「そんなに…」
情報屋に提示された金額は、手持ちでは賄いきれない額であった。
「それは、帝国では高額賞金首になっている男でございますから…その生存情報となると…賞金額からすればお安いと思いますが:
数日の猶予を願い、冒険都市でパートナーを組むガリュウに相談したのが昨日。
そして、ガリュウは、私のお金の使い道も聞かずに快諾してくれた。

「外貌も性格も違うけど…あの人に似ているのかもしれないね。困っている人を見捨てないところとか。」
ダンジョンの入り口で首をふるふると振って、その気持ちをなかったことにする。
私には愛した夫がいる。
ダンジョンでは簡単な治癒魔法と攻撃魔法しか使えない足手まといの自分とパーティを組んでくれ、ここまで付き合ってくれたのは、彼が言うように鑑定までできる便利屋だからだ。
普段は探索することのない、高難易度ダンジョンの入り口で自分の気持ちを切り替える。
中層以下では、手を貸せば下手すれば巻き込まれて全滅。
勝っても、お宝の訳合いでいざこざが起こるというこのダンジョンでは、相互不干渉が前提らしい。
先ほどから前を通り過ぎるパーティに会釈をするが、それすらなかったことにされることで、今回の探索がどれほど厳しいかがわかる。
その一方で、赤毛の年下の彼が「大丈夫」と言ってくれただけで、どうにかなると思ってしまう自分がいる。
「ちょっと早く来すぎてしまったかなぁ」
近くの岩に腰かけスタッフに寄り掛かり、彼の到着を待つことにした。