エッチな女の子たちと恋愛シュミレーションするスレ [無断転載禁止]©bbspink.com
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高校2年生のあなたはエッチな女の子たちと恋愛していきます。
恋愛が中心なので過度なエロは期待しないでください...
もう始めっから全員あなたにベタ惚れでめちゃくちゃスキンシップをとりたがってきます。
男なら全員ものにしちゃいたいけど、そんなに浮気して大丈夫??
オリキャラ数人用意してあります。恋愛してみたい女の子を複数人選んでください。
【名前/学年/関係/性格/裏性格/BWH/身長/見た目/設定】
1.鈴木ひな/2/クラスメート/物静か/どスケベ/88.54.82/152/黒髪ショート/一度スイッチが入ると止まらないほど積極的に
2.大内れいな/2/クラスメート/ど天然/がんばり屋/89.52.88/163/黒髪ロング/あなたと近付きたくて一生懸命、どんな手でも..
3.佐藤あやみ/1/後輩/少し冷たい/超甘えたがり/79.51.80/164/茶髪ひとつ縛り+メガネ/ザ・ギャップ。雰囲気さえ作ればこっちのもの
4.高橋まなみ/3/先輩/包容力あるお姉さん/闇系女子/85.53.89/158/茶髪ボブカット/他の女の子といるところ見たりしたら...
5.渋川まお/3/クラスメート/男勝り/ドM/80.53.83/160/金髪ショート/口が強いクセに言葉責めされるともう抗えない
6.渡辺はるか/2/学級委員長/めちゃくちゃ優しい/ドS/93.56.95/148/黒髪ひとつ縛り/時々笑顔でキツいこと言って虐めてくる 了解しました。
鈴木ひな・佐藤あやみ・渋川まお ですね?
(訂正致します。5.渋川まおは、クラスメートではなく先輩です。失礼しました)
こちらがゲームマスターとなって話を進めていく感じで宜しいですか?
通常の恋愛シュミレーションゲームと違って会話の自由度はかなり高いですが、
たまにこちらから選択肢を出すこともあります。
最後に、名前を教えて頂けますか? 了解しました。
鈴木ひな・佐藤あやみ・渋川まお ですね?
(訂正致します。5.渋川まおは、クラスメートではなく先輩です。失礼しました)
こちらがゲームマスターとなって話を進めていく感じで宜しいですか?
通常の恋愛シュミレーションゲームと違って会話の自由度はかなり高いですが、
たまにこちらから選択肢を出すこともあります。
最後に、名前を教えて頂けますか? そちらがゲームマスターとして進める方式で異論はないよ
選択肢出す場合があるってのも了解
名前は森河 弘樹で
最初のシチュエーションもゲームマスターにお任せする感じになるかな
よろしくね 天気のよい朝、高校2年生の森河弘樹は、いつものように通学していた。
弘樹の通う高校は一昨年までは女子校で、圧倒的に女子の割合が高いのだが、思っていたより女子とも話しやすく、充実した日々を送っていた。
可愛い子も多く、みんなスタイルも良い。正直目のやり場に困るくらいだ。
しかし、やはりそう上手くいくわけがなく、色恋沙汰が身に降りかかることは今まで一度もなかった。
そう、いままでは...
通学途中、電車に乗っていると、知り合いが乗ってくる姿が見えた。
それは...
>鈴木ひな
>佐藤あやみ
>渋川まお [選択したら、自由に話しかけたりして貰っても大丈夫ですよ] 普段と変わらない日常、いつも通り学校に向かう朝の風景。
電車に乗り込むと席は既に埋まっていて、吊り革に捕まって窓の外を眺める。
動き出した電車に揺られながら学校に向かう途中で見知った顔を見つけた。
>佐藤あやみ
茶髪をひとつ縛りにした髪型でメガネをかけた一個下の後輩、佐藤あやみだった。
「おはよう、佐藤さん」
知り合いを見つけた嬉しさで自然と顔がほころび、あやみの近くに寄って声をかける。
と言ってもそこまで深い仲ではないし、あやみは少し冷たい性格をしている。
友達というには少し遠く、かと言って余所余所しくもない、先輩後輩の関係らしい距離までしか近づけない。
「今日いい天気だよね、暑くなりそうなくらいだ」
会話の話題も当たり障りのない範囲。
学年が違うから学校の話も噛み合うかわからいのもあるが、あやみが良い反応をするかわからないので探りながらだ。 「あ、おはようございます先輩」
表情も変えずに返事を返す。その様子はまるで無関心な様にも伺える。
先輩後輩らしい関係ではあるが、他の後輩と比べればやはり少し距離がある。
「午後には曇るそうですよ」
あやみと会話をするといつもこんな感じだ。余計な会話もなく、結論で答える。業務連絡と同じ程度の受け答えだ。
「あの、隣。座っていいですか?」
席はどこも空いているが、あやみは弘樹の隣に座ってきた。そう言えば、部活でもいつも近くによってきている気がする...
冷たい態度の割に、意外と好感度や信頼度は高いのかも知れない。 電車が止まると人が出ていき、座る隙間ができる。
あやみに促され隣に座ると、腰かけると同時に、また知っている影が乗り込んできた。
それは...
