立場だけの交換・変化 8交換目

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0001名無しさん@ピンキー2014/09/22(月) 20:24:41.39ID:w2/LlOp+
いわゆる人格が入れ替わる「入れ替え」や性別が変化するTSではなく、
「肉体や人格はそのまま、突然別の立場に変化する」系統の小説や雑談などをするスレです

たとえば成人会社員と女子小学生の立場が交換されたり、
AV女優と女子高生の立場が交換されたり、
ペットと飼い主の立場が交換されたりと、
周囲は立場の交換に気づいていたりいなかったり
交換や変化の内容はさまざまです

前スレ
http://pele.bbspink.com/eroparo/kako/1387/13872/1387280916.html

0461名無しさん@ピンキー2016/09/01(木) 01:53:07.09ID:D3jVrbM7
#意外に足りました。スレ限界って640KBじゃないのね。
#次は、怪盗ネタかバスガイドネタかなぁ

0462名無しさん@ピンキー2016/09/01(木) 10:36:46.34ID:NhNy3wrP

元に戻ったかどうなんだろう…w
ずっとそのままなのかな

0463名無しさん@ピンキー2016/10/06(木) 20:34:39.02ID:DlAhQSWl
今はどうか知らないけど家庭科の教科書でゴーグルや重りつけて高齢者の立場を体験しようみたいな項目があったのを思い出した
立場交換が実現できれば近くの老人ホームのお年寄りに協力してもらって体験授業やったりするのかな

0464名無しさん@ピンキー2016/10/08(土) 02:09:14.24ID:gSE8cGg8
最近の『君の名は』ブームにあやかって、あのネタを立場交換風に料理してみると……。

 某映画のごとく、いかにも女の子の私室という感じの知らない部屋で目覚める主人公。長い髪と女物のパジャマを着ていることから、「もしかしてどこかの少女と入れ替わったのか!?」と思い至る。
 起こしに来た見知らぬ“妹”の存在で確信を深めるが、パジャマを脱いでみると、身体そのものは元の男のままだった。鏡に映る顔も、ちょっぴり色白で眉毛も細いが、よく見れば自分の顔だ。
 実は、「東京に住む男子高校生」である主人公は、「地方の町に住む女子高生」と“立場”が入れ替わっていただけなのだ!

 ……てな感じか。

0465名無しさん@ピンキー2016/10/08(土) 12:31:31.84ID:ZQ681h49
下らんネタでスレ圧迫すんなよ

0466名無しさん@ピンキー2016/10/08(土) 13:42:53.17ID:oUKil0oa
くっそ過疎なのに圧迫とかガイジかな?

0467名無しさん@ピンキー2016/10/09(日) 11:44:24.94ID:tj4iSeH2
 某館脱出ゲームをプレイしていて思いついた妄想。
 「V」と呼ばれる吸血鬼が夜の街を跋扈しているとの噂で、教会側は躍起になって捜している。
 満月の夜、教会の新米エクソシストの少年が、偶然その女吸血鬼と遭遇し、何とか退治しようと試みるが失敗。女吸血鬼に捕まり、血を吸われて意識を失ってしまう。
 意識を取り戻した時、少年は暗い地下室の中にいて、なぜかあの女吸血鬼の服(某妖怪人間ベラみたいなドレス&マントのセクシー系、もしくは某ヴァンピィちゃんみたいな童貞を殺す服系)を着せられている。
 「一体何が!?」と驚く少年の横にはあの女吸血鬼からの手紙が。いわく、あの女吸血鬼には特殊な能力があり、満月の夜に波長の合う人間の血を吸うことでその“立場”を奪う(正確には交換する)ことができるのだという。
 『あなたのおかげで、ようやく人間に戻れたわ♪ その代わり、今はあなたが“街を騒がす女吸血鬼V”だから注意してね』
 そう、あの女吸血鬼も元は人間だったのだ。
 『ちなみに、念入りに捜したけど、この街で私と波長の合う人間はあなただけだったの。立場交換は同じ者同士で二度行うことは不可能だから、人間に戻りたいなら、別の街に行って自分と波長の合う人間を捜しなさい』
 慌てて地下室から出ようとする少年だったが、本能的に日光の下に出たくないと体が拒否し、扉を開けられない。
 数時間後、ようやく陽が落ちかけた黄昏時に外に出ることができたが、ほとんど沈んだわずかな夕陽の光を浴びることさえ苦痛に感じてしまう。
 さらに、慎重に自分が所属する教会の寮(教会そのものは頭が痛くて近寄れなかった)を覗き見ると、そこには自分のカソック(司祭服)を着て、自分の友人達と談笑しながら食事するあの女吸血鬼の姿が……。
 どうやらあの手紙に書いてあったことは真実らしい。
 こうして、新たな「女(?)吸血鬼V」となってしまった少年は、元に戻る手段を捜してあてどない旅に出ることになるのだった……。

 ──てな感じ。エピローグは数年後。新米エクソシストのシスター(もしくは王都を護る姫騎士)と対峙する“V”。
 「やっと見つけた! 広域手配魔物・ヴァンピレス“V”。神の御名において成敗します!」
 「ふふっ、貴女にできるかしら?(そう、この子が私の……なら、殺さないようにしないとね)」

0468名無しさん@ピンキー2016/10/09(日) 13:32:54.26ID:GuAlXKNT
スレの容量考えろ

0469名無しさん@ピンキー2016/10/09(日) 13:41:47.30ID:aYndzMnQ
容量心配なら自分で次スレたてれば良いだけだろ

0470名無しさん@ピンキー2016/10/09(日) 14:58:20.68ID:GuAlXKNT
立てられる奴が立てとけよ
立てられないなら無駄な書き込みするな

0471名無しさん@ピンキー2016/10/09(日) 20:56:27.22ID:DSckEjIZ
↑無能ガイジ

0472名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 21:11:56.39ID:+MwchFVK
さすがに過疎りすぎやない?

0473名無しさん@ピンキー2016/10/31(月) 18:30:25.31ID:0/7LQ+p5
容量が〜って書いてあったから書き込まなかったんだけど
一応新しい?スレ立ってるけどどうすればええの

0474名無しさん@ピンキー2016/10/31(月) 19:58:07.88ID:0IW076Um
容量の仕様があんまわからんからあれだがとりあえず容量限界までこっち使えばいいんじゃないかな?
にしても・・・やはり容量制限の言葉で書き渋ってた人がいたか

0475名無しさん@ピンキー2016/11/01(火) 07:45:46.24ID:WiNcEpKc
>>463
これ読んでふと想像したんだけど、小学校での社会見学とか、中学校での職場体験みたいに、
授業の一環で社会人と立場交換して社会を体験する「立場交換学習」って感じのやつ。
子供たちの「なりたい職業」に実際になっている大人と、1〜3日くらいの短い期間で立場交換するの。
男子の「キャビンアテンダント」とか、女子の「おすもうさん」なんかも認められる感じの。
ただ単に、立場交換された大人たちが教室に居る風景が見たいというだけの話なんだけど。

「それじゃあ授業を始めるぞー」
担任はそう言って教科書を開き、教室内の子供たちを見回した。
一見するといつもと変わらない教室の光景なのだが、
よくよく見れば、子供用の席に座っているのは全て大人であった。
校則に従った白いシャツに、男子は半ズボン、女子は膝丈のスカートを着ているのだが、
中には男子の服装をした女性や、女子の服装をした男性も混じっている。
大人たちは、二十代と思われる若者もいれば、明らかに還暦を過ぎた老人も混じっているが、
立場交換学習で子供たちの立場になった彼らは、意識せねばそうと分からないほど子供にしか見えず、
まるで四月からずっとこのメンバーで一クラスだったかのように、教室の雰囲気に自然に馴染んでしまっていた。
担任は、彼らの中に見知った顔があることに気付いた。
野球部の原田の席には、現役プロ野球選手の田中選手が座っていた。
男子クラス委員の山西の席にいるのは、なんと総理大臣の阿部だった。
女子はアイドルや芸能人と立場交換した者が多いようだが、
PTAの会議や家庭訪問で何度か見かけた、子供たちの親の顔もわずかに見られる。
驚いたのは、女子の中でも大人しくて目立たない仲川の席にいるのが、
担任自身も見知った、この学校の校長だったことだ。
信楽焼の狸のような太ったオヤジが、スカートから毛むくじゃらの足を覗かせている。
普段なら有り得ない爆笑必至のその格好だが、今の校長は仲川の立場になっているせいで、全く違和感が無い。
「先生、早く授業を始めてください」
「ああすまんな。それでは36ページを……」
最前列に座っていた、女子クラス委員の木本に言われて、担任は授業を始める。
(すごい。わたしと立場交換した先生も、元から女子だったみたいにしか見えないのね)
立場交換前は木本という女子だった担任は、心の中でそう思った。

みたいなやつ、ください。

0476名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 18:12:40.69ID:R52xNsI8
かなり前にネタフリしたモノの冒頭部を書いてみました。ややベタ過ぎるネタなので、続きは未定。

