……はー…あ、出そう……I田さん…いいですか?いいっ…?」
「やだっ!!嫌だぁっ!絶対出すなっ、出す、なっぁ、あ゙!だめっ、そこ突いたらっ…ぁ゙ぁっ!!」
「…やべ、もう出るっ……うぅっ!!」
「ん゙っ……っ!!!」
後ろの男が呻くのと同時に一突きする。息が止まった瞬間に内部で熱が弾け、何かが溢れ出した。
「………ウソ……マジ、で…中に……!?」
「ハイ…出しちゃいました」
「っ………出すなって…嫌だっ、て言ったのに…っ!!」
何もかもをズタズタにされたショックで涙が止まらなくなった。カメラの存在も忘れ、みっともなく泣き続ける。
「でもI田さんちゃんとイッてたから、案外ソッチ系なんじゃねーの?ねぇ」
「そうなんだ?でもま、良いのが撮れて良かったよ」
目の前の男はそう言ってカメラの電源を落とした。
――終わったんだ…この地獄みたいな時間も、この先のキャリアも全部、終わった。
明日からどうすればいいんだろう。もう辞めるしかないか…
頭も心も空っぽになったような気がして何もできない。俺の中から異物が無くなっても、腕の拘束を解かれても、ただ啜り泣くだけだった。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
少し時間を置いてから続き持ってきます
0140tormenting reliever(後半) 1/82016/01/19(火) 00:45:21.81ID:PsKRcx+V0
すみません続きです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「………ぇ…?」
そんな俺を後ろの男が抱き寄せた。
かなり体格が良いようで、全く力が入らない俺を体育座りの状態でひょいと抱え上げてしまう。
そして脚を開かせ、目の前にいた男に差し出した。
「はいどーぞ」
「おう」
「は…!?何でっ…」
「え、だっておれがまだでしょ?」
「っも…十分だろ!?ここまで、めちゃくちゃにして……動画まで撮ったくせにっ、これ以上何が欲しいんだ…っ!!」
顔をぐしゃぐしゃにして彼らを詰る。
何で俺がこんな目に遭わされなきゃならない?
俺はただ、ストレスから逃げて楽になりたかっただけなのに…
「……何で俺なんだよ…!っそんなに、俺のこと………嫌なんですか……ぅっく…」
もう普段の強気な自分でいることすらできなかった。
歳相応の口調でしゃくりあげる俺に向かって目の前の男が呆れたような、慰めるような溜息を吐いた。
「……わかってないなぁI田管理官は。これは、貴方のためにやってることなんですよ?」
「どこが……っ――あっ!?あ、また挿れっ…!!」
「おれのはあいつのみたいにデカくないですから大丈夫ですって。リーチで勝負なんで」
「っ…!?っは……あ゙っぅ、ゔぅ…っっ」
男のモノがズブズブと挿れられていく。まだその感覚に馴染めない俺は歯を食いしばって呻いた。
「うーわ……コレヤベェな…」
「だろ?吸い付いてくるっつーかさ。相当使ってますよねーI田さん?」
「……はー…っ、はっ………っぇ、え?やっ、待っ…ぁあ!?」
先端が前立腺に触れる。そのまま潜り込んでいく屹立全体がそこを擦っていく。
悪寒にも似たような感覚が背筋を駆け抜け、脳に達したと同時に破裂した。
「っっ!!!っは、っ!!ぅあ゙あっ……!!!」
「い゙っってぇ…!!」
目の奥で火花が散る。全身が粟立つ。勝手に痙攣を起こし、悲鳴が漏れた。
0141tormenting reliever(後半) 2/82016/01/19(火) 00:46:13.15ID:PsKRcx+V0
「っはぁっ、あ゙、っな…これ、なにぃっ!!」
「…っあーびっくりしたー……マジで食いちぎられるかと思った…」
「ドライ来た?」
「来た来た。すげー締まってる」
「ん゙、ん゙っふ…っぅ、うぅ゙ー…っっ!!」
「わーもうI田さん素質あり過ぎっスよ」
嘲笑にも似た男の言葉も良く聞き取れない。経験したことのない強烈な快感に溺れそうになっていた。
射精を伴わない絶頂があるということは知っていたが、あくまでもストレス発散の手段として
後ろを使っていただけの俺はそこまで追求する気なんてなかった。
……そこまで突き詰めてしまったら、行為そのものにのめり込んでしまう気がして怖かったのもある。
「…っはぁ……っ、はー…っ」
「気持ち良かったですか?でもまだ終わりませんよ」
「――ぇっ…ぅわ、あぁあ!!?」
「せっかくだから、存分にイキまくっちゃってください」
「っ!?動、くなって!!待て、待っ――!!」
俺の願いなんて聞いてくれるはずもなく、目の前の男は根元までモノを押し込んでいく。
どこまでも体内を侵してくる塊の熱さにまた火花が散った。
「ひぃ…!!い゙っ、やだっ、やだっ!!あ゙ぁっ!!」
「やだとか言いながらキュンキュン締めないでくださいよ…可愛いなーもう」
「ん゙っ!?抜けっ…ぬけるのだめっ、それだめ 、イくっ、イっ……っっ!!!」
「わっ!ちょ、I田さん暴れないで。落としちゃいますから」
後ろの男が俺を宥めながら身体を抱え直した。たったそれだけの刺激で俺はまた達してしまう。
前の男は前立腺を擦り上げるように抜き差しを続け、その間中ずっと俺は無理な絶頂を迎えさせられた。
僅かに残っていたプライドや理性も快感で焼き切られていく。
今までの自分を構成していたものが全部壊されていく耐え難い苦痛に思わず叫んだ。
「んぁ゙あぁっ!っぁ、こすんなっ、中がっ…おかしくなるぅうっ!!」
「泣き顔もそそりますね。もっと泣かせたくなっちゃいますよ」
「っ、もうやめ……っあ゙!!また来るっ、まだ、イッ、てるのにっ、っひぁ!あ゙っ、ぃあっ、あ゙ーっっ!!!」
全身が抑え切れないほどガクガクと震え、自分でも驚くような声を上げて精を吐き出した。
許容を超え放心状態になった俺は涎を垂らしたまま必死で息をする。いつ外れたのか、汗や涙で汚れた眼鏡が個室の床に転がっていた。
0142tormenting reliever(後半) 3/82016/01/19(火) 00:47:25.96ID:PsKRcx+V0
「トコロテンでしっかりイケちゃいましたねーI田さん」
「……あら?気絶しちゃった?」
「……………っ…」
「いや、何か言ってる」
「………っごめ……なさい…………ぁやまる、から……ひっ………も、しないで……ぅっ」
イジメられっ子みたいに小さく縮こまって泣きながら何度も許しを乞うた。
――こんなはずじゃなかった。こんな台詞を吐くような人間でありたくなくて今まで努力してきたはずなのに。
肩を震わせボロボロと涙を零す俺を、後ろの男が包むように抱き直して便座に腰を下ろす。
まるで親に抱っこされた子供みたいだ。目の前にいた男は狭い個室の中でわざわざしゃがみ、
俺の目を下から覗き込んだ。
「謝らなくてもいいんですよ。言ったでしょ?これはI田さんのためにしてあげてることなんですから」
「っ………だ、から……何で…っ…」
「確か…Y合根警部がSTの指揮官に配属されて最初の事件だったかな。おれもその時が初めてだったんですよ。管理官が担当の捜査」
男は俺の手を優しく撫でながら語り出した。
「出世街道まっしぐらの超エリートで、自分より幾つも年上のベテラン刑事達を見下して顎で使うイヤミなヤツって皆言ってました。
まぁおれも最初はそう思ってましたよ。だってペンでマグカップ叩いて黙らせるような上司って!」
自分がどう見られているかはわかっているつもりだったが、面と向かってはっきり言われると
やはり傷付くものだ。思わず唇を噛み締める。
「でもね、おれ気付いちゃったんですよ。この人虚勢張ってんなって。
若いからってナメられないように精一杯強がっていかにもエリートです、お前らとは違うんだって
態度取ってるくせに、ふと一人になった時とか凄く疲れた顔したりしてますよね」
男の手がそっと頬に添えられる。つい身構えてしまいながらも、その先の言葉を待っている自分がいた。
そんな風に見てくれている人がいるとは思っていなかったから。
「この人はこの人なりに頑張ってたんだなーって思ったら、おれ――」
「…………」
「あんたのこと、ぐっちゃぐちゃに犯してやりてぇなって思っちゃいました」
「――っ!?」
0143tormenting reliever(後半) 4/82016/01/19(火) 00:48:38.75ID:PsKRcx+V0
だがそんな淡い期待はすぐに握り潰されてしまう。
「その息苦しくなるくらいカッチリ着込んだスーツひっぺがして、奥まで突っ込んで何回も中出しして、プライドとか価値観とか
全部へし折って、おれ無しじゃいられないような身体にしちゃえたらスゲー最高だろうなって」
明らかに興奮し、舌なめずりをしながら男が笑いかけた。あまりの異様さに恐怖を覚えた俺は顔を引き攣らせる。
「…ひ……っ………いや……」
「ってかさっきから何回も嫌だって言ってますけど、I田さん本当はそんなに嫌じゃないでしょ」
「……え…?」
「嫌だ止めてとか言いながら、ちゃんと感じてるしイッてるじゃないですか。こーんなレイプ紛いなマネされてるのに気持ち良くなれちゃうなんてよっぽどですよ?」
「ちが……そん、な…」
「あなたは犯されたいんですよ。アタマおかしくなるくらいケツ掘られてイキまくって、
難しいこととか何にも考えなくていいようになりたい――そういう願望を抱えてる。違いますか?」
瞬きもしない瞳に見つめられ、何故か一言も反論できなかった。
――俺が望んでる?そんなバカな。誰が好き好んで男に襲われたがるって言うんだ。
頭の中で必死に否定したが、動悸が全く治まらない。何をこんなに動揺してるんだ…?
「だから撮ってあげたんです。あ、先に言っときますけどこれネットに公開したりとかしませんから安心してください。
どれだけ加工したってSTの連中なら100パー見破れるだろうし、おれも捕まりたくないし」
「……じゃあ……?」
「おれらに襲われても抵抗できない理由ができたでしょ?ハメ撮り動画っていう弱味を握られてるんですって言い訳できるじゃないですか」
まるで向こうが譲歩しているような口振りだった。
「全部おれらのせいにしていいんですよ。I田さんは脅されて言いなりになるしかなかった……あなたは被害者なんです。皆同情してくれますよ」
「………っ…」
告発したいならすればいいとでも言いたいのか。これは俺が誰にも打ち明けられないのを解った上での発言だ。
結局コイツらの掌の上なんだ。逃げ道を用意しておきながら、逃げ場は完全に奪われている。
どうもこうもしようがないじゃないか。
悔しくて情けなくて堪らない。また涙が滲んできた。
0144tormenting reliever(後半) 5/82016/01/19(火) 00:49:57.73ID:PsKRcx+V0
――何でこんなことになったんだろう。
何でこんなに辛い思いをしなきゃいけないんだ。
俺だって頑張ってるのに何で?
俺が弱いから?上手く立ち回れないから?
俺の何がいけないんだよ…!
だがもう感傷に浸る間も与えてもらえないようだ。
「……ぅあっぁ、何っ!?またっ…!?」
「だから、おれがまだって言ってるじゃないですか」
「待って!もう無理っ、無理だから…」
「あれ?『嫌だ』って言わないんですね」
「っ…!!」
「ほらね。こうされるのが好きなんですよ…あなたは」
「っっぐぁ、あ゙ぁっ!!!」
前の男が腰を掴んでまた屹立を突き立てる。一気に全部挿れられた衝撃が強すぎて身体が硬直した。
「あーあーまたイッちゃってる」
「……はっ……は…ぁ゙、あ、ぁ…っっ」
後ろで俺を支えていた男は面白がって笑っていた。無意識に彼の腕にしがみついてしまっていたせいもあるだろう。
今のショックで俺の中の何かが壊れてしまったようで、身体に上手く力を入れられなくなった。
男が奥を叩く度にだらしなく声を漏らし、自分でもよくわからないまま絶頂を迎えては白濁を飛び散らせる。
「ん゙っ、ん……っはぁっ!あ、あー、あ゙っぁ!」
「わーお。だいぶ壊れちゃってんね」
「まぁこんだけイかせりゃなぁ。ねぇI田さん?」
「ぁゔ…ぁっ、あ、またっ、またイくっ!イッちゃ……っっひぃっ!!!」
繰り返される拷問のような快楽に気が狂いそうだった。いや、もしかしたらもうおかしくなっているのかもしれない。
自信、誇り、自尊心――必死に飾り立てて鎧にしていたものが、揺さぶられ、突き上げられる度に剥がれ落ちていく。
0145tormenting reliever(後半) 6/82016/01/19(火) 00:51:27.97ID:PsKRcx+V0
これ以上暴かれていくのに耐えられなくて、自分を守るように腕で顔を隠しながら泣いた。
「はぁっ、っぅ、ぐ……やだ…もぉやだ……!…っぅぅ…」
「楽になりたいでしょ?流されちゃってくださいよ。おれらに任せてくれれば、嫌なことも苦しいことも全部忘れられるくらいめっちゃくちゃにしてあげますから」
「需要と供給が上手いこと噛み合うじゃないスか。こっちはヤりたい、そっちはヤられたい。でしょ?」
でしょ?なんて聞かれてもわからない。もう頭が回らなくなってきた。
「ぃゃだ…あ゙っ、は、はぁっ…ん゙っ!」
「I田さん、ねぇ。コレ好きですよね」
「ぃ゙っ!!あ、も…そこ、擦らな、っで…!!」
「何でですか?またイッちゃうから?」
「っ…イキ、たくない…!!もう、イキたくなっ…ぃいっ!!」
考えるより先に口から出てしまう。これからこの経験に苦しめられることになると思うと怖くて仕方がなかった。
「…ひっく、ぅ゙、もうやめ…てくださ………ほんとにっ、本当に無理、だからっ…!!」
「わーもうI田さんマジ可愛すぎ!オレまた元気になっちゃいそうですよ」
後ろの男がそう零したのを聞いた途端、ついさっき無理矢理押し広げられた衝撃を思い出して極度の恐慌状態に陥ってしまう。
耳を塞ぎ、首を振りながら何故かひたすら謝っていた。
「っっ!!やぁっだ、ごめんなさ、ごめんなさいっ!も、挿れないで…!!」
「おい…怖がらせんなよ」
「悪い悪い。I田さんすみません。今日はもうしませんから…ね?」
「そろそろ限界かな……最後は思いっきりイっちゃいましょっか」
「ん゙っはぁっ!!?」
前の男が中を掻き回すように腰を打ち付けてくる。ビクンと肩を揺らした俺の首筋に口付け、後ろの男がワイシャツの中に手を滑らせた。
痛いくらいに固く立ち上がっていた乳首を転がされると、全身に痺れるような快感が奔る。
熱くて、苦しくて、息が出来ない。
何度も悲鳴を上げたせいで声は掠れ、止まらない涙が頬を伝って汗と混じり、肌を濡らしていく。
「あ゙っ、やぁっ!!そこだめぇ!!イくのっやだ、ぁ、うあ゙ぁっ!!」
「おー…中すっげー締まってきた」
「ぐぅうっ!!っはぁっ、もぉ…許しっ……たすけてぇっっ!!」
0146tormenting reliever(後半) 7/82016/01/19(火) 00:53:04.71ID:PsKRcx+V0
――助けて?
コイツらが助けてくれるのか?何から?
こんなクズみたいな奴らが、俺のために何をしてくれるっていうんだ。
このザマを見てみろ。良いように玩ばれて、泣いて縋る姿を嘲笑われてるだけじゃないか。
「えぇ…助けてあげますよ。当然じゃないですか」
「管理官のためですからね!ははっ」
ほらな。笑ってる。
抵抗もままならず泣き喚くだけの自分を殺してしまいたいほど恨めしい。
――アイツなら…アイツらだったら、こんな目に遭う前に上手く逃げ切れるんだろうな…
マヌケは俺だけか。だから大事なものも失うんだ……
「――ぃぎっ!?っひ、あ゙ぁ゙あっっ……!!!」
突然乳首を強く抓られ、同時に前立腺から最奥までを思い切り貫かれた。
何もかもが真っ白になって炸裂する。俺は大きく仰け反って全身を強張らせ、自分の腹に精液を撒き散らして絶頂を迎えた。
内壁が蠢いて男の屹立を締め上げると、何度か脈打って中に射精されたのがわかった。
「ぅん゙っ…!!」
「…………っ…!!!っかっ……はあっ、ぁあ゙…っ!!」
「……っはー…I田さん、ホント最高ですよ」
「乳首がイイんですね……覚えとこう」
「は……ぁぅ、ゔっ、ん゙、っは…ぁっぁ」
しばらく身体の痙攣と漏れ続ける声が治まらなかった。男は俺が落ち着くのを待って萎えた自身を引き抜き、ついでに中に出した精液を可能な限り掻き出してくれた。
脅して強姦してきたはずの相手の行動に疑問を抱く間もなくテキパキと身を清められていく。汚れた顔も綺麗に拭われ、洗浄された眼鏡がその目元に掛けられた。
「…………っ」
「ねぇI田さん。おれらはあくまでもあなたを癒やしてあげたいんです。ヤるだけヤって放置なんてことは絶対にしませんからね」
「そうだ、家まで送りましょうか?身体超ダルいでしょ。でもその分きっと凄く良く眠れるはずっスよ」
随分と勝手なことを言ってくれる。こんな風に手厚くフォローされるくらいなら放ったらかされてた方がまだマシだった。
……俺がこう感じることまで想定しているのか。どこまでも俺を惨めにさせて追い詰めようという魂胆なのか。
冗談じゃない。いくら何でもそこまでナメられてたまるか…!
ふつふつと沸き上がる怒りに歯を食いしばり、憔悴しきった身体を気力だけで動かして個室を出ようとした。
0147tormenting reliever(後半) 8/82016/01/19(火) 00:55:12.00ID:PsKRcx+V0
「あ、まだ無理しない方がいいですって」
「……うるさい………一人で帰る」
「そんなこと言わずに!オレ送りますよ」
そう言って男が手を差し出した。
「っ触るなっ!!」
俺は怯えたように身を固くしてその手を払い退ける。急に動いたせいで足元がフラついたが、何とか踏み留まって彼らを睨み付けた。
「………二度と、俺に近付くな…っ!」
「もちろん。しつこく接触したりはしませんよ。だって多分I田さんの方がおれらのとこに来たくなると思いますから」
「何…?」
その言葉に戸惑っていると、男達が距離を詰めてきた。扉と彼らに挟まれ身動きが取れない。
「さっきの凄い良かったでしょ?もう身体は覚えちゃったんじゃないかなぁ…」
「I田さん素質あるみたいだし、もっといろんなこと試してみませんか?ローターとか使ってみましょうよ。ねぇ?」
「……なっ…!?」
耳元でとんでもないことを囁かれ愕然とする。目を見開いたまま固まる俺に、ダメ押しの一言が浴びせられた。
「またストレスが溜まってどうしようもなくなった時、きっと今日のことを思い出して堪らなくなってくるはずです。
そしたらまたここに来てください……ぶっ壊れるくらい犯してあげますよ」
「――――っっ…!!」
「あ、そうだこれ。I田さん専用なんで、いつでも連絡してくれていいですよ。二人でも、どっちか片方でも、I田さんの好きなように使ってください」
皺だらけになったジャケットの内ポケットに名刺を差し入れ、男達は出て行った。
個室に一人取り残され立ち尽くす俺を、静寂が取り囲む。
――嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ。
あんな暴力を俺が求めてるはずなんてない。
まためちゃくちゃにされたいなんて思うはずがない。
絶対にあり得ない………絶対に…っ!
彼らの言葉に激しく狼狽えるあまり、叫び出しそうになるのを必死に抑え込んだ。
ガタガタと震える身体を抱き締め、小さく蹲って耐えるので精一杯だった。
しばらく立ち上がることができず、どうにか気分を落ち着かせてトイレから出ると深夜1時を回っていた。
0148tormenting reliever(後半) 9/82016/01/19(火) 00:56:23.16ID:PsKRcx+V0
もう自宅に戻るだけの気力も体力も残っていなかったので、一番近いホテルに泊まることにした。
そこから先のことはあまり覚えていない。軋む身体を引きずってシャワーを浴び、ろくに着替えもしないままベッドに倒れ込み意識を失った。
それでも日々の習慣でいつも通りに目を覚まし、いつも通りに支度をしてまた出勤するのだろう。いつも通りに雑務をこなし、ストレスを浴び、疲れを溜めていくのだ。

俺はこの日の出来事をなかったことにしようと思った。別のストレス発散法を探し、上手く対処できるように努力しようと心掛けた。
だがジャケットの内ポケットに入れられた名刺を何故か捨てられないまま時が過ぎ、職務や事件に追われる日々が続いた。
そして――…
「こんばんはI田管理官。お久し振りです」
「思ってたより早かったっスね。でももう大丈夫です。楽になりましょ?」
「っ……!」
俺はまたあのトイレの前に立っていた。
カメラや手錠、様々な道具を用意した男達が、優しく微笑みかけて手を差し伸べる。
俺は、その手を拒めなかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
改行の関係で1レス増えてしまいました
スレ占拠失礼しました
0151風と木の名無しさん2016/02/22(月) 22:51:04.06ID:TVddCiYg0
焦点、紫×緑で小話をひとつ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

【春は来ぬ】

「月が綺麗だね」
刹那、ぴくりと心が震える。
期待などするものではないのに、反射的に動かされてしまう心に思わず苦笑いだ。
平然を装って肩を並べて歩く老人に視線を向けると、空を見上げてほうと息を吐いているところだった。
「冨士子さんに怒られますよ」
きょとんとした表情をしたが、すぐにさも楽しげに笑い始めた。
「やだね 、夏目漱石じゃあるまいし。純粋に月がよく見えるって教えたかっただけだよ」
なるほど、雲の影を時折纏いつつも月は静かに光を湛えていた。
春は名のみ、冬の残滓を含んだ夜の空気はきんと冷たく、その姿を一層美しく見せていた。
「てっきり私は愛の告白をされたかと」
「馬鹿だね」
「師匠のためなら死んでもいいです」
「四迷先生に謝んなよ」
冗談として、堂々と告げることの出来る愛の告白。
好々爺は視線に言葉に込められた思いに気付いているのかいないのか、月が眩しいとばかりに目を細め、目尻の皺を一層深くして言う。
「あたしにお迎えが来るまで、精々恋い焦がれていなさいよ」
あんたのお迎えが来るまでだって?
冗談じゃあない、俺に迎えが来るまでの間違いだ。
この身はじりじりと 、死ぬまで叶わぬ恋に焦がされ続けるのだ。
そうして骨まで焼ききられた時に、蝋燭の火が消えたらどんなに素敵だろうか。
「師匠があんまり焦がすから、腹が煤けて真っ黒になっちまいましたよ」
「そりゃあたしのせいじゃないだろ」
言いがかりもほどほどにしろと、からからと笑う声を、細い体躯を、今自分にだけ向けられたその優しい眼差しを、目に、耳に、心に焼き付ける。

全く罪なお方だ。
人に火をつけておいて、自分は先に消えちまおうってんだから。
全てを五感に刻み付けたい。
誰にも見せない、告げない、それでいい。
気付けばじわじわとかけられていたその呪い、効果は蝋燭の炎が消えるその日まで。
この思いの終着点は、俺の墓の中だ。
じりじりと心を焼かれる痛みすら、男にとっては最早愛しい自身の一部だった。
幸せそうに笑いながら、今夜もまた冗談を吐く。
「お慕いしていますよ、師匠」

【了】
0152風と木の名無しさん2016/02/22(月) 22:53:48.63ID:TVddCiYg0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

最早同じ空間で息をしているだけでも愛おしいです、このお二方
お目汚し失礼しました
0155梅は咲いたか 1/42016/03/08(火) 00:50:12.60ID:kU7IxZ000
焦点、紫×緑です
時系列は>>151の「春は来ぬ」の、少し後です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


【梅は咲いたか】

「梅祭りですって。いいなぁ、もう春ですね」
それぞれが思い思いに過ごしている楽屋で、鯛平が雑誌をめくりながら呟いた。
「いいね、花見にでも行きたいね。酒持って」
「弁当でも持ってね」
「いやですよぉ、公楽師匠が持ってくるお弁当って、沢庵、コウコにお茶でしょう」
「安心しなよ、酒柱もちゃあんと用意しておくから」
「どうせオチャなら毛の付く方がいいですよぉ」
にやりと笑う公楽に、鯛平は苦笑いだ。
「わざわざ花見なんかしなくても、いつも黄色いお花畑見てるんだから年中お花見だよ。ねえ菊ちゃん」
「年中満開だよぉ、いいでしょお」
唄丸の嫌味を呵呵と笑い飛ばす菊扇に、唄丸はいつものように渋い顔をしてみせる。
花見の話題に花が咲く。
その中で円樂は、聞き手に回って相づちを打ちながらにこにこと笑っていた。
「どうも楽さんが大人しいと不気味だね。『桜の樹の下から出てきちゃあ駄目じゃないですか』くらい言うかと思ったのに」
「いやだなあ、収録じゃないんですから。師匠の遺骨を枯れ木に撒いたら桜が満開になりそうだなんて、本当にこれっぽっちも考えてませんよ」
「山田くん、全部持っていきなさい!」
「まだ収録始まってませんから嫌ですよぉ」
ほがらかな空気と笑い声が楽屋を満たす。
全く、年寄りをなんだと思っているんだとぶつぶついいながらも、皆の破顔した顔を見つめる眼差しはただただ優しかった。
0156梅は咲いたか 2/52016/03/08(火) 00:51:13.40ID:kU7IxZ000
収録はつつがなく終わり、緊張のゆるんだ穏やかな空気が楽屋に漂う。
唄丸の横で片付けをしながら、円楽は昔読んだ本のことをふと思い出していた。
「そういえば、桜の樹の、あのごつごつした皮の下にあの美しい桜色が『在る』んだそうで」
蓄積した生命力の色、そのほんの一部が花びらの色として淡い色を我々の前に姿を表す。
「花が咲く前の、一番色が樹に溜まった時に皮を集め染め上げた糸で織った着物は、えもいわれぬ美しさだそうですよ」
「じゃあ、あたしたちが見ているのは桜の生命の色、本当に一部なんだね」
ほう、と桜色に思いを馳せる唄丸を、円樂は目を細めながら見ていた。
「私たちの落語も、そのようなものかもしれませんね。脈々と受け継がれて来た落語という大木の隅に咲く、ただただほんの一部で」
「ああ、その樹の下で花見なんか出来たら最高だね」
「向こう岸には、咲いてるかもしれませんけれど。まだ花見には早いですよ」
自分が振った話題なのに、本気の怯えがうっすらと滲む声色で円樂は言った。
まだまだ逝きゃしないよ、馬鹿だねと笑いながら、唄丸は、この横にいる男について考えを巡らせる。

一体いつからだったか、向けられる視線に熱がこもるようになったのは。
この番組では何十年も公開のけなし合いをし、先代が先に花見に行ってしまってからは、陰日向に力添えをしてきた。
もういつのことかも覚えていない。
ふと、円樂が自分に投げ掛ける眼差しに感謝、尊敬、憧憬、そういった感情以外のものを見いだしてしまったのだ。
ああ、あたしはこの眼をよおく知っている………
もっと自分を見てくれ、抱き締めたい、独占したい、気が狂ってしまいそうだ、―――好きだ、愛おしい、愛している。
男の目に、女の目に、様々な想いと欲が揺れているのを、生家である遊郭で幼いときから幾度となく見てきた。
ただの直感だ、普通なら馬鹿げていると一笑に付されるものだったかもしれないが、唄丸には確信があった。
この男は、どうやら自分に惚れている―――。
0157梅は咲いたか 3/52016/03/08(火) 00:52:16.15ID:kU7IxZ000
ただ、気付いたからと言って何が変わるわけでもなかった。
今までと変わらず円樂を大切に思う気持ちに偽りはなかったし、その秀でた才の成長を身近で見ているのは本当に喜ばしいことだった。
そう、自身が円樂に向けて抱いているものも、間違いなく愛ではあるのだ。ベクトルは違えど。
友愛、師弟愛、そんな名前のついた感情に近い、しかしもっと複雑で言葉に表すのが難しくてもどかしい、そんな奇妙な心持ちだった。
喋る商売なのに、言葉を上手く使えないようじゃあ噺家失格だねと苦笑いしつつ、ずっと答えを探していた。
見つけられるとも思っていなかったが、名前を付けることでこの感情をコントロールしたかったのかもしれない。

そんな唄丸の心中は露知らず、円樂は熱のこもった視線を投げつづけた。それも、酷く苦しそうに。
ああ、そんなに苦しそうな顔で笑うのはやめておくれ。
あたしはそんな顔をさせたいんじゃないんだ、笑っていておくれよ。
だからといって、一体どうやってこの男の気持ちに応えられるというのだ?
そんな問答を繰り返すうちに、もう随分と経ってしまった。

肉体的な繋がりを求めるのではなく、ただただ精神的なものだろうと唄丸は思っていた。
そうでなけりゃ、こんな枯れ木の様な爺に恋い焦がれたりはするまい。
何だかんだでもう何十年も振り回されている自分を見つけて思わず笑ってしまう。
いつか、ふたりで月を見ながら歩いた夜のことを思い出す。
あの時も円樂は苦しそうに笑いながら、愛の言葉を冗談として吐いてみせた。
でもねえ、楽さん。
楽さん、頭はいいけど少し抜けているね。
何十年もあんな眼差しを向けられれば、どんな与太郎でも、きっとわかってしまうと思うよ。
いやだねぇ、色んな人が先に花見に行っちまって。
年々残り時間のことを嫌でも考えさせられるようになってきて困るね。
あたしもいつ花見に行くかわからないよ。
ああ、でも、もういい。もういいよ。
この感情の名前をもうずっと何十年も探していたけれど、きっと永遠に名前なんて見つかりはしない。
だって、もうずっと前から知っていたんだ。
あんたの粘り勝ちだね、参ったよ。
でも、不思議と清々しいような、良い心持ちだね。


楽さん、あたしもあんたのことを慕っているよ。
0158梅は咲いたか 4/42016/03/08(火) 00:57:08.72ID:kU7IxZ000
全員の片付けが終わり、今夜は一杯どうです、花見の算段を立てに毛の生えたお茶でも飲みになどと話がまとまっていた。
皆でぞろぞろと行きつけの店に向かう。
話題は桜餅は道明寺派か長命寺派か。あんまり平和で涙が出そうだ。
お迎えが来るまでは毎年花見に付き合ってもらうからね、と笑いながらこっそり耳打ちすると、泣き笑いの表情でただ一言、はいと誓ってみせた。

桜の樹の下には色々な人の想いがさながら屍体のように埋められ、それを元に咲き誇っているのかもしれない、などとぼんやりと考えながら春のぬるい空気を切って歩く。
花の色以外に決して姿を現すことのない、ごつごつした皮の下の桜色。
それは掻きむしられうっすらと血の滲んだ、人知れず葬られた恋慕の色であるのかもしれなかった。

【了】


【蛇足 道中の会話】
「楽さんの皮で染物をしたら真っ黒だろうね、いい黒紋付が出来るよ」
「私は真っ白純白ですから、むしろ漂白しちゃいますよ」
「あいより出でてあいより黒しっていうだろ」
「初めて聞く諺ですねぇ」
「鯛平さんはいい出汁が取れそうだ」
「ろくろく出やしませんよ。奥方に搾り取られてますから」
「なるほど、骨まで抜かれちまってるね」
「丁寧に骨抜きにされた後に家庭内暴力…もう蒲鉾ちくわの練り物の域ですよ、あれは」
「全部聞こえてますからね?!」
「あ、ちくわと聞いたら蕎麦が食べたくなった」
「この近くに旨い蕎麦屋がありますよ。今度手繰りに行きますか?」
「いいねえ、行きましょうか」
「聞いてやしないし!」
「あらら、鯛平さんったらすっかりダシにされちゃいましたねえ」
「ダシダッシー!!!」
「うわっ、往来で止めてくださいよぉ!」
「正太さんなんてもう一生独身でいればいいんダッシー!」
「ちょっとお、妙な呪いかけるのやめてください!」

「書き手が飽きたからこれで仕舞いですって。文才がないってほんと、」
『や〜ねぇ』
「も〜、先に言わないでよぉ!」

【ほんとに了】
紫の人の粘り勝ち。次はどうにかくっつけたい
ナンバリングミス失礼いたしました…
0162風と木の名無しさん2016/03/25(金) 09:28:11.32ID:p0OVuhAO0
>>158
最初ヒッと思ったんですが巧みな文章と完全再現の雰囲気にやられました
放送見たことないけど今週見てみる
0163801国史 1/62016/04/02(土) 00:21:42.64ID:5Xu93FTT0
ジャンル:三国志×801あるあるのアホアホギャグ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

私立三国志学園
もとは華族の令息のために造られたという、伝統ある男子校である。
そこに、遅刻ギリギリで走り抜けるはしたない生徒など――いた。

「う〜〜、遅刻、遅刻」
今、全力疾走している俺は、ごく一般的な高校2年生。
強いて違うところをあげるとすれば、ひょんなことからお坊ちゃま学校にこの4月から編入することになったってことかナ。
名前は劉備。

「よしっ、セーふ、ゥわッ」
背の高い門に滑り込んだその瞬間、長身の男にぶつかって、抱きとめられた。
「ッ君、大丈夫かい?」
さらさらの黒髪が俺のおでこにかかる。うおっ、すげぇいい男。が、秀才然としたその男が風紀の腕章をしているのをみて俺はゲッとなった。そんな俺を見て男は優しく笑った。
「新入生だろう? 道に迷っちゃったんだね。明日からは遅刻しないんだよ」
ううっ、イイヤツでよかった。まぁホントは2年の編入生なんだけど……
「ハイッ、ありがとうございました!」
俺はあくまで殊勝に頭を下げてやり過ごした。
0164801国史 2/62016/04/02(土) 00:25:26.09ID:5Xu93FTT0
「よぉ、遅いお越しで」
滑り込んだHRが終わると、幼なじみの公孫瓚がカラカラと笑いかけてきた。
「一緒に登校してくれればいいだろ!」
「悪い、悪い。俺もなにかと忙しくってさ」
ちっとも悪いと思っていないような口調で公孫瓚は宥めてきた。
「お前、関羽と熱〜い抱擁を交わしたんだって?」
「関羽って?」
「風紀の関羽だよ」
ああ、あの人関羽っていうのか。
「いや、何が熱い抱擁だよ!」
俺は拳を振り上げた。
「おー怖。でも気を付けろよ。あいつもファンが多いからな」
あの人キレイだったもんな。
「って、ここ男子校だろ?! それにあいつ『も』って何だよ?」
そのとき、俄かに廊下が騒がしくなった。みんな廊下の窓から下を見ているようだ。
「噂をすれば……おでましだ」
俺は公孫瓚の後を追って、廊下へと出た。その瞬間、(男子校なのに!)黄色い歓声が上がった。つられて俺らも3階の廊下から眼下を覗き込んだ。
0165801国史 3/62016/04/02(土) 00:29:24.45ID:5Xu93FTT0
華やかな一団が広い中庭を、闊歩してた。
先頭にいる男は中肉中背だが、異様な存在感を放っている。これがカリスマオーラってヤツか。やや鋭い目にこちらを見つめられた気がした。まぁ、気のせいだよな……。
「先頭の男は、『蒼薔薇(ロサ・カエルラ)』の曹操、3年。後ろに控えてる長髪は曹操の『兄弟(フレール)』の夏候惇、夏侯淵の双子の兄弟だ」
なんだかいかにもくわせ者って感じのするよく似た長髪の兄弟だ。

「おっと、紅薔薇(ロサ・ルベル)までおでましだ。中央にいるのが紅薔薇・1年の孫策、後ろがその兄弟(フレール)の周瑜だ」
孫策は意志が強そうで、周瑜は理知的で優しげな眼鏡だ。

「おい、その『薔薇(ロサ)』なんちゃらとか、『兄弟(フレール)』ってのは一体なんなんだよ」
「薔薇ってのは、まぁ普通の学校でいう生徒会みたいなもんだな」
「なんだ、ただの生徒会のことか」
「ただの生徒会じゃないぜ。この学園は、表向きは若き理事長・献帝とその取り巻きが牛耳ってはいるが、実際影で力を持ってるのは薔薇たちだ。『兄弟(フレール)』ってのは薔薇の義兄弟だ」
0166801国史 4/62016/04/02(土) 00:33:27.23ID:5Xu93FTT0
続いて、まっ赤なフェラーリが庭に乗りつけてきた。運転席から大柄な男が、助手席からはスーツを来た少年といってもいいような男が降りてきた。
「んで、その理事長があの子供だ」
「すごく若いんだな」
それに対して、また違う男がすごい勢いで近づき説教をはじめた。
「あれが菫薔薇(ロサ・ヴィオラ)の董卓。怒られてる運転手が呂布」
「薔薇なの? 菫なの?」

「続いて、あのギラギラしてるのが、金薔薇(ロサ・ドーロ)の袁紹」
制服に白スカーフ、カメオをつけた明るい髪の男を指差した。
「まだいるのかよ。もう誰も読んでないぞ」
公孫瓚は気にせず続けた。
「その兄弟(フレール)でイケメンなのが顔良、残念なのが文醜」
こいつ、ズバズバいうな。これだからちょっと顔のいい奴は嫌いなんだ。俺は文醜に同情と親しみを覚えた。

「はー、なんかみんな金持ちって感じ……ん、あのガラの悪そうなのは?」
俺はこの学園に相応しくないヤンキーっぽい一団を目の端に捉え、眉をひそめた。
「あー、あれは黄宅部の張角たち。揃いの黄色いピアスしていつも学園の裏谷に屯ってる。あそこにだけは行くなよ。絶対に行くなよ」
「ヘイヘイ」
0167801国史 5/62016/04/02(土) 00:36:33.81ID:5Xu93FTT0
そんなわけで、ついうっかり裏谷にやってきたのだった。
「あっ、すみませ――」
「おい、どこ見て歩いてんだよ!」
夕日に琥珀色のピアスが煌めいている。
「あ……」

「どうした? 波才?」
「張角さん、コイツが」
「へぇ、なかなか可愛い顔してるんじゃねぇか」
張角は俺の顎をクイと持ち上げた。逆光で見えなかった顔が露わになる。イエローアッシュのツーブロック、いかにもな不良だが、その顔は存外整っていた。
「宝、梁」
「ハイ」
俺はいつの間にか寄ってきた男たちに囲まれ、背後からガッチリとホールドされた。カチャカチャとベルトのバックルを外す音が響く。
「兄貴、後で貸してくださいね」
生暖かい息が耳元にかかる。
「ああっなにをなさいます!」

「何をしてるんだ!」
そのとき、剣道着を身にまとった長身の男がひらりと現れ、男たちを薙ぎ払った。
「げえっ関羽!」
たちまち辺りには不良たちが死屍累々と積み上がった。近寄られて俺は女の子でもないのに、ボタンの弾けたシャツを掻き合せた。ふいに、影が覆いかぶさったかと思うと、俺は関羽にギュッと抱きしめられていた。
「ごめん、君が桜に攫われそうで――。もう大丈夫、これからは僕が守るよ」
あたりにザアッと桃吹雪が舞った。
「ダメ……桜が見てる」
これが後に緑薔薇(ロサ・ヴェルデ)となる劉備とそのフレールとなる関羽との二度目の出会い・桜園の誓いである――。
0168801国史 6/62016/04/02(土) 00:38:42.48ID:5Xu93FTT0
おまけ次回予告

 「『天帝様のこころ』ってさ、昔からずっと不思議に思ってたんだ。蒼天、桃の木はいいとして、なんで翡翠なんだろうって」「僕もだ」「俺も!」 ――年下の大型ワンコ・張飛も加わりますます深まる義兄弟の絆――
 
 「俺がほしかったら、3回自ら抱かれに来るんだ」 ――IQ801の中等部の天才少年・孔明――

 そして、豪華客船でいく修学旅行、プライベートハーバー・レッドクリフでの嵐の惨劇――

次回最終回『劉備、死す!』次回も元気にやっ孫!やっ孫!

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
エイプリルフールのテンションで書いた。今は反省してる
読んでくれてありがとう
0170■■■■2016/04/14(木) 04:56:59.49ID:MKo/HsXi0
※※※
おもらしです。ラブはありません。ただひたすら我慢と排泄シーンのみ。
名前欄と最後に■■■■を入れますので、読み飛ばしたい方はそちらを目印にお願いします。
※※※
1〜5:教室でおしっこ我慢とおもらし(おもらしの時にそばにいるのは一人だけ)
6〜8:if-大便をおもらし
0171■■■■2016/04/14(木) 04:57:41.17ID:MKo/HsXi0
ラベル【教室/おしっこ我慢/×】
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )カイシ


僕の席は一番後ろの窓際だから、多少身体を揺すっても気づく奴はいない。
急いで終わらせようと黒板に書きなぐってる先生も気づかない。
僕は股間を抑え、もじもじとお尻を揺すっている。

*

この辺すごく大事だからな、しっかり覚えるんだぞ。
カツと先生がチョークで黒板を叩く。案にテストに出るぞと教えてくれているのに、僕にはそれを覚える余裕なんてない。惰性でノートを取りながらもただただおしっこと時計のことで頭がいっぱいだった。
あと少し。
あと少し。
ちょろりとおしっこがこぼれる感覚に、ぼくはきゅうと股に力を込めた。
息を吸って、吐いて。
おしっこが止まったのを確認してそろそろと力を抜く。
もうこんなことを何分も前から繰り返していた。その間隔がだいぶ近くなってきていて、何度も何度もちょっとだけ濡れてきたパンツがそろそろやばい。
早く。
――キーンコーンカーンコーン
僕の願いに呼応するようにチャイムの音が鳴り響いた。
よかった、救われた。

はずなのに。

僕は机の下で股間を抑え、もじもじとお尻を動かしている。
終わるはずの授業は、テストの範囲がやばいから、昼休みだから、そんな理由でもって続けられた。食堂制のこの学校ではその昼休みこそが一分一秒を争うほど重要で、生徒からブーイングが上がったけれど先生はめげない。あと少し、あと少しだから、と説明を続けている。
あと少しって?
一度安堵したせいで一気に増した衝動に耐え切れず、僕はとうとう股間に手を伸ばしてしまった。
今にもあふれそうなおしっこを手と太ももでぎゅうぎゅうと抑えつける。
やばいやばいやばい。
それだけしか考えられない。
チクタク、チクタクと時計の針が進んでいくけれど僕はもう時計をみてはいなかった。
「だから、ここは――」
先生の言葉にかぶさって突然ジャジャーンと大きな音が鳴り響いた。放送部が昼の曲を流し出したのだ。
放送は教室でボリュームを下げることができるが、先生もそれ以上授業を続けることはしなかった。
きりーつ、れーい。
日直の言葉を合図に皆がバタバタと動き出した。
0172■■■■(2/8)2016/04/14(木) 04:59:22.07ID:MKo/HsXi0
机の上を片付けることなく急いで教室を出て行くもの。立ったままペン類をしまいノートだけは閉じるもの。僕は座って机を身体に引き寄せると、ペンを取り上げた。もう一方の手でノートを抑える。
「先言ってるからなー!」
動きの早い友達が声をかけてくるのに頷いて、ノートに抜けていた文字を書き足していく。いびつな筆記を終え、震える手でペンをしまう頃にはもう誰もいなくなっていた。
ぎゅぅと机の上で両手を握りしめる。
おしっこ……おしっこ……おしっこ……!
ガクガクと足を震わせる僕の名前を誰かが呼んだ。
ばっと振り向けば隣の席の委員長が僕を見ていた。
「早く、行こう」
僕は首をふる。
もう動けない。
情けない顔を見られたくなくて僕はうつむいた。
「今なら誰も居ないから」
僕はまた首を振った。
震えるを身体隠したくて机を引き寄せたけれど、近づいてきた委員長が引き離してしまった。
ブルブルと震える太ももと小刻みに床を踏み続ける足が委員長にさらされる。
僕はチンコを真下に収めているから、ピッタリと足を閉じてる今、握りしめてくしゃくしゃになったズボンしか見えないはずだ。
でもだめだ、だめなんだよ委員長。
僕はゆるゆると首を振り続ける。
膀胱が痛い。おしっこしたい。ガクガクと震える足は止まらない。
拉致があかないと思ったのか、委員長がふっと息を吐きだしたのがわかった。
「ほら行こう」
ぐいと二の腕を掴まれてバランスを崩した僕は、とっさにもう一方の手で股間を握りしめた。
じゅじゅっとあふれたおしっこはすでにビショビショのパンツでは受け止めることができず、たらたらと肌を伝う。
唇を噛み締めながら、僕はちゃんと立つことすらできなくて中腰で股間を抑えていた。
尻に張り付く布が冷たい。
薄いグレーの制服が色濃く変わっているのを想像して僕は泣きたくなった。腕をつかむ力が緩んだ隙にもう一度座りこんだところで後の祭りだ。
授業が終わってとっさに取り繕ってしまったのが最後だった。
なんで座ってしまったのだろう。なんでそのままトイレに行かなかったのだろう。
痛む膀胱を抱えてよろよろと礼をした拍子にあふれたおしっこ。反射的に座って机で身体を隠してしまった。
本当はもうとっくに限界だった。鳴り響いた音楽に驚いて少しこぼしてしまっていた。
0173■■■■(3/8)2016/04/14(木) 05:00:35.92ID:MKo/HsXi0
その前も。その前も。少しずつ。少しずつ。
手で抑えることができなくなったおしっこは、どれだけ股をすりあわせても、下腹に力を込めても、チロチロこぼれていった。
パンツが含みきれなかった水分がズボンに染みこむ。ぬるい感覚が椅子を伝わって太ももに広がり、お尻に広がってもそれは止まらなかった。
壊れてしまった僕のチンコは、人がいなくなる頃にはしょろしょろとお漏らしをはじめてしまっていたのだ。少量ではあるが吸水性がよくけれど薄い生地の夏服はぐっしょりと濡れそぼっている。
「……トイレまで歩ける?」
静かな問いかけにきっと強制の意図なんてなかったのに、罪悪感と羞恥心とトイレという言葉で頭がいっぱいになった僕は反射的に足に力を込め立ち上がった。立ち上がろうとした。
「ひっ」
動揺で幾分ひっこんでいた排泄衝動がぶり返す。じゅわっとまた股間にぬるい感覚が広がった。
「ぁ、 あ」
でる!でる!でる!
ぎゅうとチンコを握ってバタバタと足を踏み鳴らし、必死で腰をくゆらせる。
ついさっきまで少しずつお漏らしをしていたというのに、今の僕は出してはいけない出したくはないという恐怖でいっぱいだった。
委員長がいるからだ。人の存在は僕に我慢を強要した。
苦しくて苦しくてたまらなくてボロボロと涙がこぼれ落ちる。
じゅっとまたおしっこがあふれた。
「   」
委員長が僕の名前を呼んだ。顔をあげることは出来ない。
注意を引くようにガコンと何かが足元で音を立てた。涙で霞む目でみれば、掃除の時につかうもう古びてベコベコに歪んだブリキのバケツだった。
「ここなら大丈夫」
それは随分魅力的な提案で、途方もなく無理な相談だった。
こんなガクガクと震える足では標的を定めることはおろか、立つのすらおぼつかない。
ぶるぶると首を振る僕の背中を委員長がゆっくりと擦る。
「しゃがみこんですれば大丈夫だから」
大丈夫、まだ漏らしてないよ。
「まだ間に合うよ」
その言葉に励まされ、僕はこくりと頷いた。
股間を握りしめたまま精一杯腹に力を込めて腰を浮かす。
ポチャンと水のたれる音が響いた。
それは恐慌状態の僕だけに聞こえた幻聴だったかもしれない。布が吸い込みきれなかったおしっこの溜まった椅子とそこにぽたぽたと垂れる雫。
0174■■■■(4/8)2016/04/14(木) 05:01:09.26ID:MKo/HsXi0
脳裏に浮かんだそれは、お漏らしが床を濡らす姿に酷似していて、僕はより一層床を汚す恐怖にかられた。
まだ間に合う。早く、早く、早く。
しゃがみやすいようにと委員長が机と机の間の位置に動かしてくれたバケツの元へとちびちびと足を動かす。歩いて少し楽になったことに安心して、ベルトへと手をかけた。
余裕が出来た身体とは裏腹に汗ばんだ手はうまく動いてくれない。
「あっ」
留め具を外すためにベルトを引いたところで、じゅじゅっとおしっこがあふれた。
「やだ、やだっ」
とっさにぎゅっと片手で握ってもあふれたおしっこは戻らないし、とっくの昔に濡れきったパンツはその水を受け止めることなどできない。
ポロポロと涙がこぼれた。
「大丈夫、大丈夫だよ」
床は汚れていないし、委員長はそう言ってくれる。尻は濡れていても前からはギリギリ体裁は保っているのだろう。すりあわせている足の間がおしっこで濡れたのがわかるのは僕だけだ。
はやく、はやく、はやく。
そう思うのに、焦りと緊張まみれの片手でバタバタと動く身体のベルトを外すことなどできなかった。思い切って両手で外そうと試みればしょろしょろとおしっこが漏れだす。
「っ、 っ!」
必死で足をすりあわせごまかしても、じわじわと布に水が染みこんでいくのは止められない。
ベルトが外れた。
――じょろっ
まだズボンを留めるボタンを外してもいないとか、暖かな水が足を伝う感覚だとか、そんなことを考えるよりも前に、僕はとっさにバケツの上にしゃがみこんでいた。
ばたばたと大きな水滴がブリキの底をノックしたのは一瞬だった。
――ジャャァァ!!
激しい音がバケツから響く。勢いのついたおしっこは広がることなく、布を突き通して一直線にバケツを叩きつけているのがわかった。
ゾクゾクと背筋を震わせる快感に僕はうずくまって震えることしかできない。
体勢を維持することができなくて、直接バケツに座り込み、両手をつく。
「あ゛…あ゛……」
ジャアアア…!
もうずいぶんとこぼしてしまっていたのに、たっぷりと膀胱にたまっていたらしいおしっこはまだまだ止まる気配がない。
絞りだすような下腹部の動きにはーはーと息を吐きながら僕はぼんやりと床を見下ろした。
0175■■■■(5/8)2016/04/14(木) 05:04:11.54ID:MKo/HsXi0
見える範囲に水は落ちていない。ギザギザと傷だらけで消しゴムカスやゴミが散らばったいつもの木のタイルだ。
視線を横に動かす。
白い上履きの上、くるぶしまでのソックスが濡れていた。
しゃがみこんだことで裾の持ち上がったズボンとソックスの間にはおしっこの筋ができていて、薄いグレーのズボンの内側は上に行くほどにその色を濃く変えている。
太ももに至っては擦り付けられたおしっこでびっしょり濡れている。お尻も、それらが乗っていた椅子も、きっとひどい有様だろう。
おしっこは床を濡らすことなくバケツを叩いた。
でも、僕はズボンをしっかり身につけたままだ。前をくつろげているわけでもなく、おしっこでびしょびしょと濡らしている。