>鈴木ひな
>渋川まお 表情を変えずに返ってくる挨拶。
無関心なのかと思うが、一応は返事をしてくれるので無視はされていない。
「うん、構わないよ」
電車が止まって席が空くとあやみが隣に座りたいと言ってくる。
断る理由もないし、思い出してみると部活でもよく近くにいるような気がする。
だからそうするのが自然にも思われて、並んで座席に腰を下ろした。
そのタイミングで、また見知った顔が乗り込んでくる。
>渋川まお
金髪ショートの上級生、渋川まおだった。
「あ、渋川先輩。おはようございます」
男勝りで口が強く、上級生という以上に気圧されてしまう。
だかと言って会話を避けるほどではなくて、顔を見かけたら自然と挨拶をする。
【今更だけどsage入れた方がいいのでは】 「お、おう弘樹じゃんか!おはよーう」
こちらに気付いて元気良く答える。男勝りな所もあって最初こそ近付き難かったものだが、慣れてくれば結構話しやすい。
女子からもかなり人気があるが、女子には興味がないらしく、恋愛対象はちゃんと男のようだ。
「なんだよその子。まさか、彼女かぁ〜??」
そうニヤニヤしながら意地悪な質問をすると、あやみとは反対サイドの隣にどっかりと座った。
あやみもまおも、かなりの美少女である。そんな二人に挟み込まれると少々緊張してしまう。
しかも、ご機嫌なまおとは対照的に、あやみは珍しく不機嫌そうな顔をしている。
気まずい状況だが、二人とも口をつぐんで自分から話し出す雰囲気もない。
この状況を打破するために、君は声をかけてもいい。
二人に話しかけても、片方のみと話してもいい。
【sageました(ちゃんとできてるかな?)】 ニヤニヤしながらの意地悪な質問に小さく苦笑を浮かべる。
「いやいや、部活の後輩ですよ」
あやみにどう思われているかは掴めないものの少なくとも自分からの認識は後輩だ。
間違っても彼女と言えるような関係性ではない。
返事をしている内にまおはあやみとは反対の席に座ってきた。
美少女二名に挟まれるというのは夢のような状況だが、同時に緊張もしてしまう。
二人とも無言で、しかもあやみの方は何故か不機嫌そうな顔をしているのだから気まずさすらある。
何か話しをした方がいいのでは…そう思って口を開いた。
二人に共通する話題が思いつかなかったので、まおに対して話しかけることにする。
あやみが急に機嫌悪くなった理由が定かでなく、下手なことを言ったら更に機嫌を損ねてしまいそうだった。
「えっと……そうだ。渋川先輩、数学って得意ですか?
ちょっとわからない所があって、先輩さえよければ今度教えてもらえないかな…と」
上級生に勉強を教えてもらいたいという頼み。
少し唐突かも知れないが、内容自体は真っ当なものだろう。
他校であれば普通は同性に頼むだろうが、一昨年まで女子校だったため上級生は全員女子であった。
【それで大丈夫だよ】 「ん、構わないよ?」
笑顔で答えるまお。
「放課後にするか。教室か...弘樹の家かだな」
まおは、金髪で男勝りで、少し不良っぽいところはあるものの、勉強はかなりできる方だ。教えて貰えるのなら凄くありがたい。
隣のあやみが横目でじっと見つめて来ているが、何か言いたげなわけではないから、まずはまおとの勉強の場を設定する必要がある。 「本当ですか、良かった」
見た目に反して…と言ったら失礼かも知れないけど、まおが勉強できるという噂は聞いていた。
どうやら本当だったらしく助かる話で、会話を続けられると言う意味でも良かった。
隣のあやみからの視線は気になるけど何か言われているわけではないので深く考えないことにする。
「場所は……そうですね、ウチにしましょうか。
貰い物なんですけどこの間美味しいお菓子を頂いて、よければ渋川先輩にも食べてもらいたいです」
女子を家に呼ぶというと含みがありそうだが特にそういう考えはない。
本当に美味しいお菓子だったからだし、それに放課後他の人に見られる可能性を考えると、家の方が落ち着いて勉強ができそうだった。
話をするための作り話とかではなく、勉強で困っているのは実際の問題でもあるのだ。 「お菓子かぁ、気が利くじゃ〜ん」
そう言ってポンと弘樹の肩を叩くと、ほぼ同時に駅に到着し、電車の扉が開く。
降りていく人の波の中からまおを呼ぶ3年生らしき人がいた。
「じゃ、お先に行くね〜」
一足さきにまおが降りると、続いて君たちも降りて学校へ向かう。
無言のまま暫く歩いて行くと、
「よかったですね」
あやみが口を開く。
「女子と二人きりでお勉強なんて」
なにか勘違いしている様子のあやみ。やはり不自然に不機嫌で、早足で歩く。
学校まではまだ暫く時間があるから、あやみに話しかけてもいい。 肩を叩かれるのと同時に駅に着いた電車から降りる途中、まおは同学年の人から呼ばれる。
「はい、では」
先に降りていくまおを見送って、あやみと一緒に降りる。
そのまま学校への道を無言で歩いていると、不意にあやみが話しかけてきた。
「え? いやいや、勉強を教えてもらうだけだよ」
相変わらず不機嫌そうな口調に、特に変な意味はないと否定。
そもそも、からかわれるならともかく不機嫌になる理由が分からない。
早足なあゆみを追うように早足になりながら、このまま不機嫌にさせたまま別れるのはまずい気がして。
何か話しかけよう、でも何を…そう考えて、ふと思いつく。
「……佐藤さんも、何かわからない所があったら俺が教えるよ?
さっきの話聞いてたらわかると思うけど、数学は苦手だから、国語とか英語になるけど」
先輩に教わるだけでなく、後輩にも教える。
そうした方が学生としては自然だろう。
あやみの学力はどれ位なのか知らないので、こんなのは余計なお節介、場合によっては更に不機嫌にしてしまうかも知れないが。
【sageは毎回入れるようにした方がいいよ】 勉強を教えてあげるという提案に、少しの間黙って考える。しかし、
「ウチは、両親ともに教師なので」
遠回しに断る。両親がどちらも教師とは知らなかったため、お節介になってしまったかと思ったが、あやみの表情は寧ろ柔らかくなったように感じられる。
後輩への気遣いが少しは伝わったのだろう。
「毎日勉強勉強ってうるさいので、たまには出掛けたいと思ったりするんですけど、一人じゃつまらないですし」
そう不満を垂れる。
こうした話をあやみとするのは初めてのことだし、ましてや向こうからしてくるなんて珍しい。
あやみのことを知れて、少し近付けた気がする。
学校に着いた。道中話しているうちにあやみの不機嫌そうな表情も和らいだ。
折角近付けたのだから、別れる前に、もう少しご機嫌をとってみようと試みてもいいかも知れない。
【すみません、忘れてました><;】 「あ、そうだったんだ」
あやみの事情についてはまるで知らなかったので、当然驚くが、同時に断られたことも納得する。
ただお節介になってしまったと思いながら顔を見ると、表情は和らいでいるようだった。
「ああ……ご両親とも先生だったらそう言われちゃうよね」
ついで聞かされる不満に苦笑しながら相槌を打つ。
両親のことはもちろん、こうしたあやみの事情を聞くのは珍しかった。
一応話を振ったようなものではここまで聞いてはいないのに、あやみの方から話してくれるとは。
不機嫌だったさっきとは打って変わって急に距離が近くなったような気もした。
学校に着いて別れる間際、折角こうした話を聞けたのだからと思い切って誘ってみることにした。
「佐藤さん。えっと、佐藤さんがよければだけど……今度一緒に出かけてみない?
