>>54
(霧原の煽るような口調は、普段の渡辺ならば睨みつけるか煽り返すぐらいはやったかもしれない)
(だがこうして自身がよって立つものを揺さぶられている状況では、渡辺の心に甘く染み込んでいく)

(霧原を追い出さず、いつかこの器具が霧原に見つかるのを期待して自分に仕掛けてくるのをずっと待っていたのだと……そう思わされる)
(既に身体は抵抗を諦めている。だがこのとき、心まではまだ屈服してはいなかった)

(ベッドに霧原が乗り、蝋燭の光が背中越しに淡く光る)
(サキュバスとはこういうものかとぼんやり思いながら、距離の近くなった霧原の顔を見上げる)
(口を開いてだらりと垂れる唾液すら妖艶に見えるこの光景に、見惚れた渡辺は思わず本能で動いてしまった)

あー……んぐっ、ごくごくっ。

(避けることなく上から静かに落ちてくる唾液を舌を出して捉えると、砂漠で水を見つけた旅人のように一滴一滴を大事そうに飲み込む)
(溜まった唾液が切れるまでそれを繰り返し、やがてそれが途絶える)
(次の指示を待ちわびるように霧原の顔を見つめる渡辺の顔は、先程よりは視線の鋭さが薄れ反抗的ではない)
(だんだん頭が回らなくなってきたようだ、次の行為で堕ちるかもしれない……)