僕は。

お漏らしを。









][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・ )オシッコ ハ ココマデ


※※※

ここから大便のターン

※※※
0176■■■■(6/8)2016/04/14(木) 05:04:40.75ID:MKo/HsXi0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )
スペシャルエディション
【大便おもらし】パターンA:座ったまま


「う゛、う゛ぅ」
はーはーと息を吐き出し、必死で耐えても、身体の震えはとまらない。
トイレに行きたい。
終業の挨拶の時にすこしだけもらしてしまったうんちはお尻の間で止まっている。今ならまだ大丈夫。まだ。
でも僕は動けないのだ。
今立ち上がったらもらしてしまうだろう。
必死で我慢しつづけたお腹はもう限界で、波が引くどころかどんどん強くなっている。今すぐにでも、うんちを押し出そうと動いている。
動くこともこのまま我慢することもできずに僕はもういっぱいいっぱいだった。
やだ、いやだ、いやだ……!
目に涙がにじむ。いやいやと頭をふっても身体は言うことを聞いてくれない。
パクパクと口を開く穴からブゥゥとおならが漏れた。
「あ!」
ぐぐっと穴を押し開いてうんちがでてくる。
お腹に勝手に力がこもった。呼吸ができなくて開きっぱなしの口から喘ぎ声が漏れる。
「っ、 、 ぁ、」
どれだけ嫌がっても、ニチニチとうんちが押し出されていく。
平たい椅子の上だ。出したって行き場がないうんちは押し潰されて広がるしかない。お尻にざらついた暖かい感触が広がった。
もらした。もらしてしまった。
ちょっとどころではない、完璧なおもらしを。
教室で。椅子の上で。制服の中に!
ボロボロと涙がこぼれ落ちる。
どっと身体の力が抜けた。
その隙をつくようにずるずるとうんちがあふれ出ていく。
ビクビクと背筋が震えるけれど、止まってくれはしない。
行き場を求めてももの間にも広がったうんちが、玉の裏でせき止められる。
べっとりとパンツを汚し、うんちを椅子とお尻の間にはさみながら僕はポロポロと泣き続けた。
0177■■■■(7/8)2016/04/14(木) 05:06:10.02ID:MKo/HsXi0
|>PLAY ピピッ ◇⊂(・∀・ )
スペシャルエディション
【大便おもらし】パターンB:バケツの上で放尿後

弛緩した身体からブスっと大きくガスが漏れた。
「あっ」
あわてて尻に力を込めて耐えようとしても、勝手に背筋が反り上がった。
座り込んだバケツの上で、肛門が口を開く。
ブスブスとおならの音がする。
「あっあっ」
穴の外に出かけては中に戻るうんちの動き。息をすることもままならなくて、僕は悲鳴とも付かない声をあげた。
ぐぅ、とお腹に力がこもった。止めるためじゃない。出すための動きを僕はもう止められない。息が止まる。
「 」
声にならない悲鳴をあげて僕はうんちを漏らしていた。
固いうんちは椅子につぶされることのなく、けれど布に行き場を遮られ、形を保ったままパンツを押し上げていく。
僕は詰めていた息を吐きだし、涙をこぼしながらはーはーと喘いだ。
息を吸い込んだことで動きをとめた肛門の奥では、うんちが出たい出たいと暴れている。
いやだ。トイレに行きたい。トイレの中に出したい。
けれど僕のズボンはもうぐっしょりと濡れていて、それは股間どころか尻にまで広がっていて、濡れて張り付いた尻はうんちが……――。
僕はポロポロと涙をこぼした。
生理的なものではない、情けなさと悲しさの涙だ。
「う゛、う゛ぅ」
もう我慢なんてしても無駄だ。無意味だ。
漏らしたうんちは少しではない。薄いグレーのズボンをびっしょりと濡らし、うんちで膨らんだ尻を晒しながら廊下を歩くことなんて出来ない。
ひ、としゃくりあげる動きとともにお腹に力がこもる。
ブッとガスが出た。
ニチニチと肛門が広がるのを僕はもう止めなかった。固いうんちが場所をとりあい布を突き上げていく。
ひ、ひ、と息をつぐ。
「う、」
柔らかなうんちが吐き出され、生暖かくざらざらとした感触が尻に広がる。
パンツがずっしりと重い。
ズボンがどうなっているかなんて考えたくもなかった。
0178■■■■(8/8)2016/04/14(木) 05:08:06.14ID:MKo/HsXi0
僕はこれからそれを人に晒すのだ。
ぐっしょりと濡れて恥ずかしい染みを作ったズボンを。
ボコボコと山をつくり、うんちの重みで下にずり下がったパンツを。

「   」

静かな声が僕の名を呼ぶ。
逆らうことは出来ずに、僕はそろそろと腰をあげた。



■■■■■■■■
■■■■■
■■
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )オーワリ

何かおかしい原因はだいたい委員長
0180ブルーオーシャン2016/05/05(木) 21:16:37.74ID:hWwmN3+c0
オリジナル、実業家×実業家。
保管庫のURLのみ貼り付けます。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

http://morara.kazeki.net/?70-180

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0181月明りに照らされて 1/52016/05/23(月) 23:57:03.45ID:xlJYkbgM0
焦点、紫×緑です
>>151>>155の後のいつかです
>>74とも被っている部分があります

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

【月明りに照らされて】

「よくもまああんな恥ずかしいことを淀みなく喋れたもんだね。聞いてるこっちが恥ずかしかったよ」
「全部本音ですからねえ、そりゃあすらすら出てきますよ」
「気味が悪いね、明日は雪でも降るんじゃないの」

そんないつも通りの軽口から始まり、二人会の打ち合わせに入る。
ああしようこうしよう、いやいやこっちの方がと議論するこの時間が、圓樂はとても好きだった。
今日はお互い弟子の立ち会いもない、本当のふたりきりだ。
今更何を期待している訳でもなしと自分を諫めつつも、心が躍るのを止められなかった。
0182月明りに照らされて 2/52016/05/24(火) 00:00:26.31ID:WHP8izaO0
ふいに、唄丸が話すのを止めた。
何だろうと顔をあげると、穏やかな笑顔をたたえてこちらを見ている。
「どうか、いたしましたか」
ずっとその表情を見ていたいと思ったが、思わず静寂を破ってしまった。
「いやね、幸せだなあ、良い心持ちだなあと思って」
ゆっくりとかぶりを振りながらそう答える。
「師匠や同輩や兄弟子弟弟子には先にあっちに行ったり続けることが難しかったりする人もいるのにね、あたしはこうやってまだ高座にしがみつかせていただいて。
寄席という舞台が、焦点という番組が、そして落語があたしをここまで引っ張ってきてくれた」
目があっている筈の唄丸の輪郭がぼやけていく。
「樂さんがジジイジジイと貶しながら、師匠師匠と慕いながら一緒にきてくれたから、あたしはこうやってここまでこれたんだ」
勿論、あんただけのおかげじゃないけどねと釘を刺しながら静かに言葉を続ける。
「嫌がるかもしれないけどね、息子がいたらこんな風かなと思ったこともあったよ。
樂さんと出会えて、噺家として共に人生を歩んでこられて、本当に良かった。
てめえこの野郎と思うこともそりゃあ沢山あったけど、それも引っくるめて、本当に、心の底から楽しかった。
仕事仲間として、一門は違えどひとりの弟子として、良い好敵手として、そして気の置けない友人として共に歩いてきてくれて、本当にありがとう」
そう言うと、唄丸は深く深く頭を下げた。

「やだな師匠、そんな」
何か言わなければいけないのに、堰が切れたかのように後から後から溢れてくる涙と感情とがそれを許さない。
そんな、今生の別れのような言葉。
唇が震えて震えて、うまく声を発することが出来ない。
「私だって、いや、私の方が」
あの番組を通して側に居られて、一緒に落語というものに真剣に向き合うことができて、馬鹿なことを言い合って笑うことができて、一体どれだけ幸せだったか!
それは、叶わない恋慕の情を抱く前も、抱いた後も変わらない。
伝えたいことの何もかもが、涙と嗚咽となって零れ落ちていくようだった。
「ああ、折角の男前が台無しじゃないか」
ほらほらこれで涙をお拭きよと手拭いを手渡そうとするその細い腕を、思わず掴んでいた。
ぱたりとテーブルの上に手拭いが落ちる音を聞いて正気に戻るべきだったが、もう止まらなかった。
0183月明りに照らされて 3/52016/05/24(火) 00:03:41.45ID:WHP8izaO0
「師匠」
やめろ、
「あなたの落語が、あなたの声が、あなたと過ごす時間が、あなたのその芸に対するひたむきな姿勢が」
やめてくれ、
「もう、ずっと、いつからかも覚えていません。迷惑なのはわかっているんです、それでも」
やめてくれ、早く冗談だと、いつものように笑い飛ばせ…
「あなたのことが、好きです」
ああ、もう、お仕舞いだ。
唄丸が目を見開いてこちらをじっと見ている。
そりゃあそうだよな、驚くよな。
仲間だ弟子だ息子だ友人だと長年慕っていた男から愛の告白なんてされたら。
なんと詰られても、気持ち悪がられても仕方がない。
それでも、その手中にある細い腕を離すことがどうしても出来なかった。
「折角私なんかを大切な友人だと思ってくださっているのにこんな感情を抱いてしまって、本当に申し訳ありません。
もう何年も何年も裏切るようなことをしてしまった。言い訳もできません。
でも師匠、私よりも先にあっちの花見にいっちまうんでしょう。だから、どうしても、どうしてもお伝えしておきたかった。
これからも友人でいてくれだなんて言いません、軽蔑されたって、縁を切られたって仕方がない。それでも」
震えて震えてつっかえて、なんて酷い声だろう。
噺家失格だと頭のどこかで思いつつ、何十年にも亘って育った行き場の無かった想いは止めどなく溢れてくる。
「それでも、あなたのことを想い続けることを許してくださいませんか」

言い切った後で、耐えようのない後悔が圓樂を襲った。
傷付けてしまった、裏切ってしまった、もう今までのように笑い合う関係に戻れないのだという絶望が心を黒く黒く塗り潰していく。
「樂さん」
もうすっかりぼやけていない鮮明な視界の中、それまで閉ざされていた口がゆっくりと開かれるのをじっと見ていた。
ああ、やっぱりこの人の声が、この人のことが本当に好きだなあだなんて、この期に及んで考えながら。
「何言ってるんだい、あんた。そんなこと、ずうっと前から知っていましたよ」
泣き笑いの表情で、腕を掴んでいる手に、もう一方の掌を重ねながら続けた。
「待ちくたびれて、すっかり爺になっちまったじゃないか」
0184月明りに照らされて 4/52016/05/24(火) 00:05:54.35ID:WHP8izaO0
「しかし樂さん涙もろくなったねえ」
「そっちだって泣いてたくせに。名人の名が泣きますよ。まあ、お互いこのことは秘密にしておきましょう」
「勿論、墓まで持っていきますよ。大泣きしただなんて知れたら、下のものに示しがつかないものね。ねぇ、六代目」
そう言うやにいっと笑って、小指を立てて圓樂の前に出してみせた。
一瞬ぽかんとした表情をしたが、すぐに合点が行き、破顔しながらその細い小指に自分の小指を絡ませる。
「私と師匠だけの秘密ですよ」
「破ったら承知しないよ」
「あと、来年も一緒に花見に行きましょう」
「念を押されなくたって指切りしなくたって、あたしは元からそのつもりだよ」
場所取りは任せてくださいと笑いながら、最後に歌ったのがいつかも思い出せないような懐かしい歌をふたりで歌う。
指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます。
「これからもよろしく頼むよ、樂さん」
「勿論です」
お互い泣き笑いの顔を見合わせ、秘密を共有する子供のように笑った。

報われたのかと言えば、全肯定はできないのだろう。
しかし、それでもよかった。それでよかった。もう、十分すぎるくらいだ。
桜の樹と同じようにこの感情のほんの一部が花とあらわれ、少しでも喜ばせることができたのならば、これ以上の喜びはない。
この先も隣にいることが許されるのならば、抱き締めたいという気持ちを宮戸川にでも品川にでもすっかり沈めてしまうことなんて朝飯前だ。
あのとき掌から、小指から伝わってきたほんのささやかな体温が、この恋のすべてだ。
0185月明りに照らされて 5/52016/05/24(火) 00:08:59.72ID:WHP8izaO0
きっとあなたは先に花見に行ってしまうんでしょう。
そのときは名残惜しいけれど、しっかり手を振ってお送りいたします。
しばらくうんと落ち込むでしょうが、なあに私は大丈夫ですよ。
あなたがくれた数々の教えが己の芸に生き、一緒に過ごした時間といくつもの思い出が、進むべき道を優しく照らしてくれるから。
だから師匠、 来年も再来年も、一緒に花見に行きましょう。
約束、忘れないでくださいね。

歌丸を見送ってからふと顔をあげると、雲ひとつない夜空の中で月が光をたたえていた。
ああ、綺麗だ。
今夜はうんと滲んでいるけれど、これはこれでいいじゃあないか。
追い出し太鼓が叩かれるのは、まだまだ先でいい。
たとえ出てけ出てけと鳴り響こうと、みっともなく高座にしがみついてあなたへの思いを声に乗せよう。
いつかふたりで見たときと変わらず美しい月を見上げながら、圓樂はひとり道を歩いていった。
舞台袖で何度も聞いた、何度聞いても心を震わせてやまないあの出囃子を口ずさみながら。


また一番太鼓が鳴る。
【了】

師匠の益々のご活躍、番組、落語の益々のご発展を心から祈っております
お付き合いいただき、本当にありがとうございました
0186風と木の名無しさん2016/05/24(火) 00:42:23.03ID:tswOT1V+0
>>185
ううう乙です
もともとこの二人の仲の良さが好きだったけど
あなたのおかげでさらに好きになりました
0187風と木の名無しさん2016/05/26(木) 20:19:54.99ID:rtJ6xbx10
初投稿、昇天の紫緑です。


―――――――――
努めて澄ました顔をしながらも、岐阜から東京へと向かう列車の中、男は密かに焦っていた。


舞台の上で決まった役割を演じるのは、それほど難しいことではない。
インテリ、腹黒。そんな呼び名にふさわしい立ち回りを続けてきた。自分以上にそんな答えをできる者もないと自負している。
生放送に間に合う列車にも無事乗れた。直に東京に着き、待ち望まれたやりとりをしてみせる。
だから、焦っているのは、そんなことが理由ではない。

男はそっと目を瞑り、老人の背中を思い出す。
小さく、細く、折れそうな背中だ。けれど、どんなことがあっても折れなかった、強い背中だ。
その背中にどれほどの重圧が掛かっているか。胸中を慮って唇を噛み締めた夜は数え切れない。
長としての立場、長寿番組の顔役、己が身を削る芸への姿勢、そして―――自分。
先代から託されたと自分を背負い込んだばかりに、しがらみの中でしなくていい気苦労まで背負わせてしまった。
老人の小さな背中には似つかわしくない荷物の量に、野暮だと知りながら詫びたこともある。
そんなとき、決まって柔らかな声で老人は言うのだ。「だったらいつもどおり、あたしの背中をさすっとくれ」と。
0188風と木の名無しさん2016/05/26(木) 20:22:03.28ID:rtJ6xbx10
触れた手から想いよ伝われと願うと、応えるかのように目を細める。
もう幾度となく繰り返されてきた、そんな穏やかな時間が好きだった。
年下のメンバーが代わろうかと声をかけてきたこともある。
爺ばかりの楽屋にいやすいようにと話しかけ、時には仕事を振ってきた。けれど―――どうしても、その役割だけは譲れなかった。


今日はもう着物に着替えているだろう。メンバーも先に着いているはずだ。自分の役割を、よりによって今日この日に奪われてしまうだろうか。
あまりに子どもじみた嫉妬心に呆れながら、知らず男の手に力が入る。
タクシーに乗り込みホールへ向かう。
一目散に向かった楽屋のドアを開けたとき、一番に聞こえたのは耳に馴染んだあの言葉だった。


「樂さん、お疲れ。着替えたらあたしの背中さすっとくれよ」




円樂の手がそっと唄丸の背中に置かれる。
「師匠、今日は他の誰かにマッサージさせなかったんで?」
緊張を解すように優しく手が動く。
「なに言ってんだい、あたしの背中をさすれるのは樂さんの特権だよ」
笑い声に合わせて背中が揺れる。
「そんな嬉しいことを言ってくれるなんて、飛んで帰ってきた甲斐がありますね」
ぽんぽんと優しく背中を叩く。
「すまないね、ありがとうよ。…あぁ樂さん」
澄ました顔で顔を覗き込む。
「なんです?」
本音は知っているとばかりに唄丸の目が光る。
「今日でお役御免なんかにしてあげないからね、これからもずっとあたしの専属マッサージ師でいてちょうだい」
―――隠しきれずに円樂満面の笑み。
「一生お仕えしますよ、唄丸師匠」
0189風と木の名無しさん2016/05/27(金) 20:57:08.64ID:29IBbtVC0
>>188
ほっこりするお話ありがとうございました
テレビで二人のやり取りが見られないのは寂しいですけど
このお話で癒されました
0190風と木の名無しさん2016/05/31(火) 01:20:32.96ID:+T9DDs9A0
hnnm注意!あの中年と青年。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0191弱気 1/32016/05/31(火) 01:28:49.63ID:+T9DDs9A0
嫉妬。
あの、今まで感じたことのない、胸が締め付けられるような感情をそう呼ぶのだと知ってから1年後。
再び優勝トロフィーと副賞を手にして、鍵を閉めずにおいた玄関のドアが開くのを
どきどきしながら待った夜から3か月。


この日初めて、一問もクイズが出題されずに日付が変わろうとしていた。


今朝ふとんから起きたとき、ベッド脇に正座したあの人は
おはよう代わりの一問を、何時もの如く出題しようとしていたのだ。
それが。「第っ―」と口が動いた瞬間、激しく咳き込んだぼくが遮った。
熱っぽさ、喉の痛み、全身の倦怠感。
久しぶりに風邪を引いたなと実感するものの、我が家に風邪薬はおろか体温計すらない。
明日は休みだ、今日一日くらいなんとか乗り切れるだろうと、のそのそとスーツに着替える。
今の会社がそこまでして出勤したいほど良い所なのか、といったらそうでもないが
少なくとも以前よりは幾分前向きに仕事が出来るようになった。
そのきっかけをくれた人物はというと、相変わらず姿勢良く座ったまま
何かの言葉が回答になるような問題を探し、考えを巡らせているようだった。
けれど明らかに体調の悪そうなこちらに遠慮したのか、心配そうな視線をよこすだけで
結局あの高らかな声を聞くことなく「いってきます」と家を出た。

それからみるみる症状の悪化する体に鞭を打ってどうにか仕事を片付け、
帰宅して一直線にベッドへ倒れ込んだ所で意識が途切れた。
0192弱気 2/32016/05/31(火) 01:35:08.15ID:+T9DDs9A0
ふと、息苦しさで目が覚めた。
仰向けのまま重たい瞼を開けると、薄暗い天井が落ちてくるような感覚がする。
あれ、今何時だろう。
朦朧とする意識の中、時計を見ようと横を向いたら途端にがんがんと頭に鈍痛が走る。

「ぅ…」

と同時に額からずるりと何かが落ちる。それを拾い上げたのは―
「…―…?」
ひりひりと焼けそうな喉のせいで、呼び掛けた言葉は音にならなかった。
視線だけ動かして隣を窺うと、派手なジャケットを腕まくりして
氷水を張った洗面器でタオルを濯いでいる。
ぼんやりと時計を見れば、もうすぐ夜中の12時。

自分はいつから寝ていたんだったか。
夕飯は、一人でどうしたのだろう。
そういえば今日は、一問も答えていない...

朝よりもかなり熱が上がったらしく、思考が千切れては消えていく。

その時、額にひんやりとしたものが触れられた。
氷水に浸かって冷たくなった、その手。
節くれだった指が汗で張り付いた前髪をそっとかき分けて、熱を測るみたいに手の平が乗せられる。

「…」

目が合ったのは、いつもの無表情。
言葉は無い。
0193弱気 3/32016/05/31(火) 01:40:21.05ID:+T9DDs9A0
出会ってから、問題を読み上げる以外の言葉をくれたことは一度もないけれど
不満に思ったことはない。
時折、意味を込められた回答から、メッセージを受け取ることだってできる。

しばらくして無言のまま離れていってしまった手の感触に寂しいと感じるのも。
代わりに乗せられた良く冷えた濡れタオルよりも、あなたの手の方が心地よいと思うのも。
体調が悪い所為で心が弱っているからだ。
そこまで考えて、また意識が遠くなっていく。

この奇天烈なおっさんも、中身は普通の中年男性だ。
寒い日にはくしゃみをして、メンチカツを食べて、たまに寝過ごして。
だから早く治さないと、風邪なんて移してしまったら大変だ。


目を閉じる前、熱で滲んだ視界に映ったその顔が
優しく微笑んだ気がした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

失礼致しました..
0196秋は遠くて近く 1/32016/06/12(日) 05:34:12.71ID:uTBEWrfX0
生注意。超次元定休漫画の王者校D壱声の人たち。弐→八な弐八

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


久し振りに会ったわけだしついでに今度肉食べに行こう、明日とか。
そんな唐突で相手のスケジュールを一切考慮しない誘い方をするのは昔から変わらないし、彼もいつものように笑って、いいよと返した。

「何歌えるのかなあ」
「気が早い」
「今回は投票だから多分、前回よりセットリストは遅くに発表な気がするからさ。どきどきする」
「何、練習でも行きたい?一緒にカラオケ?」
「そんな時間無いって知ってるだろ」
不安定な業界でお互い毎月仕事がある。幸せなことだが直接会う機会はめっきり減った。絶対口にするつもりはないが、寂しい。
俺だって行きたいけどさ、と彼は言いながらビールを一瞬傾ける。

「君はあれだ、ヒトカラ行ってこいよ。絶対ソロ曲あるから」
「それならそっちだって絶対あるから行けばいいじゃん」
「俺は毎日が練習みたいなもんだからいいの」
「何だよそれ」
睨みつつ呆れながらドヤ顔を見れば、目線が合ってすぐに相好を崩してふにゃりと笑う。
笑顔の多い男だが、特にこの柔らかい表情が個人的には一番好きで、未だに直視できず思わず視線を逸らした。
生来表情筋を抑える性質なことを幾度親に感謝したか知れない。そうでなければ彼の笑顔を見るたび常にニヤける怪しい男の出来上がりだ。
分厚いステーキを切る手がいつもより覚束ないのを視界の端で眺める。お互い出会った時は酒なんてほとんど飲めなかったのに今ではこうして食事と一緒に楽しめるようになった。
彼らの中では、特に彼女とは違って、未だに最弱の地位を漂う二人なことに変わりはないが。
0197秋は遠くて近く 2/32016/06/12(日) 05:35:01.45ID:uTBEWrfX0
最初はよく知らない、ただの年上の男だった。
それまで辿った人生も、外見も、性格も、私生活も、重なるところなんて見い出せそうもなくて、ただ接しやすければ助かるなぐらいにしか思わなかった。
因果なもので互いに重ならない面が不思議と噛み合い、話をすればするほど彼の存在が必要不可欠になった。
演じたキャラのお陰だね、と彼はよく言っていたが、それだけではない何かがきっと合ったんだと心の何処かで思っている。
親愛だとか友情だとかそんなありふれた言葉で関係を表現したくなかった。いや、そもそも的確な言葉は存在していない。
この世界に存在する人間二人を結びつける明るい言葉に含まれる要素を混ぜこんだ、そんな言葉が相応しい。

お前のそれは一般的には恋とか呼ばれるもんだと言われたことがあった。
まあ、単純化するなら一番近いのはそれかもしれない。別に彼と付き合いたいとも、手を繋いだりキスしたりしたいなんてわけでも全く無い。
無いけれど、いわゆる『付き合っている』状態でありたい、とは、思ってはいる。
友人という立ち位置では遠すぎるのだ。だが恋人では含まれる意味合いが変わる。そもそもそれでは不倫だ、特に彼にとって一番の禁句であるところの。
俺は彼とどうありたいのだろうかと考え続けてもう十年以上が過ぎた。結論も関係と同様あやふやのままだ。


デュエット出来るかなあと肉に飽きたと言わんばかりの顔をした彼が言う。だからもっと少ないのを頼めばよかったのに。
「ファンの子たちに投票してもらえたらだけど」
「されるって、何だかんだで俺ら人気っぽいんだし」
「俺らって、役者としての俺らは違うでしょ」
「いや?分かんないよ?」
それは君だけだって、と彼は溜息を吐く。

「みんなと、あと四人で歌うのも好きだけど、やっぱり二人でも歌いたいな俺は」
「じゃあやっぱり練習行かなきゃじゃん」
「やっぱそうなっちゃう?」
どちらともなくテーブルに置いていた携帯に手を伸ばす。
夏には稽古で一緒になるわけだからその辺りに照準を絞ることですぐに意見は一致した。
0198秋は遠くて近く 3/32016/06/12(日) 05:35:50.51ID:uTBEWrfX0
「髪は今回どうするの?」
会計を済ませて店を出ると彼が首を傾げた。
「ここからそんな伸びないだろうし前みたいな感じにする」
「敢えてまた金髪とかやっちゃう?」
「やんねーよ、被りそうな人いるし。面倒そうなお方が」
そう冗談めかすと、彼はまたあの笑顏になる。
頬が何故か熱いのはアルコールのせいだ確実に。

身体に軽い衝撃が走った。少し上背のある彼の肩が俺のにぶつかったのだ。
彼を見れば、やっぱりふにゃりとした顔をしていた。
「楽しみだね」
これじゃまるで、誰かが言ったようにやっぱり恋に落ちているみたいじゃないかと自分を嘲笑いたくなる。
「だねー」
俺の返事に喜んでいるのか、それから駅に至るまでの道中彼はずっと俺と腕が触れ合うほど近くを歩き続けたし、勿論俺もその距離で他愛もない会話をずっと続けた。
そしてその間に数度、人通りの無い瞬間。俺の手が彼の手に触れ、絡み、掴んでも彼が離れることがなかったのをどんな言葉で表現したら良いのか。
また新たな疑問は増え、更に恋人同士のそれを喜んでしまった自分と拒まなかった彼、という問題も俺には振りかかったのだった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

彼ら目当てでチケット申し込んだので祈願も兼ねて
0199死体愛好家1/52016/06/21(火) 13:42:56.19ID:P1bxqHw90
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
※注意 疑似死姦モノ
※初投稿なので至らぬ点があるかもしれませんが生ぬるく見守ってやってください。


他愛もない職場の愚痴で盛り上がるのは最近ではよくあることだった。
いつもはチェーンの安居酒屋か秀一のアパートで飲むのが通例だったが今日は珍しく秦野田の家でのことだ。
彼の家に来て秀一がまず驚いたのが一度も呼ばれたことがなかったしずぼらな秦野田の性格からしてどうせ狭っ苦しいボロアパートで散らかり放題の部屋なのだろうと思っていたのに彼の住まいがボロアパートどころか下手な一軒家よりまだ広い、
豪邸と呼んで差し支えない洋風建築の屋敷だったことだ。それもここに今現在一人で住んでるという。
「お前って金持ちだったんだな…」と目を丸くする秀一に「親の家だしいいもんでもないさ、第一広すぎて落ち着かない」と秦野田は嫌味なく笑って答えた。
部屋の内装も家具も調度品もいかにも高価そうで美しく、掃除も行き届いていて一瞬外国の城に踏み入れたかのような錯覚さえ覚える。
いつもは飲まない、というよりほとんど飲めない秀一も秦野田の意外すぎる一面を知って少し感覚が狂ったのか、彼にしては珍しく深酒してしまった。
しばらくして「もう帰る」と言い出したもののいまいち足元のおぼつかない秀一に「もう少し酔いを醒ましてけ」と秦野田は言ったが同じワイシャツを二日続けて着るのを潔癖症の気がある彼がどうしても嫌がった。
確かにこれだけ広い家で、しかもほかに家人もいないとなれば秀一ひとりくらいなんなら泊まっていってもなにも問題はなかったのだが。
呂律の回らない舌でどうしても帰ると言い張ったので、とにかくもう少しだけでも酒が抜けるまで、とこの酔っ払いを再び座らせた。
0200死体愛好家2/52016/06/21(火) 13:44:00.15ID:P1bxqHw90
ソファの上でしばらく眠ってしまっていた秀一がふと目を覚ますと窓から差す月明かりを背にした秦野田がすぐ目の前にいた。
その表情は影になって見えなかった。
ぼんやりとした頭で「…秦野田、今何時?」と聞くと同時に首筋にチクリとした小さな痛みが走った。
反射的に痛みの元に手をやろうとしたが、急激に全身から力が抜けその手は届く前に前にだらりと落ち、次いで瞼も閉じた。
たった今、秀一の首に薬を注入した注射器を手にした秦野田がそれを見て満足そうに口の端を吊り上げた。
「この薬な」
ぐったりとした秀一の頬を指でそっとなぞった。
瞼を閉じた秀一の顔が薄暗い月明かりのなかでもみるみる蒼白になっていくのがわかった。
「いとこの外科医からもらった、ええと、脳のだったかな?手術に使う目的の麻酔薬の一種なんだけどさ、開発中の新薬でまだ認可がおりてないんだ、手に入れるのにはちょいと苦労したよ」
力の抜け切ったその体を両腕で抱き上げて別室に運びながら秦野田が得意げに言う。
ほぼ同体格の人間相手でも短い間ならこうして横抱きにして運ぶことも出来る。
秀一を運んだ部屋の中央には解剖台のようなステンレス製のベッドがあった。
実際それは間違いなく本物の検死に使う解剖台だった。
「麻酔といっても使う状況が特殊でね、この薬を打つと脈拍が低下して鼓動は一分間に十回未満になるし、体温も下がる、まあ早く言えば一時的に仮死状態にするんだってさ、
ほとんど死体と区別が付かなくなるんだよ、動物実験では何度も成功してるらしいから後遺症はないと思うけど」
0201死体愛好家3/52016/06/21(火) 13:44:36.00ID:P1bxqHw90
その部屋は明らかに異常だった、解剖台が置いてあること自体もおかしかったが壁一面に隙間なく張られた写真がなによりも異常性を物語っていた。
写真はモノクロのものもありカラーのものもあり、雑誌や本などから切り抜かれたものもあった。
それらの写真に共通するものは全て人間の死体の写真だったということだ。
事故死、自殺、殺人、自然死、病死。
秀一を検死台に横たえると彼の清潔そうな白いシャツのボタンに手をかけ、一つずつ外していく。
「俺は死体が好きでさ、いわゆるネクロフィリアってやつ?」
秦野田はそう呟いて秀一にキスをした。
体温の下がり始めたその唇は陶器のような冷たさでとても生きてる人間とは思えず、秦野田をひどく興奮させた。
やがて衣服を全て脱がせてしまうと検死台の上の秀一は血の気が失せ全身が青白く、本物の死体のように見える。
ただ実際には死んでないのでどこかしらみずみずしさがあったが部屋の雰囲気と解剖台の演出でそれを払拭するには十分だった。
軽く首を傾げその肢体を舐めるように眺めまわすと秦野田は秀一の手を取ってみた、脈は感じられなかった。
手を離せば力なく落ちる。
全く本当に少しも動かない。
それだけでもうたまらなかった。
背筋がゾクゾクする。
「けど本当に殺すわけにはいかないだろ?だからさ」
そういいながら自分も服を脱ぎ検死台の上にあがった。
ヒヤリとした死物の感覚がステンレス製の台から、触れた相手の体から感じられた。
「ずっとお前のことが好きだったよ、だから死んでほしかったんだ」
0202死体愛好家4/52016/06/21(火) 13:45:22.59ID:P1bxqHw90
かがみこんで秀一の鎖骨にキスを落とした、唇を通して冷たい体の感触が伝わってきて秦野田の背中をぞわぞわと背徳心と愉悦が這い上がる。
胸に耳を当て心音が聞こえないのを確認するといよいよたまらない気分になった。
死んでる、これは死体だ。
愛する彼が死んでいる。
そう思った。
反応が返ってくる訳もないのに秦野田はねっとりと秀一の冷たい体を隅々まで愛撫した。
全身を舌と唇で嬲り、内腿やわき腹や顔を手のひらで撫で回す。
ただ痕は付けてはいけない。
しつこいほどに反応のない体を弄ぶと秀一の足を開かせたが当然抵抗されるわけもない。
排泄器官にローションを丹念に塗りこめてから興奮に張り詰めた自身の性器を秀一のそこにあてがってゆっくり挿入した。
死んでいるに等しいそこはひんやりとしていて思いのほかあっさり秦野田を受け入れた。
完全に入ってしまうと興奮が最高潮に達した秦野田はたまらなくなって秀一の体を抱きしめ、壊さんばかりに犯し始めた、それこそ秀一の全身の骨がみしみしと軋みをあげるほどに。
倒錯的な快楽が脳を支配してひたすら快感を追いむさぼることしか考えられない。
弛緩しきった体をきつく抱きしめて叫ぶように愛してると繰り返した。
死体になった秀一が愛しくてたまらない。
力の抜けた手足が揺さぶられるのに任せてだらしなく揺れる。
仮にとはいえ死んでいる秀一のそこが締め付けてきたりするはずもなく、むしろむちゃくちゃな抽挿を繰り返した所為で緩みきってしまっていたが、それが返って死体を相手にしている生々しさを生んでますます彼を興奮させた。
冷たい腸壁に性器を擦り付けてやがて秦野田が一度目の射精を向かえた、意識が飛びそうなほどの強烈な快感だった。
秦野田が性器を抜くと放った精液はすぐどろりと零れ出てきた。
蹂躙された穴はだらしなく開いたままだ。
「は…、やっぱり出てきちゃうか…」
整わぬ呼吸でそれを見下ろして満足そうに笑った。
なんの反応も返さぬ死物と化した相手がただただ愛しい、一度の射精で満足できるわけもなく、二度三度と立て続けに抱いた。
0203死体愛好家5/52016/06/21(火) 13:45:58.40ID:P1bxqHw90
それから何時間経過したのか、愛しい死体との一方的な蜜月を遮ったのは無遠慮なアラームの音だった。
薬の切れる時間が近付いていることを知らせていた。
「くそ…」
呼吸を荒げながら小さく悪態をついた。
名残惜しいが証拠隠滅にかからなければならない。
秀一の体を洗い清めて服を着せ、つい眠り込んでしまったかのように見せかける為に。
朝になったら自分のまだ一度も袖を通していない新しいワイシャツを貸してやろう、そう思った。
翌朝、ソファの上で目を覚ました秀一は血色もよく、やはり後遺症はない様子だ。
体に違和感は残っているかもしれないがよもや夕べ自分があんなことをされたとは夢にも思うまい。
弛緩しきっていた穴もほとんど痛むことはないだろう。
証拠はすべて消した。
「よう、おはよう」
秦野田が機嫌よく声をかけた。
秀一も「あー、おはよう」と眠い目をこすりながらごく普通に返した。
「今朝は機嫌がいいから俺が朝飯作ってやるよ」と実際上機嫌の秦野田が歌うように言うと秀一はにこりと笑って「そりゃありがとう」と礼を返した。
が、次の瞬間秀一の強烈な右ストレートが秦野田の顔面を直撃した。
突然殴り倒されて目を白黒させている秦野田を前にして秀一がドスを聞かせた声で言った。

「…いとこに言っとけ、あの薬、体はいうこと聞かなくなるけど意識だけはハッキリしてるってな、手術には使えねえ」

END


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ある種のコメディだと思ってください。お目汚しいたしました。
0204風と木の名無しさん2016/06/21(火) 15:45:36.30ID:PyJh2IJf0
OH そう来ましたか、受け側の「最中の感想」も聞いてみたかったりして。
変質者乙、作者様ごちそうさまでした
0207お皿は片付けるべき1/42016/07/19(火) 21:27:50.20ID:Nm3MRtpb0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
某ちっちゃくなっちゃう名探偵の赤い人×白い人
俺僕混在は仕様です



ガチンガチャバタン。
玄関の扉が開けられ誰かがこちらに向かってくる気配がする。
誰か、なんて勿体付けたがこの部屋の合鍵を持っている人間なんて一人しかいない。
しかし彼が実際に合鍵を使うことなど数えるほどしかなかった。
彼は僕が在宅している時にしか訪れない上に、わざわざインターフォンを鳴らしてドアを開けさせるのだ。
一度、料理をしている途中のこともあるのにいちいち手を止めさせるなと文句をぶつけたこともあった。
そのウィスキーボトルチャームのついた合鍵は飾りですか!?と。
彼の返答を聞き、二度と言おうとは思わなかったが。

「いらっしゃい、と君に迎えられるのが嬉しいんだ。ここにきてもいい許しを得ているようで」

合鍵を渡している時点で部屋に入ることなどとっくに許しているのに。
いつだってふてぶてしい態度でこちらをおちょくってくる(そんなことはないというがあれは絶対におちょくっている!)彼の
らしくない弱気がなんだか可愛らしく思えて、ならいいかなんてほだされてしまった。
我ながら単純だと自重する。
以来いつだって彼の来訪はインターホンが伴うのに、はてさて今日はいったいどうしたことか。
鍋から目を離さず考える。
リビングダイニングの入り口は、今僕が立っているカウンターキッチンのからはやや死角。
そちらの方をあえて見ないように。
ワーテルゾーイは初めてだ。初回で失敗したくはない。
くつくつと小さな泡を立てるミルク色のスープからはなかなかに美味しそうな匂いが立っている。
味見しようかとスプーンに手を伸ばしたところで、背中から無言で抱き着かれる。
腹に回された腕はいつになく力がこもっていて、なんだか迷子が母親を見つけたみたいだ、とクスリと笑う。
この人は、やっぱり可愛い。
「お腹すきました?」
背後の男は無言で首を振る。
彼のトレードマークであるニット帽からこぼれた癖のある長めの前髪がうなじを掠めてくすぐったい。
「すいてなくてももうすぐ出来るので、食べてください。初めて作ったんであんまり自信ないですけど」
無言。おしゃべりな男ではないがこちらの問いかけに応えないほど不愛想でもない。
声の代わりに回された腕の力が一層強くなった。
「ねえ苦しいですよ。いったん離れて、あなたのしょぼくれた顔見て笑わせてください」
「……しょぼくれてなどいない」
そんな拗ねた声音で言ってもね、と苦笑する。
本当に珍しいこともあるものだ。
0208お皿は片付けるべき2/42016/07/19(火) 21:28:23.57ID:Nm3MRtpb0
「キスがしたい」
「いつだって好き勝手にするでしょう」
「してもいいのか?」
「あなたがしたいなら。そのためにはまず腕を緩めて」
言葉の途中で強い力で体がひっくり返される。
そのまま片手で顎を掴まれて、噛みつくように口づけされた。
もう片方の手は後頭部に回されがっちりホールドされている。
顎を掴んだ手が無理やり口を開けさせ、彼の舌が無遠慮に口内に侵入する。
くそっ誰だこいつを可愛いとかほざいた浮かれ野郎は!俺だよ!!
舌に舌を絡ませ、引きずり出し、なめ上げ、吸われ……
濃厚な口づけに注がれる唾液が飲み下しきれず口の端をから溢れ顎を伝う。
それに無礼男の意識が一瞬それた瞬間、渾身の力を込めた拳を男のみぞおちに叩き……
こもうとしてあっさり止められた。
むかつく!誰だこいつを可愛いと(ry
「何なんだお前は落ち込み詐欺か!」
「落ち込んでなどいないといっただろう。だから詐欺ではない」
やっぱり一発殴るべきだとファイティングポーズを取ろうとして、はっと気づく。
「やばい、鍋!」
「火なら止めたぞ」
「いつだよ!」
「君がキスに夢中になって俺の背に腕を回したあたりで」
「俺がいつ腕を回したっていうんだ」
「気づいていなかったのか。無意識にあんな誘うような仕草をするとは君は」
やはり心配だ。
ぼそりとつぶやいた音は聞かせるつもりはなかったんだろうが、しっかり聞こえている。
はーっ、と腰に手を当て大きくため息をついた。
「もういいです、ご飯にしましょう。皿、出してください。上の深いやつ」
「了解」
0209お皿は片付けるべき3/42016/07/19(火) 21:28:56.81ID:Nm3MRtpb0
食卓は静かだった。ナイフとフォークの立てるわずかな音しかしない。
時折、何か言いたげにこちらをうかがうグリーンアイを完全に無視して黙々と食事をつづける。
言いたいことがあるならさっさと言え。
喋らないせいで食事はあっという間に終わってしまった。
「美味しかったですか?」
片付けようと席を立ちこちらの皿まで手を伸ばす男に声を掛けた。
一瞬きょとんとした顔を見せた男は、すぐにいつものポーカーフェイスに戻りああと短く答えた。
「何ですか、ああ、って。美味しかったら美味しかったと言え」
「すまない。とても美味しかった。クリーム煮のようだがさらっとしていて食べやすかった」
「そうでしょうとも。僕の作ったものよりおいしい物にはきっと現地でも出会えませんよ。僕の味に焦がれるがいいざまあみろ」
男の目つきが一瞬鋭くなり、すぐに解かれた。
知っていたのかとつぶやく男にふふんと得意顔で答える。
「僕を誰だと思っているんですか。探り屋バーボンは伊達じゃないんで」
まあ彼がベルギーに行くと知ったのは別件調査中の偶然だったのだけれども。別にいう必要はないだろう。
目に見えて彼がまたしょぼくれた。
任務のためなら恋人と平気で別れた男とは思えない姿だ。
僕も彼がベルギーに行くという以外は詳しいことは知らないし知ろうとも思わない。
それは彼の領分だ。
だが、この強靭な精神を持つ男がここまで思いつめるということは、よっぽど危険な任務なのだろう。
なんだかかわいそうになって、今日ぐらいは優しくしてやろうかななんてつい仏心がわいた。
「待っててあげますよ」
虚を突かれたように彼が顔を上げる。
「僕はこう見えても気が長い方なんで、」
「何かの冗談か…っいたいぞ」
「口をはさむから蹴られるんです!……ごほん、僕は気が長い方なんで、生きてる限りは待っててあげますよ」
僕の言葉を聞いた彼は、さっきまでの情けない顔が嘘のようにいつものふてぶてしい笑顔を見せた。
「そうは言っても、君は俺が死んだと言ったって信じないだろう?」
かつて彼が「死んだ」とき、俺はそれが信じなかった。
この世界一抜け目のない何をやるのもスマートでいっそむかつく男が死ぬわけがないのだ。
「あなたを殺せるのは僕だけなので」
「ああそうだ。俺を殺せるのは君だけだ。もっとも君ならば銃もナイフもいらないがね」
そういうと男は僕の腰に手を回しもう片方の手を顎に添え、耳元にささやいた。
―――この瞳だけあればいい。
ああ。それこそ僕のセリフだ。
そのまま瞼を閉じ彼の口づけを受け入れた。そして導かれるままに寝室の扉をくぐっていった。
0210お皿は片付けるべき4/42016/07/19(火) 21:30:29.02ID:Nm3MRtpb0
「それで?どれくらいなんですかあなたのベルギー行きは」
事後の気怠さに身を任せうつぶせたまま、傍らでたばこを吸う男を見上げる。
俺の部屋でたばこを吸うなといつもなら怒鳴りつけるが今日だけは見逃してやろう。
男は手を伸ばし俺を頭を撫でると、悲しげな色を緑に浮かべこういった。
「二週間だ」
「は?」
「二週間も君に会えない」
「はああああああああ?」
にしゅうかん。ふぉーてぃーんでいず。さんびゃくさんじゅうろくじかん。
それだけか。それだけなのかFBI。
「二週間も君に会えない触れられないキスできない。こんなつらいことがあるか」
おいこいつは誰だ。
『「銀の弾丸(シルバー・ブレット)」の異名を持ち、組織から最も警戒されているFBI捜査官。
クールでポーカーフェイスであるため、あまり感情を表に出すことはない』(Wikipediaより)じゃなかったのか。
それが二週間ぽっちの遠征で恋人に会えないと嘆いている。
こんな腑抜けに誰がした。俺か。
なんだか途轍もなく馬鹿馬鹿しくていろんなことがどうでも良くなってきた。
ベルギー料理なんて作るんじゃなかったな、なんて考えながら煙草を取り上げる。
「おい」
「僕の部屋は禁煙です」
不満げな駄々っ子にキスを一つ与えて、たばこを灰皿に押し付ける。
最初のキスで一回、さっきので一回。
「ねえ赤井、もう1R、しましょ?」
それじゃあもう一回必要だよね。
二週間も恋人と離れる可愛そうで可愛い彼のために、仏の顔も三度まで。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ

スパダリ大好きなのに全然スパダリってくれなかったよ!
0211お皿は片付けるべき4/42016/07/19(火) 21:32:19.23ID:Nm3MRtpb0
>>207
訂正
×赤い人×白い人
○えふびーあい×こーあん

白い人は別に該当者いましたので
0214息をするように愛情表現1/42016/08/31(水) 11:17:56.90ID:IqPvH2cW0
※注意※

生。某格差コンビ。
ネタは標準語ですが会話はちゃんぽん。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


『最近は格差コンビなんて言われていますが…』
『相方が仕事をしているとき、遊んでいらっしゃる?』
『ネタも作ってないんですよね』
『危機感はないのですか?…―』





「…」
「よっし逆転勝ちしてる」
「…」
「これで3連しょ―」
「―あのさぁ、」
「…ん?」
「…イヤやないん」
「なにが?」
「腹たつやろ」
「え?」
「…正直、今の人俺はめっちゃ嫌」
「ああ、」

今しがた受けたインタビューで散々に扱き下ろされた張本人は、
好調らしい贔屓チームの試合速報を確認し漸くスマホから顔を上げる。

これまで様々なメディアから取材を受けてきたけれど、
今日ほどムカつく奴に出会ったのは初めてだった。
0215息をするように愛情表現2/42016/08/31(水) 11:26:33.25ID:IqPvH2cW0
「…なんていうか人を見下して馬鹿にするようなことばっか言って」
「まぁ、だいたい本当のことやし」
「いや、そういう問題じゃ…」
「ありがとう。優しいなお前は」
「あ?」
「俺のために怒ってくれて」

へらり、と口許を緩めた相方に、小さな溜息を吐く。
気が長いというか、自分に頓着が無いというか、
この男が何かに怒りを露わにしている所を見たことがない。
俺だって、芸風と似つかず決して短気な方ではないと思う。
しかしさっきの人ときたら、文句の一つも言わないと気が済まない程
あいつに対して悪意のある質問ばかりしていた。

「まあ、平気よ。ほんまに気にならんし」
「…そこはちょっとくらい気にして、もっと頑張ろうってなれよ」
「あぁごめん」

ごめん、と言いつつ締まりの無い顔。どうやら俺の頑張れの声も右から左だ。

「…全っ然、イラっともせえへんわけ」

半分呆れて呟くと、うーんと考える素振りを見せた後「ないかなぁ」と返ってくる。
「俺は何言われても……ああ、」

何か思い当った様子に、なに、と目で問う。

「……でも…もしお前を傷つけるような事言われたら俺は、」

―許さない

「…」
「―あ、やばいもう充電無いわ」

残念そうにスマホをかばんへ放り込んだあいつの眼が一瞬、
見たことのない色に揺れた気がしてはたと視線を留める。

「そろそろ時間、大丈夫?この後収録やろ」
「え、」
0216息をするように愛情表現3/42016/08/31(水) 11:30:04.50ID:IqPvH2cW0
その声に引き戻され時計を見れば、もうとっくにいい時間だ。

「…分かってる、もう行くわ」

今日は、いや今日もこの後フリーだという相方の
「いってらっしゃい」を背中に聞きながら足早に楽屋を出た。




…いつものことだ。

微かな騒めきに蓋をして、一人スタジオへ向かう。

尊敬してる。
大切だ。
久々の一緒の仕事が、嬉しい。

恥ずかし気も無くあいつは言い、
俺の出た番組を欠かさず見ては、やっぱりお前は面白いと笑う。
それだけじゃない他にもあいつがくれるあれこれを、
俺はあしらい時には気持ち悪いと一蹴している。
0217息をするように愛情表現4/42016/08/31(水) 11:35:16.62ID:IqPvH2cW0
自分はドライな人間だろうか。

いや、俺もなんやかんや言ってあいつの事を認めているし、感謝もしている。
こうしてピンの仕事を頑張るのだって、厳しい芸能界でこのコンビを消さず
いずれは二人揃って仕事が出来ればと思うからこそだ。
これくらい態々口に出さずとも伝わっていてほしい。
それなのに最近は、見捨てないでくれとか馬鹿を言うし……

…あぁやっぱり俺は間違ってなんかいない。
こっちはコンビの将来を想って一生懸命働いているというのに、
アホな相方が分かってくれないだけだ。

「…ふー…」

さあ、余計なことを考えている暇はない。
結果を残してなんぼ。仕事モードに切り替えた頭の中で、完璧に叩き込んだ台本を捲る。
下手なオンエアは、あいつにも見せられない。