買い物とか、映画とか…具体的に何かってのは佐藤さんが決めていいんだけど、とにかく一人じゃなく二人で」
誘ってみてから、これはまるでデートの誘いだと思われないかと考えが過ぎった。
一人で出かけるのではつまらないというあやみに、二人で出る機会を提供しようとしての言動なのだが。
その考えが伝わってくれることを祈りながら、返事を待つ。 思いきった二人で出掛けようという提案をすると、意外そうに弘樹を見るが、視線を外して答える。
「......じゃあ、カラオケ」
その場で行きたい所を提案する。どうやらあやみも嫌ではないようだ。これは先輩としてぐっと近付くチャンスかもしれない。
「男の人と二人で歩くなんて、知り合いに見られたらデートだと思われちゃうんで、目立たない所がいいです」
あやみもやはり年頃の女の子で、そう言うことは気にするらしい。
しかし、カラオケを指定した理由がそう言うことだと分かると少し残念な気もする。
だが、先ほどまでの不機嫌さといい、いつもよりお喋りな所といい、今日のあやみは少し変だ。
「それじゃ」
と言って軽く手を振るあやみは、最後に少しだけ微笑んだ気がした。
あやみと別れたら、教室へ行く必要があるだろう。 意外そうな視線を向けられる。
さてどう言われるだろうと返事を待っていると、行きたい所の提案が返ってきた。
嫌ではないようで、まず安堵の気持ちがこみ上げてくる。
「はは。うん、わかった。それならカラオケにしよう」
続けて言われた理由についてはすぐに納得できて笑顔で頷いた。
そういう関係として見られたくないというのは、少し残念と思わなくもないが、今の関係性なら当然。
むしろそんな関係なのに一緒に出かけてくれるという提案を了承してくれたことが驚きだ。
不機嫌だったかと思えば、事情を話してくれたり誘いに乗ってくれたり、いつものあやみからは想像できない。
「うん、それじゃ」
だからだろうか、軽く手を振って別れる際に少しだけ微笑んでいるように見えた。
錯覚かも知れないし、本当なのかも知れない。
それを確かめる手段はなく、自分の教室へと向かうことにした。 教室へ入ると、いつもの席へ向かい、鞄を下ろす。
すると、隣の席の女子が声をかける。
「おはよう」
鈴木ひなはクラスでもおとなし目な女子だ。いつも読書をしていて、今だってそうだ。挨拶しながらも本から目を話さない。
カバーがついているからどんな本かはわからないが、読書家が読んでいる本なのだから、少し興味もある。
いつもはこうして毎日、朝と帰りに挨拶をしてくれるだけなのだが、今日は違った...
「弘樹君、彼女いるんだね?」
と。いつ何を勘違いしたのかはわからないが、挨拶以外で話しかけられた初めてがこれなのだから困惑してしまう。 教室に入って自分の席に向かい、鞄を置く。
すると隣の席から挨拶が聴こえてくる。
「おはよう、鈴木さん」
黒髪ショートで物静かなクラスメート、鈴木ひなだった。
常に読書しているのではと思うほど本を読んでいて今も挨拶しながらそうしている。
カバーのかけられた本の題名が気にならないでもないが、挨拶をするだけの関係なので尋ねたことはない。
そんな関係なので、挨拶以外のことを話す、それもひなの方からというのはそれだけで驚く。
「えっ」
しかも内容が瞬時に理解できず、驚いた声しか出なかった。
頭の中で言われた言葉を整理し、理解して、こみ上げてくるのは戸惑いだった。
「いや、彼女なんていないけど……。
どうしてそう思ったの?」
何をどうしてそう思ったのだろう。
まるで分からないし、それに加えて質問するのが躊躇われたので言わなかった疑問もある。
なぜ名前で…これまで挨拶しかして来なかった間柄とは思えない距離感に、やはり戸惑う。 弘樹の返答を受けて、本を閉じる。
顔だけこちらに向けて、彼女がいると思った理由を話しはじめた。
「さっき、窓の外を眺めてたの。そしたら弘樹くんが......あの女の子は違うの?」
なるほど、彼女はあやみのことで勘違いしたらしい。
偶然見られてしまったとは言え、二人で登校するというだけでそう思われてしまうものなのか。
あやみが目立たないようカラオケがいいと言った意味が一層わかる。
しかし、誤解は誤解なのだから、これを解決するのがいいだろう。 本を閉じて顔だけこちらに向けるひな。
「窓の外……ああ、そういうことか」
聞かされた理由に少し考えてから納得する。
つまりあやみと一緒に歩いている所を見られて彼女と思われたらしい。
少しいつもより話が弾んでいたとはいえ、そんな関係に見られるとは予想していなかった。
「さっき一緒に歩いていたのは部活の後輩の子だよ。
朝の電車で会ったからそのまま学校まで登校しただけ」
誤解なのでそれを解いてもらうため、正直に事実を述べる。
これ以上に説明のしようはないので誤解が解けなければどうしようもないが。 「そうなの」
説明を受けて納得したようだ。彼女だという誤解は晴れた。
しかし、ひなは続ける。
「でも多分、女の子の方は...」
いいかけた所で始業のチャイムがなって遮られる。
チャイムを聞けば、本をしまい、授業モードに入ってしまう。
話の続きを聞きたいなら、昼休みに食堂へ向かうといいだろう。 どうやら納得してくれたらしい。
「え?」
だが続けてひなが何か言いかけた言葉はチャイムに遮られてしまった。
もう一度聞こうとしたが、ひなは本をしまって授業に望もうとしていた。
今聞くのはできないと考えて、ひとまず諦めこちらも授業の準備に取り掛かる。
それからは普通に授業を受けるいつも通りの行動。
昼休みになるとひなに話を聞こうとしたが、すでに姿はなかった。
多分食堂だろうと考えて足を運ぶことにする。
ひなの姿を探して、見つければ近くに歩み寄る。 「あ、弘樹くん。なにか用?」
本をテーブルに置いてサンドイッチを食べるひな。
食事中まで本を読むと言うことはないようだ。
しかしひなは、弘樹の用件を理解していない様で、先ほど遮られた話の続きを聞こうとするが...
