>>217
(逃げ道を阻むシャッターを望が叩いている間にも屍人は歩み寄ってくる)
(足取りは一定だが、露出したままの生殖器の様子が変化していた)
(步くたびに揺れるだけでなく先端が小刻みに震え、膨らみが一回り大きくなっている)
(まるで何かが溜まり暴発しかけているようであった)

(望が慎重に歩み寄ると、震えが肉棒全体に移り別の生き物のように動く)
(目は見えないはずだが臭いで女の存在を感知しているのだろうか)

(距離が近くなるとさっきと同じように腕を振るって望を捕らえようとした)
(一度後ろに腕を引いてから反動を付けて前へ)
(その隙をついて望が通り抜ける)

ビュルッ

(屍人を回避した望の背後で奇妙な音が響く)
(もしも振り返って見たなら、腕を振るった体勢のまま動かなくなった屍人の後ろ姿と)
(その足元に飛び散った液体が作る白濁した水溜りを目撃することになる)
(液体は屍人の生殖器から溢れ、今もまだ零れ落ちていた)
(水溜りを作るほど大量で、そして距離が離れていても濃厚な雄の匂いが漂う)
(この白濁液の意味は望にもわかるだろう)
(屍人がセックスだけでなく、何をする気だったのかも)

(一人目の屍人は動かなくなったが、また通路に戻れば大柄な屍人が待ち構えている)
(機械の方ではなく壁の方に行けば燻んだ壁面に紛れるようにして、スライド式の扉がある)
(目を凝らしたり手で触ったりして調べれば見つけられるだろう)
(扉を開けば外に……出られるわけではない)
(物理的に構造的に扉の向こうは工場の外であるはずなのに、そこに広がるのは暗闇に包まれた部屋だ)
(地面に何か置かれている様子もなく暗闇でも進むことは簡単そうに見える)