(―愛される事に慣れ 当たり前に受け入れ 知らぬ間に依存しているのは )


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

失礼いたしました。
0218※生注意 昇天紫緑 地獄雨でもどこまでも 1/42016/10/01(土) 01:41:48.95ID:yuLxzkQZ0
※ナマモノ注意、枯れ専注意

昇天の紫緑です。
久々に動画漁ったらたぎってしまいましたので、欲望のままに書きました。
棚投下が久々すぎて使い勝手忘れていますが、どうかお付き合いのほど。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0219※生注意 昇天紫緑 地獄雨でもどこまでも 2/42016/10/01(土) 01:46:46.91ID:yuLxzkQZ0
「ひとつとってくれないかい」

レンズの奥の目を細めてねだる横顔が、自分の本懐を物語っているようだった。

涙と笑いでぐしゃぐしゃになった勇退の儀はあまりにも潔く、次はすっぱりと新しい心持ちでいなさいよと背筋を叩かれた気がした。
抜擢された優秀な後輩は、冗談交じりの決意を宣言しながらも戸惑いや緊張の色を隠せないままだったが、自分も下座の3人も伊達に長生きはしていない。
これまで最年長の好々爺の懐の深さに甘えてきた分、今度はこちらが手を引いてらねばと、無言のうちに決意した。先代や前任者が作り出した自由で明快な空気に若さを上乗せして、風通しをよくしてもらえればというささやかな願いを込めて。

「みんなよくやってるみたいだね」
0220※生注意 昇天紫緑 地獄雨でもどこまでも 3/42016/10/01(土) 01:51:30.11ID:yuLxzkQZ0
番組から降りたからといって、素直に引き下がる人ではないと知っていた。ため息が漏れるほど芸に貪欲で、しかし目方を大衆性に寄せることを忘れなかった。
一部の弟子たちの「スケジュールから収録がなくなれば多少気落ちするのではないか」という懸念は瞬く間に霧消し、代わりに詰められた独演会やら何やらの文字に眉根を寄せながらも飄々と振舞っている。
冬の枯れ木のような体をじれったそうに引きずるその執着心の強さに、ときおり自分の指先が燃やされてしまいそうな錯覚すら生じる。

「2人とも頑張ってますよ、師匠のお迎えが来る前に少しでもいいとこ見せなきゃってね」
「なあに、代理が入り用になったらボランティアで出てあげますよ」

歳を重ねても快活な笑い声は変わらない。先代の豪快なそれとは相反して、品の良さを感じさせるしゃきしゃきとした声音は、いつ聞いても陶然としてしまう。
0221※生注意 昇天紫緑 地獄雨でもどこまでも 3/42016/10/01(土) 01:54:08.01ID:yuLxzkQZ0
「あなたのスキャンダルを耳にした時はちょっとばかり休むんじゃないかと期待したんですけどね」
「あれくらいネタにできないほど落ちぶれたら、師匠より先に引退しなきゃいけませんね」

皮肉のこもった一言がちくりと刺さって、これまでの色恋沙汰がざざっとこぼれ落ちた。
火遊びをしたのは一度や二度ではないが、薄情なことに誰ひとりとして顔も名前もはっきりとは思い出せない。
この人が落語の中で演じる女性と比べたら、所作といい言葉といい、品も色気もなかった。
家族に露見した際に三つ指ついて「魔が差した」というほかなかったが、本当に何かの気まぐれとしか思えなかった。
息子にインターネットの動画を再生する方法を教わって真っ先に見入った「化粧術」は、しかし今でも飽きることがない。指先の角度、目の開け方、首のかしげ方まで、あれほど匂い立つような仕草を、自分はほかに知らなかった。
あの時分から「何事も勉強、いつかは芸になる」と見聞しては一滴残らず吸収してきた男っぽさと相まって、心底惚れ惚れした。
0222※生注意 昇天紫緑 地獄雨でもどこまでも 3/42016/10/01(土) 01:55:55.07ID:yuLxzkQZ0
「ああ、もう夏が終わったんですね」

小さな車椅子にすっぽりと収まってしまう小さな体は、何度見ても胸が押しつぶされそうになる。
孫が買ってくれたというお気に入りのシャツはいつの間にかぶかぶかで、うなじから下にぞっとするような穴が見えた。

「まだボケるには早すぎませんか?まだまだ働かないと」
「あなたが誘ってくれるおかげで、新しい話を覚える暇もありませんよ。まったく」

時間があれば先人の蔵書に目を通しているというこの人は、外に引っ張り出さないと季節の変わり目も忘れてしまいそうで、仕事の合間に隙をみては辺りをぐるりと散歩することにしている。
色をつけた紅葉や楓に顎を上げて見入るのが背もたれの後ろから見えて、邪魔にならないことを確かめてぞっと車輪のストッパーを出した。

「ひとつとってくれないかい、しおりの代わりにしよう」

かさかさにかわいた指が、風に揺れる赤い手のひらを差したので、枝を傷つけないように手を伸ばした。
ああ、この人はもう、自分のほんの些細な欲望のために、つま先立ちをすることすらままならないのだ。
伝統芸能といえばきこえはいいが、その実は派閥だの何だのと面倒ごとばかりのこの世界で、文字通り体を張って守ってくれたこの人が。
0223※生注意 昇天紫緑 地獄雨でもどこまでも 3/42016/10/01(土) 01:57:37.96ID:yuLxzkQZ0
「ありがとう。これで勉強している時もあなたの顔を思い出せるよ」

こんな小さなことで礼を言わないでくれ、と叫びそうになった。この人から受けた恩の大きさを考えたら、自分の残り寿命の半分をやったって足りないくらいだ。

「……おやおやどうしたい、70近いってのに情けないねえ」

ひざ掛けで隠れた足に顔を埋めて泣いた。そうでもしないと嗚咽が漏れそうだった。後ろ頭を撫でてくれているのがありありと伝わる。
記憶の彼方にある火遊びは数度。そしてこの人と肌を重ねたのも数えきれるほどだった。
最初はすでに国民的人気だったこの番組の最年少として思い悩む自分に優しく話しかけてくれた時だった。下戸のくせに無理をして酒をあおり、真っ赤に染まった肌に惑わされた。
最後に抱いたのは、襲名披露興行が終わった日。「こんな老いさばらえた体のどこがいいんだい」とタバコを吸いながら苦笑いを浮かべる姿が眩しくて、病み上がりであることも忘れて強く抱きしめた。

「……お慕いしてます」
0224※生注意 昇天紫緑 地獄雨でもどこまでも 3/42016/10/01(土) 02:00:12.36ID:yuLxzkQZ0
数十年に及ぶ付き合いの、ほんのわずかな過ちの中でさえ、その一言を発するには至らなかった。とうに孫もいたこの人と、芸の道以外で繋がるなんて贅沢は許されるはずもなかった。
あまりに長い歴史の中で研鑽されてきた落語の濃密で途方もない世界。この中でたった2人きり、同じ時間を分かち合うこと以上のつながりを願ってはならないと、ひたむきにこの道を走るこの人の背に余計な荷物を負わせてはいけないと、奥歯を噛み締めてきたのに。

「お慕いしてます。初めてお会いした時から」

喉が震えて、これ以上の言葉が出なかった。何が噺家だ、商売上がったりだ。返名興業のひとつでも打たなければシャレにもならない。
子犬を撫でるような手つきがピタリと止まって、すっと方に両手が置かれた。顔を上げるように促されている。

「何言ってんだい、いまさら。あんな恥ずかしい思いをさせといて」

柔和な老人の笑みが瞬く間に消えて、ほんの数ヶ月前まで番組を支えていた厳しい顔つきに変わった。額をぴしゃりと叩かれ、手ぬぐいで涙を拭われる。

「あたしはね、妻も子供も孫もひ孫も弟子も仲間も、もう十分いるんですよ。なのにあんたときたら、その役割ぜーんぶ自分でやっちまおうってんだから、本当に世話が焼けるねえ」
「すみません、年寄りに冷水かけるような真似して」
「そんだけ無駄口叩けるなら立派なもんですよ。あんたを更生させるための教育はまだまだ済んでないんですから、これからもちゃーんとついてきなさい」
0225※生注意 昇天紫緑 地獄雨でもどこまでも 4/42016/10/01(土) 02:06:35.39ID:yuLxzkQZ0
まったく、この不死鳥は何十年生きるつもりだと、先ほどまでの憂いが綺麗さっぱり消え去ったことに驚いた。
本当にこの人には敵わない。地獄の釜に茹でられても、首根っこひっつかんで説教されそうだ。

「いざとなったらあんたの蝋燭ボッキリ折って、自分のやつに継ぎ足してやりますからね」
「くわばらくわばら、どっちが死神だかわかりゃしない」
「……こんな時に限って山田くんがいないんだから、あたしゃ本当に恵まれませんよ」

さっきまで絶望の淵にいた自分が、ほおをほころばせて心の底から笑っている。
また気を遣わせてしまったことへの小さな罪悪感よりも、身体中に溢れかえる名前の付けられない感情の温度が高まって、目の前の痩せっぽちの老人に何もかも投げ打ってしまおうと、何度目かの決心を新たにした。

「黄昏時だね、そろそろ帰ろうか」

夕間暮れに紫の雲が交わって、遠くの空を紺碧に染め始めた。ストッパーを外してゆっくり車椅子を押すと、この軽い体が自分だけのものになる刹那が間もなく終わってしまうことを思い出して、このまま闇に紛れてしまいたくなった。
落語という薄明かりだけが照らす、舞台の上にいるように。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ナンバリングミス&長時間占拠失礼しました……
0227風と木の名無しさん2016/10/02(日) 22:32:23.92ID:gTLs+bnp0
美しい文体と切ないお話に酔いしれました
ありがとうございます
0228※生&微エロ注意 昇天紫緑2016/10/07(金) 19:27:56.43ID:a312+f0d0
※ナマモノ注意、枯れ専注意

昇天の紫緑です。
218〜の「地獄雨でもどこまでも」から数十年前、緑にお孫さんができて紫が番組になじめなくて悩んでいたあたりです。
ゆるーくはありますが軽めのエロもございますので、ご注意ください。




|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0229※生&微エロ注意 昇天紫緑「今じゃ異名も」1/42016/10/07(金) 19:30:37.33ID:a312+f0d0
「姐さん、姐さん。なにしてるの?」

あの神棚を暴くような禁忌を犯したのはいつのことだったかと、精悍な面立ちと引き締まった体を照らす月明かりをぼんやり眺めながら思い返していた。

落語は落伍に通ずると、誰が言ったか言わないか。
自分が生まれ落ちた荒れ果てた時代ならともかく、品行方正なこの好青年が、わざわざこのやくざな世界に足を踏み入れる理由が見当たらない。
しかし、華やかな遊技から坊ちゃん坊ちゃんと甘やかされた自分も、ボロボロのラジオにかじりついて覚えた噺を見よう見まねで演じていたのだ。人のことをとやかく言う資格はない。
芸とは業だ。見入られたら脇目も振らずに逃げきるか、魂を明け渡すかのどちらかしか選べない。爪に火をともすような貧しい日々の中、靴底をすり減らして化粧品を売っていた20年前ですら、美と銭を天秤にかけて思い悩む女の顔を高座で再現できないか腐心していたのだ。
そして、いつの間にやら親になった娘と妻は、夫の実家に遊びに行ってくると、大黒柱を置き去りにして昨日から出かけてしまっている。
それはいい。遊びなのか趣味なのか仕事なのか、あわいもおぼろげな世界に身を投じる自分が止められるはずもない。
……が、しかし。この状況は極めてまずい。
0230※生&微エロ注意 昇天紫緑「今じゃ異名も」2/42016/10/07(金) 19:33:02.08ID:a312+f0d0
「そんな悩んだって仕方ないんだよ。芸は盗む、駆け引きは場数踏んで覚えるのが定石ってもんだ」

 高学歴で知性の溢れる新人は、死に物狂いで身につけた舞台の間や常識が、テレビの世界ではまるで通じないことに歯がゆさを覚えている。なまじ育ちがいいだけに、年の離れた共演者とどう絡むか、踏ん切りがつかないらしい。
 視聴者は寄席の客とは違う。秒刻みで笑いを生み出せなければチャンネルを回されて終わりだ。その重圧もあるのだろう。

「あんたはハンサムだし、落ち着きも品もある。裏できっちり筋を通せば、師匠方もお客さんもわかってくれるさ」

 眉間にしわを寄せて黙り込むそいつを慰めてやろうと思ったのがいけなかった。下戸のくせに酒屋でビールと栓抜きと、ご丁寧にグラスまで買って、誰もいない家に招き入れた。
案の定コップ1杯で限界がきた自分は、肌のほてりと回らない舌に苦笑しながら、なるべく軽くアドバイスしたつもりだったが。

「師匠、嫌ならぶん殴ってください」

 抵抗したいのは山々だが、情けないことに生まれてこのかたその辺の女より重くなったことがない。戦中戦後の粗末な食生活のせいか、若い時分から病魔に取り憑かれているせいか、医者に太れと叱られるほどひょろひょろだ。
 趣味の一つに格闘技をあげていた目の前の人物もすっきりしてはいるが、目方が20は違うだろう。

「冗談はよしとくれよ」

 から笑いとともに軽く額を小突いてみたが、この目に宿った獣の視線がハッタリでないことは、痛いほどにわかってしまう。
 自慢にならないが、男に迫られたことは何度かある。男社会のこの業界において、置屋育ちがなせる仕草や言葉遣いは、時としてなんとも艶かしく映るのだと、これは同輩や師匠の談で、つくづく因果な商売だとため息をついた。
 部屋着と寝間着を兼ねた浴衣に着替えていたのもよくなかった。左手が帯の結び目に差し込まれ、右手は薄っぺらい胸板を撫でている。
0231※生&微エロ注意 昇天紫緑「今じゃ異名も」3/42016/10/07(金) 19:35:05.25ID:a312+f0d0
 「こんな貧相な体を肴にしようなんて、物好きだねえ」
 「そうですよ。だから噺家になったようなもんです」

 もっとうまい返しはできないのかい、と突っ込むより先に、酒の匂いが染み込んだ唇が重なった。
 これだけの色男だ、さぞやモテるだろうと踏んでいたのは当て推量でもなかったらしく、舌はずる賢い生き物のようにするすると口の中を蛇行する。驚きで限界まで見開いた目が、じんわりと伝わる快楽に負けてゆく。

 「坊ちゃん、こっちに来てはいけませんよ」

 遊技の仕事場に迷い込んでしまった時、むき卵のようにつやつやで白い肌がだんだんと染まるのを見て、あれはどれだけ気持ちのいいことなのだと。その興味本位な考えは、確かに禁忌だった。
 彼女たちがいかにして日銭を稼いでいたのか知るのは少し後のことだが、目尻を赤くして足を広げ、そんなあられもない姿を恥じることなくよがる光景に、長いこと不謹慎な好奇心を覚えていた。

 舌はやがて首筋におりて、鎖骨の勾配をねぶりながら喉仏にたどり着く。片手は右手首を掴み、もう片方の手はなんの役に立つのかとんと見当もつかなかった乳首をつねる。鼻を抜ける息が少し湿り気を帯びているのがわかって、声を抑えようと口を結んだ。
 短い黒髪が肌をくすぐりながらゆっくりゆっくり下りて行く。電球が切れてしまったのがせめてもの救いだ。煌々と光るあかりのしたでこんな醜態を晒すなんて、首でもくくらなければ申しひらきができない。
 数十年もの間、今の今まで家族に不義理を働くような真似はしてこなかったというのに。まさか初めての過ちが、よりにもよって男相手だとは。

 「こんな趣味があったんだねえ」とは、せめてもの皮肉と強がりのつもりだったが。
 「男を抱くのは初めてです」と、誠実さを煮しめたようなあの顔で返してきた。

 そのお初に似つかわしくない強欲さでもって、先ほどからびくびくと反応し始めている体さえ思い切り動かせればとは思ったが、アルコールは脳みそまであっためてしまったらしい。
 理性と妻の顔と昔の思い出が、まだらになって泡を立てながらきえうせる。
0232※生&微エロ注意 昇天紫緑「今じゃ異名も」4/42016/10/07(金) 19:37:41.11ID:a312+f0d0
 「師匠、師匠」

 芸だけではなく、色事も器用なのが鼻につく。シャツを脱ぎ捨てながら足の間に膝頭をぐいぐい押しいれたので、顔を覆い隠したくなるような体勢になってしまった。

 「何考えてるんです?」
 「なんだっていいじゃねえかよ」

 顔を背けるとこめかみに熱い感触があった。肺の奥から立ち上ってこぼれ落ちる吐息が、濡れそぼって甘さを含んでいるのがわかる。

 姐さん、姐さん。あんたもこんな心持ちだったのかい?
 だったらあたしは女のしたたかさってもんをずうっと誤解していたよ。見ず知らずの男ども相手に、不安なんておくびにも出さず、愛想振りまいていたんだから。
  狐狸妖怪は化けて人を騙す。花魁は口先で人を騙す。即ち「尾いらん」というがごとしで……。

 「こんな時まで落語のことが頭をかすめてるんだから、あなたは素晴らしい」

 腰から太ももを伝う指先がじれったい。頭の中を気取られて意地悪をされているようだ。

 「でも今日くらいは……いいじゃありませんか」

 もう一度深く口づけされて、くらくらとめまいがした。赤い煙が身体中をふわふわと駆け巡るような、きっと酒飲みにとっての「酔う」とはこんな気分なのだと。
  とかくそれで、すっかり抗う術がなくなった。

 「……いけない人だねえ。狐や狸じゃあるめえし、腹黒いのはいただけねえよ」
 「あなたを独り占めするためならなんでもしますよ」

 気だるさを訴える腕を背中に回して、白い光が滑る肩に噛み付いた。
 あんまり俺をなめんじゃねえよ。今宵の傷も全部いつか芸の肥やしにしてやると。
 引かれ者の小唄のように心の中で呟いたが、それがその夜の最後の輪郭で、あとは見知らぬ痛みと悦楽に息も絶え絶えになるだけだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0233風と木の名無しさん2016/10/07(金) 20:38:25.45ID:wdWxeion0
>>228
素晴らしい作品をありがとうございます ありがとうございます
精神的には緑の人の方が何枚も上手なのがたまらん
0234※生注意 昇天紫緑 「語るも夢」2016/10/14(金) 08:11:58.68ID:DvurS0WA0
※ナマモノ注意、枯れ専注意
昇天の紫緑です。
時系列は218〜の「地獄雨でもどこまでも」と228〜の「今じゃ異名も」の間と、後者の回想シーンも入っております。
紫の視線が完全に犬のそれだったのと、緑の一人称がたまに「俺」になるのがどうしようもなく好きで執筆しました。
連投して申し訳ないですが、何とぞご容赦を……






|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0235※生注意 昇天紫緑 「語るも夢」1/42016/10/14(金) 08:14:14.88ID:DvurS0WA0
 電球の切れた和室の窓枠に腰掛け、満月にすっぽり輪郭を収めてタバコをふかす姿の、きりりとした男らしさと、骨太なたおやかさ。
 ああ、弁天小僧菊之助か。

 「さすりましょうか?」

 花の茎のようにぴんと伸びた背筋がいつの間にかゆるやかにしなり、先日還暦を迎えたこの人は、片目をつぶって腰をさするのが癖になった。

 「気持ちだけで十分だよ、ありがとう」

 しわの増えた顔が歪み、愛用のジッポでピースに火をつける。

 「師匠の機嫌とらなくていいのかい?」
 「年寄りは敬えってのが一門の掟なんでね」
 「俺の方が歳下だっての」

 実を言うと最初の最初だけ「お前はどっちが大事なんだい?」と小言をくらったが、甘いものを差し入れておけばたちまち黙ると知ってからは造作もない。
 寄席ではこうも行くまいが、この番組特有の穏やかな空気に助けられた面もある。

 「しかし、お前も歳とったね。俺はそのくらいの時にはもう孫がいたもんだけど」

 高々と積まれた藍色の座布団と白い肌の拮抗に目がくらみそうになったので、まばたきを繰り返した。

 「私も、こんなに長続きするなんて思いもしませんでした。師匠のおかげです」
 「いくらネタにしていいっつったって、こんな何十年もくそ真面目に続けるんだから、頭のいい人の考えることは違うねえ」
0236※生注意 昇天紫緑 「語るも夢」2/42016/10/14(金) 08:17:27.67ID:DvurS0WA0
 嫌味のようにも取られかねない言葉の端々に、慈愛がにじみ出ていることを何人の人間が察してくれるだろう。
 若い時分から懐の深さで慕われているこの人の隣に選ばれた時は驚きと恍惚感に呆然として、一生分の運を使い果たしたと思った。
 今や丁々発止の罵倒合戦は名物のひとつに数えられているが、打ち合わせをしたことは一度もない。お題で配られたもろもろを前に顔をしかめ、あるいは扇子を杖のようについて熟考する横顔をいかにして振り向かせるか。
 視聴者や観客の無言のうちに訴えかける要望に応えるのと、自分のむき出しの欲望とが半々に入り混じった目配せを無事に受け止めてくれることを願って、なるべく平静を装ってけしかけているだけだ。
 どこぞの女学生のような気恥ずかしい感情を、この人は知ってかしらずか常に手を抜くことなく真正面から受け止めている。時に淡々と、時に片眉を上げて、時に天敵の気配を感知した鳥のように体を震わせて。

 「師匠が毎度毎度律儀に返してくれるから、ついつい甘えてしまうんですよ」

 様式美と化したほんの束の間のやりとりの中でだけ、独り占めできているような心持ちになる。この舞台に上がりさえすれば、この人は誰の師匠でもなく、父や夫や祖父でもなく、たったひとりの噺家で、戸を叩けば鋭敏かつ柔軟に応えてくれる。
 このひとときだけはたったふたりきりだという幸せな欺瞞に満ちた、この胸の内をなんとしよう。

 「いけない人だよ、剣呑剣呑」

 煙を吐き出す細い喉と、肘先を支える立膝の具合の悪さに、自分の目にやり場のない熱がこもっていくのがわかった。
 芸の道であれば、瞬きする程度の短い間でも心と体がこちらに向けられるのに、どれほど体温を分け合っても、決してこの人は自分のものにならないのだ。
0237※生注意 昇天紫緑 「語るも夢」3/42016/10/14(金) 08:20:07.34ID:DvurS0WA0
 まだ酔いの残る脳みそが最初に捉えたその画角には、皺だらけの浴衣を無理やりまとって、窓枠に片足をかけた行儀の悪いその人が、タバコの火をぼんやり見つめる姿があった。

 「起きたかい?」
 「私は、なにを……」

 酒に焼けた声は途切れ途切れで、狼狽と恐怖で震えていた。おぼろに浮かぶ記憶の水たまりに映った景色の、天国にも似た絶望を踏みしめる。

 「覚えてねえのか?」

 顎を掴まれてぐいと顔を寄せる格好になって、張り倒されるか幻滅されるか破門されるかと逡巡するばかりの頭の片隅で、目の前にあるのが虚実皮膜の向こう側にいる生きものだとしか思えなくて、ゆっくりゆっくり喉が鳴った。

 「知らざあ言って聞かせやしょう」

 ああ、菊之助だ。菊之助がここにいる。

 「……この助平、与太郎、腹黒の音痴」

 かすん、と間抜けな音がして、タバコの箱で頭を叩かれたのがわかった。

 「女に不足はねえだろうに、なんてことしてくれてんだよ」
 「……すいません」
 「ぶるぶる震えてる暇あったらとっととそのイカくさい体洗ってこい」

 それでようやく、自分が情けない格好のままで寝入ってしまったことや、薄い髪が湯上りでかすかに濡れそぼっていることがわかった。

 「師匠、あの……」
 「あ?」
 「私……私は」
 「俺が告げ口するようなケツの穴の小せえ男に見えるか?さっきからお前のせいで痛くて仕方ねえよ」

 帯のあたりを撫でながら箪笥の中をあさり、バスタオルを取り出すとお互いの頭を覆うようにかけて、体を引き寄せるようにその端をぎゅうっと握りしめた。必然的に鼻先が触れる。

 「いいか、誰にも言うんじゃねえぞ。もしバレたらかみさんが出刃庖丁持ってお前の腹かっさばきに行くからな」
 「……はい」
 「よしよし、いい子だ。あとはもうちょーっとだけやさーしく抱いてくれたら文句なかったな」
0238※生注意 昇天紫緑 「語るも夢」4/42016/10/14(金) 08:29:39.11ID:DvurS0WA0
 くつくつと漏れる笑い声に、一瞬盛大な勘違いをしてしまいそうになった。この人が散々苦楽を共にした家族をどれだけ愛しているかなんて、わかりきっているのに。

 「……善処します」
 「おえらい先生方みてえなことしか言えねえのかよ」
 「恥ずかしいんです」

 じっとりとこちらを睨めつけていた視線の、触れれば切れそうな艶やかさに殺されてしまいたいと、そんな無様な思いで身の砕けそうな自分が。

 「次の収録は頑張れよ。……俺をネタにしていいから」

 タオルと自分の髪の間に手が差し込まれ、乱れた髪の上を滑る。親と呼ぶには近すぎて、兄というには遠すぎて、師と敬うには危うすぎるこの人の黒目に映る自分は、捨てられることを恐れる犬っころが精々だった。

 「……ありがとうございます」
 「その代わり、滑ったら上納金持ってこい」
 「剣呑剣呑」

 あれもすでに20年近く前の記憶だ。
 あれから幾度か体を重ねたが、じっと耐えるように息を漏らして感じ入る体を暴いても、一度たりとも心の内まで辿り着いた気がしない。妻の愚痴、娘の相談、孫の成長譚を感情豊かに語る横顔を見ていると、すべてが虚しい幻のように思えてくる。
 ほんのしばしの間だけ心の通い合う奇跡があるとしたら、やはりこの番組だけだ。冷静沈着に噛み付けば、いつぞやの凄艶な睨眼にぎりぎりと縛り付けられ、お決まりのくだりがばしっとはまり、座布団をとりあう頃には小さきものを愛でるようなあの笑顔が待っている。

 「私は師匠の飼い犬ですよ」
 「おお、そうだったのかい!クロや、お手」

 それでいい、他に何を望む必要があるだろう。

 「わん」
 「ふふっ、いい子だ」

 まだ長命のタバコは無残に潰され、乗せた手を軽く握られたまま頭を撫でられる。
 首に縄をつけるよりもたやすい心の捉え方を、この人は生家で学んだのだろうか。そうでなくては、こんなにも心の臓が乱れに乱れる道理が見当たらない。

 (知らざあ言って聞かせやしょう)

 ああ菊之助、応えておくれ。
 どうかその手を差し出してくれ。
 宵の淵なぞ怖くもないさ。
 お前の目だけが灯籠だ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0239風と木の名無しさん2016/10/15(土) 08:31:59.77ID:eCHxNfrI0
>>234
一連のお話、本当に大好きです。ありがとうございます!
この話でめちゃめちゃ滾ってきたので、私も過去映像を漁ってこよっとw
0240風と木の名無しさん2016/10/15(土) 23:21:36.47ID:nEihD8T20
秋の宵に佳いものを読めて幸せです
ありがとう
0241風と木の名無しさん2016/10/16(日) 06:57:53.19ID:471G/Bfi0
なんか保管庫の表示変じゃない?
なんで本文にいちいち枠みたいなのが表示されてるんだろ?
0242風と木の名無しさん2016/10/16(日) 12:35:46.73ID:I/IGrCjn0
>>241
確認してみた
文章の頭に半角スペースが入っていて謎の枠が出現する模様
取り急ぎ一話分だけ直したけど、また隙をみて直していければと思う
0243風と木の名無しさん2016/10/16(日) 16:06:17.48ID:7MEQJTfp0
スマホで見た時フォントと改行がおかしくて、てっきり仕様が変更されたのかと思ったけどそういうことか
ご報告感謝です!
0244風と木の名無しさん2016/10/16(日) 17:24:30.63ID:ANqLyT8J0
ほとんど昇天知らないんだけど
ここの昇天の話とても楽しみにしてる
どれも引き込まれる文の美しさ
0245風と木の名無しさん2016/10/16(日) 17:41:47.63ID:7MEQJTfp0
>>244
つべ等に萌え動画転がっているのでぜひ見てほしい
緑は置屋育ちで遊女に可愛がられて育ったというそれなんてBLな出自だったりする

スレチすまん
0246風と木の名無しさん2016/10/17(月) 08:06:41.42ID:4/S/ZVoM0
保管庫の枠全部直してくれた方ありがとうございます

>>244,245
昇天専スレあるよ
0247風と木の名無しさん2016/10/17(月) 09:24:42.85ID:iYXepRho0
保管庫修正してくださった方、自作を保管してくださった方、ありがとうございます!
0249オぺ了ビPC 学×戦2016/10/22(土) 20:42:12.96ID:5UE5Znvx0
・エロシーンあり。というかエロメイン。挿入には至らないですが結構じっくり描写してます。

・オぺレ一ショソアビスのプレイヤーキャラがいやらしいことしてみる話。学×戦(×学?)。

・受けのみならず攻めも声出してよがってたりします。

・行為中の喋り方が、人によってはみちくら語っぽいと思われそうなものになっちゃってます。

・季節にあった話ではありません。しかし、風景描写はあまり気にしなくてもよさそうな程度だと判断したので、投下しました。

それでもOKな方はどうぞ。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0250オぺ了ビPC 学×戦 前編 (1/5)2016/10/22(土) 20:44:06.07ID:5UE5Znvx0
「君、勃ってるだろ?」

八ヤトが、こんな台詞を口にしたのは、二人の時間に余裕ができていたある日、家に招かれていたときのことだった。

「……え?」
「勃ってるだろ。……ここが」
「な……っ」

八ヤトとク口ウは、仲の良い先輩後輩の関係であるが、それと同時に、男同士でありながら特別な感情を寄せ合う関係――恋人同士でもあるのだ。それゆえ二人きりのときは、ク口ウは先輩である八ヤトに対してタメ口を使っており、八ヤトもそれを容認している。
活発で率直で、運動の得意なク口ウと、冷静かつ穏和で、成績優秀な八ヤト。彼らはあべこべなようで気が合うところも多く、組織の隊員仲間となって以来、互いに補い合う関係から、いつしかそれ以上の気持ちを互いに持ち合うほどになったのである。
この関係を持ち始めて一ヶ月足らず。深く接触したとしてもディープキス程度だったが、二人ともこの距離感で満足しているものと思われていた。

しかし、よりによって、あまりそういったことに興味を持っていなさそうな八ヤトの方から話を切り出してきたため、ク口ウは思わず狼狽した。

「僕とキスしてて、興奮した?」
「……悪ぃかよ」
「抜いてあげようか?」
「はぁ!?」

事実、深いキスを交わした直後で興奮したク口ウの雄は、衣服の上からでも分かるほどに、熱を帯びて膨張してきていたのだ。
0251オぺ了ビPC 学×戦 前編 (2/5)2016/10/22(土) 20:45:39.89ID:5UE5Znvx0
「よ、止せよ!抜くくらい俺でもできるっての!」
「僕にされた方が嬉しいくせに」
「勝手に決めつけんなよ……っ、何あちこちいじってんだよ、退(ど)けよ……!」

耳元や首筋にも軽くキスを落としつつ、半ズボンの裾から手を入れ、太腿を撫でまわす。
ク口ウは八ヤトに怒声を浴びせながらも、体には少しずつ、悦びを感じ始めていた。

「せっかくだから、もっと色んなとこも刺激したくてね。……嫌なら、別にいいけど?」
「ぁ……」
「……ん?どうした?」
「ぅ……い、嫌じゃ、ねえよ……」
「嫌じゃないんだ?」

八ヤトは一旦手を止めるも、ク口ウは目を薄く潤ませ、顔を上気させ、こちらをじっと見つめている。
もどかしげなその様子にさらに興奮し、見つめ返しながら、誘っていく。

「……あぁ、そうだよっ。だから、その……早く、続けてくれよ……」
「ふふ……、君は本当に可愛いね。大丈夫、挿れたりはしないから」
「んぁ……、あのさ」
「ん?」
「お前も、い、いやらしいこととか、興味あったんだな……」
「そりゃあ僕だって、育ち盛りの男なんだから、こういう欲求くらい当然持ってるよ。……まったく、こんな服の着方なんてして、誘ってるの?」
「うう、うるせえ!そんなんじゃねえよ!」

再び八ヤトは刺激を与え始める。
ク口ウは普段から、制服をシャツをはだけさせるなどして着崩しているのだが、このような状況下であるのをいいことに、八ヤトはさりげなくそれを揶揄した。
0252オぺ了ビPC 学×戦 前編 (3/5)2016/10/22(土) 20:47:03.15ID:5UE5Znvx0
「はいはい。……ともかく、もっとよく体見せてよ」
「あ……!」

ネクタイをほどき、ワイシャツのボタンを外し、ク口ウの活き活きとした上半身を露わにする。八ヤトは目を見張った。

「いい体だ……、やっぱり君みたいな男は違うね」
「へへ、まあな」
「ほんと、そそられる」
「……んぅ……」
「あまり動くなよ。ここもいっぱいいじりたいし」
「んぁ、胸……恥ずかしい……」

早速体を撫でまわしていれば、ク口ウは微かな声を漏らして身を捩る。やがて胸の突起をもこねくり回しつつ、ふとその顔を見やると、力強かった目つきが、徐々に恍惚としたものになってきているのが分かった。

それを確認すると、八ヤトは、もう片方にその手を遣り、先ほどまでの箇所には口で吸いつき、音を立てて舐めまわしはじめた。

「……ん、ふぅ……」
「んん……、なんか、変……ぁ……」
「っは……感度いいね。本当に初めてなの?」
「んぁ、は、初めてだよっ……んぅ、お前が、そんなに焦らしてくるから……はぁ、んん……」
「気持ちよくなってくれるのは、こちらとしても嬉しいよ……そろそろ、ここにもしてあげようか」
0253オぺ了ビPC 学×戦 前編 (4/5)2016/10/22(土) 20:49:20.38ID:5UE5Znvx0
すっかり大人しくなったク口ウ。八ヤトは愈々、そのズボンのベルトに手をかけ、寛げていく。息をのむ声が聞こえた。
そうして露になったク口ウの雄は、血液を滾らせ、物欲しげに怒張していた。

つぅ、と指先で下から撫ぜると、ク口ウは自分でも驚くような甘い声を漏らした。

「ぁん……!、ここ、もっと、してくれよ……頼むよ……」
「分かってるさ。辛かっただろ?……すごく気持ちよさそうだよ。本当に可愛い」
「あ、んんっ……八ヤトぉ……!」

手で包み込むようにゆっくりと扱いていると、ク口ウの雄はびくびくと脈打ち、溢れる先走りに濡れていく。
涙を流して息を荒げるク口ウに、八ヤトは嬉しく思った。

そして雄を扱いたまま、胸に顔を寄せ、再び突起を舌先でくちゅくちゅとねぶりだした。

「あぁ……っ……」
「ん、ふは……、ク口ウ……んん……」
「な、八ヤト……、お前も、んはぁっ、気持ちいい、のか?」
「んっ……うん、そうだよ。嬉しいし、興奮してるから……はぁ、んむ……」
「あぁん!何、すんだよ……!」
「……可愛いよ、ク口ウ」

八ヤトが突起を甘噛みして吸ってやると、二重に与えられている快感が強まったからか、ク口ウは身をびくりと震わせ、また嬌声を上げる。
八ヤトは興奮を募らせつつも、おもむろに口を離し、手を止め、数秒ほど躊躇った後――ク口ウの雄にむしゃぶりついた。
0254オぺ了ビPC 学×戦 前編 (5/5)2016/10/22(土) 20:51:51.77ID:5UE5Znvx0
「ぅあっ……!?お、おい!どこ舐めてんだよ、ぁ、よ、止せよっ」
「駄目。舐めてるとこ、ちゃんと見てて……んん、っふ……」
「で、でも、汚ぇだろうが!ふぁ、あっ……」
「んふぁ……、汚いなんて、思わないよ……ク口ウのこれ、口の中で、ピクピクしてて……、んっはっ、僕の口も、気持ちよくなりそうっ!……ん、んぅっ……!」
「はぁ……っ、ぁ、ぁあん、そんな、こと、言うなってぇ……!」

否定の言葉を口にするが、嬌声を抑えようともしなくなっているが故に、まったく意味をなさない。
八ヤトは、自ら言及しているように、ク口ウの反応を口にも感じながら、唇と舌とで雄をねぶりまわした。

「んむ……ふはぁ……」
「あっあぁっ、そこはぁ……!」
「はぁっ、こうすると、どう?……気持ちいい?……は、んん……」
「ぁ、ぁ……気持ちぃ……」
「いっぱい感じてくれてるね、嬉しいよ……ん、ふぅ、ク口ウのこんなとこ、見られるのは、っは、僕だけだから、んぅぅ……、安心して?」
「ぅ、お、俺もっ!こんなこと、許すのは、ぁん、八ヤト、だけだからぁ、あ、はぁあぅ……!」

裏筋を舐められ、素直な言葉が口をついて出る。
上気し蕩けきった表情で、切なげなまなざしを向けてくる様は、たまらなく淫らで愛おしかった。


[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

長いので続きは明日にでも。
0255オぺ了ビPC 学×戦 後編 (1/5)2016/10/23(日) 13:08:32.26ID:ZQOCjvcc0
続きです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


そろそろ限界が近いようだ。八ヤトはむちゅむちゅと音を立てて、口で勢いよくピストンし、本格的にク口ウを絶頂へと導く。

「んっ、んぅっ、っふ、んんっ、んむっ、んっ、んっ、んっ……!」
「あぁっ、あぁ……!八ヤトぉ、もう、出る、本当に、出るぅっ!」
「ん、いいよ、ク口ウ……くひに、らひて……っふ、んん!」

「ああぁぅ……!!ぁ、っはぁぁ……」

嬉しい悲鳴を上げ、体を仰け反らせ、ク口ウはついに絶頂を迎える。――そうして八ヤトの口内に、熱いしぶきをびゅるびゅると注ぎ込んだ。

「はぁ……はぁ……」
「ん、んぐ……ごくっ……、っは、げほ、ごほっ……はぁっ……」
「……八ヤトお前、飲んだのか?その、俺の出したやつ」
「うん、いっぱい出てたよ。……でも、飲み込むのはさすがにちょっときつかったな」
「無茶しやがって……つーかさ」
「ん?」
「……俺のこんな恥ずかしい姿見といて、お前、どうともならなかったのかよ」
「まさか。そんなはずないじゃないか」
0256オぺ了ビPC 学×戦 後編 (2/5)2016/10/23(日) 13:11:11.14ID:ZQOCjvcc0
そう言うと八ヤトは立ち上がり、前を寛げ、がちがちに屹立した自らの雄を露にした。

「……うわ」
「ほら……君のおかげで、こんなに興奮したんだよ。口でも、手でもいいから……、僕のことも、気持ちよくして?」

上の方に視線を移せば、そこには初めて見る八ヤトの顔があった。
興奮と羞恥で紅潮し、目は涙に潤み、情欲のこもった視線をク口ウの両の目に打ちつけている。
一刻も早く刺激が欲しい、という期待が手に取るように分かった。

再び羞恥を感じながらも、ク口ウは慎重に、八ヤトの雄を刺激し始めた。

「ぁ……んん……」
「……凄え。ビクビク震えてるぞ」
「うん……もっと強くして、いいよ……?」
「おう……こんな感じ、か?」
「ふああっ……!、いい、いいよぉ、ク口ウ……っ」

恥などとうに捨てたのだろうか、八ヤトは歓喜の声を上げ、快感を貪り始める。
扱いているうちに気分が乗ってきたのか、ク口ウはお返しもかねて、八ヤトの雄を思い切って咥え込んだ。
0257オぺ了ビPC 学×戦 後編 (3/5)2016/10/23(日) 13:12:29.80ID:ZQOCjvcc0
「は……んんっ……!」
「あ、口でっ……歯はなるべく立てないで……うん、そう」
「んぅ、分かった……んむっ、ふぅぅ……」
「んぁ、はぁ、はぁぁっ……可愛い……、ク口ウ、可愛いよ……」
「んふぁ……そんな、じろじろ見んなよ……はんっ、俺今すっげー、恥ずかしい顔してる……んんっ、んっ」
「ふふ……、僕の様子をしっかり見といて、んっ、自分は見られたくないなんて言うのは、感心しないな……んっはっ、こんなに、色っぽいじゃないか……っはぁ、ぅぅ……!」

真っ赤な顔を涙に濡らしつつ、ぬぷぬぷと、懸命に刺激を送りこむク口ウ。その頭を、八ヤトは愛おし気に撫でる。
比較的口数が多く、よく意見をしたり、ク口ウを含む仲間たちに励ましをくれたりもする八ヤトは、やはりこのような場面でも、思い感じたことが、次から次へと言葉に出ていた。
そんな八ヤトの有様に、ク口ウはまた羞恥を煽られながらも、悦ぶ八ヤトを見て内心嬉しく思っていた。

「はぁっ、ん、あぁ……っ、気持ちぃ、あっ、僕、ク口ウの、口の中で、気持ちよくなってるよぉ……」
「へへ、恥ずかしいことばっか、言いやがって……そんなにいいのかよ……んむっ、ん、んっ……」
「ぁああっ!ふ、袋の、とこまで、撫でてくれるの?ぁ、あん」
「んん、っく、ふぅっ……!」

ク口ウは八ヤトの雄を深く咥え込み、片方の手でその後ろの袋を優しく撫でまわすと、八ヤトはさらに淫らに叫びだした。ク口ウの口内で滲む先走りの量をより一層増させ、だらだらと垂れ流す。

「ああぁ、いい……!ク口ウ、分かる?口の中で、どんどん熱くなって、ぁん、ビクビクしてるよぉ!」
「んむ、ぅん!ひゅげえ、きもひよさそぉ……っ」
「うん、ク口ウにいっぱいされて……本当に気持ちいいっ……!」
「俺も、くひんらか、きもひぃ……っ、しゃっきのおまえと、いっひょらな……」
「はあ、ぅ……うん、一緒だねっ、あ、あぁん……!」
0258オぺ了ビPC 学×戦 後編 (4/5)2016/10/23(日) 13:13:47.56ID:ZQOCjvcc0
悦びを分かち合い、愛を確かめ合う。

さらにク口ウは、袋を撫ぜる手もそのままに、今度は八ヤトの裏筋を舐め上げだした。

「ぁああん!だめ、だめだよぉっ!、裏のとこ、そんなに舐めたら、あっああっ、出る、出るうぅ!」
「んふあぁ、はぁぁ、んっはぁ……っ、いいぜ……、思いっ切り、っはぁ、んん、ぶちまけて、くれよ……!」
「あぁぁ……、ク口ウ……っ!」
「八ヤトぉ……!」

「ああんっ!!……はぁぁ、んっ、ぁぁぁ……」

ひときわ大きな嬌声を発し、八ヤトも果てた。――ク口ウの顔の上に、己の喜びをまき散らして。
0259オぺ了ビPC 学×戦 後編 (5/5)2016/10/23(日) 13:15:06.50ID:ZQOCjvcc0
「なぁ、一つ、聞いてもいいか?」
「ん、なんだ?」

行為を終え、二人は風呂に入ることにした。
入浴中、ふと、ク口ウは八ヤトに問う。

「さっきのアレは一体何なんだよ!」
「アレって?」
「そのほら……っ、ぁ、喘ぎながら、いろいろ変なこと喋ってただろ!なんか、その……き、『気持ちよくなってるよぉ〜』とか!」
「ああ、アレか……、すまない。興奮して、感情がどんどん言葉とかに出てしまったよ。しかも君以上に喘ぐなんて……はぁ、今思い出しても恥ずかしい」

うな垂れる八ヤト。ク口ウは、先ほどの行為のことを思い返して、顔から火が出るような思いをしつつ、意外に思っていた。
惜しげもなく自分をリードしていた八ヤトが、先ほどの言動をここまで恥じらっていたとは。そう考えると、少し微笑ましい気もした。

「口調も柔くなってたよな……まあでも、その……、た、楽しかったぞ!?」
「そうだね……こんなに楽しいとは思ってなかったよ。ありがとう」
「ん。……あ……ありがと、な……」

かと思えばすぐにいつもの調子に戻り、礼まで言われ、ク口ウは顔をさらに紅潮させて頷いた。

「うん。恥ずかしかったけど、いい経験だったよね。もう二学期も近いし、こんなことはなかなかできないと思う」
「二学期か……忙しくなりそうだよな。いろいろと」

これからを案じ苦笑しつつ、寄り添う二人。

さて、そのときには、二人とその仲間たちは、忙しいという程度では済まない事態に直面する羽目になるのだが、それはまた別のお話。
0260オぺ了ビPC 学×戦 筆者から2016/10/23(日) 13:16:13.63ID:ZQOCjvcc0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

以上です。お粗末様でした。
これオぺ了ビでやる意味あったんだろうか……とも思いましたが、この二人にちゅっちゅにゃんにゃんして頂きたいという気持ちが高じて、投下するに至った次第です。
ツッコミどころ満載な話ですが、ここまで読んでくれた方々、お疲れ様でした。そして誠にありがとうございます。
ではこれにて失礼いたしました。
0261※生注意 昇天紫緑 「茶わん酒」2016/10/24(月) 20:23:58.07ID:pnhWcKLf0
※ナマモノ注意、枯れ専注意
昇天の紫緑です。
時系列は218〜の「地獄雨でもどこまでも」と234〜の「語るも夢」の間です。
コエンユさんも登場しますが、筆者自身コエンユさんのことをよく知らないので、もし誤りがあったら申し訳ないです……。



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0262※生注意 昇天紫緑 「茶わん酒」1/52016/10/24(月) 20:25:31.72ID:pnhWcKLf0
 座敷で足をくつろげているというのに天井は見当たらず、生ぬるい真っ黒な雨が絶え間無くぼとぼとと降りしきり、懐かしい顔の差し出した茶わんにも容赦なく入り込んだ。
 その中身は酒なのか、水なのか。不思議なことに、墨汁のような雫がぽちゃぽちゃと小さな水面を打っても、濁ることなく澄み切ったままだった。

 「ようハゲ、元気か?」
 「なんだい、油すましの知り合いなんざいねえよ」
 「そんな冷てえこと言わねえで、どうだ1杯やらねえか?」
 「あたしが下戸だって知ってんだろ?」
 「いいじゃねえかよ。再会を祝して、ほら!」
 「やめとくれよ。猫の茶碗じゃあるめえし、そんな小汚いの使えねえよ」
 「つれないねえ、やっと会えたってのに」
 「冗談じゃないよお。あたしはまだまだやらなきゃいけないことが山積みなんだ……」

 16でひとりぼっちになった。24の時に赤線の灯が消え、故郷の景色がガラリと変わった。
 「落語に専心なさい」という神のお告げかと思ったが、自分はわがままだった。早く家庭を持ちたい。TVが台頭したせいで閑古鳥の鳴く寄席だけでは食えない。人気だけではなく実力も伴わなければ満足できない。
 何事も手中に収めなければ気のすまない性分の世間知らずに、じっと堪えて寄り添ってくれた家族には一生頭が上がらない。女のあれこれがわからない分、困らないだけの銭を死ぬまで稼いでくるのが責任だと思った。
 女遊びは芸の肥やしとよく言うが、結婚してからは律儀に義理立てしていた。酒が飲めないおかげで、遊びの場に誘われる機会も減っていった。
 しかし今、自分は確かに、目の前の男を欲している。
0263※生注意 昇天紫緑 「茶わん酒」2/52016/10/24(月) 20:29:55.11ID:pnhWcKLf0
 「師匠、おかげんはいかがですか?」
 「……ゼンマイ仕掛けの気分さ」

 やたら小難しい名前の病気の手術が決まった時、男は持ち前の要領の良さと知性を駆使して専門書を読み漁り、わかりよい言葉で「師匠の病気はこういうもので、こういった手術が必要らしいですが、心配することはありません」と説明してくれた。
 だがしかし、気が滅入るのはどうにも抑えられない。
 薬品の匂いと無数の病の重苦しさに囲まれながらきびきび動く白い制服の華奢な女性を見ていると、破門された直後のひもじい生活や、かつての華やかなりし生家の記憶がよみがえり、はて女というのはつくづくしぶとい生き物だと思い知りった。

 「さすりましょうか?」
 「すまないけど頼むよ」

 妻や医者や一門の者に吐けない弱音も、同じ舞台に立つ同士であればあけすけになれる。
 ほんのひと昔前までは見栄を張る余裕も少しばかり持ち合わせていたが、歳はとりたくないものだ。どれほど頭が回っても、口が達者なままでも、日に日に体は衰え、やわらかな申し出にまんまと身を預けてしまう。

 「こんなとこに物騒なもん埋め込んじまったんですね」
 「おっかないよ、体ん中に金属が入ってるなんて」

 楕円を描くように行き交う手の力強さに、ほどよく引き締まった腕の頼もしさを思い出し、そこはかとない羨ましさが芽生える。
0264※生注意 昇天紫緑 「茶わん酒」3/52016/10/24(月) 20:31:45.07ID:pnhWcKLf0
 こればかりは仕方ないが、噺の人物を演じるにあたって、自分の生白い手足では説得力の足りない場面もままある。啖呵を切ろうと袖をめくれば、棒っきれに似たつるつるの腕がぺろり。これにまやかしを施そうと、幾度も歌舞伎に通った。
 ボルトなんぞという無骨なものを入れた分、幾らかでもたくましくならないかと淡くばかばかしい期待も抱いたが、指先でおそるおそる触れたそれはひどく不気味で、いよいよ自分が自分のものでなくなるような、足元のおぼつかない恐怖心すらある。
 だが、男はそのいびつな丘陵の形を記憶するように、自らの体温を落とし込むように、ゆっくりと丁寧に撫でた。安堵感にため息をつくと、頰がほころんだことが背中越しの気配でわかる。