後ろから女の子に声を掛けられた。
それは...
>佐藤あやみ
>渋川まお ひなはテーブルに本を置いてサンドイッチを食べている所だった。
さっき何を言いかけたのかを聞こうとしたのだが、そのことだとは思い至らないようで。
説明しようとした所で後ろから声をかけられた。
>渋川まお
「あ、渋川先輩。先輩も食堂でお昼ですか」
電車で降りる時に別れて以来の再会であるまおだった。
ひながさっき何を言いかけたのかは分からないが、恐らくはあやみのことだろう。
そのあやみ本人から声をかけられたら、きっと驚いて変な反応になってしまったかも知れない。
まおだったら普通に接することができるので助かった。 「おお、弘樹じゃん、さっきぶり〜」
声を掛けてきたのは渋川まおだ。
「あ、なんだよその子。浮気かぁ〜??」
ニヤニヤしてまた朝の様に意地悪なことを言ってくるが、この場面でその言葉は非常に不味い気がする。
「弘樹くん...」
何とも言えない顔で見つめて来るひな。彼女は人見知りをするタイプなので、まおが近付いてくるとこれ以上喋ろうとしなかった。
さらにまおの提案で、3人同じテーブルで食べることになってしまう。
また朝と同じく、気まずい空気があたりに流れる。
君は、何か話をする必要があるだろう。
ひなの更なる誤解を解いてもいいし、まおと雑談をしても構わない。 まおで良かった…そう思ったことが間違いであることがすぐにわかる。
ニヤニヤとした顔で意地悪なことを言ってくる。
だがその内容が最悪だった。
「いや……その…違いますよ」
ひなの方を見ると何とも言えない表情で見つめてきていた。
当然否定するのだが、予想外のことに唖然として、どうにも声に力が入らなかった。
まおが続けて提案してきたのは三人での食事だった。
断ったらひなと二人でいたいのかと更にからかわれそうで断れもしない。
ひなの方も黙ってしまっていて、結局三人での食事、しかも無言で気まずい空気での昼食であった。
心情的に言えばまずひなの誤解を解きたかった。
だが、まおを放っておくと何を言いだすか分からないので、まおと会話をしておいた方がいい気もする。
でも話している内に家で勉強することについて話題に出てしまうかも…そう考えると危ない気もした。
ついさっき話したことだから、確認のために聞かれたりするかもしれない。
迷った末、ひなの方に話しかけることにした。
「えっと、鈴木さん。この人は渋川まお先輩。
口は強いけど勉強はできるし、とても良い人なんだよ。
少し冗談がキツいこともあるけど…」
まおのことを紹介しつつ、冗談をよく言う先輩であることを伝えようとする。
本当に冗談キツいよな…そう改めて思い、横目でまおの方を見ながら。
とにかくさっきのはただの冗談だと理解してもらい、誤解を解いてもらいたかった。 「...そうなの。どうも...」
まだその何とも言えない視線は変わらないが、少しはどういう関係性かはわかって貰えただろう。
その頃には丁度サンドイッチも食べ終えていて、ハンカチで手を拭ったらその場で読書を再開する。
誤解が解けたのか解けていないのか微妙な所だ。
「どうもね〜」
まおの方もなんとか打ち解けようとするが、ひなの反応は薄い。
確かに、物静かで人見知りがちのひなと金髪で不良っぽいまおの相性は良くないかもしれない。
この気まずい雰囲気を察したまおが、ついに恐れていたことを口にしてしまう。
「あ、あの、弘樹さ、今日の放課後に弘樹ん家でいいんだよね?」
よりによって、“勉強”という重要ワードを飛ばして... 相変わらずの何とも言えない視線。
だが関係については少しはわかってもらえたのかも知れない。
サンドイッチを食べ終えたひなは読書を始めてしまい、それ以上話しかけるのは躊躇われた。
誤解が解けていればいいのだけど…そう思う。
まおから話しかけても反応は薄く、会話は進みそうにない。
それならそれでいいのだが、と思っていたところにまおからの発言。
「ああ、先輩に勉強を教えてもらう件についての話ですね?」
よりによって肝心な勉強について言わないとは…と思いつつ、これはある程度予想していた。
だから間髪入れずに説明を付け加えるような形で返事をする。
あまりにも迅速で説明口調過ぎるし、その素早さとは反対に内心はかなり動揺していたが。
ひながどう思うか不安を抱きつつ、取り敢えずはまおとの会話を続ける。
「そうですね、今日の放課後、ウチで。
母がいると思うので、後で連絡しておきます」
親もいるという情報もしっかり付け加えておく。
ひなに誤解されるのを恐れ過ぎかも知れないが、変な誤解は嬉しいものではなく、できれば回避したい。 ひなは、気付けば本から目を離していた。
空(くう)をみて、じっとしている。
まるで、弘樹とまおの会話を注意深く聞いていたかの様に。
ここまでいえば誤解も解けそうな物だが...
一瞬ニヤっと笑った気がした。
ひなと目が合ってしまうと、
「ん?あぁ、別に誤解なんてしてないよ」
見せた笑顔が逆に不気味だ。
きっともう誤解はしていないだろう。
しかし、何を考えているのかはよくわからなかった。
そろそろ昼休みも終わりだ。教室に戻って授業を受けなければならない。
次に話すチャンスがあるのは放課後だろう。 いつの間にかひなは本から目を離していた。
何故か笑ったように見えたが、目が合うと誤解してないと言う。
「そ、そう……? それならいいんだけど」
誤解は本当にしていないのかも知れない。
だが、何を考えているのかはわからず、話をする時間も無かった。
昼休みが終わりに近づいていたのでまおと別れて教室に戻る。
その後の授業を受けて、放課後まで時間が進む。
まおとまた会わないといけないので余裕はあまり無かったが、気になってることは相変わらずで。
帰る支度をしているひなに声をかけた。
「あの、鈴木さん…朝のことなんだけど、何か言いかけてなかった?