『ボクがバスガイドになったワケ』

 千年の歴史を持つ古都・京都……と言えば聞こえはいいが、実は盆地にあるため、夏はクソ暑く、冬は底冷えがする、気候的にはあまり快適とは言い難い土地だったりする。
 そのため、7月下旬ともなればうだるような暑さのせいで、折角の休日もおちおち朝寝もしてられない。
 「ふぁーーっ……おはよぅ、母さん。今日も暑いなぁ」
 台所では、母の妙子がFMラジオを聞きながら皿洗いをしていた。
 「今年の夏はこのまま猛暑になるらしいで。いややわぁ……って、なんやの、愛子、その格好は!」
 ショーツ1枚の上に寝間着代わりの大き目のワイシャツを着ただけとという就寝時の格好のまま階下に降りてきたのは、“年頃の娘”としては少々慎みに欠けるかもしれないが、どうせ朝ごはんを食べたらシャワーを浴びるつもりなのだから、着替えるのも億劫だ。
 「父さんは、今日はもぅ出勤してるんでしょ? たまの休日なんやから、大目に見てよ」
 「もぅ、横着してからに、この子は。それに、お父さんはエエとしても、明日からは孝雄くんが来るんやで」
 ! 
 「そっか……そんな話、昨日してたねぇ」
 孝雄──“須賀孝雄(すが・たかお)”は母の妹の2歳下の息子、つまり従弟ということになるだろうか。
 年が近く、お互いひとりっ子ということもあって、幼い頃からワタシたちは姉弟みたいに仲がよかった。
 夏休みには“孝雄”が京都にある呉多家(ウチ)に来て数日間泊まり、代りに冬休みには“愛子”が神奈川県の須賀家にお邪魔する……というのが毎年の恒例行事みたいになっている。
 もっとも、就職したての新人バスガイド1年生だったワタシは、昨年末は仕事のローテーションが巧く合わなかったため、渋々神奈川に行くのを断念したため、“彼”と会うのは一年ぶりになる。
 「タカちゃん、今年高3のはずやのに、この時期にこっち来るなんて余裕あるのかなぁ」
 「大丈夫ちゃう? 智那の話やと、国立志望やのに模試の判定は軒並みAらしいで」
 それは凄い。このままなら、やはり東大を目指すのだろうか。
 そんなコトを考えつつ、もしゃもしゃと味噌汁とお漬物と炊き立てのごはんからなる朝食を平らげる。
 女性としてはそれなりの量だが、ああ見えてバスガイドは結構ハードな仕事なので、これくらいは食べないとやっていけないし、幸いにしてそれほど太りやすいタチでもない。
 (……なーんて、会社で先輩とか同僚のコに言うたら、殺気の籠った目で見られるんやけどね)
 歯を磨き、軽くシャワーを浴びてから、バスタオルを巻いたままドライヤーで髪を乾かす。
 腰近くまで伸ばした濃い蜂蜜色の髪は、手入れに相応の時間がかかる。ちなみに、アメリカ人の母方の祖母からの隔世遺伝らしく地毛だ。
 小さい頃は、周囲の子たちに「ガイジン」とからかわれたり、中学で染めたものと生徒指導に疑われて難癖つけられたりと、色々あったけど、大人になった今ではチャームポイントとして受け入れてるし、むしろ大切にしている。
 「とは言え、さすがに夏場はちょっと暑いんよねぇ。ちょっとは短くしたほうがエエんんかなぁ」
 思案しつつも下着を着け、自室に戻って通勤用の白いワンピースに着替える。
 そのまま鏡台の前に座って、UVケアを考慮した夏用のメイクをしながら、鏡の中に映っている自分の貌を見て、ふと苦笑が漏れた。
 「あれから1年ちょっと、か。すっかり慣れてしもたなぁ」
 その姿は、金髪碧眼で(多少のうぬぼれ込みで言うなら)それなりに整った顔立ちをした二十歳前後の若い女にしか見えない。
 身長168センチと女性にしてはやや長身だが、悪目立ちするほどでもなく、(甘いものを食べ過ぎた時とかは別にして)スタイルもそう悪くはないと自負している。
 もっとも、ほんの一年ほど前──正確に言うなら去年の五月半ばまでは、ワタシは“呉多愛子(くれた・あいこ)”ではなく、それどころか女でさえなかった。
 では、何者(だれ)だったのかと言えば……先ほど母の話にも出て来た、愛子の従弟である男子高校生の孝雄だったのだ。
 そうなると、今の“須賀孝雄”が誰かも予想がつくだろう。そう、本物の呉多愛子だった女性だ。
 つまり、ワタシ達、もといオレ達ふたりは互いの立場を交換して暮らしているのだ──もっとも、オレ達以外の人間は、その事実にまるで気が付いていないが。

 何故、そんな奇怪(けったい)なコトが起こっているかと言えば……愛子──本物の愛子ねーちゃんが、あやしげなおまじないグッズを買ってきたことが事の発端だった。

<つづく?>

0477名無しさん@ピンキー2016/11/15(火) 18:29:41.08ID:YmzNIF7G
期待

0478『ボクがバスガイドになったワケ』2016/11/23(水) 10:45:10.77ID:5i0nhBo7
#肝心のシーンの前の前振り〜

 高校2年生の春──正確に言えば、5月のゴールデンウィークが終わって早々に、須賀孝雄が通う私立白守高校の修学旅行があった。
 修学旅行といえば、通常は小中高で各1回の合計3回しか生涯に経験できないレアイベントである。よほどの出不精かコミュ障、もしくはひどいイジメを受けているなどと言った特段の事情がない限り、普通の学生なら大なり小なり楽しみにしているものなのだが……。
 「高校生にもなって京都はないよなぁ」
 横浜駅から京都まで新幹線に乗る孝雄のテンションは妙に低めだった。
 別に、孝雄が前述の3条件に引っかかるワケではない。むしろ、(多少お調子者と見られることはあるが)どちらかと言うとクラスのムードメーカーとか盛り上げ役といった立ち位置にあり、本来こういった学校行事では率先してテンションを上げようとするタイプのはずだ。
 実際、彼だって修学旅行に行くこと自体は楽しみにしていたのだ──行き先が「京都を中心に滋賀、奈良などの史跡を巡る」という代物だと判明するまでの話だったが。
 「今更、そこらへんを廻るって言われても……」
 小学4年生の頃に父の仕事の都合で関東に引っ越したとは言え、それまでは京都市内に住み、また今でも年に一度は京都にある伯母の家に遊びに行く孝雄にとっては、その辺りはまったく食指の動く旅行先ではない。
 「そうだよなー、どうせだったら沖縄とか北海道とかがよかったぜ」
 隣席のクラスメイトの青葉繁(あおば・しげる)も同意する。
 「えーっ、そう? あたしは、京都ってロマンチックでなんか憧れるけどなぁ。ねぇ、みーこ?」
 通路をはさんで隣りの席に座るショートカットの女生徒、加古川由佳(かこがわ・ゆか)は、どうやら京都行き賛成派のようだ。
 「うん、そうだね、ゆかちゃん。でも、せっかく京都に行くなら、秋の紅葉の季節ならもっとうれしかったかも」
 その隣りの笠井美衣子(かさい・みいこ)も京都行き自体は楽しみにしているらしい。
 「へぇ、笠井さんはともかく、加古川がそういう女の子らしいこと言うのは、ちょいと意外だ」
 少し赤みがかった髪(染めているのではなく地毛らしい)を肩まで伸ばし、サイドテイルにまとめている美衣子は、サッカー部のマネージャーで、とび抜けた美人というほどではないが、明るく優しく世話好きで男女問わず人気が高い。
 一方、由佳はソフトボール部のキャプテンだ。ボーイッシュな見かけ通りカラッとした男勝りな性格で、女子生徒から頼りにされ、男子生徒からは異性というより友達として見られることが多いタイプだ。
 「にゃにおーッ、あたしだってれっきとした乙女なんだからね!」
 「なるほど。「漢女」と書いてオトメと読むのか」
 「コロす!」
 からかう繁に食って掛かる由佳を、孝雄と美衣子が「まぁまぁ」となだめる。この4人は同じ班で、自由行動などは一緒に回ることになるのだから、あまり険悪な関係になるのは得策ではない。
 「そういや、やけに無口だけど、鷹則はどうなんだ?」
 話を逸らす意味もあって、孝雄が窓際の席に座っているもうひとりの班員・古田鷹則(ふるた・たかのり)に話しかけたのだが……。
 「──どこでもいい。船とか飛行機に乗らないといけない外国でなければ……」
 剣道部のエースで普段はキリッとした男前の鷹則が、青い顔してボソボソと呟く。
 「お前、ホントに乗り物に弱いのな」
 幼稚園時代からの彼の幼馴染である繁が呆れたような声を漏らす。
 「古田って、わりと文武両道の優等生なのに、英語も苦手なんだっけ」
 ふたりと同じ中学出身の由佳も気の毒そうな、それでいてどこかおもしろそうな顔で見ている。
 「古田くん、酔い止め持って来たけど、飲む?」
 「──すまない。恩に着る」
 世話焼きな美衣子が差し出した薬を受け取り、ペットボトルのお茶で流し込む鷹則。
 (まぁ、コイツらと一緒なら、見慣れた京都の街もそれなりに楽しめるか。自由時間は俺がガイド役を引き受けるってのもアリだし)
 4人の騒ぎを見ながら、孝雄はそんなことを考えていたのだが……。