 「……細いですね」

 お二人が並ぶと画面が映えますから、という理由で横並びになってから随分経つ。
 なるほど、健康的な褐色の青年と、とち狂った水墨画のようにひょろりとした自分はあまりに対照的で、悪口雑言のやりとりと相まって派手に映り、番組以外でも共演の場が増えた。
 この男が手を握り返さなければ、旧友亡き後の道筋がどうなっていたかわからない。ことあるごとに目を細めて感謝を述べてくれるが、こちらだって礼を言わなければならない。女系家族ゆえにしばしば感じる居心地の悪さを霧散させてくれるのもありがたかった。
 息子というには近すぎて、弟と呼ぶには遠すぎて、後進と可愛がるのも憚れる。しかし、ある意味では誰よりも濃密な時間を分かち合ってきたこの男は、自分をどう捉えているのだろう。
 単なる色狂いなのか、異常なまでの物好きなのか。

 「……こっちに」
 「はい?」
0265※生注意 昇天紫緑 「茶わん酒」4/52016/10/24(月) 20:35:25.25ID:pnhWcKLf0
 ぐるりと体を反転させたので、腰を抱くような姿勢になった男は、きょとんとこちらを見つめている。瞳に映る自分はぼんやりとどこを見るでもなく、焦点の合わない目をしていた。
 病に倒れるのは初めてではないのに、喉や胸の奥がきゅうと締まるような心細さがこんなにも降り積もったことはない。手を伸ばすことすら億劫になり、目と声だけで訴える。
 今日は、今は、とことんだめだ。見飽きたはずの不味い面のせいで。

 「こっちにきとくれ」
 「……どうしたらいいんで?」
 「そばにいてくれたらいいんだよ」

 困り果てたように後ろ頭を掻くと、ベッドの下に膝立ちになって、痩せっぽちの体をぐいと抱きしめた。
 首筋に鼻先を擦り付ける姿勢になったが、噺家のくせに香水なんかつけやがってと文句を言う気も失せる。あらゆる不具合をごまかすような清潔さを拵えるための消毒液の匂いに、何日もの間閉口していたのだ。
 五臓六腑を染めるように香りを吸い込んで目をつむると、見慣れた舞台が瞼の裏にありありと浮かぶ。

 「なあに、嫌な夢みてね」
 「はあ」
 「全身麻酔ってのは眠りすぎるみたいだね、懐かしい奴がいたよ」
 「……お迎えには早すぎますね」

 女のようで女でなく、男であるのに男らしくないこの体を、男は女のように扱った。
 誰にも見せたことのない醜態を晒したというのに、屈辱よりも恥よりも情が遥かに勝り、誰にもやりたくないと血迷ってしまった。

 「不細工な顔にお似合いの不細工な茶碗に飲めもしねえ酒ついでよこしやがったからさ、尻尾巻いて逃げてきたよ」
 「そいつはよかった。あなたにとどめを刺すのは私ですからね」

 かつて置屋通いで身を滅ぼした男を何人も見てきたが、この男が絡んだ時の自分は、まるで遊女のようだと思う。一挙手一投足に目配せしながら呼吸を汲み取って、首尾よく返される反応のひとつひとつに恍惚を覚えてしまう。
 心の隅から隅まで糖蜜が注がれるような充足感は、高座でも家庭でも得られはしまい。
0266※生注意 昇天紫緑 「茶わん酒」5/52016/10/24(月) 20:36:22.97ID:pnhWcKLf0
 赤子をあやすようにトントンと背中を叩きながら、もう片方の手は肩甲骨から首にかけて痛いほどにぎゅうと抱き寄せられ、胸のすく思いがする。
 女になりたいと望んだことは一度もないが、こんな心持ちを味わえるならさぞかし贅沢な人生に違いないと、少しだけ嫉ましくもなる。

 「おお、怖や怖や」
 「……私をひとりにしないでください」

 ぽつりと落とされた一言に滲み出る切実さが愛しい。
 朋友の引退が決まり、席こそ離れてしまったが、対等な立場であることに変わりはない。鳴り物入りの優秀な新人もすぐに馴染んだことだし、きっとこれからも上手くいくだろう。
 にも関わらず、この男はいつまでもこめかみをじりじりと焼き切らんばかりのあの視線でもって容赦なく刺してくる。
 その度に頭と言わず体と言わず心と言わず、とかくすべてがひりひりと痛むのは、自分の中のどこかが女のそれにすっかり変わってしまったからなのかもしれない。
 これは不貞にあたろうか、もう顔も思い出せない親への不孝になろうか。それでもあたしはかまわない……。

 「お前はあたしと道連れだって、何度言ったらわかるんだい」
 「地獄の底までお伴しますよ」
 「おや、あたしは天国に昇るんだから、今のうちにせいぜい徳を積んどくんだね」
 「因業なじいさんだ」

 骨が砕けそうなほど腕に力が入って、神経の端から端まで火花が散った。年甲斐のない恥知らずな我が身を省みて口角が上がる。
 ああ、確かにこのまんまじゃ地獄に落ちても詮無いね。

 どうしたもんかね油すましよ、こいつが欲しくて堪らない。
 次に会えたらその茶わん酒をもひとつ余計にくれないか。
 この罰当たりな極悪人と差しつ差されつ飲みあかそう。
0267※生注意 昇天紫緑 「茶わん酒」2016/10/24(月) 20:37:55.81ID:pnhWcKLf0
おっと忘れてた

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

コメント書き込んでいただいた皆様、ありがとうございます!
0268風と木の名無しさん2016/10/25(火) 23:11:04.56ID:s9d1LWJJ0
>>241
更新されるのを見る度に胸が踊ります。
美しくて粋で、しかも的確に萌えを突いてくるw文章。本当に大好きです!
0269※生注意 昇天紫緑 「他人の花」1/52016/11/03(木) 22:10:04.36ID:FwOD46K10
※ナマモノ注意、枯れ専注意
昇天の紫緑です。
時系列は紫が馬さんの鞄持ちから前座見習いになったかならないくらいで……。
冒頭の人はコエンユさんのつもりです。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0270※生注意 昇天紫緑 「他人の花」2/52016/11/03(木) 22:11:48.16ID:FwOD46K10
 「……師匠?」

 諌めるつもりは微塵もなかった。ただ単純に驚きを隠せず、思わず声が出てしまった。

 「……ああ、ああ、お前さんかい」

 場数を踏んだ師匠方のこと、狼狽の色はさすがに隠しきれなかったが、すぐさまいたずらを窘められた子どものような顔を作って、さもなんでも御座いませんといわんばかりに立て板に水の弁明をまくし立てる……。
 と、思いきや。

 「いやね、こいつ育ちが育ちだからいやにこう……いろっぺえ時があってさ。俺は男好きじゃねえぞ?」

 あまった襟首から覗く、うなじから首筋にかけての線を舐めるように熟視していたとあっては、言い訳のしようもないのだろうか。少なくとも毎週あれほど番組で鍛錬しているはずだが、つくづく煩悩は罪深い。

 「師匠は細いですよね」
 「知ってるか?目方が50越えたことねえんだとよ」

 それ自体は初耳だったが、その出自は有名だった。女郎屋を営む家庭に生まれ育ち、必然的に夜型の生活になってしまったとか。
 妻子持ちとなっても慣習が改められることはなく、夜一食とせいぜい昼に少しばかりつまむ程度で、偏食も激しいとか。
 従って朝は弱く、仕事の時間が早い時は前もって楽屋で仮眠をとっているとか。

 「女と化粧でしたか、あれは大変素晴らしかったですね」
 「ぞっとするぜ、うちのかかあもあんなもんだからな」

 先達はさておいて、同年代の噺家と廓話の巧拙を比べると、この人に敵う者はいないだろうと常々感嘆する。大仰な言い方をすれば、白い痩躯や手首の返し方、指先の角度まで、そのすべてが噺の中の女性を演じるために用意されたのではないかと疑うほどに。
 遊女の化粧を再現しただけという余芸ですら、寄席の時間調整やテレビ向けの芸として軽んじられることが歯がゆいほどの完成度で、何度見ても陶酔してしまう。当の本人は、自分は歌も踊りも出来ないし、小道具も使わなくていいから楽だと嘯いてはいるが。
0271※生注意 昇天紫緑 「他人の花」3/52016/11/03(木) 22:13:08.18ID:FwOD46K10
 「そうそう、プロデューサーがお呼びです」
 「なんだい、早く言えよ」
 「すみません」

 ふん、と鼻を鳴らして慌ただしく出て行った背中が見えなくなるのを認めてから、楽屋に鍵をかけた。
 並べた座布団の上で、あの芸の締めにっこりと笑った愛らしい女性がこの小さく細い体の中に本当に在るのかと、疑問符が浮かぶほど寛げた寝相に苦笑いする。

 「師匠、師匠」

 穏やかな寝息を立てる横顔に小声で呼びかけたが、起き上がる気配はない。

 (このどこに、あの人が)

 この際、自分のことはとことん棚に上げようと、腹をくくった。
 襟下をそっとめくるとなだらかな傾斜があり、白さと細さに震えながら、膝頭の横、関節とふくらはぎのあわいに唇を寄せ、五感を研ぎ澄ますように目を閉じた。
 柔らかくもなければ肌も薄く、青白い弓のような骨に口付けているような気分で、頭のどこかで滑稽さを感じているのに、下腹部がずんと重くなる。
 錆びついた鉄の塊のように鈍い身体を無理やり開かせて、内側に舌を這わせる。先端から中ほどを湾曲させて、なんともささやかな柔らかさに神経を集め、永遠にもよく似た時間をかけて下りる。
 この熱が伝たわって、この皮膚がとけてしまったらどう取り繕おうかと、ばかばかしい懸念がよぎるほどには余裕がなかった。
 ああ、あの女の人はどこにもいない。俺は今、一心不乱に男の足を舐め回している。
 どうか、どうか今だけは目覚めてくれるなと、耳鳴りがしそうなほど早鐘を打つ心臓に焦りながら、しかし理性の垣根は情けないくらいに脆く、犬のようにむしゃぶりつづけた。
 くるぶしの丸みにたどり着き、足首を舌先の尖りでなぞったところで、わずかに身をよじったので思わず後ずさる。無色の糸が一瞬白く光って消えた。
 しかし、その柳のような体躯は仰向けから横に姿勢を変えただけで、目を開ける気配はなかった。

 荒い呼吸を整えて、斜め読みした講義の参考文献を頭の中でめくると、沸騰する寸前だった熱がすうっと冷めてゆく。
 最早ここまでといさぎよく諦めて、頼りない肩を揺さぶった。

 「師匠、起きてください」
 「んん……」
 「プロデューサーがお呼びです」
 「……よう、インテリ与太郎」
0272※生注意 昇天紫緑 「他人の花」4/52016/11/03(木) 22:15:00.22ID:FwOD46K10
 テレビで聴くのとはまた違う、スッと伸びた声は、朝方の水仙を思わせた。

 「ひどい言われようですね」
 「いいとこの大学通ってる秀才が道踏み外したって評判だよ」

 当たらずも遠からずといったところか。軽い気持ちで始めた鞄持ちのバイトのつもりが、ついぞギャラと呼べるものも貰えないまま、弟子入りの運びとなったのだから。
 いい加減な性格と反比例した小言の多さに気づいたのは入門してからだが、空疎な学生運動では決して見つかることのなかった生きがいを与えてくれたのも確かな話だ。

 「私はユートピアを見つけたんです」
 「横文字じゃわかんねえよ」
 「理想郷なんです。落語の……笑いの世界は」

 およそ地に足をつけているとは言い難い生き方を呆れる者も多かったが、客の笑いがあれば快哉を叫びたくなる。ユリイカとはかくやと、偉人と自分自身をまさか並べ立てるわけにもいかないが。

 「おお、いいこと言うねえ」

 多くの聞き手が「小難しいことはわかんねえよ」と片手を振って打ち切る理想論に、その人は目を見開いて興味津々といった風に笑う。
 ちゃぶ台のピース缶を開け、くわえ煙草にマッチで火をつける無造作な仕草は、目がさめるほど鮮やかで、あの女性が住んでいることを奇麗に忘れ去ってしまいそうだった。

 「あたしもね、一度でいいから江戸の暮らしってもんを味わってみたいんだ。はっつぁん、熊さん、ご隠居って世界でさ。バカみたいなことやって、勝手気ままに生きて」

 我が意を得たり、というにはほど遠いかもしれない。
 冗談めかして話してはいるが、戦禍に巻き込まれた人々にとって、落語という数少ない娯楽はどれほどの希望だっただろう。荒れ野と化した故郷、国の大掛かりなだまし討ちのなかで、人情とユーモアに溢れた時代への逃避行を思い描いただろう。
 自分はきっと甘い。たった今この瞬間、この人とそんな淡い思いを分かち合ったというだけで、本懐に指先がふれたような気がしたのだから。
0273※生注意 昇天紫緑 「他人の花」5/52016/11/03(木) 22:18:15.62ID:FwOD46K10
 「その時にはお供しますよ」
 「ははっ、いいねえ。長屋で一緒に暮らすかい?」
 「私が家事全般やりますから、たくさん稼いできてください」
 「うちの女房みたいなこといいやがって……。ああ、そろそろ行かねえとな」

 名残惜しそうに火を消すと、立ち上がって共襟を整え始めたので、背中に回ってへたりこんでいた襟口をぴんと伸ばした。細長い首の奥に陰が生まれる。

 「よくできた弟子だね。お前の師匠がうらやましいよ」
 「……ありがとうございます」

 みすぼらしい肩と、浮き上がる骨の丸みに顔を埋めて眉間や鼻先をこすりつけてしまいたいと血迷っている自分を、本当にこの人は欲してくれるだろうか。
 いっそタバコのタールに生まれ変わって、この体の内側にすがりつきたいと思い謝っている自分を、師匠は見捨てることなく側に置いてくれるだろうか。
 これ以上理性の箍を引きちぎられそうな思いに蝕まれるならば、いっそのこと目の前の他人様の花を、気の向くままに手折ってしまいたい。

 「早く上がってこいよ。待っててやるから」
 「頑張ります」

 くつくつと笑いながら流し目をよこしたその色香は、まぎれもなく男のもので、好青年の仮面をかぶるのをあやうく忘れるところだった。
 閉じたドアの向こうで雪駄の摩擦音が消えるのを待って、座布団の上に倒れ込んだ。

 (適わねえなあ……)

 あなたのなかの女にも、噺家としてのあなたにも、男としてのあなたにも、どうにもこうにも狂わされ、狂わされ、狂わされ……。

 (見てろよ、いつか必ず並んでやる)

 他人の花に情けをかけた己が運命を呪うより、身を粉にしてでもこの道行けばいつかは共に生きられよう。
 どうかその日、その時までは、その目その手を向けてくれ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

 こちらや棚のまとめや専スレで感想書き込んでいただいた姐さんたち、本当にありがとうございます!
 この場をかりて御礼申し上げます!
0274風と木の名無しさん2016/11/05(土) 01:43:29.04ID:XDPxw15y0
>>273
今回も粋で素敵でした!
色々な年代の二人を書いてくださって、みるたびにときめきます。
ぜひぜひ、またお願いします!
0275風と木の名無しさん2016/11/13(日) 11:42:17.18ID:cE5P78170
>>214
亀レスすみません、もしや「難て火だ!」コンビでしょうか…!
空気感がまんまですごく萌えました!
0276※生注意 昇天紫緑 「渡る浮世」2016/11/14(月) 02:41:16.51ID:bRrUUuvM0
※ナマモノ注意、枯れ専注意
たびたびすみません、昇天の紫緑です。
時系列は緑が勇退を他の出演者に報告した今年の頭くらいで。
あんまりこちらに連投し続けるのも忍びないので、続きは支部かオフラインか、とにかく別の場所で発表しようと思います。
何とぞよろしくお願い申し上げます。



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0277※生注意 昇天紫緑 「渡る浮世」1/42016/11/14(月) 02:43:22.93ID:bRrUUuvM0
 医学書をめくるのが習慣になった。知人を伝って専門医にも訊いたが、相変わらず明るい文言は出てこない。
 なぜ服や手拭の貸し借りのように寿命や肉体の健全さをやり取りできないのだろうと、浅はかな想いばかりが募る。
後生だから、あんたの痛苦の半分だけ、俺に今すぐ寄越してくれ。

 「思い直しませんか?」

 ただでさえ病的な痩躯は限界までやせ細り、大仰でなく生きているのが不思議なくらいだったが、遠くへ行くなという医者の忠告を柳に風と受け流し、高座に指導に番組にと打ち込む姿にすっかり忘れていたのだ。
 万物に終わりはつき物で、この人もひとりの人間であるということを。

 「へっへっ。あんたはネタがなくなるからねえ」

 いつもは頼もしいはずの、骨ばった肩を震わせる姿が、今はとにかく痛々しくて、ストールを羽織らせながら正面に回った。好々爺然とした目の奥に、かすかな戸惑いが見え隠れする。

 「真面目な話です」
 「言った通りだよ、あたしだってよくよく考えたんだ。それこそ、スタッフの皆さんや協会の人とも何度もよおく話し合ってね」

 止められはしまい。ただでさえ大病を抱えた老体を引きずりながら東奔西走しているというのに。番組の顔として笑い、派閥の間をとりもつ仲裁役として振る舞い、ひとりの噺家として板の上に立ち続けるその裏でどれほどの苦悩を抱えているか、誰もが知っているのに。
 それをおくびにも出さないのは噺家としての矜持で、せめて楽屋だけでも本音を吐露してはくれまいかと思っていたが、当の本人は「暗い話をすれば卑屈になる。それはお客様にも伝わる」と冗談以外許してくれない。
 現に、自身の引き際を話して頭を下げた直後の張り詰めた空気も「つきましては今後上納金を……」と、おきまりのサゲでことごとく崩してしまった。
 隙のない手練手管でやり込められる清々しさも、あと半年も経たないうちに味わえなくなるのだ。
0278※生注意 昇天紫緑 「渡る浮世」2/42016/11/14(月) 02:44:46.80ID:bRrUUuvM0
 「……もうね、これ以上は無理なんだ」

 2人きりの今なら、きっと心もほぐれるのではないかと願っていた。そしてそれは珍しく、悲しいほどにいともたやすく成就された。
 車椅子のなかで小さな背中が崩れ落ちる。

 「迷惑はかけられないよ。やれ倒れただ、入院だって、司会や高座の代演をお願いして。ほうぼうに駆けずり回るみんなを見てちゃね」
 「誰も迷惑だなんて思ってません。師匠にいてほしいというのは、私たち全員の願いなんです。スタッフやお客さんだって」
 「……だからこそだよ」

 朽ちるのを待つ枝葉のような指が震えていた。懐から取り出した手ぬぐいに、灰色の水玉模様がぽつぽつと滲む。

 「みなさんが求める姿のままお別れしたいんだ。これ以上みっともなくなって、ますます人の手を借りるのはいたたまれない」

 この人の涙を見るのは何年ぶりだろう。収録で、地方の仕事で、私生活でもうんざりするほど共にあったというのに、いつ何時もため息の漏れるほど艶やかな所作や、片目を瞑って笑うくせしか思い出せない。
 あれほど充足した時間が、これからも訪れるだろうか。

 「これはあたしの我儘だから、本当に申し訳ないと思ってる。でもそうでもしないと、噺家だって辞めなきゃいけない」

 こと入退院を繰り返すここ数年は、よくもまあ飽きもせずぽんぽんぽんぽん病魔に取り憑かれますねえなどと軽口を叩きながらも、この人の存在をどれだけ多くの人間が待ち望んでいるか思い知らされた。
 この人の我儘は、裏を返せば国民の我儘といってもいい。いつまでも出たいと願えば、出演者も制作陣も喜んで走り回っただろう。少し休むと申しひらけば、客も身を案じながら素直に待つだろう。
 しかし、人の上に立つ器量を持ち合わせ持ちあわせるこの人は、何においても自分に厳しい。長生きしてください、元気でいてくださいというありのままの激励を優しく受け止める一方で、思い通りにならない我が身を呪っていた。
0279※生注意 昇天紫緑 「渡る浮世」3/42016/11/14(月) 02:45:57.44ID:bRrUUuvM0
 自分の手ぬぐいで光の乱れる目元を拭うと、ようやく顔があげられた。こんな状況にあっても言葉がつっかえることはなく、一度唇を閉じた後で、指先を頬に伸ばしてゆっくりと眦を下げる。

 「……お前さんはね、あたしの友で息子で仲間で、先代の忘れ形見なんだ。そんなあんたに、情けないとこ見せたくないんだ。どうか、かっこつけたままおさらばさせとくれよ」

 いつの日もその口跡は、淀むことのない川のようだ。耳も目もたちまちに奪われる。浮世のしがらみをすべて断ち切って、この人の口演の住人になりたいと願う思いが、カラカラと音を立てて回り続ける。
 俺は一体、この感情をなんと呼べばいいのだろう。

 「今生の別れみたいに言わないでください。何十年も前から、私は師匠とずっと一緒だって言ってるじゃないですか」
 「……そうなんだよ、自分でもわかってるんだ。二人会でもなんでも、あんたと一緒にやる機会はこれからだってたくさんあるはずなんだ。……なのに」

 高々と山積された研鑽の日々をそのまま杖にしたような気性だけでこれまで耐え忍んできたこの体には、愛想のいい芸妓も、口うるさい女房も、間抜けな与太郎も、情に厚いご隠居も、小言の多いじじいも住んでいる。
 50年近く前の出会いから、言葉を交わし、高座の姿を眺めるごとに、万華鏡のように姿形と色を変え、その度に心を奪われた。
 今さら、離れられようもない。

 「……すまないね、こんな顔するはずじゃなかったんだ。あんまり、思い出が多すぎて」
 「私だって同じです。師匠がいなければ、この番組でも、ひいては噺家としても、どうなっていたことか」

 頬に添えられた右手に自分の左手を重ねる。この熱が病魔を燃やし尽くして仕舞えばいいと、そしてこれから先も延々と求められるまま、求めるままにバカバカしいやりとりを演じ続けたいと、先ほど言い渡された決心を此の期に及んで受け止めきれない自分の弱さに驚いた。
0280※生注意 昇天紫緑 「渡る浮世」4/42016/11/14(月) 02:49:02.27ID:bRrUUuvM0
 「本当はね、少しだけ悩んだんだ。あたしとやりあうとなったら、周りからあいつと比べられちまうから。それでも堂々と噛み付いてくるあんたがかわいくて、あたしだって何度助けられたかわからないよ」

 差し出された厚意にまんまと甘えて、今は亡き好敵手の後釜に居座る形となり、同業者や客に「あんたじゃ代わりは務まらないよ」と散々揶揄された時代もある。
 その度にこの人は「そうかもしれませんねえ、おっ死んだオバケと性根の腐った腹黒じゃあ使い勝手が違いますし」と軽くあしらってくれた。自分は自分で「そうかもしれませんねえ、私は師匠のことを心の底から愛していますから」と吐けばよかった。
 相手が目を点にして閉口するまでが様式美に組み込まれ、多幸感で胸が満ちた。あのまばゆい日々、古くも色あせない記憶。

 「今まで本当にありがとう、老いぼれの醜態を許しておくれ」

 細い手首の頼りなさに胸がしめつけられる。

 「……お父さん」

 小さな頭を袖で隠すように胸に寄せた。すすり泣く声が闇に落ちて消える。
 菊之助、俺の菊之助、他人様の庭に咲く花。父よ、師よ、かけがえのない友よ、凛とした横顔の描線のたくましさよ。

 「何度でも言います、私とあなたはずっと一緒です。たとえ火の中水の中、地獄の底、天国の果てまでも。あなたが無になるというのなら、私も無になりましょう」

 最初はあなたの演じる女に、やがては噺家としてのあなたに、そして男としてのあなたに翻弄され続け。
 そうか、初めから素直に恋と認めればよかったと、今この瞬間ようやく思い至った。

 「絶対に、ひとりにはしません」

 後生だから、あんたの痛苦の半分だけ、今すぐ俺に寄越してくれ。もし全部もらったら、俺の方が先に逝っちまうだろうから。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

それではこれにて一旦お開き!
続きはまた別の場所で!
0281風と木の名無しさん2016/11/14(月) 02:51:14.45ID:z8soH/Ov0
>>280
素敵です!
場所を変えても地の果てまで追いかけますよ!それくらい惚れ込みました。
0282風と木の名無しさん2016/11/14(月) 10:38:31.08ID:oxAnWRra0
>>280
雰囲気、色気、言葉の選び方。あなた様の書かれる物語が、本当に大好きです!
支部でもオフラインでも、追いかけさせてください!!
0283風と木の名無しさん2016/11/16(水) 04:11:16.24ID:qLw+cmE40
>>281-282
ありがとうございます、結局支部にしました……
鍵をかけていますが、伏字で根気強く探したら出てくると思います

管理人様、今までお世話になりました
いつも拙作を収録してくださり、本当にありがとうございました
また、普段はスルーしまうであろうジャンルにも何気なく目を通せるのも嬉しく、文章の勉強になりました
棚という場所があってよかったです
この場を借りてお礼申し上げます


スレ汚し失礼しました!
0284風と木の名無しさん2016/12/20(火) 17:24:19.48ID:63jTBz570
「BASTARD!!」というファンタジー漫画に登場する
DSという主人公が受けの話をお願いします
0287風と木の名無しさん2016/12/25(日) 23:35:01.04ID:sfIUSNZf0
ここそういうスレじゃないしもっと人が多いところでリクエストした方がいいんじゃないか
0289風と木の名無しさん2016/12/28(水) 20:54:05.89ID:zyQ7NLTe0
>>288
多分支部で捨て垢とってアップする人が増えたんだと思う
前はサイト作る程でもないけど萌えをなんとか昇華したいって人が投下してたんだろうけど今は↑ができるからなぁ
0290風と木の名無しさん2016/12/29(木) 13:19:26.23ID:wiGdIrNX0
自分が気まぐれで投下してた6、7年前は1年で4スレくらい消費してたのに、今は1年半で300レスつくかどうかってくらい過疎ってることに驚いた
支部やツイッターの鍵垢に流れちゃったよね
0291風と木の名無しさん2016/12/30(金) 17:18:05.37ID:gk0cJXwE0
連投規制が厳しくなって去った人が多いのでは
今は忍法帖が無いから少しは緩くなったのかな
書き手さん、帰ってきてほしいね
0292風と木の名無しさん2016/12/30(金) 17:26:05.76ID:EaVvoZQJ0
自分も前はサイト作る程でもないしなんとなく表ではやりにくいけど萌えた!みたいなのを投下してたけど今は支部で捨て垢とってができるからなぁ
久しぶりに何か書きたいとは思うけど…
0293風と木の名無しさん2016/12/30(金) 22:00:27.15ID:Kplpfgil0
匿名で、義理じゃない感想が欲しい時によく書いてたなぁ
調子こいて結構な頻度で書いてたら不評買っちゃったけど
0294風と木の名無しさん2016/12/30(金) 22:37:44.81ID:kzItMVq30
>>293
自分もだよ
連投しないようになるべく日数あけて投稿してたけど、その時はすでに過疎化が進んでたから、結局自分しか書く人間がいなくなった
そういう状態がいたたまれなくなって、ますます足が遠のいた
0295風と木の名無しさん2017/01/02(月) 18:39:33.89ID:6GHCqFhs0
>>291
あ、今忍法帖ないの?
投下しにくいと思った最大の理由がそれだったんだよなー
知らないうちにレベルのリセット喰らってたりしてさ、あんまり細切れでもなんだし代行頼むまでもないしなと
0296風と木の名無しさん2017/01/03(火) 15:31:10.77ID:dmE7zggp0
2ch自体にあんまり人がいなくなったしね
流行りジャンルのスレとかは未だに流速早いけど
ここに落とそうとしていざ探したら随分下に潜っていて驚いたわ
0297風と木の名無しさん2017/01/03(火) 16:46:30.78ID:Vk9Dftvm0
匿名っていうメリットのせいか、作品アップしたら必ず何かしらレスポンスがあるから、時々支部やめて戻りたくなるんだけど、ここまで人いなくなるとそれもできないな……
0298風と木の名無しさん2017/01/03(火) 19:03:16.48ID:dmE7zggp0
2chならではの良さってあるよね
久々に来て居心地いいなと感じた
レスポンスは期待しなければ、未だに投下場所としては必要なスレだと思うし存続して欲しい
ちょぼちょぼお邪魔するかもしれません
0299風と木の名無しさん2017/01/07(土) 16:38:52.24ID:svVMTN5l0
忍法帖が無くなったそうなので、久しぶりに投下してみる
本当に久しぶりなので、上手くいかなかったらゴメン

半生注意。ちょっと古いCMネタ
戸世太の新型府゜利臼の 先生×犬
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0300魔法使いの犬 1/32017/01/07(土) 16:40:20.04ID:svVMTN5l0
「シニフィアン」
穏やかな一日の終わりに、お気に入りの毛布の上で、うとうととしていると
先生がベッドの上から、僕を呼ぶ。

知らんぷりを決め込こんでいると
(でも、耳だけは声の方向に向いてしまうのだけど)
また呼ばれる。

「おいで」

くそぅ。
抗えない甘い声。

僕はベッドの下の寝床から這い出して
ぴょんと、柔らかいマットレスの上に飛び乗った。

足が沈み込んで、歩きにくい布団の上を
先生の顔が見える位置まで、てふてふと歩いていった。

ふっと先生と目が合うと、一瞬で僕の体が変化する。
白い犬の姿から、白い服を着た人間の男へと。
0301魔法使いの犬 2/32017/01/07(土) 16:43:12.83ID:svVMTN5l0
今まで何度も変身してる(変身させられている?)から
この体にも、随分慣れてきたけれど
どういう原理でこうなるのかは、謎のまま。

僕の飼い主である先生に
(便宜上、先生と呼んでいるが、何の先生かも不明)
「魔法使いなんですか?」と、一度聞いてみたけど
「さあね?」って、あの何かを含んだような笑顔ではぐらかされた。

そんなこんなを考えている間に、先生は僕を布団の中に引き込んで
僕のもじゃもじゃの髪の毛に顔を埋めてくる。

このまま、すうすうと寝息を立ててくれることもあるけど
大抵の場合、そうはならず。
今夜も、先生の手が、ゆっくりと僕の体をまさぐって
少しづつ、着ている服を剥ぎ取っていく。

「いつも、思うんですけどね」
「・・・ん?」
僕が、少し早口でしゃべりかけると
先生は、のんびりと返事をしつつ、僕のこめかみにキスを落とす。
0302魔法使いの犬 3/32017/01/07(土) 16:46:43.67ID:svVMTN5l0
「こうやって、結局服を全部脱がしてしまうんだから
 最初から、全裸の状態で変身させたら、いいんじゃないですかね?」
「・・・ああ。」
気のない相槌を打ちながら、今度は僕の左ほほにキス。

「そもそも、僕は犬なんですから、もともと服は着てないんですよね。
 それなのに、何故わざわざ?と疑問に思うわけですよ。
 そりゃ、もちろん、外出しているときは、これでいいですよ?
 でも、こういうシチュエーションでは、いかがなものかと。
 しかもシャツだけじゃなくて、その上にベストまで付いて・・・」

「・・・って、聞いてます?」
「あ。ごめん、聞いてなかった」

いつも、これだよ!!

僕はもう観念して、先生のしなやかな指使いに、身を任せることにした。

僕の名前はシニフィアン。
この、わがままでジコチューで勝手気ままで
それなのに、なぜか飛び切り魅力的な
魔法使いの、犬である。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0303必殺☆収録人2017/01/11(水) 15:45:47.60ID:RKLqSo++0
いつもお世話になっております。

保管庫に作品を収録しようとした所、「アクセス権限がありません」と表示されてしまい、更新ができません。
原因は不明ですが、もしかしてプロバイダーを変えたからかも知れません。

その内何とか対応しようと思いますが、その間だけ、どなたか作業を分担して下さると助かります。
0304風と木の名無しさん2017/01/11(水) 16:24:55.06ID:1dSZ0hDc0
>>303
いつもありがとうございます、取り急ぎ直近の作品だけ登録しました
不備がありましたらレスください
0305ひみつの体温2017/02/08(水) 02:12:00.91ID:Qqz21NW60
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ PLAY.      | |
 | |                | |           ∧_∧ 相談に乗ってくれた姐さんのために
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) Has Fallenのマイベン剃毛プレイだよ!
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
0306ひみつの体温 1/92017/02/08(水) 02:12:37.16ID:Qqz21NW60
「絶対に嫌だ!!!!!」
「なんで。マナーだぞ、ベン」
「馬鹿か君は!!だいたいそんなこと、自分でするのが普通だろう!」
 五十路を迎えようかという大の大人二人が小声で激しく言い合っているのは、アメリカ合衆国大統領閣下のアンダーヘアの処理についてである。事は白亜の宮殿のバスルームで起こっている。


 初まりは至極普通だった。
「6時からのインタビューまで時間があるな?」
 そう宮殿の主が秘書官に尋ねる。
「ええ、少し休憩なされたらいかがでしょう」
「ありがたいね、身だしなみも整えたいし。マイク、相談があるから一緒に来てくれ」
「イエス、サー」
 二人の仲がビジネスを超えて仲のいい友人だということは知れ渡っているので、誰も気にしなかった。実際はそれ以上の関係なのだが。二人は連れ立って居住区のリビングルームに入る。
「全く、髭というものは不便だな。こればっかりは女性が羨ましいよ」
 シャワールームに椅子を持ち込んで座り、暖かいタオルに覆われたベンが言う。
0307ひみつの体温 2/92017/02/08(水) 02:13:06.30ID:Qqz21NW60
「確かに。さ、剃りますよ」
「ああ、頼む」
 シェービングクリームを泡立てたマイクが言い、ベンはその白い急所をなんの衒いもなく晒した。そこにマイクはクラシカルな片刃のナイフを優しく滑らせる。
「よし、ハンサムになった」
「ふふ、髭があるとハンサムじゃないっていうのか?」
「まさか!だけど伸ばし放題ってのは退任後までおあずけだな」
 マイクはそう言いながらベンの首周りを守っていたタオルを取り、蒸しタオルを乗せると、ベンの前立が微かに盛り上がってるのが目に入った。
 どうやら髭を当たっているだけで勃ったらしい。まあ、わざと耳の裏や頸の柔らかいところを煽るように指で撫でたのだが。しかし思ったとおりにベンが感じた証拠を見てしまうと、つい、いたずら心が湧く。
「さあ、大統領閣下、下も剃るから脱いでください」
「はぁ!?気でも狂ったのか?」
「まさか。ほら、時間が無くなるぞ、脱げベン」
 マイクは脂下がった顔で笑って言う。
0308ひみつの体温 3/92017/02/08(水) 02:13:35.70ID:Qqz21NW60
「絶対に嫌だ!!!!!」
 そうして冒頭に戻る。
 ベンは暫く抵抗していたが、マイクに眇めるような目つきで自分の反応を指摘され屈してしまった。ベンはマイクの鋭い視線を浴びると、いつも抗えない。微かな吐息を吐きながら仕立てのいいスラックスと下着を降ろす。
「せめて自分でやらせてくれ」
「大統領に刃物なんか持たせられない。大人しく脚を開くんだな」
 妙にうきうきしているマイクを睨みながら洗面台に腰かけ、おずおずと脚を開き言うとおりにする。
 と、ひんやりとしたクリームを塗られ、思わず身震いしそうになる。そして柔らかなそこにきらめく剃刀を当てられ、ベンの薄い下腹がビクつく。その反応を愉しんでいるマイクの眼も見られず、ベンは細く美しい指を噛んで耐える。
「マイク、怖い」
「俺があんたを傷付けるわけ無いだろ」
 マイクはそう言って粟立ったベンの膝に口付ける。
「は、……、」
0309ひみつの体温 4/92017/02/08(水) 02:16:27.62ID:Qqz21NW60
 マイクは好き勝手にベンのペニスを退けながらゾリゾリと音を立て、枯れ草色の下の毛が剃っていく。いちいち剃り終わったところを愛おしげに撫でる。
 ふとマイクが手を止めて見やればベンのそれはしっかりと芯を持って頭をもたげている。なんとも愛らしい、そう思いつつも揶揄ってしまう。
「感じるのか?マゾだな」
「ん、ふ、ばか、おまえだからだ、はッ……」
「ったく、あんたには敵わないな。さ、大統領。後ろを向いて手で尻を押さえて」
「は?嫌だ!!」
「べン。頼むよ」
 彼の好きな自分の中で一等エロい声で頼む。哀れなベンの海の色をした瞳は羞恥で潤んでいる。
「……この、ヘンタイ」
 そう悪態を吐きつつ、言う通りに鏡の方を向き、両手で震える尻たぶを拡げる。マイクは満足気にその肉感的な唇を舐め上げた。
 清廉潔白で通っている彼が、自分の命令で卑猥な行為をする。それは何ものにも替え難く、マイクの支配欲を満たした。
0310ひみつの体温 5/92017/02/08(水) 02:16:55.70ID:Qqz21NW60
  ヒクヒクと収斂を繰り返す貞淑な穴に息を吹きかける。
「ぁ!、ひ、クソっ、馬鹿まいく、やるならさっさとやってくれ……!」
「仰せのとおり」
 きめ細かに泡立てたシェービングクリームを指に取り、大して毛の生えていない敏感になっているそこに塗りたくり、そっと刃を滑らせる。
「ぁ!んぅ……、ヒッ!や、やだ……ぅあ……あぁ、」
「よし、できた」
  濡れたタオルで拭ってやり、一仕事終えて満足げなマイクの首に甘えたように鼻を鳴らしながらベンが縋り付く。
「まいく、イきたいぃ……」
「ん?ああ、そうだな」
  ベンの額にキスしてやりながら、マイクはベン自身に手を伸ばす。そうするとやんわりと制止された。
0311ひみつの体温 6/92017/02/08(水) 02:17:15.82ID:Qqz21NW60
「、そっちじゃ、なくて……」
 潤んだ瞳と紅潮した顔で囁かれる。マイクは思わず頭を抱えた。
「クソ、あんたほんとに……。この後まだ仕事があるだろ?」
 だって、とかでも、と子供みたいにぐずるベンにマイクも限界だった。
「分かったよ、後ろ向いてくれ」
「ん……」
 マイクは兆し始めたそれを扱きながら、おとなしく洗面台に手を付きその小ぶりな尻を向けたベンの耳に後ろから囁く。
「しっかり脚を閉じてろよ」
「?なに……ッ!ぁ、んぅ!」
 閉じられたベンの柔らかい内腿にマイクは屹立を捩じ込んだ。
「や、マイク、何っ……あ!ぁ、ンッ!」
「は、ベン……」
 マイクはベンの会陰を抉るようにグラインドを続ける。マイクが深く穿つほどベンの前立腺を外から、そしてキュッと硬くなった陰嚢までを擦り上げ、二人の官能を煽る。
「あ、ぁは……ッ、やだ、まいく、や……ンン!」
0312ひみつの体温 7/92017/02/08(水) 02:17:43.69ID:Qqz21NW60
「ヤダじゃなくてイイ、だろ……言ってみろ、ベン」
「ん、ンっ!ァ、ふ、ゃ、いい……マイク、当たって、あん!い、気持ちいい……ッあ!」
「俺もいいよ、ベン……」
  そう言ってマイクはベンの波打つ背筋に何度も口付ける。
「も、マイ、ク……立てな、あっ……ぃい、んぅ!」
「もうちょっとだ、がんばれ、ベン」
「無理、むり……きちゃう、ぁ!くる、ぅ、ああ!」
「ッは、俺も、イキそうだ……」
 ガツ、というような骨と骨がぶつかる音がするほど打ち付けると、ベンは一際高い声をあげて達した。
0313ひみつの体温 8/92017/02/08(水) 02:18:18.50ID:Qqz21NW60
「なあ、ベン、悪かったよ」
  パリッとした新しいシャツでネクタイを結んでいるベンはしょぼくれた犬みたいな顔をしたマイクをぎろりと睨む。
「ベン〜……」
 情けない声をあげ、頬にキスを繰り返すマイクを邪魔だとばかりに押しのけ、ジャケットを持たせる。おとなしくベンにジャケットを着させたマイクの唇に噛み付いてベンは言った。
「覚えてろよ」
0314ひみつの体温 9/92017/02/08(水) 02:18:35.11ID:Qqz21NW60
「マイク、大統領がチェスの続きをやるから来いって言ってたぞ」
 夜になり、オペレーションルームに戻った同僚が言う。
「了解」
 にやにや笑う同僚にマイクは怪訝な目を向ける。
「なんだよ」
「今夜は帰さないから覚悟しろよだってよ」
 ひゅー、熱いねえ、なんて囃し立てる周りにマイクは負けを認め、頭を抱えたのだった。
0315風と木の名無しさん2017/02/08(水) 02:19:16.93ID:Qqz21NW60
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) 素股いいよね  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
0316aqua2017/02/14(火) 18:50:38.76ID:mrb3oq450
学園戦争、多き×磯っぷの続きみたいです!できれば性描写ありでお願いします。
続きが気になるんでお願いします。
0320おとなげないおとな 0/52017/04/05(水) 19:39:49.99ID:MePYjWoV0
久しぶりに投下したいと思います。
毛探偵でヤクザ×白い人です。
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | |> PLAY.      | |
 | |                | |           ∧_∧ 仲良くはないよ!
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
0321おとなげないおとな 1/52017/04/05(水) 19:42:09.46ID:MePYjWoV0
 例によって。本当は例によってなどとは言いたくないが、毎度のことなので仕方がない。
 例によって、送られてきたメールに添付されていた画像は、鉄謙だった。
 送り主は蔵見虎泰だ。
 子どもが学習していないのか、大人が大人気ないのか。その両方だろうと思いながら、大矢太郎は深い深い溜息をついた。

「あ? あんた一人なのか」
 蔵見に指定されたマンションの一室に着いたとき、そこには蔵見しかいなかった。この大人が悪戯を仕掛けるとき大抵赤毛の探偵が一緒にいるものだから、今回もそうだとばかり思っていたのだ。
「うん、俺だけ。安心しなよ、約束どおり鉄謙はちゃんと返してあげるからさ」
「鉄謙はどこへやった」
 大矢の眼光が鋭く光る。蔵見は、おお怖い怖い、と肩を竦めた。
「無事だよ」
 送られてきた写真の鉄謙は、二人の探偵助手と一緒に街でクレープを食べていた。いつ撮られたものかはわからないが、その時点では確かに無事だっただろう。
「……それで?」
「そろそろね、俺も腹に据えかねてるんだ。あいつ本当に学習しないから」
 ぐっと蔵見の顔が近づく。眉間に皺を寄せた大矢の顔に怯えの色が走った。
「いい顔、するよねぇ。ちゃんと躾とかなきゃ駄目だよ」
「……とばっちりか」
「そうとも言う」
 悪いけど付き合ってもらうよ、と、まるで悪びれない顔で蔵見は言った。
0322おとなげないおとな 2/52017/04/05(水) 19:44:25.45ID:MePYjWoV0
「どうしても駄目だったら駄目って言いな」
 連れ込まれた寝室で、大きなベッドに押し倒され、大矢は蔵見を見上げていた。ご丁寧に両手が頭上でベッドの柵につながれている。さすがこういう設備も整っているのか、と半ば現実逃避のような思考が頭をよぎる。
「なにも殺したいわけじゃないからさ。リラックスリラックス」
 できるか! と叫びたい気持ちでいっぱいだった。ヤのつく職業の人間にベッドに括られて、リラックスできる人間がいたらお目にかかりたい。
「……なんで鎖なんて」
「だって腕力じゃ俺かなわないだろ。もう全盛期は過ぎたし」
「……はあ」
「大丈夫、武器は今持ってないから」
 蔵見が両手を振ってみせる。今着ているものは飾り気のない半袖のシャツで、確かに何か隠し持っていたりはしそうにはなかった。とはいえ、この部屋のどこかに隠されていない保障はないが。
「相変わらずいい体だ。うらやましいよ」
 蔵見の手が大矢のTシャツの裾から入り込み、腹筋の形を確かめるように撫で回す。緊張を隠せず、腹筋が引きつった。
「そう怯えるなって、いじめたくなっちゃうだろ」
 既にいじめなのではないだろうか。そうは言いつつも蔵見は大矢のベルトを外し、ジーンズの金具を開き、片足ずつ抜かせた。
「脚も長いね。嫌になっちゃう」
 くるぶしに唇を落とされ、半ば反射的に自分の足を取り返そうと力がこもる。それを予想していたのか、蔵見は大矢の足を両腕でがっちりと抱え込んで放さなかった。
「暴れるなよ」
 足を脇に抱えられたまま、下着に手がかかる。大矢は強く奥歯を噛み締めた。
0323おとなげないおとな 3/52017/04/05(水) 19:46:37.21ID:MePYjWoV0
 体内を探られる違和感に、大矢は自分を縛る鎖を掴んで耐えていた。物理的な気持ち悪さのせいか、子どもの時分に植えつけられたトラウマのせいか、額には脂汗が浮いている。それを勘案するでもなく、蔵見は自分のペースで大矢を暴いていく。
「ギブアップしないんだ?」
「……するか」
 浅い呼吸の合間からつとめて低い声で返され、蔵見が楽しそうに笑みを浮かべる。ローションを瓶から手に取り、さらにそこへ塗りこんだ。
「じゃあ、遠慮しないよ?」
 スラックスの前立てから現れたそれに、大矢は呆れと怯えがない交ぜになった視線を向けた。
「……マジか」
「マジさ」
 本当に遠慮せず、蔵見は大矢にそれを押し当てた。暴れられないよう太腿をがっちり押さえ込んでいるあたり、手馴れていて始末が悪い。そのままゆっくりと押し込まれる。
「……っぅ……」
 荒くなる呼吸の合間から、声になる前の音がほんの少しこぼれる。楽しそうな蔵見の様子が腹立たしい。これ以上見ていられなくなり、大矢は目を伏せた。
「……痛くない?」
 気持ち悪い。が、痛くはない。浅く頷いたのに満足したらしい蔵見は少しずつ腰を進めた。ひどい圧迫感にさいなまれ、大矢の奥歯がぎりりと鳴る。
0324おとなげないおとな 4/52017/04/05(水) 19:48:05.27ID:MePYjWoV0
「ほら、息して」
 気づかないうちに呼吸を詰めていたらしい。大矢が意識して息を吐き出すと、体の緊張が少しゆるんだところを見計らって蔵見がさらに深く入り込んできた。
「っ……!」
 目を閉じたのは失敗だったかもしれない。蔵見の動きが逐一意識に上ってくる。握った鎖がぎしぎしと軋んだ音をたてる。蔵見は少し身を引き、また奥へ進むことを何度か繰り返している。
 突然、大矢は背筋に電流が走ったような感覚を覚え、驚いてとっさに蔵見を見上げた。蔵見が少しの驚きをもって見返してくる。次いで、にやりと口元を歪ませた。
「ここか。いいね、素質あるよ」
「……っ、ま、待て!」
 もう一度同じ箇所を刺激され、慌てて制止する。駄目なら言えと言っていたとおり、蔵見は制止に応えて動きを止めた。
 ほっとしたのもつかの間、体内の蔵見は神経の束の真上に居座っている。動きが止まった分その存在を明瞭に感じてしまい、大矢はうろたえた。このままというわけにはいかない。自分も。
「……もう、いいかい?」
 じわじわと体内の熱に蝕まれる大矢の変化を見て取り、蔵見は声をかけた。言うまで待ってもいいが、さすがにそこまではいじめすぎだろう。案の定、眉間に深く皺を寄せて、ひどく不本意そうな表情で、大矢はかすかに頷いた。
0325おとなげないおとな 5/52017/04/05(水) 19:52:22.69ID:MePYjWoV0
 終わるやいなや鎖を解かれ、広い風呂場に放り込まれた大矢が遠慮なく湯を使って上がると、脱いだはずの服はそこになく、代わりに新品の服が置かれていた。
 何故かサイズぴったりの服を着込んで部屋に戻った大矢に、蔵見は未開封のペットボトルを投げてよこした。危なげなくキャッチし、念のため注意深く点検してから開封する。
「悪かったな、お前さんが強情だからってちょっとやりすぎた」
「……鉄謙は」
 低く唸った大矢の声は枯れていた。大声を出したわけではなかったが、声というものは殺し続けても枯れるものらしい。ペットボトルの中身の匂いを嗅いでから慎重に口をつける。どうやらただのスポーツドリンクのようだ。
「大丈夫、無事だよ」
 蔵見が自分の携帯を開いて大矢に見せる。画面には、金髪の探偵助手が自撮りしたらしい写真が映っていた。鉄謙と黒髪の助手も一緒に写っている。三人ともクレープを食べていた写真と同じ服装だ。
 大矢が携帯を操作して写真のタイムスタンプを確認すると、つい30分ほど前の時刻が記録されていた。
「助手くんにお小遣いをあげて、一緒に遊んでおいでって言っただけさ。写真の送信は頼んだけどね」
 この上なく複雑そうな顔で、大矢は写真を見つめていた。やがて、深い溜息とともに肩を落とす。
「……まぁ、半分は俺の落ち度だ」
 ギブアップは促されていた。部屋を見回すと、大矢が来たときに着ていた服が紙袋に入れられているのを見つけた。
「これはもらっていいんだな」
 律儀に新しい服について確認を取る大矢に、蔵見はどうぞ、と頷いた。詫びのつもりでもないが、やりすぎた自覚はあった。
「送ろうか?」
「願い下げだ」
 荒々しい音を立てて玄関のドアが閉まる。一人部屋に残った蔵見は楽しそうに笑った。
「さーて、次は直接お願いしようかな」
 寝室の引き出しにはカメラが仕込んであった。
0326風と木の名無しさん2017/04/05(水) 19:54:33.45ID:MePYjWoV0
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

以上です。蔵タロ書きたくてしょうがなくなってたけど、出すところなくて困ってました。
ここが残っていて本当によかったです。
0328魔王×勇者 1/52017/05/09(火) 16:00:18.53ID:vgyPKnSY0
オリジナルで魔王×勇者
レトゲーで時々あるような、実は主人公側が侵略者だった的な感じの話です
とりあえず前半のみ。後半でエロが入ります
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