気のせいかも知れないけど……」
何か言おうとしていた…はず。
朝のことで、その後も色々あったので若干記憶が曖昧だった。
何でもないと言われてしまえば、それを更に追及するほどの根拠は欠けていた。 「ん...あぁ、その話は別の機会に」
どうやら、いいかけたことは間違いないようだ。
それが何かは答えて貰えなかったが、言わないつもりでもないようだ。
「別の機会っていうか......今週の土曜日とか、食事でもどうかな?」
あまりにも急過ぎる誘いだ。
只でさえこんなに話したのは今日が初めてだというのに、食事にまで誘われてしまった。
急激な距離の縮まりに困惑してしまう。
「弘樹くんと話すの、本読むより面白いから」
女子から面白いと言われるのは嬉しい筈だが、なにか不気味だ。
しかも困ったことに、土曜日にはあやみとの約束がある。
しかし困惑していたため、それを思い出す前にひなは返事を待たずに行ってしまった。
伝えるために追いかけてもいいし、放っておいてまおと家に向かってもいい。
どちらにしろ、あやみかひなか、どちらかの約束は断らなければならないが。 「食事? ああ、うん、そういうことなら…」
まともに会話をしたのが今日が初めてなのに食事に誘われて戸惑ってしまう。
ただ断る理由はないからと首を縦に振った。
その時はまだあやみとの約束と被っていることには気付かなくて。
「面白い……?」
そう言われて嬉しさよりも不気味さを感じるのは失礼なことだろうか。
とにかく、そんな約束をして別れた…それからすぐ、あやみとの約束も土曜だったことを思い出して。
まおを待たせてしまうことにはなるが、ひなを追いかけることにした。
追いつくことに成功すれば。
「さっきは忘れてたけど土曜は用事が入ってるんだ、ごめん。
その次の土曜とかなら空いてるんだけど…」
と伝えることになる。
約束を断るようなものだし、簡単に延期してもらえるかはわからないが。 「そう。......朝の子と約束でもしてるんでしょ?」
思ったよりあっさり了承してくれた。と思ったら、断った理由をみごとにあてられてしまった。いくら窓から見ていたとは言え、話の内容まで聞こえるわけがない。
「適当に言ってみただけなんだけど...当たったみたいね」
ニヤニヤするひな。同じ表情でもまおとは違った印象を受ける。
そう言えば、あまり自分から話をしないという点でひなとあやみも似ているが、やはり少し違う。
そう思った時、ひなが朝の話をし始める。
「朝のことなんだけど...あの子、多分弘樹くんのこと好きだよ?」
そう言われて呆気に取られているうちにひなは行ってしまった。
驚きの発言だが、それが当たっている確証もない。
だが、ひなの推理力は、断った理由を当てられた時点で明らかだ。
しかし、今となってはどうしようもないのだから、まおの所へ行くしかない。 「……っ」
一瞬で見抜かれた、というよりも予想されていたのだろうか。
ならば吃驚するリアクションを取ってしまったことで、予想を裏付けてしまった。
ニヤニヤとした表情で確信するひな。
同じニヤニヤでもまおと違うのははっきりとわかる。
ただからかいたいだけのまおと異なり、その意図が何なのかは分からないが。
「………え?」
ひなが放った言葉に呆気に取られている内に、去っていってしまう。
聞きたかった内容を聞けたのだが、その内容に驚きすぎて、達成感はない。
あの子、とはあやみのことに違いない。
つまりあやみが好意を寄せてくれている……?
改めて理解しようとしても、全く想像していなかったことだけに上手く飲み込めない。
もちろん、これがひなの予想に過ぎないことは分かっているが、直前に当てられただけに信じてしまいそうになる。
その場で立ち止まったまま、いくらでも時間を過ごしてしまいそうだった。
だが、まおを待たせていることを思い出して、慌てて足を動かした。 「......来ないなぁ」
走って行くと、まおが腕時計を見て待っていた。
「ん、お〜弘樹!遅かったじゃん何してたの?」
手を振って存在に気付かせると、笑顔で駆け寄っていく。
「ささっ、早くお家まで案内して!」
まおは楽しそうにそう話す。少し遅くなったこともあまり気にしていないようだ。
あやみやひなのことだって、からかっただけで実際に思っているわけではないのだろう。
まおは、冗談はキツいが明るくて愉快な先輩だ。
......しかし、それ以外のことはあまり知らない。
家に着くまで結構あるから、少しまおにいろいろな質問をしても構わないだろう。
もしかしたらもっと近付けるかも知れないし、勉強も捗るかも知れない。 走って行くとまおが手を振っているのが見えて、肩で息をしながら速度を落とす。
「すみません、クラスメートに捕まってしまいまして」
正確にはクラスメートを捕まえて、なのだが、まあ多少の嘘は許されるだろう。
遅くなったことをあまり気にしてないのは助かるが、その器の大きさを見ると余計に申し訳なく思う。
そんな申し訳ない気持ちもすぐに和らぐ明るさを持っている先輩がまおだった。
からかわれて、そのせいで困った場面もあったが、恨む気持ちはない。
ただ、よく考えてみればそういう面以外は知らない。
まおが勉強ができるというのも噂で知っているだけだった。
「渋川先輩って何か趣味とかあるんですか?
普段家でしていることとか、そういうのでも良いんですけど」
家までまだ時間がかかるので道中の話題としてまおに質問をしてみる。
学校外のまおの姿はどういうものなのか、興味があった。 「んー、趣味かぁ...」
暫く考えて口をひらく。
「趣味っていうか、最近はストレッチよくやってるね。ほら、エアロビクスとか。最近怠けてちょっと太っちゃってさ///」
照れ笑いをして答える。男勝りでもやっぱり女の子で、体型は気にしているらしい。
そう言えば、照れている顔を見るのは初めてかも知れない。
駅で暫く待つと電車が来たので乗り込む。
「あとはバイトとかで忙しいからな〜。まぁでも結構楽しいよ?カラオケ店員も」
“カラオケ店員”というワードを聞いて戦慄する。どこの店かは知らないが、これは不味いと確信した。
あやみと出掛けた時に出会ってしまうかもしれない...