 「え! もしかしてタカくん!?」
 「あ、愛子ねーちゃん!?」

 京都駅前から彼の高校が乗る観光バス付きバスガイドのひとりが、よく見知った従姉だとはさすがに予測できなかった。
 ──そして、はからずしも、翌日からは自分がその“バスガイド”そのものになるということも、神ならぬ身では予見できなかったのである。

0479名無しさん@ピンキー2016/11/23(水) 10:47:08.97ID:5i0nhBo7
#しまった、横浜じゃなくて新横浜だ。そして、肝心の立場交換は次回の後半になる予定です。

0480『ボクがバスガイドになったワケ』2016/11/27(日) 10:21:21.85ID:NxtRC1Fu
 「え! もしかしてタカくん!?」
 「あ、愛子ねーちゃん!?」
 最初に京都駅前から観光バスに乗った時は人が多過ぎて気付かなかったんだけど、そのすぐ後、最初の見学場所である三十三間堂に行った際、バスが停まっている駐車場で、ばったり愛子ねーちゃんと顔を合わせることになった。

 「まさか、今日のお客さんがタカくんとこの学校やなんて……びっくりしたわぁ」
 「コッチだってびっくりだよ。愛子ねーちゃんが就職したとは聞いてたけど、まさか観光会社でバスガイドになってるとはなぁ」
 幸い、まだ出発までは時間があり、かつ他の生徒は殆ど戻って来ていない(オレ? こんなトコ、もう3回も来たことがあるからいーんだよ!)ので、少しだけふたりで話すことができた。
 「それにしても……」
 ガイドの制服姿の愛子ねーちゃんを見つめる。
 「なんやの、そないにジーッと見て? なんか、おかしいかなぁ」
 紺色の長袖上着と同じ色の膝上丈のタイトスカート。頭にかぶったベレー帽も同じく紺色だ。
 白いブラウスの首元にスカーフを結び、手には白手袋をはめて、足元は黒いストッキング&真っ赤なハイヒールという“きょうと観光”のバスガイドの制服は、スタイルのいい愛子ねーちゃんによく似合っていた。
 「うーん、バスガイドって言うよりスチュワーデスみたいだな」
 もっとも、それをそのまま言うのは照れくさいので、あえてヒネくれた言葉を投げてみる。
 「あ〜、それ、よぅ言われるわ。それと、今は“スチュワーデス”やのぅて“キャビンアテンダント”いうんやで」
 「マジか。『スチュワ●デス物語』の立場ねーじゃん」
 そんな感じで会話していたところで、他の修学旅行生がポツポツ戻って来たので、とりあえず話を切り上げることにする。

 「お、何だ、孝雄、姿が見えないと思ったら、バスガイドのお姉さんナンパしてたのかよ」
 「ばーか、アレ、従姉のねーちゃんだよ」
 「ああ、そう言えば、須賀くんの実家ってこっちの方なんだっけ」
 そんなことを繁や加古川さんと話しながら、オレは愛子ねーちゃんのことを考えたていた。
 (愛子ねーちゃん、本当に大学行かなかったんだ。それに伸ばしてた髪も切ったんだな……)
 どちらかと言うと体力派でおツムの方はイマイチなオレと違って、愛子ねーちゃんは昔からとても頭がよかった。オレも夏・冬の休みで会った時は、宿題なんかをよく教わってたし。
 京都は公立より圧倒的に私立の方が偏差値が高い土地柄だけど、経済的な理由で愛子ねーちゃんは公立高校に通わざるを得なかった──にも拘わらず、全国模試とかでは、いつもかなり上位をキープしてたくらいだ。
 身内の欲目かもしれないけど、愛子ねーちゃんなら、その気になったら京大入りも目指せたんじゃないかって思う。
 ただ、愛子ねーちゃんが中学二年のときにお父さん(オレから見るとおじさん)が病気で亡くなって、妙子おばさんは結構苦労して愛子ねーちゃんを育てることになったらしい。
 そんなおばさんの姿を見て育ったせいか、愛子ねーちゃんはあえて進学じゃなく就職を選んだんだろう。
 (ちょっともったいないと思わないでもないけど……ま、頭がいいからって大学行かないといけないワケじゃないし、そこは本人の選択だから、傍からごちゃごちゃ言うべきじゃないよな)
 その時のオレはそう思っていたんだ──旅館に帰ったあと、夜、ケータイに愛子ねーちゃんからのメールが来るまでは。

 * * * 

0481『ボクがバスガイドになったワケ』2016/11/27(日) 10:22:12.95ID:NxtRC1Fu
 愛子のメールを受けた孝雄は、白守高校二年生が泊まる旅館の別フロアにある観光会社スタッフたちの宿泊部屋に来ていた。
 愛子の部屋は4人部屋で、ほかの同僚ガイドたちは風呂に行っているらしい。
 「ごめんな、タカくん。わざわざ夜に呼び出してしもて。消灯時間とか大丈夫なん?」
 バスガイドの制服を脱いでラフな私服に着替えた愛子は、どうやら風呂に入ったばかりらしく、ほのかに上気し、女らしい香りがした。
 「──そっちは11時予定だから余裕はあるよ。それで、話って何?」
 いくら仲の良い従姉とは言え──いや、仲が良いからこそ密かに憧れていた年上の女性のそんな姿を見て、何も感じないほど孝雄も枯れてはいない。
 平静を保とうとして、やや口調がぶっきらぼうになるのも致し方ないだろう。

 「あのな、突飛な話なんやけど、最後まで聞いてほしいんよ」
 そう前置きして愛子が口にした内容は、確かに突拍子もないものだった。
 いわく、真面目な愛子の数少ない趣味の“おまじない”(ここまでは孝雄も知っていた)関連で入手した“お札”を実験するのに協力してほしいとのこと。
 しかも、そのお札の効力というのが、「2枚のお札にふたりが自分の名前を書いて、それを交換して付けることで互いの“立場”が入れ替わる」ことだというのだ。
 「愛子ねーちゃん、それ、絶対うさん臭い。そもそもソレ、どこで手に入れたんだよ?」
 「えーっと……ネットの通販」
 「通販って……値段は?」
 「──2枚1セットで5000円のところを、セールで3000円」
 答えているうちに、自分でもどうかと思い始めたのか、愛子の声が小さくなる。
 「──ねーちゃん、それ二重の意味で有りえないって。“立場交換”なんてトンデモ効果もそうだし、仮にそれが本当なら、もっと高い値段付けるだろうし」
 従姉の顔を憐れみを込めた目で見つめる孝雄。
 「そやかて、こんなトンデモないお札が、こんなに安ぅ、しかも4割引きで売っとったから、ついつい買ぅてしまうやん!」
 自分でも薄々自覚はあったのか、半べそかいて逆ギレする愛子。そもそも、会社の同僚とか学校時代の旧友とかに声をかけなかった時点で、彼女も内心怪しいとは思っていたのだろう。
 (まったくこの人は……普段はあれだけ頭良くて頼もしいのに)
 呆れ半分微笑ましい半分の生暖かい視線を、孝雄は愛子に向ける。
 「はぁ〜〜、しょうがないなぁ、愛子ねーちゃんは。それで、実験ってことはオレ達ふたりでそのお札を付けてみればいいんだよな」
 「! タカくん、協力してくれるん?」
 「ああ。愛子ねーちゃんにはいつも世話になってるし、たまの道楽(いきぬき)くらいはつきあっても罰は当たらんだろ」
 「わぁーい、おおきにぃ、タカくん、大好きや〜!!」
 満面の笑顔になって愛子は孝雄の右腕に抱きつく。
 (むぅ、その言葉は、もっと違うシチュエーションで聞きたかったよ)
 あまり大きくはないがそれでもしっかり感じられる女性特有の膨らみをが二の腕に押し付けられるのを感じつつも、孝雄は内心で苦笑する。

 そんなこんなで、善は急げと早速そのお札(というか見た目は完全に名札)に名前を書き、互いに交換して胸に安全ピンで留めたまでは良かったのだが……。
 「ほら、愛子ねーちゃん、別に何も…起こら……な…………zzz」
 「あれ、なんやしらん、意識が、とぉ…なっ……て…………zzz」
 ふたりは気づかなかったが、付けた瞬間、淡いオーラのようなモノが名札から立ち昇り、それぞれの全身を包んだかと思うと、孝雄と愛子はそのまま畳の上に崩れ落ちて意識を失ったのだった。

0482名無しさん@ピンキー2016/12/03(土) 00:46:31.96ID:9ldwHwI9
なんといいところで・・・

最近興味持ち始めて漁ってるんですけど兄と妹の立場交換とかないですかね?妹の立場になった兄が辱められるみたいな内容だとなおいいです

0483名無しさん@ピンキー2016/12/03(土) 09:14:15.06ID:Phts2B9s
>482
兄じゃなくて従兄なら、たしかこのスレの過去スレでありましたよ〜。
もっとも、辱められるというか可愛いカッコさせられて愛でられるという感じでしたが。