勇者は遂に魔王の下へと辿り着いた。だがここに来るまでに多くのものを失った。
共に戦いに挑んだ仲間は皆「必ず世界を救ってくれ」と言い残し、志半ばで散っていった。
彼らの命懸けの願いを背負い王の間に立った勇者だったが、その姿はあまりにも悲愴だった。
剣は欠け、鎧は砕け、その身には幾つも穴が開いている。ボロボロになった身体を気迫だけで
動かしているのは明らかだ。勇者は脚を引き摺りながら広間の奥へと進み、渾身の力で叫ぶ。
「出て来い魔王!!」
光すら吸い込まれそうな暗闇がぐにゃりと歪み、そこから一人の男が姿を現した。
勇者はそのあまりにも『らしくない』容姿に戸惑う。
重厚な甲冑も禍々しい魔物の身体も持たない、紳士然とした精悍な顔付きの男がそこにいたのだ。
「……やっと来たか」
落ち着いた低い声が空気を緊張させる。それだけで気圧されそうになったが、迷いを振り払って
剣を握り直した。
「っ貴様さえ倒せばっ……!!」
叫ぶと同時に地面を蹴る。
勝算などない。万全だったとしても勝てるかどうかというほどの圧倒的な力の差には気付いていた。
だとしても立ち向かうしか道は残されていないのだ。
「うおぉぉおおお!!」
振り下ろした刃は魔王に届くこともなく砕け散る。勇者はすぐに体勢を変え、残っていた魔力を
全て叩き込んだがそれも無駄だった。
勇者の表情が絶望に歪む。彼にはもう逃げ場がない。
彼の背には人々の希望が乗っていた。
彼の手には仲間の願いが託されていた。
負けることは許されない。
勇者は魔王を倒さなければならない。
世界を救わなければならないのだから――…
0329魔王×勇者 2/52017/05/09(火) 16:01:23.70ID:vgyPKnSY0
「くそっ……!」
「無駄だ。よせ」
「まだだ!!こうなったら……!!」
ゆっくりと歩み寄ってくる魔王と距離をとり、勇者は己の命を魔力に変える禁忌の術を発動させる。
――倒せずに逃げ帰るくらいなら、せめて道連れにして葬ってやる……!
そう覚悟を決め、詠唱を始めようとした時だった。
「もう止めろ」
いつの間にか目の前に立っていた魔王が手を伸ばす。
殺される――思わず目を瞑った次の瞬間、勇者の身体は魔王の腕の中にあった。
「なっ……!?」
「もう十分だ。自爆魔法など使う必要はない」
「ふざけるな!!何のマネだ、放せ!!」
「もっと早くこうしていれば、あんなに大きな犠牲を払うこともなかったのに」
「……は…?」
「すまなかった」
まるで慰めるように彼の身体を抱き竦める魔王の意図がわからない勇者は混乱し、声を荒らげた。
「『すまなかった』だと…?お前達が俺の仲間を殺したんだろう!!散々人間を苦しめてきた
くせに、何がっ――」
「それは違う。我ら魔族は人間を脅かしてなどいない」
「っ、うるさいっ!!」
「お前も気付いていたはずだ。魔族が自ら進んで人間を傷付けたことは一度もなかったと」
「っっ!!」
認めたくなかった事実を突き付けられた勇者は顔を強ばらせた。
それを見た魔王は悲しそうに項垂れる。
「我らは縄張りから出ない。人里を襲いもしない。もちろん人間もだ」
「……ぁ…」
「人間が我らの縄張りに入り、我らを追い出そうとした。我らは抵抗しただけだ。
常に先頭に立っていたお前にはわかっていた。だからここまで追い詰められているのだろう?」
魔王の言葉が目を逸らしていた真実に向き合わせる。
0330魔王×勇者 3/52017/05/09(火) 16:02:30.90ID:vgyPKnSY0
魔物達は倒される瞬間、皆諦めたような眼をしていた。『どうして』と、理解されない悲しみに
染まる瞳を何度切り伏せたことだろう。その度に勇者の心は軋んだ。
「何も知らない人々や仲間の願いが呪いのようにお前を縛り蝕んでいく様を見ていられなかった。
だが迂闊に私が出ていけば要らぬ犠牲を生む。お前の苦痛を増やすことは避けたかった」
「ぅ…ぁぁ……」
「お前にこんな顔をさせたのは誰だ。何故お前だけが苦しまねばならない。
始めからそんな必要はなかったのに」
「あ、あぁぁ……!」
「人間にも魔族にも既に世界は足りているのだ。お互いの領域を侵さずとも十分に
生きていけるよう均衡は保たれている。なのに人間だけがそれに気付かず、不必要な
排除を繰り返してきた。『勇者』という都合の良い存在を作りあげてな」
彼が告げる真実が、魔物達の声なき叫びが、勇者の揺らいでいた信念を打ち砕いていく。
苦しめていたのは自分達だった。殺してきたのは自分だった。
それはどんな一撃よりも勇者を深く傷付ける。勇者を打ち負かすためにデタラメを
吹き込んでいる可能性もあったが、もう彼にそれを見破るだけの余力はなかった。
「……俺……は…っ……」
「何故、お前だったと思う?」
「…………え……?」
「身寄りのない天涯孤独の身だが腕は立つ。正義感も強く、誰かを助けることに
生き甲斐を感じている。仲間も皆そうだっただろう?」
魔王の問い掛けに背筋が凍り付く。
思い浮かんだ答えを拒絶するように身体がガタガタと震え出した。
「……まさ、か、そんな……っ」
「お前達は人々に選ばれたのだ。無意識の内に、『死んでも困らない』存在として」
「!!」
「『勇者』だから世界を救うために己を犠牲にしてくれる、とな」
「ーーっっうわぁぁあああぁぁ!!!」
耐えきれなくなった勇者は悲鳴を上げてその場に崩れ落ちてしまった。少しずつヒビが
入っていた心が完全に壊れ、タガが外れたように泣き喚く。
0331魔王×勇者 4/52017/05/09(火) 16:03:41.31ID:vgyPKnSY0
「ああああ!!ぅあ、あぁ、あああぁぁあ!!」
「お前の役目は終わった。もう苦しまなくていいんだ」
「ううぅうぅ、ごめんなさい、ごめんなさい……俺が、俺が殺し、殺した、俺が殺した、俺がっ…!
みんな殺した、俺が殺した、っっごめんなさい、ごめんなさいっ、ごめんなさい……!!」
勇者はひたすらに謝り続けた。蹲り、嗚咽を漏らしながら床に何度も頭を擦り付けるようにして
許しを乞うた。
魔王はそんな彼を抱き起こし、あやすように背中を撫でてやる。何かに縋りたかった勇者は
魔王の胸に顔を埋めて泣いた。
「っぐ、ぅ……そんな、つもりじゃなかった…」
「辛い思いをさせてすまない。だが全てを話す必要があったのだ。許してくれ」
「…俺は、俺はただっ………みんなが幸せになるならって………それだけだったのに……っ」
彼の言った通り、魔物達から先に襲われたことは一度もなかった。「危険だから」といつも
先制攻撃を仕掛けていた。
魔物達は皆口を揃えて「戦う必要はない」と言っていた。それは強さ故の忠告ではなく
真の願いだったのだろう。
勇者は違和感を持ちながらもその手を振り下ろすのを止めなかった。息の根を止める度
すり減っていく心に気付かないふりをし、一刻も早くこの争いを終わらせようと無心に
剣を振るってきた。
だが結局、それらは全て無意味なことだったのだ。
「っ…殺さなくていいなら殺したくなかった!!俺は、今まで何のために…っ!!」
「手を汚させてしまったことはいくら詫びても足りぬだろう。だがお前に選んでもらいたい」
「……選ぶ…?」
魔王は改めて勇者と向き合った。
漆黒に艷めく髪、深紅の瞳、整った顔。
思わず見蕩れてしまうほど魔王の姿は美しかった。
「世界を変える大きな選択だ」
「……」
「お前が望むのなら、二度とお前のような存在が生まれないようにしてやる。人間と魔物が
いがみ合うことのない世界に変えてやる」
そんなことができるのだろうか。一体どうやって?
もしかして人間を滅ぼすとかそういう意味なのだろうか。
0332魔王×勇者 5/52017/05/09(火) 16:05:18.62ID:vgyPKnSY0
でも本当にできるのなら。他にこんなに苦しい思いをする人がいなくなるのなら。
「どうする勇者よ。お前は何を願う。人々に背負わされた望みか?それとも――…」
涙でぐしゃぐしゃになったやつれた頬に手を添え、魔王が問い掛ける。
力強い眼差しと慈しみに満ちたその瞳は、神と見紛われてもおかしくないほどの愛で溢れていた。
「………俺、は……もう…………疲れた……」
勇者はまた涙を溢れさせ、静かに目を閉じる。
「わかった。ならば全てを終わらせよう」
魔王はその涙を拭い、立ち上がって詠唱を始めた。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
続きは後日持ってきます
最初投下しようと思ったら「埋め立てですかぁ?」とか出てびっくりした
けどまだここがあって良かった
0333君と追いかけっこ1/42017/05/10(水) 20:59:37.91ID:5pNsnBd/0
某国民的殺人ラブコメアニメのFBI×公安と探偵×怪盗
表記揺れはわざとです
ナニモハジマラナイママオワッテシマッタorz

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

安室透にとってタイミングは最悪だと言わざるを得ない。
半年ぶりに逢う元・恋人の前で安室が別の人間と抱き合っていたからだ。
しかも顎に手をかけ今にも口づけを交わすかのような姿勢で―――。

例の国際的犯罪組織が摘発されてから2年、
一つの大きな悪が潰えたところでそれで終わりなわけではなく、
逮捕を免れた末端の小物たち、取って代わらんとする別の悪党どもの台頭、
そんな物の対応に各国の捜査期間はあわただしく動き続けていた。
日本に集結していた各国のエージェントは解決後、
時期の差こそあれ皆自国に帰って行った。
一番長く残っていたのはFBIで、彼らは『あの方』と呼ばれた組織の首領が
逮捕されてから一年間日本の公安と共同捜査を行っていた。
その一年の間にFBI捜査官赤井秀一と日本の警察庁降谷零の関係は目まぐるしく変化した。
あの事件の真相は捜査中にとっくに知れていた。
降谷がそれを知った時、絶望し、怒り、後悔し、ぶつけようのない感情を持て余して一時期はボロボロだった。
赤井をただ憎めば良かった頃は憎しみが体を動かす糧だった。
しかし真相を知ってしまえばそれはただの八つ当たりだ。赤井が故意にそうさせていたともいう。
降谷の優れた頭脳は冷静に赤井は悪くないと告げていたし、同時に情報を隠匿し、
検討違いの感情を植え付けた男を許すなとも喚いていた。
整理できない感情に翻弄されて任務に支障をきたすなどあってはならない。
だから降谷はFBIを含む各国と協調しての捜査を余儀なくされる状況に直面した際、
『安室透』のパーソナリティを全面的に利用することに決めた。
安室透の設定は明るく、したたかで、切り替えが早く、恨みつらみを引きずらない。
安室の仮面は便利で、あんなにどんな顔をして会えばとさんざん悩んでいた男にも、
ニコニコとフレンドリーに話しかけることが出来た。
うぬぼれではなく、組織の検挙には赤井と安室との連携が大きく貢献したのだ。
そうして見事因縁の組織を潰し、満身創痍ながらも五体満足で生き残れたことに感謝しながら、
沸き立つ捜査員たちから少し離れて立っていいた安室の元に近寄ってきた赤井に、
安室は「お疲れ様」と笑って左手を差し出した。
その手には目もくれず、赤井は安室の目を見つめたまま告げた。
「降谷君、あの件について君の怒りは正当だ。その怒りを隠す必要はもうない」
その言葉を聞いた瞬間、降谷は目の前が真っ赤に染まり気づけば渾身の力を振り絞って赤井を殴りつけていた。
検挙作戦において主力を担った赤井はぎりぎりの状態だったのか殴られて意識を失った。
そして殴った安室もまた同様に限界だったところに全力を振り絞った為、なけなしの体力を失い意識を手放したのだった。
0334君と追いかけっこ2/42017/05/10(水) 21:01:44.88ID:5pNsnBd/0
赤井秀一が次に目を覚ました時、目に入ったのは白い天井だった。
目を開けて一番に見るものがあの青い瞳だったらいいのにと思っていた心があからさまにがっかりした。
軽く体を起こし、周囲の様子を観察する。
予想通りそこは病院で、枕元に置かれた時計によると記憶にある日の翌日の午前4時。
約6時間寝ていたことになる。
身体の傷はすべて手当され(もともと軽傷だ)、痛むのは降谷に殴られた頬のみ。
(ああしかし―――、久しぶりに見た)
殴られる直前の男の顔を思い出す。
にこにこした好青年の顔の裏に隠されていた、強い意志を宿した瞳と決意に結ばれた口元。
そして自分だけに宿す怒りと憎悪。
例の件が降谷の知る所となって以来、隠されてしまった感情を引き出せたことに赤井は満足げに笑った。
赤井があの件をずっと黙っていたのは、降谷を苦しめたいわけでも、悲しませたいわけでもなかった。
己のミスで死なせた、ただそれだけのことだったからだ。
だがバーボンが死んだ男と同じ日本警察の降谷零だったことや男と幼馴染だったことを知った時も、
真実を告げようとは思わなかった。
降谷が何者であろうと、認識は変わらない。ただ己のミスで彼の知己を死なせたことは謝るべきだとは思った。
「あなたって、頭もいいし状況判断能力は高いのに、人の心の機微は読めないわね」とは、
かつて利用した女の妹ー灰原哀ーの談だ。姉にも似たようなことを言われた。
降谷があの件の真実に到達し、安室の仮面を外さなくなって相談した際そう断じられた。
「彼の気持ち、私は想像できるわよ。似たような立場だもの私たち」
現在の外見に似合わぬ大人びた哀愁を漂わせぽつりとつぶやく。
「悲しみを誰かのせいにして憎むことでやり過ごそうとしても、自分の非から目をそらすことだってやっぱり出来ないもの。
お姉ちゃんが死んだのはお姉ちゃんが愚かな選択をしたからだわ。
でもその選択をしたのは私の存在があったから。庇ってくれなくていいわ、単なる事実だもの」
この件についても赤井は何度も灰原に自分に原因があると言った。
スパイに利用されたから粛清されたのだと。
しかし灰原は頑として認めなかった。姉が死んだのは姉が組織の愚かな策略に乗ったため。
策略に乗ってしまったのは自分のためだと。
少しはあなたのせいもあるかもね、とクスリと笑った少女はすでに自分の中で整理がついたのだと伺えた。
「あなたは何度同じ間違いを繰り返すのかしら?自分が悪い、そういって自己犠牲に酔っていればあなたは気持ちいいかもしれないわね」
死んだ人間と、ミスをした男と、死んだ人間が守りたかった者(引き金を引かせた者)。
ああ確かに同じだと自分の愚かさを認識したときには、降谷は安室となっていた。
0335君と追いかけっこ3/62017/05/10(水) 21:55:18.90ID:1DTzC7uV0
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

すみません、埋め立てといわれ書き込めないのでここで中断します
0336君と追いかけっこ3/102017/05/10(水) 22:06:47.52ID:1DTzC7uV0
コマギレすればいけそう!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


赤井は降谷が負うべき荷物さえ奪い取って、起こったことを整理する機会さえ与えなかった。
結果がこれだ。
やり直さなければならないと思い続けたが安室のガードは固く、とうとう得られた瞬間がすべてが解決したときだったのだ。
しかし赤井は成功した。
隠れつづけていた降谷零を引きずりだしたのだ。
気を失ってしまったのは失態だが、彼が再び安室に戻ってしまう前に話を付けなければ。どうせ彼もここにいるだろう。
赤井はベッドから抜け出すと、降谷の病室を探してまずはナースステーションに向かった。
0337君と追いかけっこ4/72017/05/10(水) 22:07:31.65ID:1DTzC7uV0
その後降谷が目を覚ますまで枕元にいた赤井が意識を取り戻した降谷と再度ひと悶着を起こし、
それでも赤井が諦めず話し合いを重ね、とうとう涙をこぼした降谷を抱き込んでそのまま二人で眠ってしまった姿が
見舞に来た部下たちに発見され、散々こじれた因縁はあっけなく解けてしまった。
以降職場復帰した降谷の元に夕食に誘う赤井何度もが警察庁で目撃されるようになり、
気の置けない友人となったのち、その場のノリと勢いで二人は恋人となった。
その半年後、赤井はアメリカへと帰り遠距離恋愛となる。
最初の1か月は週に2回あった連絡が月に3回となり、一回となり、二か月に1回となって、
半年前から音信不通となった。
ああ、遠距離なんてこんなもんだよなと痛む胸に蓋をして、
安室は訳知り顔で赤井の電話番号をプライベートの端末から消した。
0338君と追いかけっこ5/72017/05/10(水) 22:08:08.69ID:1DTzC7uV0
さてそれが半年前のこと。
今、自然消滅したはずの降谷の元恋人赤井秀一が目の前におり、鬼の形相で安室を睨みつけている。
ここはかつて身分を隠して働いた喫茶店ポアロで、安室はとある事情の為に再びここで単発のバイトをしていた。
安室の腕の中には12歳年下の『ちょっとした知り合い』が顎を掬い上げられたまま、
安室と同じく赤井を見て顔をひきつらせて硬直している。
「め、めーたんてー……」
いや違う。彼は赤井を見ていたわけではなかった。
「よぉバ快斗。白昼堂々いちゃつくとは良いご身分だな?」
赤井の陰には日本警察の救世主、平成のシャーロックホームズと呼ばれる東の名探偵工藤新一が、
にこやかにほほ笑みながら怒りをあらわにするという器用な表情を浮かべ佇んでいた。
0339君と追いかけっこ6/102017/05/10(水) 22:10:04.03ID:1DTzC7uV0
話は少し遡る。
工藤新一は羽田の国際線到着ロビーにいた。
「あっ赤井さん、こっちです!」
「やぁボウヤ、久しぶりだな」
声を上げた工藤の元に黒尽くめの男が近づいいてくる。
すらりと高い背に、がっしりとした肩幅、長い足を持て余すことなく無駄のない所作で歩く男の名は、
周囲(特に女性)の目線を集めながら全く気にすることなく軽く手を上げた。
「お変わりなさそうですね」
ちらりとトレードマークのニット帽に目をやりながら工藤は言う。
「ボウヤは……でかくなったな」
「あー、それ、もうやめてくださいよ」
ボウヤっていうのも。工藤と顔を合わせる度お決まりになったやり取りに赤井は日本に帰ってきたことを実感する。
「荷物それだけですか?随分と身軽ですね。せっかく車で来たのに」
「免許を取ったのか。では今日はあれで来たのか?」
「スバルの方ですよ。初心者にマスタング運転しろとか無茶言わないでください」
赤井が日本にいた頃乗り回していたフォードとスバルは日本を撤退する際、世話になった手間賃替わりにと工藤に譲った。
現場に行くには足があった方が良いので工藤は素直に受け取ったが、後で価格を知って卒倒しかけた。
人に簡単に譲る車ではない。
「でかい車の方が女受けはいいがな……。ああ、ボウヤにはそういう意味でもむようだったか」
軽口を叩き合いながら駐車場に停車していた車に乗り込む。自分が乗り回していた頃は煙草の匂いが染みついていたが、
今は取り付けられたディフューザーから発散されるかすかな花の香りで満ちている。
大方、誰か気の利く人物からの免許取得祝いといったところか。
「からかわないでくださいよ。……赤井さん、今回はお仕事での来日ですよね」
「ああ、怪盗キッド……奴の狙っている宝石にちょっと野暮用があってな」
「俺も今回捜査協力の依頼来てるんで、お手伝いできますよ」
「それは心強いな。だがまずは一息つきたい。降谷君の家まで頼めるか?」
当然のように恋人の名を出せば、ぴたりと工藤の動きが止まる。
0340君と追いかけっこ7/102017/05/10(水) 22:10:29.64ID:1DTzC7uV0
ギギギ……と油の切れた機械人形のようにぎこちなくこちらを向き直った
「あ、赤井さん。今回の来日、安室さんに知らせてません、よね?」
おや、と赤井は工藤の言葉に引っかかる。
赤井の恋人の降谷はことは、工藤ももちろん知っている。
もろもろ終わった後は安室ではなく降谷と呼んでいたはずだ。
と、いうことは……。
「降谷君は今また潜入中か。通りで連絡がつかないはずだ」
「あ、一応連絡はしたんですね」
「ああ、だが番号が変更されていた。ボウヤは彼の新しい番号を知っているか?」
「俺も教えてもらってないですよ。でも、その態度は赤井さん、知らないんですね」
「うん?彼の新しい番号は知らないぞ」
「じゃなくって、あむ……降谷さん、赤井さんと別れたと思ってますよ」
A bolt from the bule。晴天の霹靂。寝耳に水。藪から棒。
工藤の言葉は赤井の灰色の脳細胞を停止させるに充分だった。
工藤は何といった?降谷が俺と別れたと思ってるって?なぜそんな結論になる?
初めて見る赤井の様子に工藤もまた驚いていた。
「えーと、とりあえず、なんか認識の相違があるみたいなんで、安室さんに会います?」
「居場所を知っているのか!」
がばりと工藤に詰め寄った赤井の必死の形相と言ったら!!
今日はびっくりすることばっかだななんてノンビリと考えてながら工藤は車を走らせ米花町に向かう。
まさかそこで自分の意中の人が尊敬する大人に迫られている様子を目にするなんて思いもしないまま。
0341君と追いかけっこ8/82017/05/10(水) 22:12:24.85ID:1DTzC7uV0
赤井の恋人(安室の認識によると元恋人)安室と、名探偵工藤新一の目下の標的、想い人黒羽快斗のラブシーンは、
かつてシルバーブレットと呼ばれた二人にまともな思考をする能力を奪うに十分だった。
抜身のナイフのような視線が二組。
安室と黒羽は一瞬目を交わすと言葉もなく示し合せ、脱兎のごとく裏口に駈け出した。
「「まて!!」」
シルバーブレッツの声が重なる。
だが二人は決して振り向かない。
一瞬でも気を抜けばすぐに捕まる、そういう油断のならない相手であることは、二人は身をもってよく知っているからだ。
安室が走りながら目線を黒羽にやる。
黒羽はすぐ、安室の手が動いていることに気づいた。
人差し指、中指、薬指を立て、ぐっと握る。次に小指以外を全て立て、親指と人差し指を立て、……。
数字の羅列を示していると理解した黒羽は、一つうなずきすぐに安室とは別の方向に駈け出した。
「ちっ逃げられたか」
ガラも悪く赤井が吐き捨てる。
工藤はとっさに黒羽につけた発信機を追っていたが移動スピードから途中で気づけれ車にでも付け替えられたことを悟りやはり舌打ちする。
「赤井さん」「ボウヤ」
同じタイミングで声を掛け、再び二人の声が重なった。
「「絶対に捕まえるぞ」」
かくして、シルバーブレット対白い夜の住人の追いかけっこの火ぶたは切って落とされた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

数字gdgdですみません8/8で最後です
スレ汚し失礼致しました
0342一瞬だけど永遠1/22017/05/11(木) 13:03:18.05ID:00NsuC7S0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

静かな夜だった。
いつも聞こえていた心電図を刻む電子音も、ぽたぽたと垂れる点滴の音も聞こえない。
着けられていた人工呼吸器は外され、久しぶりの自発呼吸はやはりろくに酸素を肺には送ってくれなかった。
だが、それでいい。全ては今日ここで終わる。
家族に囲まれ、ベッドに横たわる男はとても穏やかな気持ちだった。
大企業を経営する父の元に生まれ、金に不自由することなく育てられた。
家族仲は良好で、忙しいながらも父はよく旅行に連れて行ってくれて様々なことを教えてくれた。
母はお嬢様育ちらしくおっとりとした穏やかな人で、自分や弟妹をいつも優しく見守ってくれていた。
幸いにも頭もそう悪くなく、良い大学に進み、卒業してからは父の知り合いの会社に入り経営を学んだ。
やがて父の会社に移り、跡取りとして名に恥じないよう必死で働いた。
あるパーティで知り合った取引先の社長の娘に見初められ、相手からのアプローチで結婚、2男1女に恵まれた。
父がそうであったように、自分も子供たちに様々な経験をさせようと家族でたくさん旅行をした。
誤算だったのは長男次男がそこから世界に興味を持ち、会社経営ではなく長男は外交官、次男は国際協力NGOとなったことだ。
お兄ちゃん達には好きなことをやらせてあげてよ、会社は私が継ぐわ、とは末っ子長女の言葉である。
大学で経営学を学び、今ではそこで見つけた婿とともに会社を盛り立てている。
孫は全員合わせて7人、一番末の孫はまだ7つだ。
その子は泣きそうな目でこちらを見つめている。
「父さん……」
最初に泣き出したのは長男だった。昔から涙もろかった。
目線でそれを見咎める。
「兄さん、泣き虫は変わらないな、父さんが言ってるぞ『なんだお前、男のくせに』って」
そうからかう次男も泣き笑いの表情だ。
自分の死に、ここに集まった者達は皆悲しんでくれている。
その事実が男を死の恐怖から遠ざけた。
一人一人お別れの言葉をかけていく。どの思い出も暖かかった。
だけど、たった一つ心残りがある。
この心残りを解決しなければ、死んでも死にきれない。
力を振り絞り、男は言葉を発した。
「彼と……二人きりに……」
0343一瞬だけど永遠2/32017/05/11(木) 14:10:20.07ID:ZLACMQOv0
家族と主治医はうなづくと、ぞろぞろと退出していく。
そうして部屋には彼と男だけが残った。
「旦那様……」
彼はそっとベッドに近づき、力なく投げ出された手を握る。
握られた男の手も、握る男の手もしわだらけの老人の手だ。
だが、彼らは違った頃の手をを知っている。
子供の頃、遊びに行こうと彼の手を引っ張って飛び出したのは男の手だった。
中学で部活に打ち込み豆だらけになった手に包帯を巻いてくれたのは彼の手だった。
大学の時、将来について悩み荒れた時殴り合った手だった。
0344一瞬だけど永遠3/32017/05/11(木) 14:10:39.24ID:ZLACMQOv0
男は就職し、彼は親の跡を継いで男の家の家令となった。
疲れ果てて帰ってきた男を出迎え、荷物を受け取るときにそっと触れる手だった。
物心つくころからずっと共にいた。
彼は男の人生を一番近くで見つめていた。
男が結婚する時、彼は何より喜んだ。
彼が結婚する時、男は誰よりも祝いの言葉を贈った。
お互いがお互いの無二の存在だった。
共にあるのが当たり前だった。
二人は見つめあい、男はこれまでの人生で言わなかった胸の内を吐き出す。
「……愛しているよ」
「存じ上げております。もちろん私も」
少しずつ二人の影が近づき、重なる。
男は満足げに瞼を下した。
最初で最後の愛の告白。
最初で最後の口づけ。
「お休みなさい、すぐに追いつきますので」
一礼し、彼は静かに部屋を後にした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0345風と木の名無しさん2017/05/12(金) 20:02:16.31ID:hQDmXEJz0
>>344
ちょっぴり切ないけどほっこりできた
素敵なお話をありがとう
0346風と木の名無しさん2017/05/12(金) 20:13:30.87ID:QbhnrRCY0
>>333
なんか始まる予定はあるん?

つかこのスレずっと死んでたのに最近賑やかで嬉しい
0347風と木の名無しさん2017/05/15(月) 20:38:53.93ID:qE75jtaP0
すみません、魔王様と勇者の続きは・・・首を長くして待っております
0348風と木の名無しさん2017/05/17(水) 18:37:03.83ID:kb0rdjDn0
自己満受け攻め論コネタ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「攻めや、攻め受けとはなんぞや」
「なんだ受け、唐突に」
「われは受けとして、攻めに抱かれておる」
「そうだな」
「しかしわれから攻めを押し倒したとしても、われは受けである」
「ふむ」
「攻めがわれを好きだと告白して、われらは受けと攻めとなった。しかし最近はわれがより攻めを好きである」
「どちらがより好きかについては異論を挟みたいが、受けは矢印について言いたいのだな?」
「しかり。積極的な方が攻めであるという向きもある」
「それは攻めと受けの定義ではなく、好みではないか。矢印を向ける攻めが好きである、逆が好きであるといったものだ」
「では、体格はどうだ。われは攻めよりも大きく、たくましい」
「それもまた、好みだ。攻めたる者こそ大きくたくましくあらねばと信じる者たちもいるが、そうでないものもある。定義ではない」
「性格は。細やかな気配りで涙もろく、料理や家事が得意とするおなごのようなものが受けの役割を負うと思うものもいる」
「やはり好みだ。女性、男性の別がある限り女性的な人物がやはり女性同様受け入れる側と想像しやすいため数は多くなるが、それこそが攻め受けを決定づけるものではない」
「では何が攻めであり、何が受けなのだ」
「もう最初に答えを言っているじゃないか。受けは私に抱かれている。挿入される方が受けであり、する方が攻めである」
「では攻めよ、われがぬしに挿入したらどうか」
「ん?」
「われの一物をぬしに入れたら、ぬしは攻めではなく受けとなり、われは攻めとなるのか」
「ちょっと待て受け、お前攻めになりたいのか」
「われとて男の証を持っておる。使ったとて問題はあるまい」
「しかし私は攻めだ」
「なに、やり方はぬしからとく学んでおる。身を任せい」
「私は攻めだ、受けに変わる気はない!」
「何、途中で交代すればよい。そうすれば攻めとしての役割も果たせよう」
「一度でも挿入されたものは受けであり攻めとなるのだ!純度100%の攻めではない」
「純度なぞ気にするでない。われは『半ば攻め』でもぬしを好いておるぞ?」
「すでに50%攻め確定にするな!私は濃縮還元100%攻めでいたいんだ!」
「うるさいのう」
「あっー!!」

攻め純度45%END

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0351パートナー1/42017/06/23(金) 18:13:42.13ID:XInMmOsL0
アプリゲー「跳ねろ!鯉王」マスター×鯉王
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


僕がまだ小さい頃、僕は両親や兄弟たちと大きないけすで暮らしていた。
ある日、モンスターボールが水面にぷかぷか浮いているのを見つけた。
僕はモンスターボールなんて見たことなかったからなんだろうと思って近づいた。
その途端、ボールについた紐にぐいぐい引っ張られて僕は水の外に引きづり出された。
「やったあ!錦鯉だ!」
キラキラした笑顔の男の子、とっても嬉しそうに僕を見ている。
その子が僕のたった一人のマスターになった。

僕の名前はニッキ。マスターが付けてくれた名前だ。
マスターに釣られた日からもう5年もマスターのいけすで暮らしている。
毎日マスターに美味しい木の実をもらい、特訓をして、リーグで勝つために頑張っている。
マスターは僕のことを「大切なニッキ」と呼ぶ。僕のいけすに来ては一緒に遊んでくれる。
時々、意地悪をして僕をいっぱい突っつくのは嫌だけど……
でも僕はマスターが大好きだ。だからマスターの為に高く高く跳ねるよう、特訓を頑張っている。
今日の特訓もいっぱいがんばったら大成功だった。マスターはとてもほめてくれた。
マスターに褒められるのが一番うれしい。
特訓から帰る途中、町長さんに会った。
町長さんは町で一番偉い人で、マスターに僕たち鯉王のトレーナーになるように勧めた人なんだって。
そのおかげでマスターと僕は出会えたから僕は町長さんのことが好きだ。お話が長いのがまいっちゃうけど。
「なんじゃ随分疲れておるようじゃな」
町長さんは僕を一目見てそういった。
今日の訓練ははーどだったから、とても疲れていたのは本当なので、僕はびっくりした。
そういうのわかっちゃうんだ。
「どれわしがマッサージしてやろう」
そういうと町長さんは僕の体中の触ってモミモミと揉んだ
(あっ……気持ちいい……)
疲れていたからだがぽかぽかして、ちょっとだけむずむずして、元気いっぱいになった。
もう一回特訓してもいいくらいに。
「ありがとうございます」
マスターが町長さんにお礼を言って、そこでお別れした。
でもどうしてだろう、マスターがなんだか怖い顔しているみたいだ。
0352パートナー2/42017/06/23(金) 18:14:29.66ID:XInMmOsL0
「ニッキ、こっちへおいで」
いけすに帰るとマスターが僕を呼んだ。
(はいマスター!)
すいすいとマスターに近づいて、桟にぴょんと飛び乗る。
陸は水の中よりは動きにくいけど、マスターに近づけるならそんなこと気にならない。
マスターは僕を見る時はいつもニコニコしているのにさっきと同じ怖い顔している。
(マスター、僕なにかした?特訓駄目だった?)
「ああ、ニッキ。君は何も悪くないよ」
マスターは僕の言葉がわかるから、いつもいっぱいお話してくれるのに今日はそれきり黙ってしまった。
マスターはなんだか苦しそう。
僕はマスターがお腹痛いのかなと思って、少しでも元気になってくれればいいなとマスターの指を咥えた。
マスターがまだ子供で僕も子供だった頃から、そうするとマスターはよろこんでくれたから。
パクパクとマスターの指を食むと、マスターは増々苦しそうな顔をした。
「お前はどうして……」
(マスター、指はむはむ駄目だった?前は喜んでくれたのに)
「どうして僕はお前にこんなことを思っちゃうんだろう。ニッキは大切なパートナーなのに」
(マスター僕のこと嫌いになったの。もう僕のこといらない?)
「そんなわけない!僕はニッキとずっと一緒にいたいよ。ニッキは僕だけのものだ」
(わーい!僕もマスターとずっと一緒がいい!マスター大好き!)
「ニッキ……」
ギュッとマスターが僕を抱きしめてくれた。
マスターの体はとても熱くて火傷しちゃいそうだ。
(マスター苦しいよ)
「ニッキ、ごめん」
(えっ?)
マスターは僕に謝ると、熱い手で僕の全身をマッサージし始めた。
でも町長さんみたいに揉み解すんじゃなくて、表面をさわさわ撫でるだけ。
なんだかくすぐったくて僕は身をよじった。
(マスター、さわさわやだ。くすぐったいよ)
「くすぐったいだけか?ほらここを擦るとニッキの体はよく跳ねるね」
その言葉でわかった。マスターのこれは特訓の一部なんだ。
マスターの言葉通り、僕の体はくすぐったいの体はだんだんくすぐったいのからぴくぴくする感じになってきた。
きっとこのぴくぴくがもっと強くなって、そうすれば僕はもっと高く飛べるようになるんだ。
(マスターもっとして。僕マスターにいっぱいされたい)
「ニッキ!嬉しい。お前も僕と同じ気持ちだったんだな」
変なマスター。リーグで優勝しようってずっと同じ気持ちで特訓してきたのに今更そんなことをいうなんて。
マスターは喜んでもっといっぱい体を触ってきた。
0353パートナー3/32017/06/23(金) 18:15:11.74ID:XInMmOsL0
「ニッキ、これパクパクして?」
そういうとマスターは僕のお口に指を入れた。
さっきは変な顔したのにやっぱりマスターはこれだ好きなんだ。
僕は一生懸命マスターの指をパクパクする。
その間もずっとマスターのもう一本の手は僕の体を這いまわる。
むずむずぴくぴくがどんどん強くなった。
「ニッキ、もういいよ」
そういって僕の口から指を抜いたマスターはそのままその指を僕の排泄口にぐっと押し当てた。
(ま、マスター!?そこは出すところだよ!指を入れるところじゃないよ!)
「ニッキ大丈夫、怖くないから」
(やあ!マスター、駄目だよ!)
「入れるよ……ニッキ」
(あああああああ!)
ぷつっとマスターの指が僕の排泄口に差し入れられる。
今まで味わったことのない感覚に僕はパニックになり目の前のマスターの体に縋り付いた。
するとマスターはマスターの足の間にある三本目の足を取り出して僕の口に入れた。
(んんっ……!)
「ニッキ、これもはむはむして。一緒に気持ちよくなろう」
指よりもずっと太いその棒をお口に入れるのは苦しくて、排泄口の指はへんな感じで、
とてもとても苦しかった。
でもマスターは気持ちいいって言った。
マスターが気持ちいいなら、僕がマスターを気持ちよくさせてあげられるなら、僕は頑張れる。
(んん……でもマスターのこの棒だんだん大きくなる。苦しいよぉ)
「ごめんニッキ、でも気持ちいい、気持ちいいよ。ニッキはお尻の穴気持ちよくない?」
(わかんない……排泄する時と似た感じがする……)
「ニッキ、もうイきそう……!」
(マスターどこに行っちゃうの?僕も一緒に行く!)
「ああニッキ一緒にイこう!強く咥えて!」
(うん!)
マスターの棒をぎゅううと強く咥えた。
そのままマスターは腰を動かして僕のお口に棒を出し入れする。
そうしてマスターの棒がぐぐっと震えたと思うと僕のお口の中に水鉄砲を噴射した。
(うわあ!マスター苦い水がお口に入ってきたよ!)
「ニッキ、それは飲んでいいんだよ。お願い飲んで」
マスターがハァハァ息を吐きながらお願いしてきた。
マスターのお願いならかなえてあげたい。
僕はねばねばで苦い水を頑張ってごっくんした。
「偉いねニッキ」
マスターは僕の排泄口から指を抜いて、体中をいい子いい子してくれた。
さっきまでマスターの指が入っていた排泄口がぽっかり穴が開いたみたいだ。
(マスター、排泄口に指入ってるときは変だったのに、今はなんだかさみしい)
「そうか、じゃあ明日もしてあげるからね)
(わーい、ありがとうマスター!)
「その代り明日も僕のこれハムハムしてね」
(うんわかったよマスター)
マスターが服の中に棒をしまって、バイバイして帰って行った。
僕も水の中に戻ってゆったり泳ぎだした。
マスターにいっぱい触られて熱くなった体が少しづつ冷やされていくのがなんだか切ない。
でもマスターは明日も触ってくれるって言ったから。
僕は明日が早く来るといいなと思いながら目を閉じる。
マスター、大好きだよ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
3つで収まりました
0354お付き合い1/22017/08/17(木) 22:07:43.63ID:A6Dw4gt20
生 将棋 青いの×軍曹
ふんわりした感じで読んでいただければ……

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「長瀬のことが好き。将棋だけじゃなくて全部好き。だから付き合ってほしい」
香車みたいだ。一直線にビュンッって飛んでくる感じ。勇樹らしい。
「うん」
うん。逃げる気はなかった。でもとりあえず合駒をした。玉の頭に、歩。
「付き合ったら何か変わる?」
「……将棋のことなら変わらないよ。今まで通り。VSとかもするし」
少し攻めをゆるめて合わせの歩を打って来たと思った。が、
「……でも、キスとか、したい」
ちがった。香車の重ね打ちだ。ロケットだ。
端から逃げる気はなかったので投了した。逃げる気がなかったというのは、俺も勇樹のことが好きだったから。


最初の言葉通り、将棋は何も変わらなかった。VSもごく普通に行う。悪手を厳しく咎める(盤上でも口頭でも)のも、意見が折り合わずちょっとした喧嘩のようになるのも、感想戦が脱線に脱線して長引くのもいつものことだ。
ただ一つ。VS終わりにキスするようになった。

勇樹は最初のうちは毎回「キスしていい?」と聞いて、俺が「うん」と頷いたら唇を触れ合わせた。しかし何度かするうちに言葉はなくなって、ただ、目が合って、「あ、キスだ」と分かるようになった。
そういう空気を感じたら目を閉じた。すると勇樹の唇が一瞬自分の唇に触れる。
ただそれだけ。
0355お付き合い2/22017/08/17(木) 22:08:07.12ID:A6Dw4gt20
それが今日はちがった。
いつもと同じそういう空気。目を閉じて、唇が触れる。そこまでは同じ。でもそれで終わらなかった。
後頭部に手をあてて頭を引き寄せられる。舌が口内に入ってくる。油断して簡単に侵入を許してしまった。
「ん、ぅ」
舌を絡められると甘い快楽が広がった。無意識に声が鼻から抜ける。
逃げられない。

「な、に……」
散々口内を荒らされた後、呼吸が乱れたまま声を出した。
「……ごめん。我慢できなかった」
勇樹はばつが悪そうに目線を落とす。伏せたまつ毛が長いなとぼんやり思った。
「俺、長瀬のこと好きだし、もっといろんなことしたい。……今日はホントごめん。これからは少しずつで……でももっと長瀬と進みたい」
いろんなことってなんだろう。進むってどこまでだろう。先のビジョンを少しも思い描いていなかった。今のままで充分だった。
「いろんなことして、進んで、それで、俺たちは変わるの」
男同士だとか別に気にしてなかった。道徳も世間体も考えなかった。ただ、自分にとって、勇樹にとって、良くない方に行ってしまうのではないかと、それは、こわかった。
勇樹は静かに一度だけ首を振った。
「変わらない。一番大事な将棋は何も変わらないよ」
不安を取り払うように勇樹は力強く言葉を紡ぐ。
「長瀬の将棋の時間を奪うつもりはないから。……奪おうと思ったって奪えないと思うし」
長瀬ほど将棋が好きな人いないから。そう言って勇樹は少し笑った。
「でも長瀬がいつも通り棋譜ならべたり詰将棋解いたりネット対局したり……いろいろ将棋の研究して、疲れて、ちょっと休憩するときに、俺の顔が浮かぶようになるかもしれない。俺は、それくらいがいいな」
ああ、そうだな。それはいいかもしれない。少しはにかんだ勇樹の表情を見て、今までで一番、一人の人として、勇樹のことが好きだと思った。

別れるときに、初めて自分からキスをした。勇樹は目を丸くした後、「今日はすっげーいい夢見れそう」なんて言って笑うから、つられて笑ってしまった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0357風と木の名無しさん2017/08/19(土) 18:11:50.55ID:MwFMlZ5l0
>>356
このコンビのお話が…!
とても萌えましたありがとうございます
0359風と木の名無しさん2017/08/21(月) 18:45:46.25ID:9FtH9j/R0
今更なんですけど、昇天の紫緑いっぱい書き残してくださった方、本当にありがとうございました
できることならもっと早く会いたかった……
0361きらいなはずだった冬に。1/42018/01/03(水) 01:15:07.63ID:rL2fZb100
ショウギ 生ものです。クンショウ授与記念。エロなし。ふいんきのみ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ここ数日は寒い日が続いていたが、今日は久し振りに雲間から太陽が覗いていたため
か、空気も心なしか暖かく感じた。寒がりの休光としては何とも有難い限りだった。
足取りも軽やかにショウギ会館の玄関から出ていこうとするのを、後ろから呼び止めた声
があった。

「あの、ちょっと……会長?」
「え?……あ、ああ、盛内さん?」

大きな背を少しくかがめ、盛内がはにかみ笑いを浮かべているのを、休光は怪訝な顔
をして振り返った。たった今まで連盟の事務室で、二人して顔を突き合わせて仕事を
こなしていたのだ。なにか連絡漏れでもあったのだろうか。
微笑みながらも言いにくそうに口籠っていた盛内から、意外な言葉がこぼれた。

「いや、あの、砂糖さん……例の、クンショウの…祝賀会の件なんですけど」
「な、なんですか盛内さん?何か手違いでも?」

慌ててつい早口になってしまった休光を、ひらひらと手を振って盛内が制する。

「いやいや、そうじゃないんですよ……ただちょっと気になったので」
「…なんですか盛内さん。勿体ぶらないではっきり言ってくださいよ」

会長職に就いてからは、より一層丁寧に応対することを心掛けているはずの休光の口ぶ
りに珍しく刺が含まれていた。盛内は穏やかな笑みを浮かべながらも、話の核心に中々
触れようとしない。はぐらかされていることで、普段押し隠していた休光の一途な性格
が露わに出てしまった。
0362きらいなはずだった冬に。2/42018/01/03(水) 01:17:47.08ID:rL2fZb100
「いえ、あの……クンショウを頂く時って、確かモーニングか紋付を着ていかなきゃいけない
んでしょう?」
「あ、はい、そのような書状が届いていましたね」
「あの、でも、その、授章の祝賀会には……和服で行かれますか?」
「え?ええ、まあ、そのつもりではいますけど、それが……?」
「何色系ですか?」
「…………はぁ?!」

休光は思わず大声で叫んでしまった。この男は一体何を言い出すのだ。

「…いやぁ、何と言っても桧舞台じゃないですか。いつもはそんなこと気にしませんけど
この間子供に言われましてね、『お父さん、折角なんだからインスタ映えするようにきち
んとしていってね』なんて…その時に、来て下さる皆さんに写真撮られるのに、二人で着
物の色がかぶっちゃったら申し訳ないな、と思いまして…その前に伺っておこうかと」

最早デレデレとした笑みにしか見えない表情で盛内は長広舌を振るった。

なんだ。俺相手に惚気か。惚気なのか。
唖然としてその顔を見詰めていた休光は、やがて自分の身の内にふつふつと暗い感情が湧
き上がってくるのを覚えていた。

「………教えません」
「…え?」
「ぜっっっっっ対に教えません!」

普段の低い声音が金切り声のように裏返る。そのままくるりと踵を返すと、休光は呆気に
とられた顔をしている盛内を残して自分の車へ乗り込んでいた。

(…何やってんですか、一体……いい大人が、恥ずかしい……)
0363きらいなはずだった冬に。3/42018/01/03(水) 01:20:36.38ID:rL2fZb100
自分をこのような理不尽な行動に駆り立てた感情が自分自身で理解できない。どさっとシ
ートに身を埋め、休光はハンドルに顔を伏せた。
馬鹿だ、馬鹿だ、馬鹿だ。心の中で何度も繰り返す。自分の間抜けさに、余りにも無礼な
振る舞いに、我が事ながら腹が立ち怒りで目尻が熱く滲んだ。
…このまま別れてもいいのか。こんな想いのままでこの地を後にしてもいいのか。
傍目に分からないようにそっと拳で目を拭って顔を上げると、困った顔で頭を掻きながら
盛内が窓を覗き込んでいるのが見えた。

「あ……あの、砂糖さん、すみませんでした、僕何か気に障ること言ったみたいで」
「…………」
「申し訳ないです、本当にすみませんでした」

勝負の時ならいざ知らず、盛内は嘘のつけない男だ。こんな風に大きな身を縮めて腰を屈
めているのは、心から済まないと思っている時だった。自分がそれ以上に嘘のつけない男
であることを脇に置いて、休光は気まずそうに頷いた。

「…いえ、何でもないんです。僕の方こそ失礼しました…変な勘違いをしたんです、多分」
「……」

その時休光の目に、夕闇に沈みかけた空の色が映り込んだ。自分に向いていた視線が背後
に移ったことに気づき、盛内は不思議そうに目を瞬いた。

「……暗い色です」
「…え?」
「暗い色の着物を着ます。だから、君は明るい色で」
「………はい」
「すみませんでした、本当に。盛内さん、じゃぁ、これで」
「はい、では……お疲れ様でした」
0364きらいなはずだった冬に。4/42018/01/03(水) 01:23:40.63ID:rL2fZb100
互いに深々と頭を下げ合い、休光は車を前へ進め、盛内は再び会館の方へと向かった。もう
仕事は済ませたはずだが…そうか、カバンでも取りに戻ったのか、ぼんやりと休光は思って
いた。
…何が自分の心をあのように掻き乱したのか。分からない、分からないが……ぶんぶん、と
勢いよく頭を左右に振る。もう考えるな、運転に集中しろ、休光はそう自分に言い聞かせな
がらハンドルを左に切った。それを柱の陰で手に汗握りながら見送っている数人の騎士や職
員がいることを、二人共気づいていなかった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
03651/32018/01/08(月) 03:33:04.53ID:rDeqUwuf0
オリジナル 死にネタ 一人称
ノマあり 子供あり

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



目の前で元恋人が救命処置を施されているのを、俺はただ見ているしかなかった。
右手には怯えたようにすがりつく娘。
慌ただしく行き交う看護士たち、何度も薄い彼の胸に電気ショックの器具を押し当てる医師。
ピーーーーーーー。
長い電子音が彼の命の終わりを告げる。

「2018年1月8日午前2時23分、ご臨終です」


衣服を整えられベッドに静かに横たえられた彼の脇で泣きつかれて眠ってしまった娘を抱き抱えながら考える。
なぜこんなことになってしまったのだろうと。
なぜ彼は死んでいるのだろうと。
今日彼に会いに来たのは結婚の報告の為だった。
彼が背中を押してくれたから、自分は子持ちで彼女と結婚する気になったのだ。
だから報告するべきだろうと。
彼になついていた娘も3か月ぶりに彼に会えることを楽しみにしていた。
4ヵ月前に突然俺と娘の暮らす田舎にやって来た元恋人。
たった1ヶ月ですっかり娘を手懐け、彼を忘れられず今の恋人との結婚に踏み切れずにいた俺の未練を断ち切り去っていった。

『あなたが生きる未来が明るいものであるように』

去り際の彼の声が木霊する。
ふ、と目をあげるとサイドボードにハードカバーの冊子が置いてあった。
表紙の文字にはdiaryとある。
娘をそっと壁際のソファーへ横たえるとふらふらとその冊子を手に取りページを捲った。
03662/32018/01/08(月) 03:35:14.75ID:rDeqUwuf0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

2017年9月1日
医者から余命宣告。ドラマみたいでなんか笑える。体の痛みはフィクションじゃないし笑えないくらい痛いけど。
死ぬ、と言われて真っ先に浮かぶのがあの人の顔ってつくづく俺も未練がましいな。
もう2年も経ってしまった。
「昔の女との間に子供が出来ていたらしい、女が男と逃げて子供が育児放棄されていて見過ごせない。
引き取るつもりだが、君が受け入れられないなら別れてもいい。だが出来れば別れたくない。君を愛している」
これ突然言われて黙っちゃった俺の反応正常だよな?
別れたくないでも気持ちの整理がつかない、自分が納得できたら会いに行くって言ってそのまま2年。
本当は1週間で腹くくってあいつの子供一緒に育ててやる!って決心した。
けど突然の海外赴任の辞令で音信不通になっちゃってどこかホッとしたのは事実だった。
これって別れたことになるのかな?
なるよな。2年経ってるし。
でも逆に良かったかも。死ぬ人間が子育てとかしてたら残される子供が可哀想。
ああでも、どうせ死ぬなら、ちょっとだけでもあったかもしれない家族の形ってやつ体験しても許されるよね。