家に着くまでもう少しある。更に話をしても良さそうだ。 「ストレッチですか、なるほど」
全然太った風には見えないな…とは思いつつ、そういうのは口に出さないほうがいいのだろう。
それよりも初めて見るまおの照れ笑いの方に興味を惹かれていた。
先輩も照れたりするんだ…という少し失礼な感想も抱きつつ。
次の言葉に思わず体が小さく震えた。
「カラオケで、バイトしてるんですか」
カラオケ店は一つではないのだから会う確率は100%ではないとしても、嫌な予感がしてしまう。
あやみは目立たない所がいいと言ってカラオケを指定してきた。
まおと会ってしまう展開はNGだろう。
「お店はどこなんですか? 今度カラオケ行く機会があったら会いに行きますよ」
まだ家に着くまでは時間があったのでどこの店なのか聞いてみることにした。
会わないようにするため、という本心を隠すために、会いに行くからという理由を付け加えておく。
それはそれでまおに興味を持っているようだが、笑顔で尋ねたので、普段のからかいの仕返しと受け取ってくれるだろう。
あやみと出かける日でなければ、当然行くつもりである。 「え、なに会いに来てくれるの〜?相寄駅まえにいくつかカラオケ並んでるトコあるだろ?その『ソングラバー』って店だよ」
弘樹の言葉を聞いて明るく答えるまおの笑顔は、いつものニヤニヤ顔とは違って見える。
さっきの照れた顔の印象がまだ抜けていないのか、心なしか頬が少し赤い気がした。
相寄町といったら、このあたりで最も栄えている場所だ。
デパートやレストラン、カフェ、ボウリング場など、出掛けるにはうってつけだ。カラオケ店も勿論何軒もある。
しかし、これで入ってはいけないカラオケ店がわかった。あやみと出かける際にまおに遭遇する確率は減ったろう。
「今度ウチのカラオケ来たら、休憩時間にちょっと歌わせてよ〜」
電車を降りると弘樹の住む町に着いた。あとは家へ歩くだけだが、もう少々時間がある。
なにか質問をするなら、今回はこれで最後になるだろう。 「相寄駅前のソングラバーですか、わかりました」
まおがバイトしている店の情報を入手してとりあえずひと安心できる。
これであやみと出かけた際に遭遇する可能性は減ったわけだ。
心の余裕ができてからまおの顔を見ると、なんだか頬が赤らんでいるような気がした。
さっき珍しい照れ顔を見たからそう見えるだけだろうか。
「はい、その時は勿論」
合わないようにするのが第一目標ではあったが、まおの店に行くのも当然楽しみだった。
電車を降りて後は家に着くまでの道を歩くだけ。
まだ少し時間がかかるので、もう一つ質問をしておくことにした。
「渋川先輩って彼氏とかいるんですか?」
ちょっと踏み込んだ質問かもしれないが、ふと気になったので聞いてみた。
同学年には女子しかいなくてもバイトなどをして校外の人と接する機会もあるならもしかして、と。
男勝りではあるものの、まおの容姿を考えれば声をかけられる可能性は十分高い気がする。
こんな質問学校内ではできない、だから今が機会だと考えたのもある。 「えっ、な、何だよ急に。そんな質問するもんじゃないぞ」
質問をはぐらかす。先ほどより一層顔を赤らめ少し俯く。
この感じだと本当にいるのだろうか。
「まぁナンパとかはよくあるし、バイト先でしつこいヤツがいたりしてね」
やはりモテるようだ。確かに、その容姿ならば声を掛けられるのも納得できる。
しかし、こう言ったということは彼氏はいないのだろう。
色んな人に言い寄られるのは大変だろうと男ながらに想像する。
だが、そんなに声を掛けられるならいい男の1人や2人寄ってきそうなものだが、
それを全て断る何て言うのは、少し勿体ない気もする。
が、その理由はすぐにわかった。
「まぁ、好き...ていうか、気になる人はいるかな」
ここまで話した所で家に着いた。
まおを上げるといいだろう。 流石に踏み込みすぎただろうか、顔を赤くしながらはぐらかされてしまった。
もしかするとこの反応的にいるのだろうか、とも思うが。
声をかけられることはあっても断ってるとまおは言う。
やはりモテるんだな…と感じながら、同時にそれは大変そうだとも思う。
だが、そんな風に全て断るのは何故かと疑問を抱いたところに、理由を教えてくれた。
「そう、なんですね」
思わず曖昧な相槌になってしまった。
まおなら、気になる相手がいればすぐに思いを伝えそうなのに。
勿論そんなことは直接言わないが、驚いた分、少し無言の空気になってしまって。
ただそんな空気も家に着いたことですぐに解消された。
家は普通の一軒家である。
「ただいまー。渋川先輩、どうぞ上がってください」
玄関の扉を開いて、まず母親に帰ってきたことを伝えてから、まおに上がるよう勧める。
奥から顔を出した母親が、まおを見ると笑顔でいらっしゃいと挨拶をする。
「部屋は二階です」
それから階段を登って二階の自室へとまおを案内する。
自室は勉強用の机と椅子、それから本棚やベッドがある至って普通の部屋でそこそこ綺麗にしてある。 「へ〜、中々キレイな部屋じゃん。これたら彼女連れてきても大丈夫だね〜」
と、いつものニヤけ顔でからかってくる。彼氏がいるかという質問への報復と意識しているかどうかは分からないが、そんなところだろう。
いつも通りの顔を見ると、意地悪な表情でも安心できる。
「さーて、勉強しようか〜」
弘樹を椅子に座らせると、教科書を広げさせる。
肩に手をおき、たまに前屈みになりと、時々柔らかいものが当たる感触がある。
しかし、見た目によらず教えるのは上手で、勉強ができるという噂も本当ようだ。 「そんな相手いませんって」
からかわれると律儀に反論して、まおの顔を見る。
さっきの表情は何処へやら、いつも通りの意地悪な笑みで何だか安心できた。
椅子に座って教科書を広げ、まおに勉強を教えてもらう。
「はい、それではよろしくお願いします」
時折柔らかい感触が当たるのには気づいていた。
男勝りな性格のせいで普段はまおをそんな風に見たりしない。
だが今日はさっきの赤らんだ顔といい、妙に異性として意識してしまいそうになる。
しかし今は勉強中、余計なことを考えていては真面目に教えてくれるまおにも申し訳なくなる。
雑念を振り払い、集中した。
「おぉ……すごい、わからなかった所、全部わかるようになりましたよ。
すごいですね、渋川先輩!」
上手に教えてもらったことで躓いていたところが次々と解決。
全て終わると思わず感嘆の声が出て、まおを見上げる視線には尊敬が込められていた。
「あ、そうだ。お菓子食べてもらわないと。持ってきますね」
まおを家に呼んだもう一つの理由を思い出して、席を立つと下に向かって降りていく。
少ししてから、有名どころのクッキーとフィナンシェ、それから二人分のジュースをお盆に載せて戻ってくる。 「へ〜、しゃれてるじゃん」
まおが物珍しそうにそれを見ると、一口食べてみる。
すると、目を丸くして頬張った。
「まったく〜ダイエット中なのにこんなの食べちゃうよ〜」
そう笑いながら言う。どうやら満足してくれたようだ。
「んじゃ、ウチそろそろ帰るから。ご馳走さま〜」
ご機嫌な様子でまおは帰って行った
〜一日目終了〜
【次は土曜日にしますか?それともまだ平日?】 用意したお菓子に満足してもらえたようで、ご機嫌な様子でまおは帰っていった。
そして、土曜日。
あやみと一緒に出かけると約束した日がやって来た。
【次は土曜日ということで】
【ひなが何考えてるか気になるけど、多分あやみとの約束終わるまでは何も言わなそうだし】
【どんどんイベント消化して進めていきたい】 今日はあやみと出掛ける約束をした日だ。
待ち合わせ場所の相寄駅であやみが来るのを待つ。この辺りは色んな施設があり、土曜日の今日何かは特に学生が多い。
その中には手を繋いで歩く男女の姿も見られ、あやみが勘違いされたくないというように出掛け先をカラオケにした理由もよくわかる。
確かにここなら、知り合いに遭遇してもおかしくないだろう。
......遠くからじっと見つめてくる女性がいる。あれは誰だろうか?
