「くすくす……ねえ歩くん、黒魔術の効果はどうだった?
 私の予告通り、しーっかり目撃できちゃったかな?」

昼休み。

桃井ミサは部室の机の上で足を組んで座ったまま、実に楽しそうな含み笑いを漏らした。

「ふ、ふざけないでください! 黒魔術の効果なんて、あるわけないでしょう!」
「えー、本当に? その割に随分真っ赤になってるんだけど、その様子だと効果抜群だったんじゃないの?」
「っ……!」
「あははっ、やっぱりー。そりゃ、白瀬君も年頃の男の子だもんね♪」

思わず今朝の光景を思い出してしまい、言葉を詰まらせる歩。
確かに、ミサの予告通り、クラスメイトのパンツを目撃してしまったことは紛れもない事実だ。
歩の学校生活を通じても、これほどはっきりと女子の下着を目撃したのは恐らく初めてである。
みどりの反応からして、二人が歩を陥れるために結託していたという線はないだろう。

だが、冷静に考えてみればそれがそのまま黒魔術の実在を証明するものではない。
女子の下着を目撃してしまうこと自体は、普通に学校生活を過ごしていれば起こりうる現象である。
下着を目撃してしまう対象も、「気になる女子」と指定されてはいたものの、歩くらいの年頃であれば、大なり小なり周囲の女子のことは気になってくるものである。

要するに誰にでも当てはまりそうなことを宣言することで、さも予言を的中させたような印象を与える、コールドリーディングと呼ばれる手法の一種。
それが、歩の出した結論であった。