2017年9月2日
あの人の現住所はすぐわかった。
持つべきものは共通の友達。
医者に痛み止めいっぱい貰ったから上手く誤魔化せるだろ。
多少強引にでも押し掛け女房する。絶対。死ぬんだしいいだろ。
しかし住んでるとこ田舎過ぎてヤバイ。


2017年9月8日
なんで
(以下何か書いてあったようだがペンで塗り潰されて読めない)


2017年9月9日
仕切り直し。昨日日記は恥ずかしいから消しとく。消えるインクで書けば良かった。
当初の予定通り押し掛ける。ただし路線変更。
押し掛け友人だ。


2017年9月10日
潜入成功。久しぶりだったけど相変わらずお人好しというか優しいというか。
だから俺みたいなのに躓くんだよ。
あの人の娘はいい子だった。いい子過ぎて痛々しいくらいに。
まだ5つだもんな。早く彼女をお母さんにしてあげれば良いのに。


2018年1月1日
意外と生きられるものだ。年を越せると思わなかった。
あの人も娘と彼女と一緒に年越し蕎麦食べたかな?
娘ちゃんは蕎麦をふーふーしてやらないとだめな猫舌だけど、あの人や彼女は気づいてるかな?
娘ちゃんあの人に似ていい格好しいだから誤魔化そうとしてるんだよね。
でも一番のいい格好しいは俺か。
昨日も後輩に嘘をついてしまった。あの人とよりを戻して介護お見舞いを付きっきりでやってもらってる、なんて。
忙しい癖にこっちの心配ばっかしてる後輩を気遣って、なんていうのはただの言い訳だ。
俺の見舞いなんて、誰も来ない。
でも別にいい。来て欲しいのはあの人だけだから。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
03673/32018/01/08(月) 03:35:52.19ID:rDeqUwuf0
そこで日記は止まっている。
間の記述は田舎暮らしの取り止めない日常と日々の献立が書かれていた。
どれも知っている。
4ヶ月前からの1ヶ月間、彼と俺と娘とで過ごした日々だからだ。
彼と暮らす中で俺は今の恋人と付き合いながらも感じていた違和感が彼への未練だとハッキリと自覚した。
そしてこのまま彼とまた恋人になり娘と彼の3人でずっと暮らしたいと思ったんだ。
それは彼にもそう言った。
だが彼は笑って言ったんだ。もうそんな気はないと。
俺の娘は可愛いが、今後ずっと育てるとなると話は別だと。
笑って、いい友達になろうと言ったんだ、彼が。

『あなた今の恋人、とてもいい人ですよ。彼女となら、あなたは未来を生きられる』


年越しもそうさ君の推察通り三人で過ごしたよ。
娘は熱々の蕎麦をちびちびと食べていたさ。
熱いって言えなかったんだな。冷めてから食べようとしたのかずいぶん残した蕎麦は伸びきってしまっていた。
蕎麦が嫌いなんだと思ってた。

なあ君の後輩に、なんで会社に来たんだと言われた俺の気持ちがわかるか?
君は入院している、それは知っているだろう、毎日お見舞いに行ってるんだろうなんで会社に来たんだと言われたんだ。
君はあの1ヶ月はただの休暇だと言っていたじゃないか。
休暇が終わればまた社畜生活に戻るんだと。
君の今の連絡先を知らない俺は会社に行くしかなかったんだぞ。

君に結婚報告をしようと会いに来なかったら、俺は、君が一人静かにこの病室で息を引き取ったことを知らず仕舞いだったのか。
どこかで君が元気にしていると妄想したまま家庭を持ったのか。
知らなければ良かったのか。
君の痛みも悲しみも知らず笑っていれば良かったのか。
あの1ヶ月が夢のように幸せだったと爺さんになっても思い出して。
君は酷い男だ。だが俺がそうさせた。

「たとえ死に別れるとわかっていても最後まで愛し合ってそばに居させて欲しかった……っ!」

もう返事は返らない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0371ろくでもない夜 1/22018/01/31(水) 09:11:20.06ID:Biv9BT9j0
オリジナル。死期が近い殺し屋と不死身の食人鬼が喋ってるだけの話。
※グロやカニバ表現がありますので苦手な方はスルーお願いします。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「ただいまー」
「おかえりなさい」
「はいコレ。持って帰ってきたけど食べる?」
「ありがとうございます。後でいただきます」
「じゃ冷蔵庫入れとくねー」
「シャワー浴びますか?傷開いてるみたいだから終わったら処置しましょう」
「あれ?これ俺の血だったんだ。あーあ、このシャツ気に入ってたのに」
「今度新しいの買いに行きましょうか。報酬出ましたし」
「本当?やったー」
「それ片付けときますから、シャワーどうぞ」
「はーい」

「ねーねーねー」
「どうしました?」
「胸んとこの傷がさー体洗ったら余計開いちゃった」
「力入れて擦ったらダメだって言ったでしょう」
「だって左手だけじゃ上手く加減できないんだもん」
「貴方両利きじゃないですか」
「えへへ」
「座ってください。縫いますから」
「適当でいいよーどうせ痛いのわかんないし」
「またお気に入りのシャツが汚れますよ」
「あそっか。ごめーん」
「もう…昔は貴方が僕の面倒を見てくれてたのに」
「色々教えてあげたねー」
「そのお陰でこうしてお世話できてるので助かってますよ」
「そーだねー。俺の右目が潰れちゃった時もキレイにしてくれたし、右手ダメになった時もちゃんと食べてくれたもんねー」
0372ろくでもない夜 2/22018/01/31(水) 09:12:25.45ID:Biv9BT9j0
「捨てるわけにもいきませんし」
「本当助かったよー。ありがとね」
「いえいえ。僕も自分の体を修復するのに補給しなきゃいけなかったので、こちらこそですよ」
「そっかー。えへへ」
「ふふ」
「ねーねー」
「はい?」
「俺がいよいよダメになる前にさー、もう食べちゃってもいいよ?」
「嫌です」
「えー?何で?俺おいしくない?」
「独りぼっちになりたくないので」
「あー。ずーっと死ねないんだもんねぇ。寂しいかー」
「僕には貴方しかいませんから、最期まで付き添います」
「ごめんねー俺『そっち側』じゃなくて」
「その気持ちだけで十分です。はい、できました」
「わーありがとー」
「それと」
「ん?」
「貴方はおいしいですよ」
「よかった。じゃあエッチする?」
「今巻いた包帯がめちゃくちゃになるからしません」
「えー」
「大体、セックスなんかしたら次の日使い物にならなくなるでしょう?明日も仕事入ってるんですから、早いとこ寝てください」
「ちぇ。じゃあ添い寝してよ」
「いいですよ」
「腕枕もー」
「はいはい。電気消しますよ」
「うん。明日も目が覚めるといいな」
「ちゃんと起こしますから」
「よろしくね。おやすみー」
「はい。おやすみなさい」
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0373ある日の朝1/22018/02/23(金) 16:23:04.97ID:/FVd1V6p0
少年探偵漫画、某傀儡師×主人公です。文章中に固有名詞は出してません、エロなし
口調とか時期とか設定めちゃくちゃです
最近読み返して再燃したので勢いで書いた。後悔はしてないが申し訳ないと思っている。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

俺は勿論、彼のこれまでの所業を許したわけではない。
どんな過去があろうと、どんな事情があろうと許されるものでは到底ないだろう。
そう声に出さず自分に言い聞かせるのは毎回で、本当はもっとやるべきことがあるのに、遂に今日までやらないできたのである。
彼が度々休む住所や宿泊先を知っている。また彼がこのごろ頻繁に誰かから電話を受けていたのも知っている。
俺は寝たふりをして彼の流暢な外国語を聞き、そりゃあ聞いても意味なんて分からないが、良い内容ではないことには気づいていた。
彼がそれをどちらでもよいと考えていることも。
今朝早く、朝焼けのころに彼は俺を揺り起した。
俺はずっと起ていたけどもわざわざ二度三度と瞼を開き、いかにも眠いような、寝起の素振りをしたのである。
「もし。朝早くにすみませんが。」
彼はベッドに腰掛け、眩しそうに目を細めて俺を起した。
男のくせに白い手を、俺の肩に乗せている。
目を合わせると、彼は珍しく自分から視線を外して、ふと窓の方に顔を向ける。
遠くで日が昇って、建物の窓硝子は寒さに凍えながら透き通って見える。
「急用で暫く、出張がありますから。」
俺は黙っていた。彼の瞳は日に透けると金色に映る。
俺は何も言いたくなかった。やっとの思いで頷くと、彼はそれを視界の端で認めたようだった。
0374ある日の朝2/22018/02/23(金) 16:24:39.41ID:/FVd1V6p0
「私はもうこの部屋は、」言いかけて彼は黙った。
光線の中に、ごく細かい綿埃が柔らかく舞っている。
この部屋に誰も居なくなれば、床に落ちてもう二度と舞い上がらないだろう。
今日よりあとは、この部屋には誰も入らないだろう。肩に置かれた手は微動だにしない。
どうしてこんなことになってしまったのだろうか?
俺はそんな無駄なことばかり考えて、呼吸を乱さないように苦労して、そうしたら早く行ってくれないかと、懇願に近い思いを抱いた。
彼がおわりまで続けられなかったのは、彼が朝を待って、せめて今まで用事に向かわなかったのはと、そのようなことを考えると、俺の無感情の顔は崩れるに違いなかった。
彼は少しの間なにも言わず、じっと外を見ると、俺から手を離した。
「急用なんじゃないの。」
俺はつい口走ったことを即座に後悔した。
彼がどう言うにせよ、なにも言わなくても、聞くべきではないことだった。
俺は彼の用事を見逃すという弱気を生じ、彼に寄り縋っているのである。
後悔しながらも、彼の反応を伺った。しかし彼は黙って立ち上がった。
反射的に身を起し彼の名を呼んだ。もはや表面的にも、俺の邪心は明らかだった。
「誰かに頼めないの。今度は。」
彼は振り返った。意外そうに俺の目を見た。
自分の口走った台詞を信じられないと、一番強く感じるのは自分である。
「まさか。君がそんなことを仰るとは。」
本音だろうと感じた。それから彼は小さな声で、ぽつりと謝ると、上着を羽織って部屋を出た。
彼のよく座っていた椅子には見慣れた携帯が置いてあり、起動するとあたりまえのように初期化されていた。
少し知ったつもりでいて、実はお互いになにも、知らせないようにしてきたのだと漸く気がついた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0375風と木の名無しさん2018/03/28(水) 02:13:46.43ID:tZwGrcQ30
>>373
遅レスですが、懐かしい!
傀儡子登場の度に主人公がぞくぞくしてるように見えたのを思い出した。
0376左押してスタート 1/22018/04/30(月) 22:06:46.84ID:hxq653TJ0
GCCX再放送の239話を見て滾ってしまった音声と16代目
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「お疲れ様です」
「どうも」
ぺこりと頭を下げる姿は、年齢以上に若く見える。それでもインスタントコーヒーを濃いめに作る癖は、やっぱり普通の大人の男なんだよなと思わされた。
「カガ! そこ大道具通るから、ちょっと外出てくれ!」
内線がビーと鳴り、壁のスピーカーから声がした。俺とカガくんは顔を見合わせる。長い大道具を持ち込むときは、どうしてもこの給湯室まで入り込んでしまうから、非常階段に出るのがお約束だ。
「了解でーす」と声をかけ、カップ片手にカガくんは部屋を出る。俺も差し入れの菓子をテキトーに一掴みして後ろに続いた。
「終電、大丈夫ですか」
「あ、え、俺? 平気だよ。今日は飲みだろうし」
「フカワさん、大活躍でしたもんね」
朝ドラのように屈託のない笑顔を向けられて、俺は少し面食らった。本当に、カガくんは、少年のようだ。
「この企画だけはミスれなかったからなー。ロケハンとか初めてやったよ」
あ、本来の意味でのロケハンはあるけどね。そう付け足すとカガくんはくぐもった笑い声を上げた。彼の癖だ。だから音が、少し拾いにくい。
「……カガくんも、けっこう頑張ったでしょ」
「そうですね」
こともなげに肯定する。細い目の下には隈も見えるし、白い肌は荒れている。一応はテレビに映るということでドーランをしてはいるが、そういうのが苦手なのだろう、カガは収録が終わるとすぐに顔を洗ってしまう。
俺が出るときはほとんどが偶然で、少し前のクイズのときもほとんど予期しないタイミングだった。同じスタッフだけど、でも、少し違う。
手すりにカップを置いて、握っていた菓子を一つ差し出した。軽く会釈をして、ありがとうございます、と受け取る。仙台銘菓を見て、そういえば今度はフェリーでやるのかと思い出した。
「フェリーでのソフトってなに?」
「リュウケンデン3です」
「うっわ〜! うわぁ……それは……」
「延長しそうですよね」
その笑いはもはや諦めたようでもあった。
「でも、いいです。それはそれで。視聴者の皆さんは、あの人の諦めないところが、好きなわけですから」
0377左押してスタート 2/22018/04/30(月) 22:07:42.55ID:hxq653TJ0
夜の東京の、制作会社の非常階段は、不意に何かを話したくなるんだろう。突風が吹いて不安定なカップを二つ押さえた。いつの間にかカガくんは飲み干していたので、俺もカラにして、足元に置いた。
「続けられそう?」
そのまま、視線を床に、地上を走る車のライトに向けたまま言う。
「それは、……えっと、助っ人を、ですか?」
「会社をさ」
少しだけ目線を向けてみれば、おたおたと不安そうな顔をしていた。
「いま歴代の助っ人さんを呼んでの企画やってるけど、結構やめちゃった人多いんだよね。こういう仕事だから、まぁ、無理になっちゃうのも分かるんだけど……」
俺もあの頃とは違う。腹も出たし、生活も変わった。夢を与える仕事だというのは分かる。分かるが、俺たちはどうしようもなく、大人にならないといけない。
この人はどうだろうか。カガくんはしばらく目を泳がせていたが、やがてキッとした顔を向けた。
「やるだけ、やってみます」
「……うん。あははは、それがいい。それぐらいがいいよ」
嫌になったらやめてもいい。人生はいくらでも、好きなところでやり直せばいい。
「ごめんね、なんか詰めるようなこと言っちゃって」
「いえ」
「連絡先教えてよ。俺も番組長いから、少しぐらいは話聞けるし」
「あ、はい」
交換してからなんてことない話をして、そろそろいいだろうとドアを開けた。あ、と振り返ると、カガくんはしっかり俺のぶんのマグカップも持っていた。口に思いっきりお菓子を咥えて。
「甘いの好きじゃなかった?」
ぶんぶんと首を横に振られる。もらうだけもらって忘れてたというところか。
「半分もらおうか」
今度はこくりと縦に頷かれた。顔を近づけて、カガくんの口からはみ出ている部分をがぶりといただく。ついでに俺のカップもと手に触れると、信じられないぐらい熱くなっていた。
「おわ、カガくん、大丈夫?」
「ふぁい、ひょうぶ、です」
「そう? 俺、トイレ行きたいから先戻るね」
「はい……」
ちらっと見ると、カガくんは口を押さえて赤くなっていた。それはやはりまだ初々しい、中学生かそこらに見えた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
16代目が可愛すぎて禿げる
0379風と木の名無しさん2018/05/11(金) 06:49:20.17ID:r1iPQoQz0
ちょっと思いついたので書いてみました。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0380高貴なる狼〜Ich liege falsch Aber die Welt ist mehr faisch(1)2018/05/11(金) 06:54:21.70ID:r1iPQoQz0
 無慈悲で禍々しい巨大な天使が、遠からぬ将来、人類に必ず訪れる災いを告げ知らせてい
る。
 ふと、そんな風に思った。
 何のことはない、それはいつも通り、重々しくもの憂げに響き渡る古都ウィーンの鐘の音
だったのだが。
 早く、恋人の待つアパートの部屋に帰りたくて、石畳を歩く足を速めた。ぼくは音大、彼
は美大の入試を目指して励んでいたけれど、彼の方は勉強が捗っていなくて、最近また憂鬱
を深めているようだったから。
 早く帰って話を聞いてやり、ベッドで抱いて慰めてやりたかった。

 刺すようなブルーの瞳は、陰鬱で、しかし、時に異様な熱気を帯びて明々と燃え上がり、
彼の言葉に耳を傾ける人間を底なしの小暗い沼へと引きずりこむようだった。
 だが、多くの場合、彼は細くてちょっと神経質な、どこにでもいる十代後半の少年に過ぎ
なかった。同輩に自己紹介する時には、やや自虐的に、大人びて、こんな風に言っていた。
 「生まれはブラウナウ・アム・イン、税関吏の小倅さ」
0381高貴なる狼〜Ich liege falsch Aber die Welt ist mehr faisch(2)2018/05/11(金) 06:58:12.97ID:r1iPQoQz0
 今となっては、彼のそれほど人類の歴史に対して大きな、そして多くの意味を持つ名前も
なかなかあるまい。恐らく、ナザレのイエスに比肩し得るだろうが、違っているのは、その
全てがこの上もなく不吉で、一点の栄光も救済もない、汚辱に満ちたものばかりだという点
だ。
 数々の不名誉の中の一つに、おぞましい近親姦の為し手というものがある。そのことも他
の全てと同じく、ぼくと彼との関係が終わってずっと後に起こったことだけれど。
 彼自身の両親も、ごく近い血の持ち主どうしだったようだ。十九世紀のオーストリアの片
田舎にはしばしばあったことなのか、ぼくは知らないが。
 逆子で、母親は大変な難産を経験したという。貶めて、後世の歴史家たちは言う、悪魔の
申し子に相応しい誕生の逸話だと。
 またこうも言う、生まれてこない方が本人の為にも、全人類の為にもよかったに違いない
と。
 でも、ぼく自身は、彼のことをそんな風に思ったことはない。
 ぼくにとっての彼は、いつまでも、飢えた絵描きで、自分の物語にのめりこみすぎては
時々別の世界に飛んで行ってしまう危うげな夢追い人。
 二十世紀の黎明期、十代の日々の情熱と驕慢と、芸術への純粋な愛好を分かちあった友人。
 並外れた洞察力を以て、ぼくの音楽家としての素質を見出し、高く評価し、並外れた雄弁
を以て、父をはじめとした周りの人たちを説得してくれた恩人。
 そして、ただの愛しい男の子だった。

 彼との交わりは、大抵の場合、彼の描く風景画の空の塗り方のように、のっぺりとした
平々凡々たるものだった。ただ不器用に口づけを交わし、裸になって体を重ねるだけで、失
神するようなエクスタシーとも、ロマンティックな囁きとも無縁だった。
 でもぼくは、彼が普通の人ではないことはわかっていた。彼が他の人と違っていることは
よく知っていた。ぼくが十六、彼が十五の秋、リンツのオペラ劇場で初めて出会ったあの時
から。
0382高貴なる狼〜Ich liege falsch Aber die Welt ist mehr faisch(3)2018/05/11(金) 07:02:13.90ID:r1iPQoQz0
 知っての通り、彼は、後年、その神秘的な美しさにあれほど熱中し、選りすぐりの軍隊ま
で作ったゲルマン的な容姿からは程遠い。どちらかといえば色素が濃い方で、金髪でもなけ
れば、百八十センチを超す長身でもない。
 そして、そのことが内心では生涯不服であったかのように推測されることもある。彼だけ
でなく、彼の側近たちまで含めて、外見やら経歴の劣等感がその怪物じみた悪意、攻撃性、
残虐性の遠因ともなり得たと主張する者すらある。
 それはわからないし、ぼくにとってはそんなありふれた分析などどうでもよい。人の人生、
国家の存亡がたった二行や三行の文章で結論付けられるわけがない。
 ぼくにとって大事なことは、ぼくは彼の陰府(よみ)の闇のような黒髪が好きで、よく指を
絡ませて愛でたということだ。
 ウィーンで二人のささやかな生活を送ったあのアパートの、あのベッド、ぼくが彼の体の
上で汗だくになって息を弾ませている間、彼はよく、あのドナウのように碧い目をゆっくり
開いたり閉じたりしながら、じっとぼくを観察していたものだ。元々下から顔を見られるの
は何となく気恥ずかしかったし、彼の視線がこんな場合に相応しくなく、何とも冷静に見え
て、そういう時は本当にきまりが悪かった。
 「アーディ・・・・!出すよ」
 ぼくは専ら、女性を相手にする時と同じように、彼の中に差し入れて機械的に体を上下さ
せるだけで、若かったせいもあって大抵あまり時間をかけずに果てたが、彼はしばしば、女
性のように、必ずしも射精を伴わない、長い、複数回に亘る絶頂感を得た。
0383高貴なる狼〜Ich liege falsch Aber die Welt ist mehr faisch(4)2018/05/11(金) 07:08:27.03ID:r1iPQoQz0
 行為の後は一つのシーツにくるまり、肩を寄せあって、よく話したものだった。
 「詩人はなんで、『青春』なんて呼んで称えるんだろう。若さが素晴らしいなんてちっと
も思えない。思うようにならないことばかりで、愚かさや醜さや悔しさや憤激の塊じゃない
か」
 何の話のついでだったか、ぼくが予てから不満に思っていたことをふと洩らすと、彼はご
く短い間考え、絵描きとして至極当然な見解を述べた。
 「若い肉体は美しい。美しいものに憧れたり、描写したがったりするのは人間の自然な心
の働きだと思うけど。花や子犬やギリシア彫刻を醜いと忌み嫌う人はないだろう?」
 「ああ、そうかな。でも、この世界はこんなに美しいもので溢れているのに、どうして人
間はめちゃくちゃにしようとするんだろう?」
 「めちゃくちゃって?」
 「戦争とかさ」
 後から考えると少し意外なことだが、この時、「戦争」という単語は彼の心をするすると
滑り落ちて行ったようだった。それには全く反応せず、彼はこう尋ね返した。
 「グスタフ、美しさって何だろうね?」
 ぼくが答えられないでいると、
 「悪の華とか、滅びの美とか、そういう感性もある」
 そう淡々と語った。例の神懸かり的な興奮は見せず、声は上擦らなかった。
0384高貴なる狼〜Ich liege falsch Aber die Welt ist mehr faisch(5)2018/05/11(金) 07:11:19.55ID:r1iPQoQz0
 「君は美しいよ、アーディ。君も、君の絵も、本当に美しいとぼくは思う」
 彼は横顔のままで、聞き取れないくらい微かに、Dankeと呟いた。ぼくの渾身の愛の吐
露だったが、今にして思えば、あんまり気がなかったのかも知れないし、例によって、ぼく
と肌を合わせていながら、何か全然別の、誰も考えつかないような壮大なプランに思いを巡
らせていたのかも知れない。古びて染みの浮いた安アパートの壁の向こうに、途方もない光
景を見据えていたのか。やがて、十字架を捻じ曲げるという何とも冒涜的な得体の知れない
奇怪なマークと、右手を高々と掲げて彼個人を称える前代未聞の奇妙な敬礼と共に、後の世
の人々にとっては戦災と圧制のシンボルとなったあの恐ろしげな軍帽の鍔の下から、全世
界を睥睨したように。
 「私は間違っている。しかし、世界はもっと間違っている」
 後年、すっかり逞しくなり、男らしく成熟した彼が政治演説でそんな風に嘯いていたのを
ぼくはラジオや映画で見聞きした。世界で最も冷静沈着な民族を恍惚とさせ、熱狂の渦に巻
きこみ、血と爆風の破滅へと誘ったあの魔性のスピーチ。
 彼の言というだけで、今となっては誰も称賛する人はいないし、実際全く道徳的ではなく、
深い思索に裏打ちされてもいない勢いだけの台詞だけれども、何かを変えたいと思ってい
る人間には多かれ少なかれ共有できる感覚ではないかとも思う。
0385高貴なる狼〜Ich liege falsch Aber die Welt ist mehr faisch(6)2018/05/11(金) 07:15:07.11ID:r1iPQoQz0
 「アーディ、もう一度しよう」
 ぼくにしては珍しく、矢庭に、凶暴なまでの情欲が全身を駆り立てた。やや乱暴に彼の肩
を掴んで引き寄せた。
 その舌は人類の大いなる災厄そのもの、唇は戦火。御民イスラエルに、ヤーヴェの神すら
耳を覆うような凄まじい悪罵を投げつけ、残酷な命令を下して彼らを死の獄へ追いやる。
 でもその時のぼくは、そして恐らくは彼自身も、そんなことは露知らなかった。十九のぼ
くはただ、それを欲しいままに貪った。
 彼は大人しく、されるままになっていた。ぼくは無抵抗の彼を仰向けに押し倒し、両腕を
広げさせて、掌にぼく自身の両手を重ね、組み敷くようにした。
 もしもその時、彼が暗黒のキリスト・イエスだと知ることができたら、ぼくは地の果てま
でも彼について行って、暗黒の伝道師パウロになりたいと思っただろう。
 その役柄はどうやら、あの小児麻痺を患った背の低い文士崩れに奪われてしまったよう
だけれど。もしかすると、タルソスのパウロがそうであったように、本当に人類にとって手
強く、厄介だったのはあの男の方だったかも知れない。後に指揮者としてはそこそこ成功し
たぼくだが、幸か不幸か、とてもそこまでの非凡な才覚は持ち合わせなかった。
 あばら骨の浮いた胸に顔を寄せ、乳首を代わる代わる吸った。舌先で転がすと、頭の上で
彼の小さな溜め息が聞こえた。
 腹から腰へと唇を這わせてゆき、透明な雫を滴らせながら戦く亀頭を口に含んだ。その下
にある温かな膨らみをそっと掌に包みこんだ。ぼくにとってとても愛しかったそれだけれ
ど、彼はこの六年後に勃発した第一次世界大戦に従軍し、負傷して片方の精巣を失ったとも
伝えられている。それが本当なら、子宝に恵まれなかったのはその為かも知れない。
 ぼくが彼の中に押し入り、充分に満足する深さまで埋没すると、彼はぼくの両足に自分自
身のそれをきつく絡みつけ、あの忌まわしい十字の紋章のようにがっちりと交差させた。そ
れだけで射精してしまいそうになったが、辛うじて堪えた。動くことも忘れて、彼の頭を掻
き抱き、熱情の迸るままにその名を叫んだ。
0386高貴なる狼〜Ich liege falsch Aber die Welt ist mehr faisch(終)2018/05/11(金) 07:21:56.60ID:r1iPQoQz0
 「ああ、アーディ・・・・アドルフ・・・・!!」
 それは、古ドイツ語で「Adel(高貴な)」「Wolf(狼)」という意味で、古くから好まれる素晴
らしい名前だったが、二十世紀後半以降は、ドイツ語を話す人々の間で、その名前を息子に
付ける親は滅多にいなくなってしまった。
 ひとえに、ぼくの若き日の恋人、その人の故に。

 ウィーン西駅での突然の別れから三十年後、1938年のリンツで再会を果たした時、彼に
十代の頃の面影は殆ど残っていなかった。その印象的な瞳の輝きを除いては。
 予めメディアで見知ってはいた––––最初は同姓同名の別人だと思った––––が、ぼくの前
に現れたのは、役者みたいなちょび髭を生やし、七三の髪を撫でつけ、ちょっとずんぐりし
た体格のふてぶてしい中年男性、きらめくような権力の絶頂に上りつめ、いかめしい軍服に
身を包んだ強面の最高司令官だった。
 それにも関わらず、リラックスした雰囲気で迎えてくれて、親しく話しかけ、丁寧にもて
なしてくれたことをぼくはずっと忘れない。

 我が青春の友アドルフ、人は君の墓に、偉大な画家になる夢に頓挫した負け犬だと唾する
けれど、それは違う。
 君は確かに、ドイツ最大、二十世紀最大、いや人類史上最大の画家になったんだ。
 世界という巨大なキャンバスに、誰もが永遠に忘れられない血染めの絵を描いたのだか
ら。

Fin.
0387風と木の名無しさん2018/05/11(金) 07:23:27.76ID:r1iPQoQz0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

アウグスト・クビツェクの著作より。
「我が妄想」でした。

ageてしまってすみませんでした。
0389風と木の名無しさん2018/05/12(土) 08:20:29.68ID:Z3dIwplN0
>>380

良かったです ありがとうございます
我が妄想は笑いました
0390風と木の名無しさん2018/06/04(月) 00:06:35.98ID:ozgtu/7D0
某オサーンドラマを見て気持ちが抑えられず。
半生、しかもT→Y(H→K)?です。ごめんなさい。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0391無題 1/22018/06/04(月) 00:09:08.56ID:ozgtu/7D0
他の人のクランクアップで泣くのは、本当に久しぶりだった。

ベテランの役者であるその人は、優しく笑って抱き寄せてくれた。
子どもみたいに泣きじゃくる俺のことを、いったんは優しく離して。
嗚咽が止まらないのを見かねて、また俺の肩を引き寄せた。

どうしてこの人を選べなかったのだろう。

もちろん、役の話だ。ストーリーとしては、最初から誰と結ばれるかは
決まっていた。それはとても自然な流れだったと思うし、集中して気持ちを
高めていくことができていた。
だけど。あの教会でのシーンで、彼にとってのライバルのもとへ
送り出してもらったとき。
俺は号泣した。役なのか、自分自身なのかわからないくらいに。
誓いのキスを、と牧師に言われたときに、すでに予感はあった。
本当なら、思い出すのは今までのキスのこと、だったはずなのに。
なぜか、彼とのあれこれが、次々と思い出された。
「好きでぇーす!!!」の大絶叫から、ひざに縋り付かれて思わず
頭をなでてしまったこと。「2番目の男でもいい」と言って、いつの間にか
1年間、俺と一緒に暮らしてくれたこと。知らぬ間に、俺を独り立ちできるように
育ててくれて。それも、嫌な顔一つせず、楽しそうな笑顔で。
そして今、俺の幸せを思って、早く行けと促してくれている。

ここで、強引にあなたにキスをして、抱きしめたとしたら、すべてが変わるよね。

役と俺自身、どちらの気持ちだったのだろう。自分の衝動に驚いて、動き出すのが
遅れた俺に、彼は表情を変えて、俺を叱咤した。
いつも聡いあの人だけれど、今回ばかりは俺の気持ちに気付かなかったのだと
信じたい。全力で教会の外へと走り出した。
0392無題2/22018/06/04(月) 00:11:20.41ID:ozgtu/7D0
彼はいつも冷静だった。雑誌の取材でもそう。
「いい意味で台本は無視してほしい」と言っていた俺に、さりげなく
「アドリブは、台本がいいからできること」とフォローを入れてくれたり。
そして最後のあいさつの今。愛情のこもった目で、俺を愛してくれていたこと、
信頼を語ってくれている。
彼の眼はあたたかい。もう、あの恋する瞳じゃない。若手の俳優を見守る、
ずっと前を走ってくれている名優のまなざしだ。
なぜだろう、今になって、彼の優しい抱擁をふりはらって、きつく抱きしめ
なおしたい衝動にかられているのは。
でも、大丈夫。この心地よい距離感から踏み出して、すべてを壊したりはしない。
大事に大事に、彼と、俺と、皆で作り上げた作品が、本当に大切ものになったから。
0393風と木の名無しさん2018/06/04(月) 00:15:39.26ID:ozgtu/7D0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

アゲてしまってすみませんでした。緊張してしまって…
後悔はしている…でも… みんなみんな良い俳優だから、
今後の活躍を期待しているお…
0394風と木の名無しさん2018/06/09(土) 12:59:47.89ID:aBiYmnEK0
>>393
乙!すんごく乙です!中の人と相まって良いお話だったお!

私も部長と結ばれて欲しかったんだよねぇ
0395風と木の名無しさん2018/06/11(月) 06:46:10.08ID:5bsPsQzN0
>>388-389
ありがとうございます。続編です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0396男娼アドルフに告ぐ 1/72018/06/11(月) 06:48:09.25ID:5bsPsQzN0
 よく光の入る広いアトリエを借りられたことは幸運だった。
 さすがフランス、陰気で垢抜けしない我が国なんぞとは違うようだ。しかし、私はやは
りベルリンが、鹿爪らしい故国の人々が懐かしかった。
 いずれにせよ、戦時中だというのにいい気なものだと我ながら思う。それも恐らく欧州
史上、いや世界史上最大規模の戦争の只中だというのに。
 尤も、飽くまで「今の所は」という但し書きが付くだろう。考えてみれば何でもそうだ
と、べつに哲学者やペシミストや仏教徒でなくてもわかるが。
 「そもそも、ぼくや君のような絵描きまで兵役に駆り出そうというのが、何とも無粋な
話だよね。たまにはこうして息抜きもしなけりゃ」
 白いキャンバスに絵筆を走らせながら、ヌードモデルの緊張をほぐす為の会話の続きを
促す。こういう時、口を利くのを極度に嫌い、ひたすら黙りこくったまま作画を進める絵
描きも多いが、私はそうではない。
 「ええ。戦争は政治の最悪のフェーズですから。政治家は戦争をする為になるものでは
ないし、にも関わらず、不幸にして戦争になってしまったのなら、一刻も早く終わらせる
努力をしないといけない。ぼくはこの戦争が終わって、画家か建築家として大成できない
なら政治家に転向しようかと考えています。職業軍人にはそんなになりたくない」
 軽い世間話程度でもいちいち全力で受けとめ、生真面目なコメントを返さずにはいられ
ないこの風変わりな上等兵の特異な性質にはこの頃はもう馴染んでいたが、やはり、素っ
裸で突っ立ったまま、にこりともせずにそんな弁舌を振るわれるとちょっと興醒めしてし
まう。
 参ったな。こんな子初めてだ。彼のチャーミングなオーストリア訛りは好きなのだが。
 「そ、そう?こんな話、あんまりおもしろくないんだけど」
 「そうですか、失礼しました。では何かもっとおもしろいことを考えます」
 「なんも考えなくていいよ。君は多分、あれこれ深く突きつめて考えすぎると周りまで
振り回して、却って何もかも台なしにするタイプだよ。人生大いに楽しむべし。もっとホ
ワッとした表情が欲しいな。目線もうちょい上に。そーそーいい感じ。色っぽいね〜。ア
ドルフ、おまえは雰囲気があるし、スピーチも巧いからきっと政治家になれば人気が出る
よ」
0397男娼アドルフに告ぐ 2/72018/06/11(月) 06:50:24.13ID:5bsPsQzN0
 ドイツとの国境にある山村の生まれだという。その二十七、八の青年の体はたおやか
で、感じやすく、私の視線、私の絵筆に容赦なく犯されることに恥じらいながらも従順
で、歓びを覚え、その後のベッドでの私の行為によく反応した。
 私は従来、若くてきれいな男に目がなく、若い男の裸を描き、対象物をもっとよく知る
為と尤もらしい口実をつけてはその体を貪る為に画家になったようなものだ。アドルフの
場合、醜くはなくても特別に美形でもないのだが、言葉にし難い非凡な存在感を宿す明る
い目に心を捕えられた。自分でも絵を描くという彼を、どうしても脱がせたい、描きた
い、抱きたいと思った。
 脱ぐことには全く躊躇せず、性器まで晒すのも、煽情的なポーズを取るのも平気だっ
た。裸にして描画を開始してみてすぐ堪りかねて、会話も作業も中断して邪欲塗れの手を
伸ばしてしまったのだが、不意の抱擁にも愛撫にも口づけにも驚き戸惑う様子はなく、落
ち着いたもので、男に慣れていると最初から思った。
 寧ろ、積極的に応じる素振りすら見せた。立ったまま、彼より背の高いこちらの頭に両
腕を回し、自分から舌を絡ませてきた。太腿にアドルフのはちきれそうな熱を感じ、細い
指が私のシャツの釦を一つ二つと外しにかかった。年下の上等兵と長い口づけを交わしな
がら、私はもどかしくシャツを脱ぎ、床に放った。そして彼のひょろ長い体を横抱きに抱
えて、ベッドへと連れて行った。
0398男娼アドルフに告ぐ 3/72018/06/11(月) 06:53:02.17ID:5bsPsQzN0
 これまで幾つの眼差しがその透き通るような素肌をなぞったのか。夕暮れ時、アドルフ
は私の差し伸べた腕を枕にしながら、父、母、妹、姉夫婦、教師たち、同級生、ドナウ河
畔の街リンツ、決して子供らしい幸福に光り輝いていたとは言えない少年時代の思い出を
追い追い語った。私は胸を痛めつつそれを聞き、時折、彼の耳を甘噛みしながら囁いて尋
ねた。
 「初めて男に抱かれたのは?幾つの時?」
 「十五の時です」
 と曾てのリンツの少年は頬を薔薇色に染めて告白した。
 「劇場で出会った一つ年上の人が最初の恋人でした。十八の時にぼくがその彼をウィー
ンに連れて出て、暫く一緒に暮らしていました。彼は音大に通って、ぼくは美大を目指し
てたけど、前にも少しお話しした通り、合格しなくて。その内、一緒にいるのが辛くなっ
て、またお互いの為にもならないんじゃないかと思えてきて、彼がリンツに帰省してる間
に、黙って行方をくらましたんです。彼はそんなこと夢にも思っていなくて、新学期もま
た一緒に暮らせるね、ずっと一緒だねって言ってたけれど」
 あまりに切なく痛ましい話だった。今でも見られるアドルフの未熟さ、不器用さとそれ
らに見合わない高すぎるプライド故の極端な行動だったのだろうが、私はその愛情濃やか
で繊細な音大生の心中に思いを馳せずにはいられなかった。どれほどまでに打ちひしが
れ、断腸の思いで捜したことだろうかと内心では思ったが、それは口に出さず、こう言う
に留めた。
 「その人は?」
 「わかりません。音楽家になったんじゃないかと思うけど。恐らく今は彼もオーストリ
アで徴兵されていると思うので、きっとひどい目に遭っています。あんな大人しい、ただ
ピアノやヴィオラを弾いていたいだけの人に戦場は苛酷すぎます。無事だといいけれど。
戦死したり大怪我したりしてないといいけれど」
 アドルフはその独特な光彩を放つ碧い目を瞬かせた。まだ、その男を愛しているのだろ
う。愛していたからこそ、二度と会わない覚悟で自ら彼の前を立ち去ったのだ。
 黒髪をそっと指で梳いてやった。私は恐らくアドルフとは正反対に、生来享楽的で軽快
な性分だ。また、年長でもある。こういう時は一緒になって悲しみに浸り、深刻になるよ
りも、ただ一言、このように言う方がいいと思った。
0399男娼アドルフに告ぐ 4/72018/06/11(月) 06:56:46.58ID:5bsPsQzN0
 「妬けるね」
 実際、本心もあった。
 「そんないいものじゃありませんよ。ぼくなんて、彼と別れた後はウィーンやミュンヘ
ンで男に春をひさいでいましたから。喰いつめていたとはいえあまりに浅ましい」
 下卑た笑いを浮かべ、舌舐めずりする男たちに弄ばれ、嬲りものにされた自分の体を隠
すように、彼はシーツを手繰り寄せた。つい先日も、寝ている間に心ない戦友たちからひ
どい辱めを受けたと、泣きながら言葉少なに打ち明けた。
 私はそんなことは何とも思わなかった。
 「それって芸術家のパトロン作りでしょ?こういう世界は多かれ少なかれそんなものだ
よ。私にだって覚えがあるよ」
 この関係だって似たようなものだろ、おまえ俺の口利きで絵描きのコネやら勲章やら欲
しいんだろ、とも思ったが、それも口に出さなかった。アドルフの傷に塩を擦りこむよう
な真似をしたくなかったからというのが第一だが、私のようなただの好色漢とは違う、か
の天使のような音大生に、ささやかにして絶望的な対抗意識を燃やさずにいられなかった
のだ。
 「その彼が今も無事に生きていたら――そうだといい、きっとそうだ――、きっと『ア
ドルフはどうしているやら、戦争で死んでいないといいけれど』と同じように案じている
と思うし、君がどんな人間であっても、大袈裟な言い方をすれば、たとえ人類史上最も唾
棄すべき人間であったとしても赦してくれると思うよ。なんかぼくはそんな気がするな。
 それと、君がこの間ハンス・メントや取り巻きに悪戯されたことはその彼とも、君自身
の尊厳とも何の関係もないから、自分を責めることはないよ。よく話してくれたね。早く
忘れてしまえるといいね」
 アドルフを抱きしめ、ちゅっと口づけして頬に流れた涙を吸い取ってやった。
0400男娼アドルフに告ぐ 5/72018/06/11(月) 06:58:57.41ID:5bsPsQzN0
 「ありがとうございます。ラマースさんはやさしいんですね」
 彼はやっと笑顔になった。かわいい男の子と見るやアトリエに連れこんで、「きれいに
描いてあげる」などと言葉巧みに言いくるめて裸に剥いては手籠めにしている男のどこが
やさしいのだろうか。そんな風に言われるとバツが悪くなるが、そう親しく呼ぶように命
じたのは私だった。軍隊だからといって階級名でも役職名でも呼ばれたくはなく、かとい
って「画伯」だの「先生」だのと呼ばれるのも御免だった。
 時が移り、いつしかアトリエは青紫の月影の中に沈もうとしていた。私は曾ての哀れな
音大生の恋人を再び抱き寄せ、口づけし、その臍から下へと手を這わせた。
 既に充分血の通った部分をそっと握り、上下に扱くと、半開きの唇が切なそうな喘ぎを
洩らした。その悩ましげな表情を楽しく見比べながら、指先に滴った彼の先走りを愛らし
い双の乳首に塗りつけた。そのついでにちょっとつついたり摘まんだりしてみる。実にい
い色、いい形をしている。濡れてツンと立った乳首を咥え、可憐な春歌の詩句を愛唱する
ように、しゃぶりつき、舐め回した。アドルフは若枝のように体をしならせて悶え、息を
乱して私の頭を引き寄せ、熱に浮かされたように、Mehr(メーア、「もっと」)と甘やかに
啼いた。
 普段、この比類のない若者を殆ど身動きの取れないほど雁字搦めに縛りつけている自制
と道徳の箍が弾け飛んだ。彼は俄に私を仰向けに突き倒すと、自ら私の猛り立った部分を
ぐいと掴み、その上に跨り、大胆に腰を沈めていった。私はもう少し、静止したまま、彼
の温かな肉壁に一物がふんわり包まれている感触をじっくり味わっていたかったのだが、
そうはいかなかった。両手を私の掌に重ね、十の指をしっかりと絡ませて、アドルフは性
急に、狂ったように腰を打ち振った。遥かな天空から降り注ぐ神秘なる月光が、飛び散る
汗を珠のようにきらめかせ、激しく乱れ動く影をアトリエの壁に描き出した。
0401男娼アドルフに告ぐ 6/72018/06/11(月) 07:00:56.16ID:5bsPsQzN0
 「『青い鳥』って知ってる?」
 絶頂の余韻が引き潮のように遠ざかってゆき、火照った体も冷め、上がった息も整い出
した頃、またアドルフに手枕をしてやりながら、ふと思い出して言った。
 「ええ。何年か前にフランスの作家が発表した戯曲ですよね。一応読みましたけど、あ
んまり細かい所まで覚えてないです。それがどうかしたんですか?」
 「その中に『夜の御殿』という場面があってね、『この世が始まってこの方、人間を悩
まし続けてきた秘密という秘密が押しこめられている』扉が沢山あるんだ。人類のありと
あらゆる災厄や不幸がそこに封じられているの」
 私はその啓示的な夢幻童話劇が好きなので、つい瞳が輝き、声が大きくなった。
 「あ〜そういえばそんなのあったような気がします。でも、なんで今そんなの思い出し
たんですか?」
 「いや、さっきから戦争の話してるじゃない?」
 更に熱を込めて続けようとした私の無邪気な言は遮られた。
 彼は不意に、謎めいた、悪魔的な微笑を浮かべた。まるで、その仄白い裸身を取り巻く
闇そのものが嗤ったかのようだった。ただたまたま気に入った相手と、私にとってはごく
日常的な戯れのひと時を、その快楽を分かちあっているに過ぎないのに、どうしたこと
か、未だ人の子が達したことのない、世界のとてつもない禁忌、永遠に紛れもない邪悪の
粋であり続けるものの吐き気を催すようなはらわたにじかに触れた気がした。どんな天分
に恵まれた詩人も筆舌に尽くせぬおぞましきその真の姿を垣間見たように感じて、理由も
なく、また柄にもなく、血の気が引くのを覚えた。
 得体の知れない恐怖に襲われたのは一瞬だった。蛇のような腕が伸びてきて私の首に絡
みつき、毒を含んで妖しく蠢く舌が耳に差し入れられた。再び、ひたひたと高まりゆく官
能の中で、彼はしどけなく、淫らに囁きかけた。
 「もう一発やりたいな。今度は今のよりももっと熱くて激しいのが欲しい・・・・。も
っとたっぷり時間もかけてね。ねえ、もう一回いいでしょう?ぼく、もっともっといけな
いこと、いっぱいしたいの」

Ende
0402男娼アドルフに告ぐ 7/72018/06/11(月) 07:02:16.02ID:5bsPsQzN0
夜:気をお付け。そこには「戦争」が入ってるんだよ。昔から見るとずっと恐ろしく、力
も強くなってるから。その中の一つでも逃げ出したが最後、どんなことになるかわかりゃ
しない。ただありがたいことに、あいつらみんな太っていて、のろまなんだよ。だが、み
んな総がかりで扉を押さえてなくっちゃいけない。その間に洞穴の中を大急ぎでちょっと
だけ覗くんだよ。
【中略】
チルチル:ええ、ええ、とっても大きくて、恐ろしい奴らだった。あんな奴らが青い鳥持
ってる筈ないや。

(モリス・メーテルリンク「青い鳥」1908)
0403風と木の名無しさん2018/06/11(月) 07:03:13.04ID:5bsPsQzN0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ロータル・マハタン「ヒトラーの秘密の生活」より。
ナチの高官ハンス・ハインリヒ・ラマースとは別人ですので悪しからず。
0404風と木の名無しさん2018/06/14(木) 05:55:08.87ID:AlkcCKrv0
おまけの小ネタです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0405おっさんずリーベ2018/06/14(木) 05:56:26.85ID:AlkcCKrv0
「グストル、きっかり三十年ぶりだね。また会えて感無量だよ。シュトゥンパー通りの二人の愛の巣で暮らしたあの頃は本当に幸せだった。毎朝、君の心臓の鼓動を聞きながら目覚めたものだな」
「そうだっけ?君はいつも、ぼくが身支度して学校に行く頃にはまだ姫御前のあられもない寝姿で眠りこけていらしたとはっきり覚えているけど。それはそれはかわいい寝顔で、これ幸いと色々イタズラしちゃいましたけど。今初めて知ったでしょ」
「もう!ぼくが起きられなかったのは君が毎晩、あんなにぼくのことをいじめたからじゃないか」
「そうかな?『総統は宵っ張りで、寝起きがメチャクチャ悪いので困っています。昔からそうなのですか?』ってボルマンさんが零してたよ」
「ねえ、グストル・・・・」
「・・・・本気?あのね、ぼくたちはもうあの頃のような紅顔の美少年じゃないんだよ。絵にならないよ」
「だめかな?」
「いや、ほんと言うと嬉しいけど、時間あるの?」
「どうにか一時間だけ確保した。絶対に、ぜっったいに誰も取り次ぐなよ、たとえ第二次世界大戦が勃発してもだぞ、と副官に厳命してある」
「シャレにならないよ」
0406風と木の名無しさん2018/06/14(木) 05:57:46.12ID:AlkcCKrv0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ハイル!二十世紀最大の801カップル!
0407恋人を撃ち落とす日2018/06/19(火) 03:28:44.01ID:Kav3s99l0
タイトルの曲に触発されて書いた目盾の鉄キ前提のキッド独白。
曲知ってたらわかる通りナチュラルに死ネタなので要注意。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0408恋人を撃ち落とす日 1/22018/06/19(火) 03:29:32.89ID:Kav3s99l0
 乾いた、けれど響く音。
 手元で一瞬弾けた火花は、多分あいつの命。その具現。
 ぱりんと砕けて散ったのは、引き金を引いた俺の、全て。

<恋人を撃ち落とす日>

 指先、掌から腕へ全身へ駆け抜けていく振動は、馴染んだものと同じで、けどやっぱり全然違った。
 目の前の映像はスローモーションに、なんてなりやしなくて、馬鹿みたいにあっけなく、彼、が俺の元まで落ちてくる。
 咄嗟に抱き留めたりなんかしたら、あらら、ひょっとして片腕いっちゃったかも。
 妙に鈍い音を他人事みたく聞いて、でも正直ホント他人事みたいなモンだから放っておくことにする。
(だって、もうどうだっていいし)
 やらなきゃいけないこともその上で望んだことも現実になった。
 まだ二つほど残ってるけど、片腕あれば事足りる。
 それより何より、この腕の中のヤツのことだ。
 重い上にゴツイ体をよっこらせっと上向かせる。身じろき一つしないから大丈夫だとは思うんだけど、コイツの無敵さは折り紙つきだからねぇ。
 いきなりがばっと起き上がって、また暴れださないとも限らないし……なーんて期待でもするみたいに思って、けど頭ン中ではわかってて、まるで筋を知ってる劇でも見てる、みたいな気分。
 顔をこっちに向かせてみる。目は開いてて、だけどどこも見てない感じで、変にギラついてもいない。
 ちょっと前までは、俺だって殺しかねない剣幕だったってのにねぇ。
 くすりと笑いがこぼれちまうのはしょうがない。ホンット凄いカオしてたんだから。
 でも今はいつもの、彼、だ。
「ごめんなァ、鉄馬」
 こんなことしかできなくて。
0409恋人を撃ち落とす日 2/22018/06/19(火) 03:30:19.59ID:Kav3s99l0
 不思議な、もんだね。
 最強をと目指して握った銃は大抵明後日の方へ弾を吐いたってのに、こんな時ばかり調子がいいよ。