その女性はまっすぐこちらへ近づいて来て、声を掛けてくる。それは聞き覚えのある声だった。
「お待たせしました」
身体はこちらを向いたまま、目は合わせずに言う女性。そろそろ待ち合わせの時間なのだが、まさか...あやみだろうか?
キレイな茶髪にはカールがかかっており、メガネはかけていない。カッコかわいいジャケットを着て、かなり攻めたショートパンツ。黒のニーソックスとショートパンツの隙間の太ももがちょっと色っぽい。
いつもとは全く印象の違うあやみに、どう声をかけよう。 待ち合わせ場所の相寄駅であやみが来るのを待ちながら、周囲の様子を見る。
確かにカップルが多くて、こんな所で一緒に遊んでいたら同じように思われそうだ。
ふと視線を感じてそちらを見ると、見慣れない姿。
まっすぐ歩いてきて声をかけられて、それでようやくあやみだと気が付いた。
目を合わせようとしていないが、声や顔は間違いなくそうだ。
だが服装は、当然ではあるのだが普段学校で見かけるのとはまるで違う。
それにメガネもかけておらず、印象がまるで異なる。
ふと、ひなに言われたことを思い出す。
あやみが好意を寄せてくれているという話…普段の態度からは想像つかなかったが。
こんなに可愛い子が本当にそうだとしたら、男してこの上なく嬉しい話だ。
と考えていたところで、黙ったままなのに気がついて、声をかけることにした。
「佐藤さん…そういう格好もよく似合うね」
よく考えてみればこうした女子と出かけた経験なんてない。
どう声をかければいいのかわからなくて、迷いながら絞り出した。
可愛いと言うことも一瞬考えたが、そんなセリフを軽く言える関係ではない。
「それじゃ、行こうか」
立ち止まったままだと誰かに見られそうだ。
先輩として、それからまおのいる店を申し訳ないが回避するため、先導してカラオケ店を選びに歩き出す。 「...お世辞はいいです」
似合う言われて無愛想に返すと俯いてしまう。
今日はなんだかいつも以上に目を合わせてくれない気がする。
カラオケ店へ向かう途中も何か話しかけて来るということもなかった。
デートだと思われていないか警戒しているのだろうか。
だとしても、これがそういったものではないことはあやみ自身が一番わかっている筈なのだから、もっと気楽にして貰った方がいいと思う。
黙っていても気まずいままだし、自分から話しかける必要があるだろう。
少し話せば目的地にも着くはずだ、 >>56
無愛想な対応はいつも通り、というよりもいつも以上な気がする。
こんな風に俯いて目を合わせないということは今までも流石になかった。
そんなにデートと見られるのが嫌ということなのだろうか。
ひなの予想はやはりただの予想でしかなく、外れていたということなのかも知れない。
無言なままでいるわけにもいかないし、何か話しかけることにした。
何を聞くか少し考えて、まだひなの予想が頭に残っていたのでそれに少し近い質問をした。
「佐藤さんは、何か好きなものとかあるのかな?