0484『ボクがバスガイドになったワケ』2016/12/04(日) 10:01:12.54ID:EPXbQX2R
-4-

 後から時計を確認したところ、意識を失っていたのはほんの2、3分だったらしい。

 「なぁ……ぉきて……起きてぇな!」
 ゆさゆさと身体を揺さぶられつつ、聞き覚えのあるようなないような“声”に呼びかけられて、意識を取り戻す。
 「ん……あ! なにが……?」
 さっきまでのことを思い出して、オレはうつ伏せの姿勢からガバッと起き上がった──のはいいんだけど、途端に激しい違和感に襲われることになった。
 それは、愛子ねーちゃんらしき人物を目にしたせいでもあるし、思わず漏らした自分の声がいつもと異なったからだし、顔を上げた瞬間に頬や首筋にまとわりついてくる髪の感触に戸惑ったからでもあるんだけど……。
 それ以上に、「自分の中の“何か”が書き換えられてしまった」ということを直感的に悟ったからたでもあった。
 「愛子ねーちゃん、だよね?」
 「うん、そやで」
 オレの問いをあっさり肯定する目の前の人物の容貌そのものは、確かにオレのイトコである“呉多愛子”とそっくりだったけど……。
 着ているものは、白守高校の男子用紺ジャージの上下で、おまけに髪型もベリーショート……というか、明らかに男子のスポーツ刈りになっている。
 さっきまでの愛子ねーちゃんの髪は、確かに以前よりは短かったけど、それでも普通に女性のセミロングとショートの中間ぐらいはあったはすなのに。
 しかも、よく見れば完全にノーメイクのすっぴんだし、眉毛もウブ毛も剃ってないみたい。
 ──あとから考えると、そんな些細な違いに気付いたこと自体が、ある意味、オレもすでに“変わって”いたことの証なんだろうけど、その時のオレはそれどころじゃなかった。
 「ちょ、どうしたの、その服と髪の毛?」
 「それを言うたら、タカくんもやで」
 「え!?」
 慌てて自分の身体を見下ろすと、確かにクリーム色のフレンチリーブブラウスとデニムのミニスカートという恰好になっている。
 しかも、手の爪は薄いピンクのマニュキュアで彩られていたし、薄手のブラウスからは下に着ているブラジャーの線が透けて見えている。おそらくだけど、下着も女物のパンツ──ショーツを履いているのだろう。
 「な、な、なに、コレーーー!?」
 思わず声をあげかけたオレの口を愛子ねーちゃんの掌がふさぐ。
 「シッ! 旅館で大声あげたら近所迷惑やで」
 身長165センチの愛子ねーちゃんと168センチのオレでは、背丈そのものは大差ないけど、そこは男女の差異もあって体力的には歴然とした差がある……はずなのに、なぜか振り払えない。
 そのことを理解したオレは、もがくのをやめた。
 「落ち着いたか?」
 うんうんと頷くのを見て、オレが多少なりとも落ち着きを取り戻したと見定めたのか、愛子ねーちゃんは手を放してくれた。
 「そしたら、もうちょい話せんといかんから、ちょい、別のトコ行こか」
 「え? なんで?」
 「いや、そろそろ、この部屋の他のメンツが風呂から帰って来る頃やし」
 確かに、ソレはマズい。利香先輩や同期のポーラは割と大雑把だから、見逃してくれるだろうけど、真面目な摩美子先輩がなんて言うか……。
 そのことに気付いたオレは、慌てて首を縦に振り、愛子ねーちゃんに手を引かれて旅館の屋上に続く非常階段へと移動した。
 ──自分が、会ったこともないはずの呉多愛子の同僚たちのことをなぜか知っていることに疑問も抱かずに。

0485『ボクがバスガイドになったワケ』2016/12/04(日) 10:02:25.70ID:EPXbQX2R
  * * *  

 薄暗い非常階段の踊り場で密談した結果、愛子と孝雄は、現在の状況が、先ほどの“立場交換のお札”によってもたらされたものだろうという結論に達していた。
 単に服装や髪型が変わっただけでない。
 明らかに愛子の力が強く(相対的に孝雄が弱く)なっていたし、互いが知らないはずのこと──2-Bのクラスメイトの顔と名前や、観光会社の場所や人間関係、その他、日々必要な知識を持っていたからだ。

 「うわぁ、あのお札、ホンマモンやったんやなぁ」
 愛子は感心しているが、孝雄としてはそれどころではない。
 「本物だったのはいいから、早く戻ろうよ、愛子ねーちゃん」
 孝雄に急かされた愛子は急にバツの悪そうな表情になる。
 「あー、その、な。確かに戻る方法はあるんやけど、今すぐには無理やねん」
 「え?」
 愛子いわく、元に戻るには先ほどと同じく札を互いに交換して付ければよい──のだが、最初に札に充填されていた“力”が今は使い果たされているので、その力が溜まるまで待たないといけないらしい。
 「そ、その力が溜まるのって、いつ!?」
 「うーん、確か説明書には、最低48時間て書いてあったような気が……」
 つまり、丸々二日は待たないと元に戻れないということになるのだろう。
 「ど、どーすんの、これ!?」
 慌てている孝雄と対照的に、愛子のほうは落ち着いたものだ。
 「いやぁ、別に大丈夫とちゃう? さっき、必要そうな知識はお互いにキチンと持っとることがわかったし。明後日の夜、またふたりで抜け出して立場交換したらエエやん」
 まぁ、修学旅行生として基本的にはのんきに観光していればいい“男子高校生”の立場になった愛子は確かに気楽だろう。
 しかし、いかに知識自体は備わったとはいえ、いきなりブッツケ本番で“バスガイド”をやらねばならない孝雄の方はたまったものではない。
 ──ないのだが、どうやらそれ以外に方法はないようだ。
 あとは、他の人に立場交換していることを悟られないよう気をつけるだけか。
 「あぁ、そやな。せやったら、元の立場に戻るまでは、ボクが“須賀孝雄”で、アンタが“呉多愛子”やさかい、間違えんときや」
 「ぅぅ……しょうがないか。わかったよ、“タカちゃん”」
 「うん。ほな、おやすみ“愛子さん”」

0486『ボクがバスガイドになったワケ』2016/12/10(土) 21:15:03.13ID:feVRbZK6
-5-

 屋上に続く階段の踊り場から5階に降りたところで、“愛子(本来は孝雄)”は、“孝雄(の立場になった愛子)”と別れ、バスガイドたち4人が宿泊するための部屋へと「帰って」来た。
 愛子のポーチから取り出した鍵で扉を開けて、足を踏み入れる。
 同じ旅館内なので、部屋造自体は学生組のものと大差ないが、壁にかけられたバスガイドの制服や小洒落たカバン、脱ぎっ放しのストッキングなどが、年頃の女性が宿泊していることを主張している。
 (そろそろ10時半だし、みんながお風呂から戻ってくる頃合いだけど……)
 四角い机の前に(無意識に)横座りで座り、手持ち無沙汰なので急須で入れたお茶を飲みながらも、“愛子”は落ち着かなげに視線をキョロキョロさせる。
 いくら“きょうと観光に勤めるバスガイドの呉多愛子”としての知識が備わったとは言え、2−Bを担当していたバスガイドの根府川利香以外は、実質初対面だ。
 その利香にしたって、あくまで仕事(ガイド)として客である2−Bの生徒たちにニコやかに接してきただけだろうから、到底“親しい”とは言えないだろう。
 いや、そのはずだったのだが……。

  * * *  

 部屋に“戻って”3分ぐらいした頃だろうか。
 「はぁ、いいお湯でしたー」
 「うむ、やはり広い風呂はよいのぅ」
 摩美子先輩と利香先輩、それにポーラの3人が浴衣姿で部屋に帰って来た。
 「これで〜、おフロでニホン=シュをイッパイできればサイコーだったんですけどね〜」
 プライベートでは無類の酒好きのポーラの言葉に、思わずツッコんでしまう。
 「露天の温泉じゃあるまいし、さすがにソレは無理でしょ!」
 「あぁ〜、アイコぉ。用があるって先に上がったけど、そのヨージはすんだのぉ?」
 もしかして(本物ではないと)バレるのでは……と密かに心配していたオレの懸念は杞憂だったようで、愛子とそれなりに親しい友人であるはずのポーラは、ニヘラ〜といういつもの緩い笑顔を向けてくる。
 ちなみに、入社は同期ではあるけど、彼女は3歳年上なので法律上飲酒しても問題ない年頃だ。
 20歳の頃、イタリアから交換留学生として京都に来たものの、すっかりこの街に魅せられて、帰国せずにこちらで就職したというなかなかにユニークな経歴の女性だったりする。
 (というか、こんな情報(こと)まで頭に浮かんでくるんだから、スゴいな、魔法のお札!)
 「ええ、ちょっと知り合いに会ってただけだから」
 無論、詳細を説明するわけにもいかないので、曖昧に言葉を濁したところ、何か「ピン!」ときたのか、利香先輩がニヤリと笑った。