 ――あぁ、でも当然、だよねぇ。

 せめて苦しむことのないように、逝かせてやりたいってモンでしょう。
 救ってやれるようなことなんてなぁんにもしてやれない俺の、たった一つしてやれることだったから。

 突如発生した『狂獣化』のウイルス、その元凶たる保菌者が、何の因果か、鉄馬丈その人で。
 いっそ感染しても構わないからとは口にしないまま、俺が仕留めると言ったのは武者小路紫苑だった。
 それだけの、二次元の世界では掃いて捨てるほどあるようなよくあるお話。
「今、行くからさ」
 ラストシーンも、だからそういうモノで構わないだろう、と手にしていた大口径の銃を上げた。

 最後の銃弾は空っぽの頭に。
 今も変わらず愛しているよ、と先立たせてしまった君に伝えに往こう。
0410風と木の名無しさん2018/06/19(火) 03:31:07.46ID:Kav3s99l0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

今さら過ぎても何だろうとこの二人で見たかったんだ……
0411好きだから 1/42018/07/16(月) 19:05:21.72ID:ATxJYbAD0
生 将棋 青いの×軍曹
好きだけど、無理だろうなあと思っている両片想い、のイメージです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 VSが終わって、その流れでいつものとんかつ屋にむかう。夏の暑さが身にこたえているらしい長瀬はいつにも増して口数が少ない。その様子にどうしたものかなあと街を見回した。少しでも早く涼めたらと、いつもと違う探している店が見つからないのだ。

 都内緑化活動だかなんだかでそこら中に植えられた針葉樹から、蝉の姿はみえずとも絶えず鳴く声が響き渡る。うだるような暑さにアスファルトの照り返しが合わさって、思わず本能的にどうにかなってしまいそうな危うさを覚えた。

『二人は何で仲いいんですか?』

 ぼやけた頭にこの前の解説の仕事で、女.流の人に笑い混じりで聞かれた言葉を思い出す。仲がいい、と言われるたびに首を傾げて仲がいいとは違うと思うんですけどと言いながら適した言葉が見つからず、考え込んでしまう。
 仲がいいというのなら、もっと気軽に遊べる人を連想してしまうし、そもそも長瀬に仲がいい人っているんだろうかとか、自分の知らない付き合いもあるのかもしれないとか色んなところに思考が散る。悪い癖だ。
 長瀬に直接聞いてみたら分かるのかもしれないな、と先程からハンカチで額を拭く彼をチラリと伺う。
0412好きだから 2/42018/07/16(月) 19:06:43.01ID:ATxJYbAD0
「ねえ」
「………。」

 話しかけると視線だけで返事をされた。不機嫌そうだから前振りなしでサッと結論を述べたほうがいいだろう。
『長瀬のこと好きでしょ?』
 口を開くタイミングで、兄弟子の言葉がふと思い浮かんだ。

「長瀬は俺のこと好き?」
「……………は?」
「ん?」

 ポカンと開けた口は、すぐにハンカチで覆われてしまった。
 聞こうと思ったことからは少しズレてしまったかもしれないけれど、まあ本質はついているとも言えるか。長瀬の反応を見るに悪手とも思えなかったのでこのまま進めていこう。

「どう?」
「どうって……それは」
「ああ、ごめん待って。これはどうしたものか……」

 いつもの店に着いてしまった。心なしかホッとしたような長瀬の表情が引っかかったけれど、今はそれどころではない。

「凄い人だかり」

 うんざりしたその声に、同意するように項垂れた。
 よく見るととんかつ屋は期間限定のランチセールをやっているようで、これはちょっと待ったくらいでは入れなそうだ。
 夏にとんかつ、それに昼間。そりゃあ店もセールくらいしないと人は入らないだろう。春夏秋冬とんかつがいける自分には関係ない話だけれど。

「うーん、やっぱりあそこにしようかな」
「思い当たるところがあるならそこにしよう。もう、どこでもいいから」
「もちろん、ずっと探してはいたんだけどね。この近くだって聞いてたんだけどな」

 くるりともう一度見渡してみると、向かいに白いレンガ調の可愛らしい店が見えた。そこの名前が探していたものと一致していて、あそこだ!と指さした時の長瀬は、一瞬にして天国から地獄に落ちた顔をしていた。
0413好きだから 3/42018/07/16(月) 19:07:46.90ID:ATxJYbAD0
 長瀬は、先程まで男二人でカフェはないだの、いやいやいやと手を左右に振って拒否していたとは思えないくらい冷静な顔でメニュー表を広げている。男の意地も暑さには勝てなかったらしい。
 将棋のときもそうだけれど、心の中は面白いくらい冷静じゃなさそうだ。分かりやすいなと笑ってしまう。

「長瀬、長瀬」
「何?」
「ここ、いちごタルト美味しいらしいよ」
「……へえーそうなんだ」
「あれ?喜ばない?」
「別に、女の子なら喜ぶと思うけど」
「いや、だって、苺も甘いものも好きじゃない」 
 
 それはそうだけど、と長瀬は眼鏡の位置を戻す。
 そりゃあ長瀬に対して飛び跳ねて喜んだり、感激!みたいな姿を連想していたわけではないけれど、それなりの成果は正直期待していた。
 読み違えたかと反省しつつ、紅茶も美味しいよと盛り返しを狙ってみる。ふうんとページをめくる様子を見るにいい線いってそうなんだけど。

 すみませんと店員さんを呼んで、いちごタルトのセットとショートケーキのセットを頼む。メニュー表を持つ必要がなくなってしまった長瀬は所在なさげに目線だけがよく動いている。
 まあ周りからの視線が気になるのも無理はない。

「今日の三局目だけどさ」

 そう、いつもとんかつ屋でしているような話を持ちかけてみると少しずつ表情がやわらいでいった。 

「そこは違う」
「うーんでも、こうしたら……」
「でもそう指すなら、こう仕掛けるから」

 いや、やわらぐというよりいつものペースに戻っだけだけど。
0414好きだから 4/42018/07/16(月) 19:10:22.73ID:ATxJYbAD0
 ショートケーキの苺は最後に残す彼だけど、いちごタルトとなると一緒に食べるらしい。パクリパクリと口に運んでいる。

「……うん、美味しい」
「それはよかった。この前期王に教えてもらったから、外れではないと思って」

 せっかくだから苺一つ頂戴とフォークを伸ばすと、叩かれた。ケチ。
 
「彼女とかと来たらいいのに」
「何で?彼女いないし」
「でもこんな店、普通選ばないでしょ。その、友だちというか男同士でさ。下見とか?」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあなんでこんな店知ってんの」
「だって俺長瀬のこと、好きだもの」

 え、と動きの止まった長瀬にすきあり、と苺をフォークで取った。

「普通ならこんな店来ないよ。甘いものは好きだけど」

 どうせ本音は一つだって伝わらない。それでも、あまりに脈がなさそうな会話に、つい言ってしまった。じわりと苺の酸味が口の中で広がる。
 ケーキと一緒に運ばれてきた紅茶を口にしていると、ショートケーキの苺にフォークが伸びてきた。
 
「俺だって、こんな暑い日にとんかつ食べに行かない」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

注意文をよく読んだつもりですが、初投下のため間違い等ありましたら申し訳ありません。
0415作られた世界1/62018/07/19(木) 11:50:21.10ID:9/ofFgZk0
ナマモノ、馬の師匠が司会になって間もない頃の焦点の紫と緑です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


自分としては、かなり頑張ったつもりだった。会場の客の笑いを取れると思った。
しかし、一瞬の静寂の後にパラパラとしたお情けの拍手が聞こえたとき、愕然とした。
この世の終わりが来た、とはまさにこの瞬間かもしれないと感じた。収録が終わる。
師匠である圓樂も、他のメンバーも楽屋に帰って行く。彼らの背中をぼうっと見つめる。
圓樂は振り返らない。怒っているだろうな、と感じた。実際にそうなのか、考えすぎなのかはわからない。
それほどに頭の中はめちゃくちゃだった。
桃色の背中と、緑色の背中が、ちらりとこちらを見たような気がした。
しかしやがて遠くなり、樂太郎は舞台の袖に一人残された。圓楽の稽古に必死で着いてきた。
噺家として芽が出てきたね、という言葉をたまにもらえるようになった。
小言と小言の合間の、束の間の誉め言葉。
しかし、結局それは寄席に慣れた、というだけのものだったようだ。
寄席とは違う、大喜利という形式。自分の実力という現実に蓋をして見ないようにしてきた。
笑いが取れなかったという現実は、これほどまでに悔しさを覚えるものなのか。
0416作られた世界2/62018/07/19(木) 11:51:08.28ID:9/ofFgZk0
「噺の稽古だけしててもうまくできないのは当たり前さね」
いかにも圓楽が言いそうな言葉ではあったが、声は圓楽のものではない。
声がした方を見ると、緑色の着物から洋服に着替えた唄丸が立っていた。
「噺の稽古だけでは駄目なんですか?」
「なんていうかな、ほら、大学受験だけ頑張ったとしても社会に出たら違う勉強が必要になってくるとかそういう類の奴だよ」
「ああ、憲法についていくら論じても、シュプレヒコールを重ねても、世界に平和は訪れない、という奴ですね」
「はあ?」
「…気にしないでください。学生運動にあけくれた元バカ学生の戯言です」
歌丸は、悔しさを滲ませている表情を見て、思案した。
「これに関しちゃ、あたしが稽古つけたげよう」
そう言って連れ出された先は、後楽園ホールに近い喫茶店であった。
唄丸はコーヒーを2杯注文した。やがてそれは運ばれてきて、互いの前に置かれる。
伝票は唄丸がさっさとジャケットの胸ポケットにしまった。
「まずね、固い」
「固い、ですか?」
「圓楽さんを前にして優等生になろうとしている、とは後楽さんの感想だけどね。あたしも同感だね」
楽太郎は、コーヒーを一口含んだ。
「優等生は、一つの集団に二人もいらない」
「はい」「与太郎、優等生、動物、犯罪者。隙間を歩くのは大変だが、やる価値はあるね」
唄丸は、樂太郎の目をじっと見据えて言った。
「腹黒でいけ」「は、腹黒?」
「まず、あたしの悪口言ってみな」
樂太郎は言葉に詰まる。
0417作られた世界3/62018/07/19(木) 11:51:54.92ID:9/ofFgZk0
「難しいか?じゃ、練習するか」
唄丸自らが、『じじい、うるせえ』と発する。閉じた扇子の先で促されたので、樂太郎は恐る恐る声に出す。
「…じじい、うるせえ」
「いいねぇ」
唄丸が破顔する。樂太郎は思う。この人はなんて柔らかい表情で笑うのだろう、と。
この笑顔をもっと見たいと思った。
「こんなこと言って大丈夫ですか?」
「あたしかい?あたしのことは自由に使いな。あたしは、馬を担当するから」
唄丸はライターを取り出した。
「あんたの師匠はね、後楽さんに、離婚寸前の夫婦のような真似をさせたからね、説教しといた。樂さんのこれからの方向性に口出しはさせない」
離婚寸前の夫婦、とは、唄丸なりの表現だ。

数週間前のことだ。後楽の挨拶が気に入らなかったと圓楽は注意した。
そんなつまらない挨拶しかできないならやめちまえ、破門だ、とも言ったと、樂太郎は小耳に挟んでいる。
後楽は、楽屋の荷物をまとめるとホールを飛び出したという。その後楽を連れ戻したのはスタッフであるが、圓楽にこんこんと説教をし、
仲を取り持った人物こそが樂太郎の目の前にいる男だ。
0418作られた世界4/62018/07/19(木) 11:52:34.74ID:9/ofFgZk0
「かみさんが、荷物をまとめて『わたくし、実家に帰らせて頂きます』なんていう場面、経験あるか?」
「まだ、我が家にはないです。…師匠のところは?」
「わざわざ宣言するような真似はしないな。ふらーっと出掛けてふらーっと帰って来る。それで終いだ」
まさか、長屋の夫婦喧嘩の仲裁役が自分にふりかかってくるとは唄丸自身も思っていなかったのだろう。
「まあ、そんなわけで。樂さんは悪人を演じてみなさい。何が起きてもあたしが守ってやる」

守ってやる。唄丸は、守ってやる、と言った。きっぱりと、その言葉に力を込めて、守ってやる、と言ったのだった。
唄丸の言葉が樂太郎の体の中に染み渡る。
その言葉さえあれば、悪人にだって何だってなれそうな気がした。
0419作られた世界5/62018/07/19(木) 11:53:15.07ID:9/ofFgZk0
次の収録で、唄丸は司会を再び動物に例える。
客は笑いこけ、司会も笑い、他のメンバーも笑ういつものパターンだ。唄丸はふと左側の樂太郎の方に顔を向けた。
目が合う。
「樂さん、握手」
唄丸は握手を求めて来た。樂太郎はその手を握る。温かい手だった。
マイクに入らないように、唄丸は口の形だけで伝えようとしている。
『今度は樂さんの番』樂太郎にはそう聞こえた。促しの言葉だ。

『守ってやる』あのときの言葉が頭の中で繰り返される。体の中に染み渡った言葉に背中を押され、樂太郎は手を挙げた。
師匠である圓楽は樂太郎を指名した。
「はい。唄丸師匠なんですがね」
「なんですか?」「ピカピカ光ってまぶしいなあ、って」

「悪い奴だねぇ〜」
後楽が突っ込む。ホールの客は手を叩き、笑い、隣の人と目を合わせる。
それは初めて体験する、拍手と声による喧騒。

「腹黒い奴だよ、本当に」
圓楽も笑っている。もっともその笑顔は、司会者としての体裁であり、本心は違うのだ。それでも。
渋い表情とも小言の表情とも違う、今までに記憶にない笑顔。
0420作られた世界6/62018/07/19(木) 11:53:57.89ID:9/ofFgZk0
樂太郎は喧騒の中で隣の唄丸を見る。
「悪い奴だね〜」
そう言いながら怒ってなんかいないことはわかる。心底、この喧騒を楽しんでいる、そんな具合だ。
笑いと拍手の喧騒、それは噺家をとりこにさせる。それは夢にも似た世界でもあり天上のようでもある。
樂太郎自らの手でつかんだ技術ではないから、作られた世界。
しかし、唄丸に守られたこの空間の中では束の間ではあるがこの夢を見ていられる。
束の間の天上を見ることができるのだ。

収録が終わり、舞台袖でのことだ。唄丸の細い指が、樂太郎の肩をたたく。
「良いよ。この調子で」
喫茶店で見た笑顔だった。
隣に座っているのに遠く、技術は己より抜きん出ている、古典落語の名人。
例え作られた世界でも、もっとこの笑顔を見たい、引き出してみたい。
樂太郎は唄丸に握手を求めた。固く握り返された手は収録中と同じく温かい。

例え作られた世界でも。体に染み渡る言葉、手の温かみ、笑顔。
その3つだけは真実だ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0421風と木の名無しさん2018/07/22(日) 22:20:13.10ID:IeZXdMPr0
ナマモノ。焦点紫緑。
緑追悼で勢いで書きました。
棚投下初、結果的に801要素薄い。無駄に長い。勢いで書いたのでキャラや筋立て多分めちゃくちゃ……と色々ありますが、それでもよければおつきあいください。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


最後の約束


「……さん、樂さん」
 誰かが優しく呼びかける声で、円樂は目を覚ました。
「疲れてるのはわかるけどね、間に合わなくなっちまうよ」
「……ああ、すみません」
 寝ぼけ眼を擦りながら、ゆっくりと起き上がる。
 そうだ、焦点の楽屋に着いてすぐ、最近の疲れが溜まったのか妙に眠くなって、まだ時間もあるし少し横になることにしたのだった。それにしても、あの人が来たことにも気づかないなんて――え!?
「なんだい、まるで化け物がいるみたいな顔して」
 楽屋にいる人物を見て円樂は目を見張った。
 そんなはずがない。この人が、ここにいるわけがない。
「……唄丸師匠!?」
 この間、見送ったはずの大切な人が、そこにいた。
「あんたまだ寝ぼけてんのかい? 早く支度をしなよ」
 そう言って唄丸が立ち上がり、奥にいる付き人に何事かを告げているのを見て、円樂ははっとした。
 よくよく見渡してみると、必ず置いてあるはずの酸素ボンベもない。
 ――そうか、これは夢なのか。
 唄丸が何もつけずにあんな風に元気に動き回れていたのは、もう随分前のことだ。そう思って見ると、楽屋もこれまで訪れた場所がごちゃ混ぜになったような、微妙にまとまりのない部屋だった。
「……案外意地悪ですね」
「何か言ったかい?」
「いいえ、何でもありません」
 まだ悲しみが癒えてないこの時期に、夢に出てこなくたっていいじゃないか。だけど一方で、せっかく会えたのだからこの夢を思う存分楽しもうと思っている自分がいた。
0422最後の約束 2/72018/07/22(日) 22:23:26.24ID:IeZXdMPr0
 それから楽屋で二人、色々話をした。お陰でこの夢の中の世界がどういう状況であるのかもわかってきた。
 ここは地方の小さなホール。時期は四月で、桜が終わる頃。
 演者は自分と唄丸の二人だけの二人会。トリを努めるのは唄丸。
 始まるのは午後六時からで、後もう少しで一番太鼓が鳴る。
 二人会なんてもう何度もやったはずなのに、何故だかいつも以上に緊張している自分に気がついて、円樂は思わず笑った。
「どうかしたのかい? 本当に今日は変だね」
「いえね、すごく幸せだなあって思っただけですよ」
「何がだい」
「あなたと一緒にいられることが」
 なんだいそりゃあ、と唄丸が呆れたように言う。でもこれは本音だ。さっきの恨み言はどこへやら、たとえこれが夢だとわかっていても、誰よりも大好きなこの人といられる事が、また一緒に落語が出来ることが、素直に嬉しい。
 ――出来ればそれが、現実でもっと続いてほしかったのだけれど。
「気味が悪いね。明日雪でも降るんじゃないのかい?」
「まさか。もう四月も終わりですよ」
 と、太鼓の音が聞こえた。円樂は反射的に会場の様子を映しているモニターに視線を移す。
 その様子を見つめる唄丸の表情が、一瞬曇ったことに円樂は気づかなかった。

「お疲れさまです、師匠」
 追い出し太鼓を背に楽屋に戻って来た唄丸を、円樂は笑顔で出迎えた。
「おや樂さん。今日はまだいるのかい」
「珍しく明日は予定が何もないもので。ずっと名人芸を聴かせていただきました」
 いつも時間がある時はそうしていたように、円樂はずっと舞台袖で唄丸の落語を聴いていた。
 あの細い体のどこから力強くも繊細な話芸が生み出されるのかと、いつもながら驚嘆させられる。下手に酒を飲むよりもずっと心地よい気分にさせてくれるそれを、一番近くで聴くことが出来るのが本当に幸せだった。
「そうかい。ならちょっとあたしに付き合ってくれないか。寄りたい所があるんだ」
「へえ珍しい。夜遊びですか」
「何言ってるんだい。見せたいものがあるんだよ」
0423最後の約束 3/72018/07/22(日) 22:26:02.91ID:IeZXdMPr0
「ほら、これだよ」
 唄丸に連れられもうすっかり暗くなった道をしばらく歩いた先にあったのは、一本の大きな桜の木だった。
 周りの木がとうに盛りを過ぎ、ほとんど枝だけになっている中、その木だけが遅れた分を取り戻そうとするかのように目一杯花を咲かせている。特にライトアップがしてあるわけでもないのにぼんやりと輝いてるように見える姿が、先程の舞台の上の唄丸の姿と重なった。
「綺麗だろう? 不思議なモンでね、この桜並木の中でこの木だけがいつも遅れて満開になるのさ」
「……ええ、本当に」
 ――これが夢でなければ、もっと良かったんですけど。
 そう言いそうになり、円樂は慌てて口を塞いだ。いつ終わるかわからないこの時間に、水を指したくなかった。
「なんだい樂さん。言いたいことがあるなら言やあいいじゃないか」
「何でも、ありません」
 いや、そうじゃない。本当は、この時間が終わってほしくないのだ。こんな風に一緒に落語会をやって、時には叱られ、馬鹿なことを言い合って、座布団を引っ剥がされて笑い合って――あの日の悲しい思いも苦しみも、惜別も、そっちが夢だったらどんなによかったか!
「何でもないはないだろ。そんなに泣いて」
 言われてようやく、円樂は自分の目から涙が流れていることに気付いた。泣かないと決めたはずなのに、少しつつかれたらもうこのザマなのか、と思うとなんだか自分が情けなくなってくる。
「本当に何でもありません。ごめんなさい」
 意地で涙を吹きながらそう答えると、唄丸が溜め息をついた。
 呆れられてしまっただろうか。
「やれやれ、やっぱりあんたをここに連れてきてよかったようだね」
「……すみません」
「あんたがそんなんじゃあ、素直にあっちへ行けなくなっちまうよ」
 ……え?
 不意に飛び込んできた言葉に、涙が引っ込む。
 今、この人はなんて言った?
「円樂さん」
 唄丸がこちらに向き直った。普段着姿になっていたはずなのに、いつの間にか高座で着ていたそれと同じ着物を着ている。――自分も。
「あんたひょっとして、まだ夢を見ていると思ってるのかい?」
「……どういう、ことですか?」
「これは現実だよ。そしてあたし達が今いるのは――この世とあの世の境目だ」
0424最後の約束 4/72018/07/22(日) 22:30:50.57ID:IeZXdMPr0
 ――この世とあの世の境目!?
 にわかには信じがたい言葉に、頭がくらくらした。
 一体何故。ただ楽屋で横になっていただけなのに。
「ああ、心配しなくていいよ。あんたはあたしと違う。死んだ訳じゃない」
「じゃあ、どうして」
「あたしが頼んで、呼んでもらったのさ。どうしても伝えたいことがあってね」
 唄丸が、穏やかな眼差しでこちらを見た。
「樂さん覚えてるかい。――先代の、円樂さんが亡くなった時のこと」
 覚えている。そういえば、あの時も知らせを受けたのは旅先だった。
 あまりに突然で、どうしていいかわからなくて。それを引きずったまま夜中にこの人に電話をしてしまった。
 今思えば迷惑な事をしたものだが、それでも唄丸は咎めることなく「しっかりしなよ」と叱咤してくれた。
「あの時のあんたは本当にひどい有様でね、聞いてるこっちが辛かったよ。……だからかねえ、もう駄目かもしれないって時にふと気になったのさ。『あたしが死んだら、樂さんはどうなっちまうんだろう』ってね」
「……!」
「あんたはずっとあたしを頼りにしてくれて、三人目の父親だとまで言ってくれたろう? 嬉しかったけど、少し不安だったよ。もしもあたしに何かがあって、支えが無くなったらあの時以上に駄目になっちまうんじゃないかって」
 でも、と唄丸が微笑んだ。
「杞憂だったみたいだね。ずっと見てたけど、本当によくやってるよ、あんたは」
 出来れば翔太さんには、あそこで座布団を取って欲しかったけどね、と唄丸が楽しそうに言うのを見て、円樂の目にまた涙が滲んだ。
「そんな……そんな事、ないですよ」
「だからね、あたしが伝えたいことってのは、一つだけ」
「師匠」
 やめてくれ。
「樂さんさっき言ってたね。『あなたと一緒にいられることが幸せだ』って」
 きっとそれを聞いたら、この時間が終わってしまう。
「あたしも、あんたに会えて、同じ時間を過ごすことが出来て、幸せでしたよ」
「唄丸師匠!」
「もうさっきみたいに、泣いたりするんじゃないよ。今度はあんたが、皆の支えになる番なんだからね」
0425最後の約束 5/72018/07/22(日) 22:35:11.53ID:IeZXdMPr0
「俺は……俺はまだ」
 あなたが必要なんだ。まだ教えてもらいたいことだってたくさんあるし、受けた恩の一つもまだ返せていない。
 あの最後の見舞いの日、代演に行く自分に「悪いね、借りを作っちまって」と言っていたけど、あんなの借りの内に入るものか。むしろ返せなかったものが多過ぎて、ずっと後悔していたぐらいなのに。
 そう言いたかったのに、再び溢れた涙がそれを許してくれなかった。
「ああもう、泣くんじゃないと言ったばかりだろう?」
 しゃくり上げる円樂に、唄丸がそっと自分の手拭いを差し出した。
「樂さん」
 受け取ったそれで涙を拭っていると、空いている手を唄丸がそっと握った。
「そりゃあね、出来ることなら、あたしだってもっとあんたと一緒にいたかったさ。やりたいことだってまだあったしね。でも、それはもう出来ないんだ、わかるだろう?」
「わかってます。でも、」
「よく考えてごらんよ。本当に樂さんには、あたししか頼りに出来る人がいないのかい? それじゃあ周りにいる仲間が可哀想だよ」
「え」
「あたしがいなくなってから今日まで、どれだけ皆に助けられてきたかようく思い返してみな」
 円樂は改めて、今日までのことを思い出してみた。あの人が亡くなったと聞いて、自分の方が参っているのではないかと心配してくれた友人。
 気落ちして、まともに落語も出来なくなりかけた時に必死に元気付けてくれた後輩。
 茶化しながらも、共に悲しんでくれた同期の仲間……様々な人が、自分も悲しいはずなのに力になってくれた。
 なのに心に空いた穴が大き過ぎて、気づかずにいた。
「その事を、忘れるんじゃないよ」
「はい、唄丸師匠」
 まだひどい顔だったかもしれないが、円樂はなんとかしっかりと唄丸の方を見つめ返した。
 と、強い風がざあっと、桜の花びらを散らしていく。
 それを見てああ、と唄丸が手を離した。
「どうやら本当に時間だね。これ以上一緒にいたら、本当にあんたが死んじまう」
「……もう、行くんですか」
「仕方がないよ。もうあたしは向こう側の人間なんだ」
 その声色に、寂しさが滲んでいたのはきっと気のせいではないだろう。
0426最後の約束 6/72018/07/22(日) 22:39:15.30ID:IeZXdMPr0
「やれやれ、ここから遠いから道案内でもいてくれるとありがたいんだけどねえ」
 唄丸がこちらをちらと見たのを見て、円樂は笑った。
「言ったでしょ? 案内は出来ませんよ。まだあっちでやらなきゃならないことや、返さなきゃいけないものがたくさんありますからね」
「それは残念」
 と言いつつも、唄丸は満足そうだった。
「じゃあね、樂さん。お元気で」
 そして、こちらに背を向け、歩き出す。
「たまに様子を見てますからね。あんまり情けないようなら本当に連れて行くから、そのつもりでいなさいよ」
 ――行ってしまう。今度こそ本当にお別れだ。でも唄丸は、あえてそうしたのだろう。『さよなら』とは最後まで言わなかった。
 それなら、俺もさよならは言わない。
「いってらっしゃい。唄丸師匠も、お元気で」
「……そりゃあ小有座さんのマネかい? あんたもまだまだだね」
「……言ってろ、ジジイ」
 その言葉に、唄丸が振り返って笑った気がした。


エピローグ


「……匠、円樂師匠!」
 今度は必死に呼ぶ声で、円樂は目を覚ました。
 最初に飛び込んできたのは、心配そうに覗き込んでる鯛平の顔。
「……何、どうしたの?」
「ああ〜よかったあ〜!」
 途端にその場にへたり込む。よく見ると、楽屋全体がざわざわしていた。
「何だよ、何かあったわけ?」
「何他人事みたいに言ってるんですか!」
 鯛平が、やや怒ったような口調で言った。
「もう時間だからって、いくら起こしても円樂師匠が起きなかったから、今スタッフさんが待機してる看護士さん呼びに行ったところなんですよ!」
「……そうなの?」
「そうですよ! 全くもう〜」
「ホラホラ耳元で大声出さない。大丈夫かい? 樂ちゃん」
 そういって後ろから顔を見せたのは好樂だ。
「まーさか唄丸師匠を追いかけていこうとしてたんじゃないだろうねえ。まだ早いよ」
 その後ろには小有座もいる。翔太と喜久扇と参平は、スケジュールの関係でまだ来てないのか、姿が見えなかった。
「あー、小有座さん。それ半分当たり」
「へ?」
「夢に唄丸師匠が出てきてさ。道案内に連れてかれそうになったから大急ぎで逃げてきたとこ」
0427最後の約束 7/72018/07/22(日) 22:43:57.78ID:IeZXdMPr0
 何嘘ついてんだよ、と向こうで怒っているであろう唄丸を想像して、円樂は少し笑った。
 すいません、師匠。でも皆をこれだけ心配させるほど長く引き留めたんですから、これぐらい許してくださいな。
「意外だねえ。そういうことがあったらついていくと思ってたけど」
「行かないよ〜! 俺だってまだやりたい事いっぱいあるもん」
 そこへ看護士が駆けつけ、あれこれ調べられたあげく問題なしということになり、ようやく円樂は支度を始めた。
 残る三人も到着し、楽屋にいつもの雰囲気が戻った。やがて収録の時間が近付き、客席での挨拶を撮る翔太が一足先に出て行く。と、
「円樂師匠」
 読んでいた雑誌から顔を上げると、鯛平が神妙な面持ちで立っていた。
「何、どした?」
「さっきの夢の話、本当ですかあれ」
「言ったろ、半分は当たりだって。……どうかしたのか?」
「行かないでくださいよ」
「は?」
「また唄丸師匠が来たとしても、絶対に行かないでくださいよ。僕はもう、あんな思いするの嫌ですからね」
 ふと、ほんの少しだが鯛平の瞼が腫れていることに気がついた。
「……ひょっとして、泣いてた? お前」
「当たり前ですよ!」
 否定するかと思いきや、強く言われて円樂は面食らった。
「大切な人が死ぬかもしれないって思ったら、普通泣くでしょう!」
 鯛平の目に、新たな涙が滲んでいる。やれやれ、と円樂は溜め息をついた。しっかりしてるかと思いきや、意外とこういうところがあるのだ、こいつは。
「あのね、もうじき収録始まるよ。泣いてどうすんの」
「すいません」
 ふと、唄丸の言葉が脳裏をよぎる。
 ――今度はあんたが、皆の支えになる番なんだからね。
 そうですね、唄丸師匠。あなたみたいにはなれないかもしれないけど、頑張ってみますよ。こうやって、私を頼りにしてくれてる奴もいますしね。
「始まるまでに何とかしときなよ。カミさんと喧嘩して泣かされた、って誤解されるからなー」
「ちょっと円樂師匠!」
「何、ついに離婚しそうなの? 鯛ちゃん」
「違いますよ好樂師匠! あ〜もう、心配して損したぁ!」
 頭を抱える鯛平を見て、円樂はいたずら小僧のような笑みを浮かべた。
 これでしばらく、あいつが不安がることはないだろう。

―了―
0428最後の約束 8/72018/07/22(日) 22:47:03.36ID:IeZXdMPr0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

しまった、耶麻田くんを入れてなかったよ。ごめんね……。
長々とおつきあい下さり、本当にありがとうございました。
0429おねがい、かみさま 1/42018/08/15(水) 14:11:12.66ID:9cWlvGhG0
※ナマモノ、死ネタ注意
焦点の紫緑のつもりが紫緑紫っぽくなりました。
紫が先代の鞄持ちだった頃から現代まで、緑夫人がちょっとだけ出てきます。
お盆と追悼の意味を込めて。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ご苦労さん、今日はもういいよ」
「は……ありがとうございます」

 足代がわりの駄賃とばかりにタバコ代の釣り銭を受け取る。
 かばん持ちのアルバイトを始めて久しいが、給金らしい給金がこの手に舞い降りる気配は露ほどもない。福神漬けをちょいと乗せたどんぶり飯をかっ喰らい、水をがぶ飲みした腹はいともたやすくねじれていく。
 賭け麻雀で稼いだ生活費もそろそろ底をつきそうで、レコードを売るか、古本をまとめるか、年上の女に甘えてみるかと苦肉の策が頭を駆け巡った。

「そうだ、せっかくだから紹介しよう。おおい」

 屈みながら羽織の中の薄っぺらい塊を揺さぶったので、それでようやく誰かが寝ているのだと知った。膝丈ほどの段差の上に並べた座布団に横たわってた体は細く、儚く、明らかに覇気がない。

「……気分悪いって言っただろ?」

 濡れ木で起こす焚き火よりもおぼつかないその声が、噺家のものだとは到底信じられなかった。

「なんだい、またメニエールとかいうやつかい?」
「ああそうだよ、いつも通りほっといておくれ」
「まあ、いいから。ほら、新しいかばん持ちなんだ」

 聞き齧った知識では、めまいや耳鳴りでまともに姿勢を保つこともままならない筈だ。
 いいえ僕今日は急ぎますのでとかなんとか煙に巻いて逃げさればよかったものを、手繰り寄せるかのごとくぐいと手首を掴まれたので、膝をついてその人の横顔を見下ろす格好となった。

「んー?」
「名門私立に通ってる秀才なんだよ、すごいだろう」
「よ、よろしくお願いいたします」
「ああ……よろしく」

 骨ばった肩から背骨にかけて鉄の糸を通して引っ張られたように起き上がる。肌は青白く、瞼を開けるのすら億劫な様子だったが、その顔立ちには見覚えがあった。
0430おねがい、かみさま 2/42018/08/15(水) 14:13:26.22ID:9cWlvGhG0
「あ、師匠」
「ん? 知ってくれてんのかい?」
「知ってるも何も、大スターじゃないですか」
「くすぐったいねえ、お世辞言ったって何にも出ないよ」

 病人に気を遣わせるべきではないと頭では理解していながらも、興奮を抑えきれなかったのもまた事実であった。付け入る隙を与えない丁々発止の罵倒合戦、歳に似合わぬ薄い頭、並みの女より匂い立つ所作。

「先日寄席で拝見しました、化粧の模写がなんとも見事で」

 実は都合が悪くて噺の途中で帰ってしまいました、などとは口が裂けても言えないので、鮮やかに思い出せるマクラの一幕を切り出す。
 あの動作のひとつひとつは昔懐かしい女郎の支度を外連味たっぷりに再現したものだったが、母も交際していた女たちも、果たしてみな似たり寄ったりであった。

「そうかい、嬉しいねえ」

 肩を震わせ、片目を瞑って笑う。あの女性が見せた微笑みとはまるで違う、度量の大きい男のものだった。

「素人がナマ言ってすみません」
「いやいや、お前さんみたいな人が素直に言ってくれるのが一番ありがたいんだ」

……でもね。

「お父さん、来てくれたわよ」

 開け放たれた襖の向こうから、真新しい棺の匂いが鼻腔を刺す。

「業者さんがね、綺麗にしてくれたの」

 やせ細った顔からは皺の影が消え、痛みと苦しみに歪んでいた目と口元は穏やかに閉じられ、乳白色のまつ毛が光る。

「……お師さん、お待たせして申し訳ございません。ご挨拶に伺いましたよ」

 曲がってしまった背骨もすっと伸ばされ、初めて会った時のままの背丈になった。深緑の着物に赤茶色の数珠が鮮やかで、白粉のはたかれた白い肌によく映える。

「ごめんなさいね、色々準備があるから、しばらく二人でお話ししてくれる?」
「よろしいんですか?」
「ずっと会いたがってたから、お父さんも喜ぶわ。帰る時に声かけてね」

 泣き明かしたと見える目元こそ赤く腫れてはいたが、さすがこんな時は年季の入った女の方がよほど強い。しっかりした足取りに頭を下げて、静かに閉められた戸に背を向けた。
0431おねがい、かみさま 3/42018/08/15(水) 14:16:36.32ID:9cWlvGhG0
「……遅くなってすみません」

 眼鏡を外し、レンズを介さない視野の中で輪郭を定めるために鼻先まで近づく。
 知人の勧めで得度したのは、思えばこの日のためだったのかもしれない。皺ひとつない袈裟も法衣も、できることなら真新しいまま箪笥の奥にしまっておきたかった。

「先代に続いてまた間に合わなかったなんて、私は前世でどんな悪行を積んだんでしょうね。知らせを耳にした後の高座なんて、これまでの人生の中で最もみっともなかったですよ」

 声は掠れ、目は潤み、腕の震えを隠すことに懸命だった。あの場にいた客の全てが事情が事情と受け入れたとしても、自分で自分を殴りつけたくなるほどの出来栄えだった。板の上に犬猫でも放った方がずっとマシだっただろう。

「もう酸素も必要ないんですね、よかった、身軽になれて。先代や家元とはお会いになりました?」

 骨に皮が張り付いただけの限界まで痩せ衰えた輪郭の描線は、春の日差しのように柔らかい。

「明後日の追悼番組は生放送なんですが、無いこと無いこと喋っても構いませんよね?」

 いくつもの管に繋がれ、何かを飲み干すことすらままならないほど弱り切っているというのに、冗談を挟まないではいられない矜持の眩さを思い出す。

「……何か言ってくださいよ」

 几帳面に閉じられた襟首に指を添え、目鼻の窪みを涙で汚した。

「……でもね、お前さん」

 血迷ったのだ、と思った。
 夜道に揺れる灯篭のようにふらふらと前のめりになって、あの時分に着倒していた安物の綿のシャツの上から手を添えて胸をなぞる様が、あまりにも艶かしかったので。これが女郎の手練手管でないというなら、男の皮を被った目の前の生き物の正体は一体全体なんだというのか。
 鼻にかかった低くも甘い声が耳をくすぐる。

「あたしに惚れちゃあいけないよ……全部寄席の幻なんだから」

 絹の織物のような手を胸を打つ早鐘で傷つけてはいけないと後ずさろうとしたが、無様に尻餅をついただけだった。

「痛っ!」
「おい、大丈夫か?」
「ダメだよ、あんまりからかっちゃ」
「ごめんごめん、あんまり二枚目だからさ」
0432おねがい、かみさま 4/52018/08/15(水) 14:18:07.93ID:9cWlvGhG0
 自分の醜態が良薬にでもなったのか、幾分か血の気の戻った顔に屈託のない笑みを浮かべながら、丸い缶に収まったタバコを取り出して火を点ける。

「言っとくけどね、こいつはモテるよ。この間もどこぞのタニマチの娘さんが……」
「師匠!」
「おやおや、抜け目ねえな」

 片手をついて横座りになり、白い煙を燻らせる姿は、さながら吉原の高尾太夫といった塩梅で。

「だからさっきのはあれだ、お前さんがあんまり色っぽいから参っちまったんだよ」
「本当かい? 役者にでもなろうかね」

 今度はいかにも噺家といった具合に、語尾にたっぷり蠱惑的な色合いを孕ませ、茶化すように流し目をよこす。むせ返るほどのまやかしの芳香が鼻から喉に突き抜け、骨の髄まで真っ赤に染め上げた。
 取り返しのつかない火傷のような、とめどなく血が噴き出すような、それでいて花が綻ぶように甘美で目の眩む心持ち。

「何か言ってくれよ……噺家が黙りこくってどうすんだよ!」

 慟哭と呼べるほどの声は出なかった。腹も舌も夕暮れの朝顔のように萎れている。

「あれもやりたいこれもやりたいって、全部やり終わるまで死なねえって言ってたじゃねえか! お客さんが待ってんのに、何呑気に寝てるんだよ!」

 棺の淵を握りしめ、手のひらを胸の上に滑らせる。もう何の音も刻むことのない頼りない抜け殻は、冷房のきいた室内で微かに冷えたままだった。
 共に行けたら、行けるものだと盲信していた。この人の芸への執念、この人への自分の思慕、それを秤にかけたら丁度同じくらいだろう。だから道連れにしてくれるだろうと。

「あんだけ水先案内人にするって言ったのに……結局ひとりぼっちじゃねえか」

 この体に温もりがあれば、何と返してくれただろう。犬じゃあるまいしうるさいんだよと苦笑いを浮かべながら、髪を撫でてくれただろう。勝手に殺すんじゃないよ番組じゃあるまいしと冗談めかして答えてくれたかもしれない。或いは……或いは……。

「俺ん中こんなに弄って……何で勝手に行っちまうんだ」

 よほど上等な化粧を施したのだろう。濡れそぼった肌はまだらになることなく、雪原のようにどこまでもまっさらだった。もう一匙ほどの苦悩も痛みも責務も抱えることのない、安らかなかんばせ。
0433おねがい、かみさま 4/52018/08/15(水) 14:23:46.86ID:9cWlvGhG0
 病に侵食された姿に寒気がしなかったと言えば嘘になる。
 夜景を肴に紫煙をくゆらせた春、異国の開放感にはしゃいだ夏、夜気をまとった紅葉にため息をついた秋、指先を擦り合わせながら稽古する横顔に見入った冬。健やかな日々の贅沢を知ってしまえば、痛々しさを覚えないはずがない。
 だがそれ以上に、背筋を伸ばし、体を引きずり、息苦しさにぎ、それでも高座にしがみつく様を美しいと感じてしまった。この人が醜く、無様だというのなら、何がこの世の宝となるのだと純粋な疑問が首をもたげた。
 魅入られてしまった。己が才にも人々の温かさにも溺れることなく、ただひたすらに泥くさく孤高の道を貫く背中に。半世紀にはわずかに足りない歳月が、体にも心にも沈み込んでいる。
 
「……本当に因業なジジイだよ、あんたは」

 懐の手ぬぐいを取り出して、自分の涙で汚れた顔を拭う。
 この人の情念、矜持、思い出が詰め込まれたこの体を、おざなりに扱うわけにはいかない。今日明日で声を枯らすわけにはいかない。他の何よりも恋い焦がれた、今際の際まで固執した高座が、寄席の客が待っている。自分が噺家を続ける限り、この人の魂は何度でも蘇る。

「私がこんなにみっともなく泣きわめいたの、内緒にしてくださいよ」

 眼鏡を掛け直して手を合わせた。お題目は唱えなくていい、自分の心の中でこの人は生き続けるのだから。

「……行って参ります、どうか見守っていてください」

 落語の神様の頬を撫でると、心なしか口元が緩んだ気がした。

「役者なんてやめときなよ、カツラで蒸れたらますます頭が寂しくならあね」
「うっせえんだよ!」
「師匠、次はいつ高座に……」
「そんなにあたしに会いたいのかい?」
「いえ、なんとなく」
「そんなモジモジしてねえでさ、お前さんも噺家になりゃいいじゃないか」
「おい、インテリのエリートを巻き込むなよ」
「この人にこのまま弟子入りしちまいな、そしたら手取り足取り教えてやるよ」
「それは……」
「なんだい?」
「……そんな幸福に耐え切れる自信がありません」
「はっはっ!……いつでも来なよ、あたしはここにいるから」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリング間違えました、すみません……。
0434風と木の名無しさん2018/09/06(木) 21:55:49.80ID:arrDdALJ0
英雄CMの高杉氏と細杉氏に滾ってしまったので…
半ナマになります
キス止まりです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0435恋というには淡い1/32018/09/06(木) 21:57:52.72ID:arrDdALJ0
高杉氏と再会してあまりにもかわいらしい成長を、したと思った。
放課後に高杉氏の成績が芳しくないので、「細杉氏、教えて欲しいでござる!」とふざけている高杉氏のはじけるような笑顔に、ついつい、昔を思い出す。
高杉氏とは2才7カ月の時に、離れ離れになってしまった。
いつかまた再開できるのではないか、という淡い期待はあっさりと高杉氏が一番かわいらしい時期に、叶った。

「細杉くん、ここが分からないよ」
「…高杉氏」
「僕、成績が悪いからなぁ」
「そんな高杉氏もかわいいですぞ」
「またまた〜」

ふざける高杉氏の笑顔にこちらもつられてしまいそうになる。
眼鏡を掛けた、そのレンズ越しの風景。

「何か買ってくるね、細杉氏!」
「拙者はほうじ茶がいいでござる」
「分かった!」

高杉氏はぱたぱたと購買まで行ってしまう。
ああ、後ろ姿も完璧にかわいらしい。
高杉氏は頭で思い描いていた以上に、かわいらしくなっていた。
ニコニコと無邪気に笑う高杉氏。
教科書に落書きもしていなく、教科書も持って帰る。
LINEスタンプも、三太郎シリーズ、なぜここまで…高杉氏を、英雄に取られたくない。

「ごめん〜。細杉氏〜、僕間違えて、炭酸買っちゃったよ〜」
「いいでござるよ」
「さすが、理解ありますな、細杉氏は。僕、細杉氏としゃべる時間が好きでたまらないんだ。意識高いって言われてるけど、僕には分からないよ。細杉くんが転校してきてくれて、嬉しいんだ。昔の親友だから」
「今も親友でござる」
「そうでござった」
0436恋というには淡い2/32018/09/06(木) 21:59:20.53ID:arrDdALJ0
えへへと笑う高杉氏の無邪気な微笑み。
一緒にファンタを飲みながら、放課後に高杉氏に勉強を教えている。
なんだか、昔に戻ったようで…でも今違うのは、再会した高杉氏に、埋められないなにかがあって、それがもどかしく感じる。
キモオタなしゃべり方をしても、高杉氏は、合わせてくれる。

「細杉氏〜、続きをするでござる!」

なんだか、ドキッとしてしまう。
そんな事を無邪気に言わないで欲しいですな。
思わず、続きと言われて、高杉氏に不埒な思いを描いていて、高杉氏のファーストキスを奪ってしまった。

「え、細杉くん…?」

ファンタがこぼれて、眼鏡同士がこつんと当たって…。
絶対に嫌われた。
高杉氏だって、ファーストキスが拙者で不覚に違いない。
でも、高杉氏はニコニコ笑顔で。

「細杉くん、やっとしてくれた」
「高杉氏?」
「僕もずっと好きだったんだよ。いつか再会出来ないかな、って、細杉くんを探してたんだ」
「…では…」
「両想いだったんだね。はじめてのデートは博物館がいいな。細杉くんの解説、蘊蓄が楽しみ〜」
「高杉氏〜!」

ぎゅっぎゅっと抱きしめて、拙者たちの恋というにはあまりにも淡いものがはじまったのでござる。
0437風と木の名無しさん2018/09/06(木) 22:00:27.11ID:arrDdALJ0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ナンバリングミスってすいませんでした
キモオタ喋りが萌えたもので…
0438風と木の名無しさん2018/09/07(金) 12:47:43.43ID:hsnluWTW0
なにこれ萌える
次からCM見たらにやけそう
ありがとう
0439風と木の名無しさん2018/10/11(木) 19:30:18.69ID:NrUOX8U70
描写抑えたつもりですが、レイプですので、苦手な人は注意して下さい。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0440紫水晶の夜(アメテュスト・ナハト) 1/42018/10/11(木) 19:32:17.66ID:NrUOX8U70
 二十世紀初頭、爛熟と退廃の帝都ウィーンにあって、貧民宿泊施設や独身男子寮は、困
窮者の受け皿であると同時に同性愛者の溜まり場でもあった。ウィーンだけではなく他の
大都市でも、これは公然の秘密だった。
 当時としては比較的モダンで快適な宿泊所だったメルデマン街の独身男子寮は、入居者
の約七割が三十五歳以下の若年層で、男性が若い男を買いに行く場所として殊に有名だっ
た。
 男娼たちは日の暮れ時になると一階の広い談話室に集まって来て、それぞれ思い思いに
寛ぐふりをしながら、客を待っていた。客は談話室をそぞろ歩いては、好みの男の子を品
定めし、話しかけたり通り過ぎたりした。隣に座って商談成立となれば、二人寄り添って
入居者の各自に与えられた居室へと消えるのがここの暗黙の了解だった。
 「名前は?」
 ある裕福そうな身なりをした壮年の男が、談話室の隅に座ってスケッチブックに絵を描
いていた黒髪の青年に目を留めた。
 「アドルフ。アーディだのデュフィだの呼ばないでね」
 年の頃二十歳ほどの痩せた青年は、射抜くような碧い目を上げ、素気なく答えた。澄ま
し返り、気怠そうで、一人でも多くの客を取ろう、一クローネでも多く稼ごうという気な
ど更々ないように思える。そこが逆に遊び慣れた男の興味を惹いた。
 「アドルフ、目がいいな。気に入った、おまえにするよ」
 「こちらどうぞ。煙草はやめてね」
 青年はにこりともせず、スケッチブックを閉じ、立ってすたすたと廊下を歩き始めた。
客は首を傾げ、独りごちながらついて行った。
 「愛想のない奴だな。まあいいや」
0441紫水晶の夜(アメテュスト・ナハト) 2/42018/10/11(木) 19:38:57.65ID:NrUOX8U70
 「何するの!?ぼくが自分でしている所を見せるだけ、あなたはそれをスケッチするだけっ
て言ったでしょう!?」
 突然の接近と抱擁に驚き、青年は男の腕を振りほどこうともがいた。男は薄笑いを浮かべ、
尚も抗う相手をベッドの上で無理やり抱き寄せ、既に男娼自らが露にしていた下半身に手
を伸ばし、まさぐった。
 「堅いこと言うなよ。金なら後で余計に払うから」
 「嫌だ、嫌だ、触るんなら、嫌!」
 「アドルフ、言うことを聞け!おまえは俺に金で買われたんだ」
 「何だ、お金なんか!」
 有無を言わさぬ平手にバシッと一発頬を張られて、青年の華奢な体はベッドに倒れこん
だ。意識が朦朧としている間に、男に容易く組み敷かれ、カッターシャツの釦を全部外さ
れて、殆ど丸裸にされた。
 以前の恋人で同棲もしていた音大生のグストル以外には誰にも触れさせたことも、口づ
けさせたこともない肌を、見知らぬ男の手と唇が遠慮会釈もなく這いずり回った。片方の
乳首を弄くり回され、もう片方の乳首に吸いつかれた。男の舌がねっとりと乳首に絡む。
 男はファスナーを下げ、彼の家系の宗派に従って、生後すぐ、神に捧げる為に包皮の一
部を切り取られた陰茎を引き出すと、これを青年の太腿に擦りつけた。
 「嫌だ・・・・やめて・・・・」
 おぞましさに鳥肌を立て、羞恥に頬を赤らめながら、青年は喰い縛った歯の間から哀願
の呻きを洩らした。
 「何かまととぶってるんだ、ふしだらなお嬢さん?こんな所にいて、男の前でセンズリ
掻いて金取って、自分だけは違う、きれいでいられると思ってたのか?」
 青年の髪を掻き上げ、感じやすい耳や首筋を舐めながら、男が淫靡に笑った。
0442風と木の名無しさん2018/10/11(木) 19:45:56.37ID:NrUOX8U70
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

すみません、本文四分割のつもりでしたが、五分割になりそうです。
0443紫水晶の夜(アメテュスト・ナハト) 3/52018/10/11(木) 19:53:17.90ID:NrUOX8U70
 その言葉の通りだった。毎夜のように、この独身男子寮のあちらでもこちらでも、同じ
ような浅ましい営みが行われていた。ここはとっくの昔に、半ば男色を売る売春宿と化し
ていた。たった今も、隣室の住人の嬌声とベッドの軋る音が聞こえてくる。昼間会った時
には良識人ぶって挨拶などしている、同じ年頃の大人しくて小綺麗なブロンドだが、ひど
い時には一晩に二人も三人もの客を引っ張りこんでいることすらある。独身男子寮の壁は
薄く、盗み聞くつもりなどなくても、また静かに読書や思索に耽りたくとも、夜通し隣室
で行われていることがすっかり伝わってしまうのだ。
 その一方で、何が起きても飽くまで当人どうしのことがここの掟だ。どれだけ泣こうが
喚こうが、誰も助けに来てくれる筈はなかった。
 「アドルフ・・・・おまえの肌、女みたいにきめが細かくて柔らかいな。ほら、嫌がっ
ててもしっかり勃って、先っぽが濡れてきたじゃないか」
 男が息を弾ませてそう囁く。男の言った通り、どうしようもなく体が反応している様、
今しも自分が女のように体を開かせられ、自分自身の滴りを塗られて男の怒張したペニス
を受け入れさせられようとしている様を、青年は抵抗する気力も失い、諦念の眼差しで眺
めていた。
 なぜなのか。グストルに抱かれる時、彼の侵入を許す時はいつも、騎士にかしずかれる
女王のように誇らしく、満ち足りて、こんなに屈辱的な思いを味わったことなど一度もな
かった。
 まだ故郷のリンツにいた十七の頃、グストルと「リエンツィ」を観劇した晩、満天の星
の下で神託(ヴィジョン)を受けた自分の選ばれし聖なる人生は、グストルとあんなにも愛
しあい、共に創作や鑑賞の喜びにのめりこんだ幸福な年月は、一体何だったのか。あれ
も、これも、美大に進学する夢と一緒に跡形もなく潰え去ってしまったのか。あんなにも
自分を思い、大切にしてくれたグストルの許を自分から飛び出し、最早リンツに帰る家や
家族すら持たない自分は一体何者なのか。
0444紫水晶の夜(アメテュスト・ナハト) 4/52018/10/11(木) 19:56:48.09ID:NrUOX8U70
 グストル・・・・君はぼくがいなくても、順調に音大に通って勉強を続け、やがてプロ
の音楽家として華々しくデビューするんだろうな。こんな姿、君にはとても見せられな
い・・・・。
 灼熱の槍に体を貫かれ、突き上げられ、引き落とされ、燃え盛る恐ろしい情欲の渦に無
情にも翻弄されてよがり、悶えながら、男の体の下で、青年はさめざめと涙を流した。男
が堪能し、果てるまで、涙を流し続けた。
 食後のちょっとした甘味でも楽しむかのように、青年の頬に戯れの口づけをして、男は
初めて気がついた。
 「何だ、泣いてるのか。恋人がいる――いたのか。初めてじゃないものな」
 起き上がり、身繕いを始めた男の後ろで、尚も一頻り、声を殺して泣いた後で、青年は
枕にしがみつき、低く呟いた。
 「許さない。今度会ったら絶対に殺してやる」
 男は意にも介さず、寧ろおもしろがるようにしゃあしゃあと答えた。
 「へえ?でももう会うことないと思うよ。今夜の夜行でウィーンを発って、当分オース
トリアには戻らない。仕事でヨーロッパ中飛び回ってるんでね。それに君は俺の名前も知
らないだろ」
 「会わなくたって、名前を知らなくたって殺せるよ」
 「どうやって?」
 青年の口調があまりにも確信に満ちていたので、男のからかうような声色、蔑みの笑み
も今やどこか中途半端だった。青年は相手のその顔をまっすぐ見つめたまま、衣服の上か
ら、彼の一物をぐいと掴んだ。たった今自分にあれほどの恥辱と、そしてそれと表裏一体
の思いがけない快楽を与えた忌まわしい凶器。
0445紫水晶の夜(アメテュスト・ナハト) 5/52018/10/11(木) 20:00:04.77ID:NrUOX8U70
 「さっきこの目で、この体で確かめたよ。あなたユダヤ系だよね?」
 「そうだが」
 「ヨーロッパ中のユダヤ人を集めて皆殺しにすればいいんだ。そうすればあなたも絶対
殺せる。覚えておけ、ぼくは絶対にやってやる」
 まだ涙で濡れた碧い瞳に狂気じみた光を躍らせて、青年は生真面目に宣言した。
 「馬鹿言うな、ただの貧しい絵描きで淫売のくせに。じゃあな、おまえなかなかの上玉
だったよ、アドルフ」
 男はせせら笑って、札を一枚と、身に着けていた高価な紫水晶の首飾りをベッドの上に
投げ出し、部屋を出て行った。
 乱れたベッドの上で、青年はのろのろと体を動かした。裸足のままで床に降りた。
 そっと手を伸ばし、今さっき男が残していった冷たい石を取った。
 寒々とした月光の射しこむ窓辺で、復讐の刃にも、また、今夜粉々に砕け散った彼の心
の破片にも似たそれを握り、未だ名のなき絵描きの青年はいつまでもそこに立ち続けた。

Ende
0446風と木の名無しさん2018/10/11(木) 20:01:37.17ID:NrUOX8U70
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ロータル・マハタン「ヒトラーの秘密の生活」より。
0447平行世界のステイルメイト1/32018/10/14(日) 21:41:38.87ID:8vQFaSTJ0
生 鯨人 蟻霧で解散ネタ  蟻→霧で健全な話
HDDからの発掘物ですが、書いたはずの続きは捜索中です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

その日、僕たちの世界は終わった。
久しぶりに顔を合わせた伊静くんは、ずっと昔からこの幕切れを予測していたようで、
驚くほどあっさりと「解散」の2文字を告げてきた。
ああ、彼らしいなと思うと同時に、胸のあたりに空いた穴は一体、なんという感情を持つのだろう。

僕らの再会にはいつも、偶然という名前がつく。
冬の街角。雑踏にまぎれて姿を見せたのは、たしかに数か月前までの相方だった。
僕は走り出す。人の波をかき分けて、一瞬だけ網膜に焼きついた、
ダッフルコートの灰色を探した。伊静くん、と呼びかけた声は、想像以上に響く。
通行人が振り返るのと、元相方が僕の手を握って路地裏へ引っぱりこむのは同時だった。

「何大声出してんだよ!」
「君こそ」
そう返してやると、彼はため息をついた。昔なら「伊志井さんの方が声デカかった!」と
ムキになって言い返してきたと思う。こんなに近いのに、鏡を隔てたような僕ら。
「で、なんか用?」
「いや、その……用ってほどの事は……ただ、君を見かけたから」
らしくない、動揺。口ごもる僕に、ため息が降ってくる。
「君が元気そうでよかった。家は?ここから近いのか」
「まあ、ね」
あいまいな返事の後、彼は「じゃあ」と踵を返す。
再び雑踏にまぎれた彼を、僕はただぼんやりと見送った。

竹を割ったよう、と平凡に喩えてみる。
『じゃない方』というレッテルを貼る人は、彼がまるで僕に服従しているように思ってたようだが。
伊静くんは決断力があり、潔い性格だった。なんでも難しく考えて、引きずってしまう僕とは正反対の。

僕が悩む時。
ドラマのオファーを受けるべきか。独り身に戻って辛い。コンビをどうするか。
そんな時、すっぱりと答えを出してくれるのはいつも伊静くんだった。
何年も会わなくても。言葉を交わす事すらなくても。
彼はただそこにあって、僕の心を明るくしてくれる。
僕はまだ伊静くんを相方のように思って、もやもやとした
名前のない感情を引きずっていたけど、伊静くんの胸に、穴はなかった。
0448平行世界のステイルメイト2/32018/10/14(日) 21:43:10.52ID:8vQFaSTJ0
次に伊静くんを見たのは、喫茶店の窓から。
やっぱり近くに住んでるじゃないかと後をつけてみた所、それらしきマンションに入って行った。

「危ないねぇ、伊志井くんは」
久しぶりに会った作間さんは「さすが猟奇趣味」と笑う。僕は苦笑するしかない。
「で、君の事だからまた会ったんじゃないのか?」
「ええ。三回目はやっぱり街中で。人混みの中ですれ違ったんですよ、
 すごい確率じゃないですか?」
「解散してからエンカウント率上がってるんだ。
 ……そうだ、こんな言葉を知ってるかい」
作間さんはテーブルに肘をつく。
「三回逢って、四回目の逢瀬は恋になるんだそうだ」
「……恋」
「ハッハッハ!冗談だよ、とある映画の台詞さ!
 じゃ、四回目の再会については今度聞かせてよ」
僕は喫茶店のドアベルが鳴るのをぼんやり聞きながら、思い出していた。

僕は見たんだ。あの日すれ違った伊静くんの、コートの合わせから見えた胸に、
剥き出しの心臓が脈打っていたのを!

この穴は、伝えられることのない感情の侵食だったんだ。
僕よりずっと昔から、君は胸に大きな穴を空けて、少しずつ蝕んでいたのか。
侵食された心に、どんな感情を隠していたというんだ。
……聞かなければならない。手遅れになる前に。


四回目の再会は、長い時間がかかった。
季節が一巡りした、冬。雑踏の中で歩く彼を見つけて、追いかける。
肋骨のすき間から見える赤黒い器官が、
伊静くんが僕を視界に入れた瞬間にどくん、と大きく脈打つ。
彼は僕がついてきているのに気づいたのか、足を速めて雑踏にまぎれた。
僕は息を切らせながら走る。大通りから角を曲がって路地裏を抜け、地下通路へ入る。
その間、伊静くんは一度も振り返らない。

薄暗い地下通路。緑色の蛍光灯がちかちかと点滅している。
逃げる伊静くんと、追う僕の足音が反響して、心臓が早鐘を打つ。
「なんっ、で、ついてくんだよ!」
「君が逃げるからだろ!」
伊静くんは階段を駆け上がって、踊り場にある非常用扉に手をかける。
0449平行世界のステイルメイト3/32018/10/14(日) 21:44:23.58ID:8vQFaSTJ0
「待ってくれ!!」
僕は一足飛びに階段を上がる。伊静くんは扉を開け、滑り込むように外へ出る。
追いかけて、肩に手をかけて――

「……え?」

一瞬で、視界が変わった。
手の下にあったはずの肩は消えて、空中に伸ばされた指先。
「おい」
そして、不機嫌な声。
背中を向けていたはずの伊静くんが、しかめっ面で仁王立ちしている。
「え……伊静くん、え?」
頭がついていかない。だって、さっきまで地下通路にいたはずなのに。
ここはどう考えても……
「いきなり楽屋飛び出してったと思ったら……お前、何勝手にメイク落としてんだよ」
低い声。これは本気で怒ってる声だ。
「しかもなんだよそのカッコ、ふざけてんのか!?今から収録だってのに!」
「しゅう……ろく?」
「……あーっ、もういい!ちょっと来いよ!」
ぐいっと引っぱられて、歩く間、あたりを見回す。
そこでやっと、周りの騒音が耳に届いてきた。大きなスタジオだ。
大きなカメラがゆっくりと回っている――「音声のチェックOKだ!」ディレクターらしき男の声。
ひな壇では877マンの二人が、胸のマイクを調節している。
その向こうで、洒落た衣装の出演者らしき芸人達が台本を片手に喋っていた。
「おい、あれ見ろよ」
僕たちを見た下等が、横の火村さんを小突く。
「堀プロ一の仲良しコンビが喧嘩してる」
「うっわ、超レアじゃん!」
僕の手を引く伊静くんは、それを聞くと恥ずかしそうに顔を下に向けた。
なにからなにまで、おかしい。この世界はいったい……

「なん、なんだ……」

僕の呟きは、スタジオの喧騒にかき消された。
0450風と木の名無しさん2018/10/14(日) 21:45:41.75ID:8vQFaSTJ0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ゲ仁ソスレの同志には感謝。なんか今読み返すと何も始まってませんね。
続きが見つかったらどうしよう…
0451風と木の名無しさん2018/10/17(水) 10:14:04.82ID:zC3VtZ2D0
>>450
乙でした。続きが気になります。見つかったらぜひ!
作間さんは堀プロの人ですか?
最初は義元の人だと思ったけど伊志井さんのほうが敬語だから違うだろうし
0452風と木の名無しさん2018/10/17(水) 11:43:53.62ID:8rSSmbRL0
>>451
モモ鉄の作間明さんです。一応。
続き…見つからなかったら普通に書き直してみます。
ありがとうございます!
0453風と木の名無しさん2018/10/18(木) 21:40:39.66ID:8vpbZaZU0
>>452
451です。作間さんのことありがとうございました。
続き楽しみにしています。
0454並行世界のステイルメイト-2 1/5 ◆XksB4AwhxU 2018/10/22(月) 21:07:40.80ID:+awCJjqJ0
生 鯨人 蟻霧で蟻さん→霧さんのSFちっくな健全話 続き
話の都合上、存在しない妻子も出てきますので地雷だったらごめんなさい
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「僕ね、伊志位さんのファンなんですよ。
 今度ぜひ、一緒に仕事したいと思ってるんです」
美谷さんがそう言って、僕の目をまっすぐに見つめる。僕は笑顔で「はい、よろしくお願いします」と
頭を下げた。がっちりと握手を交わしたその瞬間、世界は二つに分かれたんだ。

そしてここは、あの日美谷さんの手をとらなかった方の世界。

どうやら僕は、もう一つの『可能性』の世界に、迷いこんでしまったらしい。

楽屋に入るまで、伊静くんは一言も口をきかなかった。
壁が一面、大きな鏡になっていて、畳が敷かれてる。コンビだった頃も、こんなに大きな楽屋を
僕たちだけで使わせてもらったことなんかない。伊静くんは「座れよ」と顎で椅子を示す。
背中を向けて、かばんを探る伊静くんを、僕はこっそり観察した。
紺のジャケットに、黒いシャツ。同じ色のネクタイに白い水玉模様が入ってる。
昔着ていたような、野暮ったくて安いスーツじゃない。流行りの芸人が着るような衣装だ。
伊静くんはよく見えないのか、眼鏡を出してかける。
「目、悪くしたのか」
「もう何年かけてると思ってんだよ」
「似合うね」
伊静くんはそっぽを向いて「何企んでんだ」とぶつぶつ言う。褒めたのに。「あった」とワックスを
出して、向かい合わせに座った。仕草がいちいち、昔と同じで嬉しくなる。
「時間ないし、髪だけな」
髪の毛をわしゃわしゃやられて、くすぐったい。うっすら目を開けてみると、すごく真剣な顔だったので
思わず笑ってしまう。鏡に映った僕は、予想どおりの七三分けだ。ただし、かなり現代風の。手を洗っていた
伊静くんは、時計を見て慌てだす。
「走るぞ伊志井!」
「えっ、でも……話が」
楽屋を飛び出していく彼を追いかけて、僕も走る。伊静くんは走りながら、マイクを投げてよこした。
0455並行世界のステイルメイト-2 2/5 ◆XksB4AwhxU 2018/10/22(月) 21:18:48.58ID:+awCJjqJ0
スタジオに駆けこむと、共演する芸人たちはもう皆ひな壇に座っていた。
「本番まであと一分!」ディレクターが叫んでる。
「すいません、蟻霧入ります!」
伊静くんは「すいません」「遅くなりました」とスタッフたちに頭を下げながら、
ひな壇の空いた所に僕を押しこめる。横の下等が「遅刻」と僕を小突いて笑った。
ところでこれはどんな番組なんだ。聞く暇もなくカウントが終わり、カメラが回り出した。
司会の打運他運さんが出てきて、オープニングトークをする。

「はい、今日のテーマはこちら!!」
ホワイトボードが、葉間田さんのかん高い声と共にひっくり返される。
「売れっ子の皮かぶってます、アングラ芸人スペシャル!!」
客席からわー、と拍手が起こった。トークはどんどん白熱していく。
バラエティの収録ってこんなにテンポ速かったっけ?頭がついていかない。
なにか言わなければと思うけど、昔みたいにすぐ言葉が出ない。

「蟻霧はどうなん?仲ええんやろ?」
いきなり話が飛んできて、僕は「へっ?」とまぬけな声を出す。
「仲はいいですよ。たまに死んでくれねえかなって思うことありますけど」
伊静くんは慣れた様子で返した。どっと笑いが起こる。
下等がひでえな、と手を叩いて、僕はやっと(いじられた?)と理解した。
「たまに、やなくてしょっちゅう、やろ!」
末元さんはなんで、知ったように言うんだ。まさかこの世界では付き合いがあるのか。
「伊志井、相方こんな言うとるで」
葉間田さんの目は(ボケろ)と命令している。でも、なんて言えばいい?
ライトが眩しい。頭がくらくらする。僕は真面目なことしか喋れないのに。伊静くんは
昔のようにちゃんと拾ってくれるだろうか。ああ、早く。早くなにか、喋らないと。
「その……」
もう何秒使ってしまったんだ。放送事故じゃないか。ディレクターが渋い顔だ。
伊静くん、君が何とかしてくれることに賭けるしかない。
0456並行世界のステイルメイト-2 3/5 ◆XksB4AwhxU 2018/10/22(月) 21:23:22.41ID:+awCJjqJ0
「僕たち、仲良しなのか?」

バカなことを言ってしまった。何年もお笑いをやってないのを差し引いてもつまらない。
ひな壇に、やや白けた空気が流れる。固まってしまった僕に、
伊静くんは「当たり前だろ」と笑ってくれた。
「お前は俺にとってかけがえのない、一番の……金づるだよ」
芝居がかった調子で毒が吐かれる。一瞬の後、ひな壇が笑いに包まれた。
打運他運さんが「嘘やろ!?」と笑うと、伊静くんは「嘘ですよ!」と僕の肩に手を回す。

収録は、まあまあに終わった。

「最悪」
楽屋の扉が閉まるなり、伊静くんは吐き捨てるように言った。
「……すまない」
空気が重い。テーブルの上のスマホが鳴った。伊静くんは僕を無視して、電話に出る。
「もしもし、……もう熱下がった?今仕事終わったけど、何食いたい?」
向こうでカツ丼、という声が聞こえた。
「だめ。風邪治ってからな。パパちょっと遅くなるけど、ちゃんと寝てろよ」
そこで僕はやっと、伊静くんの左薬指に銀の指輪があるのを見つけた。
……なんだか、もやもやする。
「大事な話があるんだ。聞いてくれ」
伊静くんは黙って座った。しばらくの沈黙のあと、僕は顔を上げる。
「実は、僕は君の相方じゃない」
「……は?」
「正しくは、"この世界の伊志井じゃない"んだ。さっき、僕は楽屋を飛び出していったと
 言っただろう?「おーい、遊びに来たぞー」
のんびりした声。それが下等のだと脳が理解する前に、全部の言葉が僕の口から飛び出していた。

「その瞬間、この世界の僕と、僕が入れ替わったんだ。
 僕は、並行世界の伊志井政則なんだよ」

空気が凍りつく。戸口の877マンも、もう一人の男も。そして向き合っている伊静くんも絶句していた。
「だから今ごろ、僕のいた世界に、この世界の僕が行ってしまってると思う」
嘘だろ、と伊静くんが言う。そう思いたいのは僕の方だ。
そういえば『向こう』に行った僕は、大丈夫だろうか。
明日には撮影があるのに、ちゃんと台本を覚えられるんだろうか。不安だ。
0457並行世界のステイルメイト-2 4/5 ◆XksB4AwhxU 2018/10/22(月) 21:32:59.13ID:+awCJjqJ0
何が起こったんだ。伊静くんと下らないことで喧嘩をして、楽屋を飛び出した。
そこまでは覚えてる。僕は屋上で頭を冷やそうとしたはずだ。それがなんで外で、相方の腹に乗ってるんだ。
「……い、伊志井……さん?」
僕に潰された伊静くんは、目を白黒させている。僕はあたりを見回した。寒い。後ろには
地下道の非常扉があった。スタジオの近くで誰かに引っぱられたような感覚があった。あれは一体……。
「重いんだけど」
「あ、ああ……」
伊静くんは起き上がると、僕を上から下まで見て「誰だ、お前」と言ってくる。
きっと、目の前の僕はそっくり同じ表情をしている事だろう。
君が僕を昔みたいにさん付けで呼ぶなんて『あの時』しかないんだから。
「とりあえず、話し合わないか?このおかしな現象について」
僕はそう言いつつ、頬をつねってみた。痛い。これで夢の線は消えた。
「冷静すぎんだろ」
「びっくりしすぎると、人ってそうなるんだよ」
嘘だ。本当はものすごく動揺してる。これは僕の我侭だけど、彼の見る伊志井はいつも冷静でありたい。
「……収録、どうしよう」
目下の心配事はそれだけだ。僕は冬の風に首をすくめながら、
伊静くんによく似た伊静くんと並んで歩き出した。



彼の運転で帰るなんて、何年ぶりだろう。877マンの二人は「明日絶対説明しろよ!」と
言いつつ、僕を伊静くんの車に押しこめた。たぶん、ドッキリだと思ってるはずだ。
「降畑の撮影でさ、君が送り迎えしてくれるんだ。嬉しかったな。
 カチンコが鳴ったら、伊志井さん、こっちだよって呼んでくれるのが」
僕は饒舌になっていた。安心していたのかもしれない。伊静くんは黙々と運転している。
「……聞いてるのか?」
「聞いてる」
「もしかして、怒ってる?」
「怒ってないよ」
伊静くんはこっちを見ない。
0458並行世界のステイルメイト-2 5/5 ◆XksB4AwhxU 2018/10/22(月) 21:35:10.95ID:+awCJjqJ0
「……僕たち、仲悪いのか」
そう聞くと、彼は一瞬だけ顔をこわばらせ、「別に」と答えた。
これは、どっちなんだ。仲良しだというのが嘘なら、立ち直れないかもしれない。
いや、何年も会わなくたって平気だったんだ。今さらそんなことで……無理だ。
「そういえば、どうして君は信じてくれたんだ?自分で言うのもなんだが、
 荒唐無稽にもほどがある話なのに」
「……伊志井が俺に嘘つくなんて、ありえないから」
喜びかけたが、すぐに「そこまでお前は器用じゃないだろ」と言われた。
一人でへこんでいる僕をよそに、伊静くんは「着いたよ」と車を停めた。
だいぶ昔に買った中古の一軒家。合鍵は渡さなかったと記憶している。
「合鍵、持ってるのか」
「何回も捨てようと思ったけどな」
伊静くんは勝手知ったる様子で中に入ると、冷蔵庫を漁る。僕はリビングを見回した。
ソファに脱ぎ捨てられた服、床に転がるビール缶。この世界の僕は、自堕落な生活だったのか。
「あ、まだ寝室には入るな。片付けてやるから」
「いいよそれくらい。自分でやるさ」
「いや、ちょっと……」
歯切れの悪い返事にいらついた僕は、伊静くんを押しのけて寝室に入った。
大きなベッドと、本棚。デスクにはパソコン。なんてことない、普通の寝室だ。
――ベッドの支柱に、手錠がかかっていること以外は。

「……馬鹿だよな、お前」
いつのまにか、伊静くんが背後に立っていた。
「こんなモン使わなくたって、俺は離れていかないってのに」
ベッドに座って手錠の鎖をいじる彼が、急に得体のしれないものに見えてきた。
彼は、「だから、入るなって言っただろ」と笑った。
まるで悪戯が成功した子供のような、表情で。
0459風と木の名無しさん2018/10/22(月) 21:36:23.53ID:+awCJjqJ0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お目汚しでした。蟻さんのインタビューとかのエピを参考にしてます
0460風と木の名無しさん2018/10/25(木) 01:31:45.93ID:1okmwzi20
>>459
乙です
二人でひな壇に座って打運他運にいじられる蟻霧って新鮮だった
降畑に蟻さんが抜擢されなかったら現実になってたのかもと思うとせつない
0461泣きたい時は君と1/52018/11/06(火) 21:08:21.53ID:/m+Gj7gP0
てぃーぶいけーで再放送中の、懐ドラ『俺/た/ち/の/朝』より
押ッ忍×抜け作 エロはないけど最終回のネタバレあり

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「母さんが死んだんだ」
真夜中、チャイムも鳴らさずにやってきた男はそう言った。
「俺の帰る家が、なくなっちまったよ」
きっと、病院から走ってきたのだろう。汗を垂らす逞しい肉体から
消毒薬の匂いが立ち昇るのが、抜けにはひどくミスマッチに思えた。
「ドテラを着てくるから、待っとれ」そう言った自分の声が、どこか遠くで響く。
「抜けさぁん、出かけるの?」
「お前は寝てろ」
寝ぼけ眼の繋ぎを布団に押し戻し、パジャマの上にドテラだけ羽織る。
二人は、母屋の大家を起こさないようにそっと出た。

「馬鹿だなお前は」
由比ヶ浜に出て、初めに飛び出したのはそんな言葉だ。
押ッ忍は呆けたような顔で、隣の抜けを見ている。ミサコさんのように
微笑んで「大丈夫よ」なんて背中を撫でたりできない、
自分の可愛げのなさを後悔した。だが、時すでに遅く。押ッ忍はしっかり
聞きとって「どういう意味だよ」と返事をしていた。

「妹さんはどうした。なんでそばにいてやらないんだ」
抜けはポケットに手を突っこんで、深く息を吸い込む。
夜の海は暗く、一寸先も見えない。まるで今の押ッ忍と同じだなと、抜けは思った。
「だって、京子は……俺がいなくたって……」
「そりゃ、しっかり者って事にしとかなきゃあ、
 お前が逃げる言い訳がたたんものな。
 ……それでも男か!!」
てっきり怒鳴るかと思ったが、押っ忍は大きな体を丸めて、砂浜に体育座りするだけだった。
0462泣きたい時は君と2/52018/11/06(火) 21:09:39.18ID:/m+Gj7gP0
「なんだ、カーコさんにゃ強く出られても、わしにゃ無理か」
押っ忍は黙って、寄せては返す波を見つめていた。
暗いというよりは、黒い海辺。遠くに漁船の明かりがぼんやりと浮かび上がるのを、
二人、眺める。
「なあ、抜け……お前、いい奴だなぁ」
押ッ忍がだしぬけにそんな事を言ったものだから、抜けはたじろぐ。
「俺を本当に叱ってくれるのなんか、お前だけだよ」
「なんだ、気持ち悪い奴め」
「カーコはうるさいだけで、本当の事なんか言ってくれねえからなぁ。チュウだって、俺に
 気を遣ってる。……二人とも、優しいんだ」
そう呟く押ッ忍の横顔が、あまりに寂しそうで。
抜けはふと思った。

――こいつは、周りが思っているよりずっと、弱い人間なのかもしれない。

社会はとても息苦しい。大学を卒業して、会社に入って、週に六日働いて、
結婚して子供を作って、あとは酒とパチンコで憂さ晴らし。
上手くやるのが上手な抜けでさえ、たまに逃げ出したくなる時はあるのだ。

「親孝行……できなかったな」
押ッ忍は下を向いて、目元を袖でぬぐった。
「何がメロンだ、何が入院費だ、そんなことより、元気なうちにもっと顔を見せりゃよかった。
 店を手伝えばよかった、一緒に暮らせばよかった、
 ……っ、父さんから、守ってやりたかった……!!」
声を殺して泣く幼なじみのそばに、抜けはそっと腰を下ろす。
肩を抱きよせてやると、押ッ忍はとうとう、わんわんと声を上げて泣きだした。

彼は誰よりも『まともな大人』になりたくて、ことさらに男ぶって見せる。
偉そうな物言い、堂々とした態度。だが押ッ忍は、本当はまだ子供でいたかったのかもしれない。
ならせめて、自分はそれを責めないでいてやろう。
抜けは密かにそう決めた。
0463泣きたい時は君と3/52018/11/06(火) 21:10:26.28ID:/m+Gj7gP0
「なあ、押ッ忍よ。お前、泣けるんだな」
鼻水をすすりながら、海を見ている押ッ忍に、抜けは出来る限り優しい声をかける。
「わしゃ、お前が泣いたり、怒ったりしとるのを見るのが好きだ。
 まあ、つまり……あれだ、素のお前を見るのが楽しいっちゅうことだ。
 だから、泣きたいんだったらわしの所に来い。こんな面白いモン、チュウやカーコさんに
 見せるなんざ、もったいない」
押ッ忍は「なにを言うんだ」と言いつつ、涙目で笑った。

次に押ッ忍の涙を見たのは、彼がヨットで大海原に出て行く時のことだった。
久しぶりに押しかけてきた男は、大家が丹精込めて作った鍋をぺろりと平らげ、
思い出話に花を咲かせたあと、抜けを夜の散歩に誘ったのだ。
「ミサコさんのとこ?俺も行こっかな〜」
鼻歌まじりでついてこようとするツナギを大家に押しつけると、
抜けは下駄を突っかけて出た。
「おう、待ったか」
「いや。……お前まだ腹は入るか」
「誰かさんが鍋を平らげたおかげでな」
「いい屋台を知ってるんだ、行かないか」
そう言って押ッ忍が歩いて行ったのは、江ノ電の踏切だった。
親切そうなおやじが、ラーメンを作っている。押ッ忍は「これも食え」と
自分の味玉を抜けのどんぶりに入れた。
「俺、もう日本を出ようと思うんだ」
「そうか」
正直に言って、抜けにはどうでもいいことだったので。
(遭難でもして人様に迷惑をかけなければ)
おざなりな返事をしてラーメンをすする。隣で同じくラーメンを食べている押ッ忍は
箸の持ち方も美しい。粗野を気取っていても、やはり鎌倉の坊ちゃんだ。
抜けは押ッ忍の隠れた上品さを、本当は好いていた。
0464泣きたい時は君と4/52018/11/06(火) 21:13:51.11ID:/m+Gj7gP0
「カーコがな」
「うん」
「カーコがな、俺のこと……本当は好きだったって、言ってくれたんだよ」
「そりゃ本当か。まあ、わしゃそうだろうと思っとったがな」
「でもな、俺の方はどうだか、自信がなかったんだと」
カーコが、押ッ忍とチュウの両方を好いているのは誰の目にも明らかだった。
繋ぎと二人、どちらが恋の競争に勝つか賭けていたのだが、金沢のお嬢さんが選んだのは、誠実なチュウの方だったのだ。
「……馬鹿だよな、俺は……お前が言ったとおり、本当に馬鹿だったよ」
「……」
「もっと素直に、なりゃあよかった……
 好きってのだけじゃ、駄目だったんだよ。やっぱり、俺は人を愛するとか、そんなことはできないんだ」
押ッ忍らしからぬ弱気な発言に、抜けはなにか言ってやろうと思ったが。
どんぶりに、ぽたぽたと涙を落としながら食べる姿に、口をつぐむしかなかった。
その代わりに、広い背中を撫でてやる。
「俺、あれほど好きになれる女を知らないよ。……俺には、カーコだけなんだ」
「そうか」
「でもな……でもな、チュウならいいって思えるんだ。チュウならきっと、カーコを幸せにしてくれる。
 カーコの幸せのために生きられる。あいつがカーコを幸せにしてくれるんなら、俺も幸せなんだ」

愛に破れた男は、それからすぐに海へ出て行った。まるで逃げるように。
0465泣きたい時は君と5/52018/11/06(火) 21:14:43.94ID:/m+Gj7gP0
やがて、外国の消印が押された絵ハガキが、抜けのもとに届いた。
そこには日本へ帰る予定の日付と、短いメッセージがあった。

『また、お前のそばで泣かせてもらってもいいだろうか』

「いいに決まっとるだろ、バカタレが」

抜けは絵ハガキを机の引き出しにそっとしまいこむ。
きっと、これからも押ッ忍は自分のところへ逃げてくるだろう。
海の上での孤独に耐えきれなくなったら。親友と、生涯でただ一人愛する女の
幸福を見るのが辛くなったら。そして、自分はそれを黙って受け入れるのだろう。
チュウとカーコが子供をもうけて、幸せな『家庭』を持つのを、横目で眺めながら。

それでもいいと、抜けは思っている。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

このドラマ、カプ萌えの宝庫すぎる。
お目汚しでした!
0466並行世界のステイルメイト-3 1/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:49:57.16ID:0eDSkvVG0
生 鯨人 蟻→霧 ちょっとエロい 
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


ふいに手を強く引かれ、視界がぐるりと回った。
天井と、怖ろしいほど無表情な顔が僕を見下ろしている。
押し倒された、と半拍遅れで理解した瞬間、口づけられた。
「ん、むっ」
手首がつかまれて、シーツの海に沈む。青くさい匂いが鼻をつく。視界のすみに、コンドームの殻が見えた。
くぐもった吐息が、口中で溶ける。ん、と鼻にかかった声が自分の喉から出た。
伊静くんは舌が触れ合うとすぐに唇を離して、僕のベルトに手をかける。
「っ、!?な、なにすっ……」
ずる、とズボンを下着ごと下ろされて、「やめろ」と声が出る。
「汚い、洗って、な」
「そっちかよ」
伊静くんは構わず、まだ縮こまった『それ』に口をつけた。ひ、と小さい悲鳴。
自分の声だと遅れて気づく、ちゅぷっとぬかるんだ音がして、温かいものに包まれる。
「やめ、ろっ……やだ、って」
髪をつかんで引き剥がそうとしたが、伊静くんは構わずじゅるると音をたてて吸い上げた。
下腹のあたりに、どろりとしたものが溜まる。
「あっ、あァっ、やだ、くるっ……!」
僕は思わず、つかんだ髪を強く引いて押しつけた。脳天まで突き抜ける快感に恍惚としていると、
くぐもった呻き声がする。当然吐き出すと思ったのに、伊静くんは口で手をおさえて、
何回もえずきながら呑みこんだ。
これはまさか、この世界の僕がさせていたのか。こんな変態行為を強いるなんて、何があったんだ!?
「伊志井、さん」
伊静くんはぷちっとシャツのボタンを外して、まだ混乱している僕に跨がる。
「お、おい、まさか、やめろ。僕はそんな……えっ?」

ぱたんっと。紙の人形が倒れるように、伊静くんはベッドに沈んだ。
「え?おい、伊静く……あっつ!!」
ひたいに手を当てると、火傷しそうなほど熱い。
0467平行世界のステイルメイト-3 2/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:51:30.00ID:0eDSkvVG0
「き、君っ、こんな熱で運転……いや、収録したのか!?」
ひとまず寝かせようとして、彼の家に風邪っぴきの娘さんがいたのを思い出す。つまり感染源はその子だな。
「……しかたない」



熱に浮かされた伊静くんが教えた住所には、分譲マンションがあった。
「おい、オートロックじゃないか。番号は」
「0322……」
なんで暗証番号が僕の誕生日なんだ?不用心だ。さっきの事もあって気味が悪い。
「よし、開いたぞ。部屋は?」
「20……」
そこで、首はがっくりと落ちた。自分より重い体を引きずって、なんとかエレベーターで最上階まで行く。
伊静、と表札の出た扉を見上げると、急に緊張感が出てきた。
この向こうに、伊静くんが歩む可能性のあった『人生』がある。そう考えると、胸の奥がざわざわする。
とりあえずインターホンを押した。
はーい、と可愛い声がして、扉が開かれる。

「……パパ!?」
出てきたのは、女の子だ。伊静くんにはあまり似てない、可愛い子。
ひよこ柄のパジャマで、ひたいに冷えピタを貼っている。その子を見た瞬間、僕の中のざわめきはもっと激しくなった。
「おじさん、パパどうしたの、ねえ」
「あー、いや……その、風邪が、伝染ったみたいなんだ。ママは?いるかい?」
そう聞くと、女の子は泣きそうな顔になる。
「おじさん、変だよ……なんでそんなこと言うの」
「えっ?ああ……ごめん」
とりあえず謝っておく。伊静くんを着替えさせて寝かせる間、娘さんはずっとこっちを見ていた。

「お粥でも作ろうか」
「うん」
伊静くんの家は僕の家と正反対に、ちゃんと片付いている。まるでモデルルームだ。僕はヒントを探して、
リビングのソファにランドセルが放られてるのを見つけた。
0468平行世界のステイルメイト-3 3/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:52:36.49ID:0eDSkvVG0
『いしづか さや』と書かれてるのをちらっと見て「さやちゃん」と呼びかける。
「おじさん……なんか、おじさんじゃないみたい」
ぎくっ。鋭いなこの子は。さやちゃん(漢字不明)と向かいあって、僕もお粥をいただく。
「おじさん、泊まってくの?」
「駄目かな。ママが怒らなきゃいいんだけど」
「ママはずっといないよ。知ってるでしょ」
さやちゃんはちょっと怒ってる。なるほど、父子家庭だったのか。しかし僕ならともかく、伊静くんが
結婚生活につまずくのは想像つかないな。失礼だが、浮気される姿は簡単に想像できる。

「おじさん、おやすみ」
「ああ、おやすみなさい」
さやちゃんは、襖が閉まるまでじっと僕を見ていた。相方の娘ながら、薄気味悪い子だな。
布団からは、伊静くんの吸っていた銘柄のタバコが微かに香った。和室を見回して、仏壇を見つける。
そこの遺影を見た瞬間、僕の心臓は凍りついた。まだ成人したてのような、可愛い女の子。
僕たち蟻霧の漫画を描いてくれていた、あの子だ!

『わたしの漫画、読んでくれたんですか?――うれしいです!』

ずっと昔、はにかみながら喜んでいた姿が思い出される。
もうずいぶん会ってないが、僕のいた世界では元気に生きているはずの、彼女が――
伊静くんの、お嫁さん?

下の引き出しが、少しだけ開いている。開けてみると、結婚式の写真が出てきた。日付は2007年。
紙吹雪を浴びている、笑顔の新婚夫婦。後ろで拍手する友人たちの中に、この世界の『僕』もいた。
「え……」
驚いて、しばらく写真を見つめる。
この世界の僕は、ぞっとするほどの無表情だった。とても晴れの日にはふさわしくない表情。
「君は……伊静くんを、好きだったのか?」
写真の僕に問いかけても、答えが返ってくるはずはない。仮に、そうだとして。あの手錠や、散らかった部屋からは
愛情と呼べるものなど見えない。この世界の僕らは、ずいぶんと拗れた関係のようだ。
僕はため息をついて、写真の下にあった手紙を読んだ。
0469平行世界のステイルメイト-3 4/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:53:39.16ID:0eDSkvVG0
『おめでとう!バツ一の伊志井からは、厄除けの意味で
 倍のご祝儀をもらっておくように。 
 PS:名付け親は俺が予約済みや!残念やったな、伊志井! 村太シ者』

やっぱり。さっき、877マンの後ろにいた男は、村太さんだったのか。記憶より老けていたから、
一瞬分からなかったが……僕と目が合うと、逃げるように行ってしまった。
「聞きたいな。……いや、聞かなきゃきっと、後悔する」
きっとあの人は、何かを知っているはずだ。胸に空いた小さな穴に手を当てて、決めた。




「……ごめん、ちょっと、まずは話し合おうか」
俺はとりあえず、伊志井さん(?)を家に連れて帰った。とりあえず、この人は家に泊めるとして……いや、
俺は伊志井さん家の合鍵持ってないし。そんだけだから!
(俺は誰に言い訳してんだ)……別人、かな。うん。明らかに別人だろ。
服もちがうし、話し方もなんか、親しげだし。つまりあれだ、小説なんかによくある、あれだ。
「えーと……もしかしてお前は、パラレルワールドの伊志井さん、みたいな?」
「その通りだよ。君は理解が早くて助かる」
さすが相方だね、と笑ってる伊志井さん。正直ちがうって言ってほしかったよ。
「あ、一応“元”相方だからな」
「待て、まさか解散したのか!?」
「え、ああ……2016年の、大晦日に」
「そこまで長くやっていて、なんで解散なんか……」
なんで。それは俺も11年考えて、分からなかったよ。どこから歯車がちがう方向に回ったのかも、もう思い出せないんだから。
心臓のあたりが冷えてくる。シャツの上から穴を探ると、最近また広がった『穴』から肋骨が触れた。
「伊志井さんが……お芝居、やりたがったから……かな。
 いや、俺のせい、かも」
「君の?」
「ん、俺がもうちょっと……ちゃんとした相方だったら……色んな人に、言われてたしね。
 君がもっと頑張らなきゃ、って。……頑張った、つもりだったん……だけど、なあ」
あ、やばい。なんか目尻が熱くなってきた。別に悲しいとか思ってないはずなのにな、なんでだろ。
0470平行世界のステイルメイト-3 5/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:55:09.49ID:0eDSkvVG0
「……ごめん、ちょっと思考が追いつかないから、飯作ってくる」
俺はとりあえず逃げる事にした。伊志井さんはなんとなく察してうなずく。
「その間、風呂でも入ってなよ。料理しながらちょっと頭落ち着かせるからさ」
そうだ、まずは落ち着かないと。そして、明日からの予定を考えるんだ!
俺は自分に言い聞かせながら、料理を始めた。

「出たよ」
湯気の中、全裸で出てきた伊志井さんに、俺は「服を着て出ろよ!!」と怒鳴った。
「服がないんだ」
「そこにパジャマ出てんだろ!?その、畳まったやつ!」
「ああ、これ……「それはシーツだって!」
ぶら下がってるのを視界に入れないようにしている俺に、伊志井さんは「なんだ、君の大好物だろ」と
近づいてくる。ボケだよな?ボケで言ってんだよな!?
「とっ、とにかく着がえろって。冷えるだろ」
パジャマを押しつけると、伊志井さんは目をぱちぱちさせて、ちょっと笑った。
「いいな、君がこんなに優しいんなら、ずっとこっちにいてもいい」
「え?」
「冗談だよ」
伊志井さんはパジャマに着がえながら「これ、君には小さいだろ」と聞いてきた。
「形見だよ。……村太さんの」
あの人は、よく俺に古着をくれた。形見になった後はしまっておいたのが、役に立つとは思わなかった。
でも、俺が着れないのは分かるだろうに。やっぱりあの人は、伊志井さんにって意味でくれてたのか。
今となっては分からない。
「村太、さん……?おい、それはどういう」
「死んだよ。もう12年も昔に」
伊志井さんは下を向いた。しばらくもごもご言葉を探して、「こっちでは、元気に生きてる」と呟く。
「そっか。よかった」
もう会えない事に変わりはない。だからよかったとしか言えないのに、伊志井さんはちょっと眉をひそめた。
そこで、俺のスマホが鳴った。伊志井さんは座らせて、電話に出る。
「はい、もしもし。……伊志井ですか?いえ、いませんよ」
ソファの伊志井さんをちらっと見て、囁く。ベランダに出るまでの間、伊志井さんのマネージャーはずっと怒鳴っていた。
0471平行世界のステイルメイト-3 6/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:56:14.84ID:0eDSkvVG0
『ロケの休憩時間に出ていって、帰らないんですよ……
 明日は映画の撮影なのに、どうしてくれるんですか!!』
どうしてくれる、と言われても。伊志井さんのスマホは、持ち主と一緒にパラレルワールドだ。出ようがない。
「……元相方に聞いてどうするんですか」
『もう手がかりは全部聞いたんです……あとは伊静さんしか』
「とにかく、俺にはどうしようもないんで、撮影はキャンセル『明日来なかったら出演中止になるんですよ!?』
 ……じゃあそれでいいですよ!!」
リビングに戻ると、もう一人の伊志井さんは、心配そうな顔で俺を見ていた。 

「ほら、食えよ」
「どれどれ……んっ、美味いじゃないか。特売のコロッケで食いつないでた子が、成長したね」
「それ、俺がハタチくらいの話だろ?」

俺たちは、薄っぺらい会話をしながら食事をした。
それが辛いのか、伊志井さんがそわそわし始めたので、「そっちはどんな感じなの」と聞いてみる。
どうやら、伊志井さんが降畑のオファーを断って。お笑いコンビとしてがんばりましたって感じの世界みたいだ。
もったいないね。伊志井さん、いい声してるのに。

「こっちの君さ、結婚してるよ。可愛い娘さんもいる」
「えー、嘘だろ。俺なんかにお嫁さん来てくれたの?」
「君の大ファンだった人。ここまで言えば分かるんじゃないか」
伊志井さんは、なぜかこわばった表情で、向こうの俺と嫁さんのなれそめを語った。

「ところで。こっちの蟻to霧ギリスは、どんな歴史を辿ったのかな」
……そうだよな。そう来るよな。
俺は言葉を選びながら、11年のコンビ時代について話す。伊志井さんはずっと、暗い顔で聞いていた。
「一つだけ、いいかな」
「いいよ」
「君は、こっちの僕をどう思っていたんだい?」
「大嫌いだった」
そう答えると、伊志井さんは打ちのめされたみたいになる。
「……って言えば満足する?」
教えてやらない。お前にも、向こうにいる『俺の』伊志井さんにも。俺の心なんか、絶対に見せてやらない。
0472平行世界のステイルメイト-3 7/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:57:32.12ID:0eDSkvVG0
「どうして」
伊志井さんは、やっとそれだけ言って、両手で顔を覆うのにちょっとだけ満足する。
――指先に触れるむき出しの心臓が、また脈を打った。





朝。起き出してリビングへ行くと、伊静くんはもう起きていた。
何食わぬ顔でコーヒーを飲みながら、スマホを見ている。目が覚めたら元の世界に戻ってるんじゃ
ないかと思ったけど、さすがにそれはなかったようだ。
「……おはよう」
伊静くんは顔を上げておはよう、と素っ気なく返す。その後ろで、さやちゃんがセーラー服の
スカーフと格闘していた。ランドセルには『3年1組』とあるのに、まだ着れないか。
「さや、行ってらっしゃい」
ちゅっとリップ音が聞こえた。なんだ、僕にはあんな態度をとるくせに。あんな優しい顔して。
……胸の穴が、ずきずきと痛みだす。
「あ、そういえば……車、僕の家に置きっぱなしじゃないのか?」
黒い感情を隠して言ってみると、伊静くんはああ、と思い出したようだった。
「あとで取りに行く。……聞かねぇの?」
「何を」
とぼけてみると、伊静くんは冷やかすように「中身もアリか」と言って、スマホに戻った。
なっ……な、な、なんなんだ!僕は何も知らないんだぞ!僕の知ってる伊静くんと性格違いすぎないか!?

謎のいらいらは、稽古場に行ってからも消えなかった。
「よっ、異世界人」
にやにや顔の下等が、肩に手を回してくる。信じる気になったのかと思ったが、「伊志井はそんな
自然な演技できねえだろ?」とのこと。伊静くんといい、辛辣すぎないか君たち。
「そうだ、気になっていたんだが……こっちの僕は、どんなキャラクターなんだ?
 打運他運さんにも"今日明るいな"ってびっくりされたんだが」
「んー、ネガティブクズ?KOCのキャッチコピーはしびれたね。"キング.ルサンチマン"」
そうか、こっちの『僕』は劣等感をこじらせたキャラで売ってるのか……。
0473平行世界のステイルメイト-3 8/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 17:00:15.72ID:0eDSkvVG0
「あ、お前さあ。昨日生放送でやらかしたじゃん。マネージャー怒ってたぞー。
 罰として今日の百太郎商店、伊静だけだってさ」
「ハァ?自重課長が来んだぞ、今日。こっちが一人でどうすんだよ」
あ、まずい。伊静くんの機嫌がまた悪くなってる。ていうか百太郎商店、まだ続いてるのか。長寿番組だな。
「お前、ほんっと自重課長好きな」
下等が笑うと、伊静くんはそっぽを向いて「甲本、同い年だし」と答えた。

伊静くんが出ていくと、下等は「ハァ……」とため息をつく。
「あいつさ、いつからあんな天邪鬼になっちまったのかなぁ」
「え?」
「あ、そっか。お前は知らねえのか」
下等は話していいものかどうか、迷っていたが、僕が真剣に知りたがってると分かると座った。
「だいたい予想ついてると思うけどさ、お前らって人目がないとこでは冷えてるよ。仲良しコンビで売ってんの。外には」
「それは……よくある話じゃないか」
「うん。お前がネガティブなキャラで、伊静は天然ボケでやってるけどさ。見ての通り。
 あいつ、なんでも逆に言うんだよなぁ。実際は井之上の方が仲良しなくせによ」

そこで、誰かが稽古場に入ってきた。下等はその人に何か耳打ちして、「じゃ」と離れる。
「伊志井、おはよさん。……なんや、幽霊でも見たみたいな顔して」
「……村太さん」
僕はなんとか立ち上がって、その人と向かい合う。この人はきっと、僕に答えをくれる。生前そうだったように。
「教えてほしいんです」
そう言った僕に、村太シ者はにっこりと笑った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

どこかから怒られたら土下座します。
(ゲーム芸人の走りみたいな人たちだったのになー)
0474引退セレモニー 1/32018/12/05(水) 13:02:55.51ID:adr7v8030
しゃちほこの盛野→元ド荒の中の人(盛野の引退セレモニーより)



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



「お久しぶりです」
盛野にとって、挨拶に来た彼に会ったのは実に4年ぶりだった。
2013年まで彼は、ド荒を演じていた一人だった。
一人だった、というのは、ド荒を演じるにあたり数人のローテーションを組んでいたからだ。
その中でも彼とは一際仲が良く、飲みにも行ったし、プライベートで旅行に行ったりもした。
しかし、2013年。彼は、異動してド荒を演じることから離れた。
他のド荒担当から、今頃ヒーローショーをやってますよ、と教えてもらったりもしたが、大半は眉唾ものの噂だった。
]家族の都合とも聞いたし、足の故障とも聞いたし、転職とも聞いた。
真実はわからず、結局マスコットを演じることも球界とは大差ないのだと盛野は理解した。
引退、FA、移籍、海外挑戦。様々な理由で球団から選手は去っていく。
次第に盛野は彼のことを考えるのをやめた。盛野自身が、自分自身の身体の制御をできなくなっていったからだ。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況