0487『ボクがバスガイドになったワケ』2016/12/10(土) 21:15:31.00ID:feVRbZK6
 「おや、ひょっとして恋人かえ?」
 「違います! ただの従弟ですから」
 そう答えつつも、何となくモヤモヤしたものが心の奥底にわだかまるような気がした。
 「そう言えば呉多さん、今回のお客様の高校名に聞き覚えがあるって言ってましたけど、もしかして?」
 「はい、従弟の通っている高校でした。お客様の中にその従弟がいましたので、軽く挨拶というか雑談をしてたんです」
 本来はガイドがお客様と個人的に会ったりするのはあまり好ましくないのだが、一応今は勤務時間外だし、親戚(みうち)相手なので、優等生な摩美子先輩も「ほどほどにね」と釘を刺すだけで済ませてくれた。

 それからも3人の“同僚”と何気ない素振りで雑談を続けながらも、オレは内心ひどく戸惑っていた。
 (い、違和感が……ない!?)
 誠に遺憾ながら恋人いない歴=年齢だし、同世代の女性と親しく喋る機会なんて、それこそ愛子ねーちゃんとくらいだったはずなのに、特に意識しなくても初対面の年上の女性たちと、普通に会話できてるのだ。
 150センチ弱と小柄で華奢な体型とツインテールにした髪型もあいまって、下手すると女子高生にも見える(でも実は一番年長の)根府川利香先輩。
 対照的に長身でモデルばりにスタイルも良く、黒髪ロングストレートの典型的和風美人な筑紫摩美子先輩。
 酔った時の酒癖こそ悪いものの、シラフの時は銀髪・童顔・巨乳の3萌え要素の揃った快活なイタリアン美女のポーラ・コンティネント。
 そんな本来ならお近づきになる機会なんておよそ無さそうな女性たちと、こんな近くで会話するなんて、普段の須賀孝雄(オレ)なら、キョドるかせいぜい無難な相槌を打つのが関の山だろう。
 それなのに、“風呂上がりで浴衣を着たそれなり以上の美人3人”を相手に、いくら“愛子”としての知識があるからって、どうして平然と対応できているのだろう。

 この時初めてワタシは、この立場交換によって、単に愛子(イトコ)の立場や知識を与えられた──というだけではないことを、漠然と自覚し始めたのでした。

0488名無しさん@ピンキー2016/12/21(水) 23:21:14.02ID:LgUnRBtr
待ってる。

0489名無しさん@ピンキー2016/12/22(木) 00:29:05.32ID:DZiRmGDz
スレの容量オーバーで続き書けないんじゃね

0490名無しさん@ピンキー2016/12/23(金) 00:41:43.10ID:MK3kLgar
まじかよ

0491『ボクがバスガイドになったワケ』2016/12/24(土) 10:21:07.36ID:/mEN4VsQ
-6-

 女三人集まれば何とやら。“愛子”も含めると4人のうら若い(いや、さすがに中高生には負けるが)女性が、ひとつ部屋に泊まるとなれば──さらに職場の同僚でそれなりに仲が良いこともあって──なかなかおしゃべりが止まらないのも道理だろう。
 とは言え、時計の短針が12時を指す頃合いになると、さすがにそれもクールダウンしてくる。
 「ふわぁ……ちょっとはしゃぎ過ぎたかしらね。そろそろ寝ましょうか?」
 4人の中で二番目に年かさ(そして一番のしっかり者)である摩美子が、生アクビを漏らしたのを契機に、茶飲み話もお開きとなった。
 「うむ、そうじゃな。明日の仕事もなかなかハード故、休養はしっかりとっておくべきであろう」
 最年長(推定25歳前後)のはずなのに、小柄で童顔なせいで中高生に混じっていても違和感のなさそうな利香が、もっともらしく頷き、「吾輩は歯を磨いてこよう!」と、入口横の洗面所に消える。
 「う〜ん、寝る前にホントは軽くイッパイいきたいところですけど〜、明日もお仕事ですから、ポーラ、ガマンします〜」
 ショルダーバッグから取り出したスキットル(たぶんなんらかの酒が入っているのだろう)を未練がましく見つめていたポーラも、明日の仕事と秤にかけてあきらめたのか、それをバッグに戻し、布団を敷くために机を片付け始める。
 ポーラを手伝って机を隅に寄せた後、“愛子”は押入れから布団を出……そうとしたのだが。
 (う……お、重い)
 身長168センチ・体重55キロと、同級生に比べれば心持ち痩せぎすではあるが、本来の孝雄であれば布団をまとめて2組運ぶくらいは、余裕だったろう。
 しかし18歳の女性の立場になっている影響か、今の“愛子”には、掛け敷き1組だけでもひと苦労だった。
 「おっと! 大丈夫、呉多さん?」
 フラついたところを、ほぼ同身長の摩美子に支えられる。
 「アイコ〜、酔ってもいないのに、フラフラ〜」
 ケタケタ笑いながらも、ポーラが上に載った掛け布団を運んでくれたおかげで、いくぶん楽になった。
 「愛子は背が高い割に力がないのぅ。運動不足ではないかえ?」
 洗面所から戻って来た利香にまで笑われる始末だ。
 小柄な利香だが、純粋な筋力はともかく運動神経や持久力(スタミナ)ならこの4人の中ではピカイチなので、“愛子”としても反論できない。
 本来の呉多愛子はインドア派で、学生時代は家や図書館で本を読むことを好むような女性だ。
 その立場になっている以上、仕方ないのかもしれないが、スポーツ万能とまではいかなくとも、どちらかと言えばアウトドア派で、体力的にもそこそこ自信のあった“愛子”には、今の己れの非力さが恨めしかった。
 「ぅぅ……ジョギングとかジムに通うとかしたほうがいいかもしれませんね」
 確か自宅(ウチ)の近くにも最近スポーツジムが出来っていうチラシが入っていたはずだし──と考える“愛子”。
 無論、この場合の自宅とは京都市内の一画にある呉多家のことだ。どうやら自分がナチュラルに呉多家(ソコ)を“自分の家”だと認識していることには気づいていないらしい。
 加えて言うなら、明後日の夜には、元の立場に戻る予定だということも(少なくともこの瞬間は)完全に失念しているようだ。

0492『ボクがバスガイドになったワケ』2016/12/24(土) 10:22:37.87ID:/mEN4VsQ
 4人で手分けして布団を敷いた後、“愛子”も私服から寝るために旅館の浴衣に着替えることにした。
 薄手のブラウスとミニスカートを脱ぎ、ほとんど(と言うか現状まったく)必要はないが“成人女性のみだしなみ”として着けているブラジャーも外してから、浴衣を羽織り、合わせや襟の位置を調整して帯を締める。
 女物特有の左前ボタンの扱いやスカートの着脱、あるいはブラジャーの外し方など、普通の男なら苦戦しそうな諸々についても、なんら戸惑うことなく──むしろ慣れた手つきで済ませられるのは立場交換の恩恵だろうか。
 単なる知識面だけでなく、身体の反射行動や慣れというべき面まで、完全に“年頃の女性”になっているのだ。
 そもそも本来の孝雄であれば、ちょっと年上の美人3人と同じ部屋で寝たり、彼女たちの前で(しかも女装状態で)着替えたりすることに対して、羞恥や戸惑い、抵抗感を感じたはずだ。
 なのに今の“愛子”はそういった類いの感情と無縁で、それどころか、寝る前のスキンケアしたり、肩にかかるくらいに伸びた金髪を緩い三つ編みにまとめたりといった“女の身だしなみ”をごく自然にこなしているのだ。
 未だ完全にはその“立場”に馴染みきっていないのか、頭の中で自分の言動をどこか不思議な目で見ている部分も無いではないが、少なくとも他の人間が見る限りでは、まったく“いつもの呉多愛子”だった。
 「じゃあ、電気消しますね──あ、常夜灯は点けておきますから」
 「うむ。明日は6時半起床じゃ。まぁ、万が一寝坊しても吾輩が起こしてやるから、心配は無用じゃぞ」
 摩美子と利香のそんな言葉を耳にしつつ、精神的にも身体的にも色々あってやはり疲れていたのか、“愛子”は布団に入って目を閉じるのとほぼ同時にまどろみの世界へ落ちていくのだった。

#いつもよりじっくりめに進めてます。萌えどころやえちぃ描写は……まぁ、そのうちに。

0493名無しさん@ピンキー2016/12/25(日) 01:14:13.40ID:DaJ/Ct3K
楽しみっす

0494『ボクがバスガイドになったワケ』2017/01/03(火) 18:41:24.88ID:4bzjqHGW
-7-

 ゆめ……夢を見ていた。
 幼い頃、まだ須賀家が京都市内の呉多家のすぐそば──子供の足でも歩いて10分くらいの場所に住んでいたころの夢。
 2歳違いのイトコ同士で、お互いひとりっ子だった孝雄と愛子は、帰る家こそ離れていたものの、姉弟と幼馴染の中間のような関係だったと言っていいだろう。
 愛子はお姉さんぶって孝雄の世話を焼き、孝雄も愛らしく優しい愛子を姉のように頼りにしていた。
 けれど、幼子もやがては大人になる──少なくとも、その階段を上り始める。
 小学校に上がった愛子は、孝雄より学校の友人たちと過ごす時間が多くなり、それを寂しく思っていた孝雄も、2年後には同じく“いとこのあいこねーちゃん”よりクラスメイトと遊ぶようになる。
 それでも、休日や長期休みなどに会う機会はまだまだ多かったのだが、やがて須賀家が職場の都合で東京に引っ越したことで、ふたりがともに過ごす時間は劇的に減ることになった。
 引っ越しがあったのは孝雄が小学4年生、愛子は6年生になった年の秋口で、ちょうどその頃あたりから、ふたりの関係も緩やかに変化を始める。
 姉貴分弟分という関係は保ちつつも、そこに微妙に異性に対する感情も入り混じってきたのだ。
 その年の暮れに、東京都の郊外にある須賀家の新居に遊びに来た愛子は、夏までと異なり孝雄と一緒に風呂に入ることはなかったし、孝雄も同じ部屋で寝ることを嫌がったので、彼女には客間が提供された。
 依然として“姉のような女性”、“弟みたいな男の子”ではあったが、ふたりは無自覚に互いに異性を意識していた──もっと言うなら互いを好ましい異性として捉えていたと言ってよいだろう。
 そして普段は離れていながらも、夏と冬に定期的に会うという関係は、なおさらその想いを強くする。
 とは言え、“姉・弟”でいた期間が長すぎたふたりにとっては、“仲のいい従姉弟同士”という今の安定した関係を壊すには、なにがしかのキッカケが必要だろう。

 (──あぁ、だから、ボク/私は、あんなうさん臭いお札に手を出したのか)
 そう考えたのは、果たして元々の愛子か、それとも“愛子”の立場になっている孝雄か……。

  * * *  

0495『ボクがバスガイドになったワケ』2017/01/03(火) 18:42:23.04ID:4bzjqHGW
 「そろそろ起床時間じゃぞ、愛子」
 聞き覚えのある女性の声とともに軽く布団越しに揺すられて、“彼女”はゆっくりと目を開いた。
 「ふわぁ〜〜……いま、何時ですか、利香先輩?」
 「7時15分前じゃ。白守高校の生徒たちの朝食時間が7時半からじゃから、吾輩たちは、それまでに身支度と朝食を済ませておかねばならぬ」
 ティーンエイジャーみたいな幼げな外見と裏腹に、プライベートでは婆言葉というのか独特の古風なしゃべり方をする利香だが、この4人で一番年かさなこともあって、仕事に関してはキッチリ把握している。
 「そうでしたね……起きますおきます……あふ」
 生あくびをかみ殺しつつ、“彼女”は思い切って布団から出る。
 はだけた浴衣の襟を直しつつ、眠い目を傍らに向けると、もうひとりの先輩である摩美子が、同僚のポーラを揺さぶって起こそうとしていた。
 (あー、ポーラ低血圧だからなぁ。あれだけお酒が好きなのに低血圧って、イタリア人ってどういう体質してるんだろ?)
 他のイタリア人が聞いたら「一緒にするな」と怒りそうなことを考えながら部屋付属の洗面所に入り、洗顔&クレンジングを済ませる。
 歯磨きと本格的な化粧は朝食後に済ませることにして、とりあえず化粧水を付け、寝乱れた髪は軽くブロウして首の後ろで束ねておいた。
 まだ寝ぼけ顔でフラフラしている同僚の手を引きつつ、ふたりの先輩のあとについて旅館の食堂へ向かい、ご飯・味噌汁・焼鮭・海苔・卵・お漬物という“日本の朝ご飯”をいただく。
 食べ終わった時点で7時15分。あまり時間の余裕はないので、お茶のお替りは断念して、急いで部屋にとって返した。
 他の3人とは朝食中に話し合って、先に利香と摩美子が洗面所でメイクし、その間にポーラと“彼女”が部屋で着替える手はずになっていた。
 旅館備え付けの丹前と浴衣を脱ぎ、アイボリーホワイトのシルクのフルカップブラジャーを「哀しいほどに真っ平らなバスト」に装着する。小さめのヌーブラを入れるのは、ささやかな抵抗として大目に見てほしい。
 旅行鞄から新しいブラウスとストッキングを取り出して着替え、壁にかかったハンガーのひとつから紺色のタイトスカートを外して履く。
 「すでに今の観光会社に入ってから1ヵ月以上経つ」はずなのに、なぜか微妙に歩きにくさを感じつつ、ポーチから朝用の化粧品ひと揃えを取り出した。
 「利香先輩、摩美子先輩、そろそろ交代できます?」
 「うむ。問題ないぞ」
 「わたしはもう少しですね」
 利香と入れ替わりに洗面所に入り、摩美子と並んで鏡の前に立った“彼女”だったが──そこに映った自分の顔を見て、激しい違和感に襲われた。

0496『ボクがバスガイドになったワケ』2017/01/03(火) 18:43:05.98ID:4bzjqHGW
 (え! だ、誰!?)
 僅かににウェーブした肩までたなびく蜂蜜色の髪。
 UVファンデと入念なケアのおかげか、屋外にいることの多い仕事の割には、あまり日焼けしていない白い肌。
 細く剃られた眉。ムダ毛の一本もないつるつるの肌。

 ──コレハダレダ……

 くらりと目まいがするような感覚とともに“彼女”、いや彼は自分の置かれている状況を“思い出した”。
 (そうだ、ボクは、愛子ねーちゃんと昨日立場が入れ替わったんだった)
 魔法だか霊力だか奇跡だか知らないが、どう考えてもうさん臭いはずの“お札”が効力を発揮して、現在、孝雄は“呉多愛子”だと他人からは認識されるようになっているのだ。
 無論、その代わりに本物の愛子が今は“須賀孝雄”の立場になっている。

 ──それは、まぁ、いい。いや、本当はあまりよくないが、とりあえず戻る方法もあるということで、一応納得はしている。
 問題は、“自分が今、呉多愛子の立場になっていることに何ら違和感を抱かなかった”ことだ。というより、完全にそのコトを忘れていたと言う方が正しい。
 確かに昨日、本物の愛子とふたりで“現在の立場に必要な知識はひととおり備わっている”ことは確認している。
 しているが……その時は何と言うか「データベースにアクセスして必要なデータを呼び出してくる」的な、ワンクッションある感じではなかっただろうか?
 それがひと晩寝たら、今度は“自分が本当は須賀孝雄であること”の方をむしろ忘れがちで、ごく自然に“呉多愛子”として(ことさら意識せずとも)振る舞っているような気がする。

 (はたして、このままでいいの?)
 どこか恐いモノを感じて思考の海に沈みかけた“愛子”だったが……。
 「は〜い、アイコ〜、顔色悪いけど、大丈夫ぅ?」
 「あ、うん、平気へいき」
 いつの間にか摩美子と交代していた陽気な同僚の、珍しくどこか気遣うような言葉に、反射的に平静を装って返事をしてまう。
 「えっと、ちょっと肌が荒れてパウダーの乗りが悪いかなぁ、って気になっただけだから」
 「どれどれ? ふぅむ……問題ないと思いますよぉ。いつも通りモルト・カリーナ(とても可愛い)で〜す」
 「あはは、お世辞でも嬉しいわ」
 そんな風にポーラと“いつも通りのやりとり”を交わしながら、“愛子”は先ほど抱いた危惧を心の奥に棚上げすることにした。
 (どの道、明日の夜までは戻れないんだもん。だったら、ヘンに意識してギクシャクするより、ごく自然に振る舞える方がいいんだろうし、ね)
 コーラルピンクの口紅を軽く引いてメイクを終えると、“彼女”は洗面所から出て、ハンガーに残った藍色の上着を取って羽織り、キチンとボタンを留めていく。
 キャビンアテンダント風のタイトな制服を着ると、身も心も引き締まるような気がした。
 最後に制服と同じ色のベレー帽をかぶり、部屋の入り口でパンプスを履けば、そこにいるのは──4月からの新米ではあるが──立派な“きょうと観光”のバスガイド・呉多愛子そのものだった。

 「皆、準備はよいな? よし、それでは、今日もお客様方の旅を楽しいものにすべく、我々バスガイド一同、微力を尽くすのだ!」
 「「「はいっ!」」」

0497『ボクがバスガイドになったワケ』2017/01/08(日) 20:00:48.77ID:jYBgrMa/
-8-
<タカオside>

 「それでは皆さま、右手に見えますのが本日最初の見学場所となる清水寺、北法相宗大本山である清水寺です。まもなくバスが停車しますので、バスを降りたら出席番号順に2列になってお並びください」

 “僕”たちのクラスである2年B組のバスの担当ガイドを務める根府川さん──利香先輩が、落ち着いた流暢な口調で、目の前の観光スポットについて解説しつつ、次の行動に関する指示を出してます。
 プライベート……というか身内のあいだでは、古風というか風変わりな「のじゃロリ」言葉でしゃべる人なんやけど、こういう風にお客さんの前でキチンと標準語の丁寧語で会話しているのを見ると、なんや新鮮に感じるなぁ。
 “僕”になっている私は、元々京都の地元民で、バスガイドになった際の研修でこの清水寺にも来たことがあるんで、とりたてて物珍しさとかは感じてないんやけど……。
 「おおっ、これがかの有名な“清水の舞台”かぁ」
 「よし。青葉、アンタ、度胸試しに飛び降りてみなさい」
 「加古川、無茶ぶりすんな! むしろお前がやれ!!」
 「ゆ、ゆかちゃん、危ないよぉ」
 やれやれ、ウチの班は大騒ぎやなぁ。ちょっと釘刺しとこか。
 「笠井さんの言う通りやで。加古川さん、もし落ちたらこの高さやと無事では済まんから、冗談でもそういうコト言うたらいかん。青葉君もや」
 冗談抜きに命に関わることやから、ピシッと言うとかんとな。
 「あ、うん、ごめんなさい、須賀くん」
 「わりぃ、ちょっと調子のってた」
 比較的偏差値の高い私学で、育ちのよい子が多いせいか、白守高校(うち)の生徒は、高校生にしては素直な子が多い気がするなぁ。
 なんせ、4月からのこのひと月間で、ウチも10校ほどは修学旅行生を案内したんやけど、こっちの言うことなんてロクに聞かん悪ガキの、まぁ、多いこと多いこと。
 それに比べたら白高の生徒のヤンチャなんて可愛いもんやわ。
 「すまんな、須賀。本来は、班長たる俺が注意せねばならぬのに」
 「あー、まぁ、古田くんはしゃあないわ。バスの車酔いでまだ本調子ちゃうんやろ? 大丈夫か?」
 「ああ。だいぶ落ち着いた」
 班長の古田くんとそんな会話をしつつ、遠目に見えるC組のガイドをしている“女性”の方に、チラッと視線を向ける。
 ブレザーのような紺色の上着とタイトミニスカートを着て、同じ色のベレー帽をかぶった“彼女”。
 本物のタカくん──須賀孝雄であるはずの少年は、けれど僕(わたし)自身の目から見ても、きょうと観光の新人バスガイドの女性にしか見えなかった。
 子供の頃は嫌がっていた金髪を長く──高校時代の私と同じくらいに伸ばし、やや薄めだがキチンとメイクもしている。もともと優しげな顔つきであることもあいまって、それなり以上のルックスに仕上がっていた。
 外見だけでなく、歩き方も、初めて“女装”した(しかもタイトスカートにヒールが高めのパンプスという組み合わせだ)とは思えないほど自然なものだ。
 女の私でさえ──元々、ああいうフェミニンな格好は着慣れてなかったということもあるが──初めて出社した時は、何度か転びそうになったというのに。

 「──有名な“清水の舞台”のある本堂以外にも、仁王門や西門、三重塔なども重要文化財であり、また隣接する地主神社も元は……」
 微かに漏れ聞こえてくるスポットの解説も、なかなか堂に入ったもので、誰も“彼女”がにわかガイドだと疑わないないだろう。

 「お、アレが噂の孝雄の従姉のねーちゃんか?」
 「どういう噂よ。でも……へぇ、なかなか美人さんじゃない」
 青葉くんと加古川さんが、僕の視線の先をたどって“呉多愛子”に気付いたようだ。
 「須賀くん、声をかけなくていいんですか?」
 「ん? ああ、別にええよ。コッチが自由行動中でも、アッチは今まさに仕事中やし。とりたてて話したいことがあるワケでもないしな」
 気を利かせてくれたのだろう笠井さんに、ニッと笑いかけてみせて、僕は他の班員とともに清水寺見学に戻るのだった。

0498名無しさん@ピンキー2017/01/09(月) 11:31:59.19ID:ot+MoRYR
過疎ってんなぁ

0499名無しさん@ピンキー2017/01/16(月) 05:09:18.98ID:zlFnpwLu
期待してます

0500名無しさん@ピンキー2017/01/21(土) 14:10:51.74ID:/1797sd+
昨日のドラえもんで出てきた兄弟シール、兄に妹のシールを、妹に兄のシールを貼り付けるとどうなるんだろう

0501名無しさん@ピンキー2017/01/21(土) 22:41:19.83ID:2wR1A+TF
>>500
その通りになるんでね

0502『ボクがバスガイドになったワケ』2017/01/22(日) 11:24:21.44ID:bqem/cQJ
-10-

 「ふわぁ〜、極楽ごくらくじゃのぉ」
 5月半ばの少し時季外れの菖蒲湯に浸かりながら、利香が気の抜けたような声を漏らす。
 時刻は午後5時過ぎ。白守高校の修学旅行日程の2日目が無事に終わり、新たな宿泊先に着いたところで、バスガイドである彼女たちのお仕事も本日分はひとまず終了だ。
 「利香せんぱーい、ババくさいですよ?」
 「利香姉さんは三度のご飯よりお風呂が好きだから……」
 ちょっと呆れたような“愛子”の言葉に、摩美子が苦笑しつつそうフォローする。
 「あれぇ、リカとマミコってソレッラ(姉妹)じゃ、ないですよね〜?」
 「ん? あぁ、吾輩と摩美は正確には従姉妹じゃな」
 ポーラの疑問に、湯船の中でリラックスしてたれ気味な利香が答えた。
 「と言っても、自宅は近所でしたし、子供のころから本物の姉妹みたいな感じでしたけどね。なので、プライベートでは今でも“姉さん”って呼んでいるんです」
 「──どこかで聞いたような話な気が……」
 自分と、同じ建物のどこかにいるはずのイトコの関係を連想する“愛子”。
 ちなみに此処は京都市内にある老舗……というほどではないが、そこそこ歴史と格式のある旅館だ。
 修学旅行生が泊まるにしてはちょっとお高いはずだが、さすがはボンボンの多い私学だけあって、ヘンに金はケチらなかったらしい。
 「それにしても……」と、湯船から上がって洗い場で身体をボディシャンプーとスポンジで洗いながら、“愛子”は改めて感心したような気分になる。
 (ワタシ、今、全裸なんだけど、ぜんぜん男だって気づかれないなぁ)
 一応タオルで局部だけは隠しているとは言え、普通の女性と比べれば肩幅は広めだし、胸に至っては視認できる膨らみは皆無な見事なまでのまな板状態だ。
 ラテン系美人の利根や長身でプロポーションのいい摩美子が巨乳なのは、まぁ納得がいくにしても、中学生並に小柄な利香ですら、トランジスタグラマーとまではいかなくとも、少なくとも平均程度の膨らみはあるのだ。
 ペタペタと自分の胸に手を当てて、無性に哀しい気分になる“愛子”。
 「だ、大丈夫よ、呉多さん。スレンダー系が好みって男性も、いるから」
 「アイコ、あまり大き過ぎても、肩がコリますよ?」
 その姿が憐れを誘ったのか巨乳コンビが励ましてくれるが、彼女達にだけは言われたくない。
 ──と言うか、他の3人の胸部に向けられる“愛子”の視線に男性的な“いやらしさ”がまったく含まれておらず、むしろ同性としての羨望が見え隠れするあたり、本気で今の立場に馴染んでいるのだろう。
 「そ、それに、ほら、呉多さん、色白でお肌もスベスベだし……」
 「ポーラの姉様も綺麗なブロンドですけど、アイコの金色の髪も素敵で〜す」
 本気で落ち込んでいる様子の“愛子”を、ふたりが慌ててフォローするが……。
 「まぁ、お主は今18歳じゃろ? あと2年くらいはまだ成長の余地がある故、努力してみてもよいのではないか?」
 ふたりよりは、まだ“彼女”の悩みが分かりそうな利香の言葉の方が、多少は救いがあった。
 「ぅぅ、ガンバります。牛乳、いやむしろ大豆製品が効くんでしたっけ?」
 「イソフラボンが豊富じゃからな。それと、吾輩が十代の頃に実践していたバストアップ体操を教えてやってもよいぞ」
 「! ぜひ、お願いします!!」
 時間が早めなせいか彼女たち以外に女風呂の客がいないとは言え(ちなみに白高生たちは現在ホールで全体会議の最中だ)、若い女性が大浴場でバストアップ体操を教え、教わる光景はなかなかシュールだ。
 そして、そんなキャッキャウフフな騒ぎに紛れて“愛子”は、せっかく思い出した「自分が本来は従弟の男子高校生の須賀孝雄である」という事実を、またも意識の片隅に流してしまうのだった。

0503名無しさん@ピンキー2017/01/22(日) 11:25:17.47ID:bqem/cQJ
しまった。上の「-10-」ではなく「-9-」です。10は次回。

0504名無しさん@ピンキー2017/01/22(日) 15:42:52.54ID:NuvSx06I
しずかちゃんに兄か弟シール貼れよと

0505名無しさん@ピンキー2017/01/25(水) 02:39:07.98ID:QHH8fpzF
もしもパパがママになったらだって

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1701/24/news092.html

0506名無しさん@ピンキー2017/02/01(水) 00:29:34.67ID:4HJiu7pw
教育実習生と実習先の学生の立場交換ってのもいいかなぁ。
スポーツマンなイケメン教育実習生(♂)の立場を、
某もこ●ちみたいな、根暗地味女子高生が奪って、
「これでワタシは今日から勝ち組リア充やで〜」と
テンション上がって暴走したり、
一見清楚系(実は腹黒)な教育実習生(♀)に対して、
子犬系ショタ中学生が勇気を出して告白したら、
巧く丸め込まれて立場交換することになったり……。

0507名無しさん@ピンキー2017/02/01(水) 09:27:42.66ID:bj6fy1Kd
オタクってかスクールカースト底辺系な女子がイケメンリア充男子の立場奪っちゃうのは結構好きだ
結構前のスレの美術部のデブスと陸上部のイケメンの立場交換なんかはあの後どうなったんだろうってよく妄想する

0508名無しさん@ピンキー2017/02/03(金) 08:55:48.35ID:AwM8I/38
巨乳がコンプレックスの女子と巨乳好きのエロ男子を交換して克服させようとし戻った頃には巨乳大好きエロ女子とエロに抵抗な男子になってめでたしめでたし

0509『ボクがバスガイドになったワケ』2017/02/04(土) 01:44:30.08ID:hOIexrJB
-10-

 「しまった……寝過ごしちゃった」
 5月半ばの朝6時といえば、現代日本では十分に「早朝」と言って差し支えない時間帯だが、6時半過ぎに目を覚ました“彼女”は、すっかり明るくなった窓の外や壁に掛けられた時計を見て茫然としていた。
 部屋の中には、“彼女”以外にも3人若い女性がいるのだが、その3人とも見目麗しい乙女というには、少々はしたない(←婉曲な表現)格好で布団の上にひっくりかえっている。
 ひとりは、浴衣を完全に肌蹴たほとんど裸の状態で大の字になって大いびきをかき、もうひとりはその女性の片足を枕にして何やら桃色な夢でも見ているのか、鼻息を荒げつつ体をくねらせている。
 残るひとりは──「銘酒・美中年」とラベルにかかれた一升瓶を抱えて布団の上で丸くなりつつ、よだれを垂らしながらだらしない笑みを浮かべて白河夜船。完全に酔っ払いオヤジの所業だ。
 (なんでこんなコトに……)
 ズキズキと痛む頭を堪えつつ、“彼女”は昨夜のことを思い出そうとした。

 * * * 

 白守高校修学旅行3日目、そして孝雄(オレ)が愛子(ワタシ)の立場になってから2日目のスケジュールも、万事滞りなく進行していた。
 今日はバスは大阪市内に向かい、そこで大阪城や法善寺、住吉大社などを巡ることになっている。
 元地元の京都と異なり、こっちの方の知識は孝雄(オレ)にはそんなにないはずなんだけど……“本物”から受け継いだ知識のおかげか、ワタシはすこぶる順調にガイド稼業をこなせている。
 それに、勉強の方はイマイチだけど、口八丁かつ人見知りしないことには多少自信があるんで、こういう多数の御客(にんげん)相手にペラ回すような職業(しょうばい)は、存外ワタシの性に合ってるみたいだ。

 「ガイドさーん、このお店でオススメのお土産はなんですか?」
 「呉多さん、午後の自由行動で梅田の方に行くつもりなんだけど、ランチのオススメとかあるかな?」
 年齢も近いせいか、こんな風に白高生(おもにC組の女子)から気軽に声をかけられるようにもなったし。
 「オススメをひとつに絞るのは難しいですけど、そちらのお煎餅とおかきはこの売店でしか買えないものですね。
 梅田周辺のランチは少々お高い店が多いですけど、1000円ちょっと出せるならいくつか候補がありますから、行ってみてはどうですか」
 その子(たしか如月さんと中川さん、だったと思う)たちにアドバイスしつつ、今日最初の観光スポットである某劇場の売店スペースの前で、受け持ちの学生たちをさりげなく見回る。
 (バスガイドって、バス内で適当にウンチクこいてれば務まるワケじゃないんだなぁ)
 そのヘンは観光会社にもよるみたいだけど、呉多愛子(ワタシ)の勤めている「きょうと観光」では、観光スポット内に入るまでの誘導や、スポット前での解説などの業務も含まれてる。
 加えて、半自由行動中のお客さん(今日の場合だと3-Cの生徒たち)から質問されて、それに答えることもお仕事の一部ってワケ。

0510『ボクがバスガイドになったワケ』2017/02/04(土) 01:45:39.25ID:hOIexrJB
 それに、お客さんが朝乗る前、乗った後の夜にバス内を掃除するのもガイドの仕事だし、仕事時間外にもガイドとしての観光知識を詰め込んだり、マナー講習を受けたりと、想像以上に忙しい仕事だったりするのだ。
 (でも、やり甲斐はあるよねぇ)
 少なくとも、何に使うのかわからな数式やら理科社会の用語やらを暗記するよりは、勉強する内容も納得がいくし、地理や歴史、古典なんかで学んだことの一部も地味に役立つもん。
 そういう「地に足がついた仕事」に就いた“本物”のことがちょっと羨ましいかな。

 「呉多さん、そろそろ移動の時間よ」
 摩美子先輩がこっそり教えてくれたので、ワタシから監督の先生にそのことを告げて、3−Cの生徒たちが集まるのを待ち、バスへと誘導する。
 カツカツカツ……と、アスファルトに軽快なハイヒールの音を鳴らして歩くのもすっかり慣れたなぁ。最初の頃は、ちょっとだけおっかなびっくりだったのに。
 (──そう言えば、昨日の初めてこのバスガイドの制服を着た時は少々窮屈に感じたけど、今では我ながらごく自然に着こなしてるし、オシャレだし、むしろ背筋がピンと伸びる感じがして、結構気に入ってるんだよね)
 頭の片隅でチラッとそんなことを考えつつも、言葉や表情は至って真面目にバスガイドとしてのお仕事を遂行しているワタシ。
 (もしワタシ……いや、“オレ”が女の子だったら、愛子ねーちゃんと同じく、きょうと観光のバスガイドになるのを目指してもアリかな)
 ふと、そんな事も一瞬思い浮かんだものの、その時は特に意識することもなく、そのまま“お仕事”に没頭していった。

 で、そのまま市内観光のガイドをして夕方になり、本日の引率(ガイド)は無事終了。
 明日は、朝イチで梅田スカイビル(の空中庭園展望台)に生徒たちを我社(ウチ)のバスで送り届けたら、ワタシたちのバスガイドの仕事はそれでお仕舞なんで、実質的には、ほぼ終わったようなものだ。
 今回のお仕事──白守高校修学旅行のガイドを最終日前夜まで大きなトラブルもなく乗り切ったということで、その夜はガイド4人で、ちょっとした“お疲れ様会”を部屋でやることになった。
 とは言え、ワタシの場合、元に戻るためにタカちゃん──本物の“愛子ねーちゃん”と会う必要があったから、適当なところで抜け出すつもりだったんだけど……(メールして24時ごろに会う約束もしてたし)。
 でも、ほんの1時間程度のはずが、ポーラが酒を持ち出し、それに利香先輩が便乗して、真面目な摩美子もついハメを外し……流れでそのままワタシも飲まされちゃったんだよね。
 (ぅぅ〜、ワタシ、まだ20歳になってないのにぃ)
 いや、雰囲気に流されて強く拒否しなかったワタシも悪いんだけどさ。
 で、初めて飲むアルコールと意識してなかったけど結構疲れが溜まってたののダブルパンチで、そのままあっさり眠りに落ちて……。
 で、気が付いたら、今、朝になってるってワケ。
 スマホを見たら、タカちゃんからのメールが何通も来てるし。当然、“彼”は激オコですよ、ええ。
 謝罪と釈明のメールは入れたんで、何とか理解はしてくれたけど──でもこのままだと、もう一度立場交換とかしてる暇はなさそう。
 だって、ガイドであるワタシたちの方は、すぐさまシャワー浴びて、着替えて、7時までに身だしなみを整えないといけないし、白高生の方だってそろそろ起き出す時間だしね。
 いくらワタシたちがイトコだからって、今から短時間とは言え“密会”するのは、不可能じゃないけど色々勘繰られるリスクも大きいだろうし。

0511『ボクがバスガイドになったワケ』2017/02/04(土) 01:46:46.12ID:hOIexrJB
 ──え? その割に焦ってないみたいだって?
 うん、まぁね。
 確かにこれが赤の他人と立場交換してるんだったら、この機を逃したら元に戻るチャンスがあるかわからないから焦りもするんだろうけど、ワタシたちの場合、よく見知った従姉弟同士だもん。
 お互いの家や家族のこともわかってるし、その気になれば家を訪ねることもできる。今の立場における学校や会社関係の知識があることもすでに判明してるワケだし、しばらくこのままでも大丈夫でしょ。
 (どのみち、夏休みになったら、タカちゃん、京都の家(ウチ)に遊びに来るやろうしなぁ)
 最悪、元に戻るのはその時でもいいかなー、なんて。

 で、そのヘンの対応策(コト)を──多少は不可抗力だというニュアンスをにじませつつ──メールでタカちゃんに投げたところ、“彼”も賛同してくれた。
 いかにも「仕方ないなぁ」という文面だったけど、その割にレスポンスが早かったし、“彼”の方も内心、東京での学生生活に興味があったのかもね。

 とにかく、そういうワケで、ワタシはこのまましばらく19歳の女性・呉多愛子として京都でバスガイドライフを続けることになったんだ♪


#次回がエピローグです

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