趣味とか食べ物とか、何でもいいんだけど」
近いと言ってもこの質問の好きとひなの予想した好きは違う意味合いだろう。
まおに趣味を尋ねた時と似たような感覚での質問である。 「好きなもの......ものっていうか、出掛けるのは好きですよ」
予想外に漠然とした返事が返ってくる。
「でも一人だと退屈なので、先輩と来れて......」
後半、声が小さくなって聞こえなかった。
言い終わったら、また俯いてしまう。
この言葉を期に黙ってしまった。
何と言ったのかよくわからなかったので話を続けられず。
無言とまま歩いていく。
弘樹の手にあやみの手が何度か当たった気がした。
気のせいなのかも知れない。
だが、俯いてしまったあやとの心の距離に対して、身体の距離がいつもより近いのは、
気のせいではないだろう。
カラオケ店に着いた。無論、まおがバイトしている所とは別だ。 「出かけるのが好き…なるほど」
漠然とした返答に上手く反応できず、話を広げることもできない。
「?」
その後にあやみが言いかけた言葉も途中から小さくなってしまい聞き取れず、結局また無言に戻ってしまった。
店に着くまでの間、互いの手が当たったような気がした。
もしかしたら気のせいかも知れないが、会話は続かないのに不思議と近い距離にいるのは確かだった。
他のカップルを見ていると手を繋ぐということが一瞬頭を過ぎったが、そんなことをしては更に気まずくなりそうに思えた。
そしてカラオケ店に辿り着く。
まおが言っていたのとは違う店名の店だ。
「じゃあ、入ろうか」
あやみに声をかけて店内に入ろうとする。
わざわざ声をかけたのは正直少し不安もあったからだ。
約束をした当日にこの無言の空気、もしかしたらやっぱりやめると言い出すかも知れない。
それを確認するために声をかけた。
勿論あやみがそういうことを言わなければ普通に店員に案内を頼むことになる。 「......え?あぁ、そうですね」
入ろうと声をかけると、あやみは珍しくボーッとしていたようだ。
いつもは冷たい...もとい冷静なあやみだが、店に入ってからも何かそわそわしている。
この前の朝の不機嫌な態度といい、今日のあまりに冷たい様子、そして今。
最近あやみの様子がおかしいのは明らかだが、それが何の為なのかがわからない。
店員に案内され、部屋に入る。L字型のソファのある小さな部屋だ。
君が先に入りソファの奥に座ると、あやみが
「隣、座っても良いですか?」
そういって弘樹の真隣に座った。やはり距離感覚が近い。
電車内で隣に座るのと、狭い密室で隣に座るのとでは訳が違う。 やめるとは言わなかったが、あやみは珍しくボーッとしている様子だった。
入ってからもそわそわしているのは横に居てもわかる。
何があやみをそうさせているのか、最近の様子を思い返してみても疑問が増えるだけだった。
部屋に入ってからL字型ソファの奥に座る。
するとあやみが声をかけてきた。
「うん、良いよ」
断る理由は特になくて了承するが、不思議には思う。
L字のもう一辺が空いているのだから隣に座る必要なんてない。
さっきも感じたが、交わす言葉は少ないのに、実際の距離は何故か近いのだ。
電車で並んで座った時もあるが、あの時とは環境が違って、より近くに感じてしまう。
加えて今のあやみは制服ではなく私服なのだ。
「佐藤さん、先に選んでいいよ」
急速にあやみのことを意識してしまう自分を感じ、それを遮るように機械を取って渡した。
だが渡した後もあやみは隣にいるのだ。
気になって横目で見てしまう。 「あ、どうも」
あやみは機械を受け取り、曲名を入力する。
あらかじめ決めてあったのか、直ぐに入力し終えると
マイクを持って座りなおす。
そうするとまた少し距離が近くなる。
いや、確かに近づいた距離は小さいが、あやみの脚が弘樹の脚に当たるくらいだ。
曲が始まると、あやみが見事な歌声を披露する。
中々大人な歌を歌うもので、その声は色っぽさを帯びていた。
「この部屋、あついですね。......あ、電気少し暗くしますね」
歌い終わり、あやみがあついと言ってジャケットを脱ぐ。
中に着ていたTシャツが汗で透けているが、気にしたらダメだろう。
明かりを暗くするとまた隣に座ってくる。
さらに近くなって、こんどは腕が当たるほどだ。
あやみの次は君が歌う番だ。どんな曲を歌おう?
>無難にポップ系
>ラップに挑戦
>ラブソングで勝負 あやみが曲を入力し終えて座り直すとさっきより近くなった気がする。
いや、足が当たるようになったのは間違いなく近くなったということだろう。
選んだのは大人っぽい曲で、想像していたよりも見事な歌声、色っぽさすら感じられた。
更に歌い終わるとあやみはジャケットを脱ぎ、Tシャツ姿となって明かりを少し暗くした。
特に止めなかったが、意識している状況でそんなことをされると、更に意識してしまう。
再び座ったあやみはっさきよりもまた近くなって腕が触れるほどの距離。
ひなの言葉が思い返される。
あやみの行動をまるでアピールのように感じてしまうのは、意識しすぎだろうか。
自分の中で急激にあやみの存在が大きくなっていくように感じる。
次の曲を何にしようか、考え込む。
>ラブソングで勝負
悩んだ末にラブソングで攻めてみることにした。
後輩の女子とカラオケに来て、一発目で歌うのはかなり冒険だ。
最悪の展開として引かれてしまうことも覚悟しながら、歌う。
いつもより声に熱がこもってしまった気がした。 弘樹が歌っている間、黙って聞いているあやみ。
いきなりラブソングというのはかなりの勝負だが、あやみはどう思うだろう。
間奏に入ると話しかけてきた。
「へぇ、先輩ってこう言う歌うたうんですね」
その声色はいつもより明るかった。
部屋の明かりが暗いせいで表情はわからなかったが、
印象は良かったらしい。
最後まで歌い終え、ラブソング独特の心地よいアウトロが流れてくる。
その余韻に浸っていると...
あやみが手を握ってきた。
暖かくて柔らかい女の手が重ねられる。
「......ふふ。嫌いじゃないですよ、こういう歌を歌う男の人」
アウトロ最後の音が途切れると同時にそう言う。
声色は明るい、というより甘えた感じだった。いつもの冷たくてトゲのある声とはまるで違う。
肩に頭が乗っかってくる。
「ふふ。...せんぱい......」
まるで別人のようになったあやみ。
カラオケマシーンから宣伝の映像が流れはじめても機械を取ろうとしない。
この急なシチュエーションの変動だが、ずっとこのままというわけにはいかない。
君は何か声をかけてもいいし、行動で示してもいい。 間奏に入って所であやみが話しかけてくる。
いつもより明るい声で、どうやら印象は良かったらしい。
ホッとした気持ちになりながら残りはより熱を込めて歌った。
歌い終えてアウトロを聞いている最中、あやみが手を握ってきて驚く。
すぐに反応できず、どうしようかと思っている間に曲が終わった。
同時にあやみの甘えた感じの声が聞こえて、肩に頭が乗ってきた。
ラブソングを歌って勝負をかけてみたとはいえ、こんな展開は全くの予想外だった。
ひなの予想は正解だったと見るべきかも知れない。
いや、そんなことを考えている余裕はない。
こんなことは初めてで、あやみの存在を間近で感じながら動転していた。
「佐藤さん……えっと、その…」
黙ったままではいられず、とりあえず口を開いてみる。
こんな状況で次の曲を促したり、自分で選択したりなんて行動はできない。
「呼び方、変えてもいいかな?
下の名前で……あやみちゃんって、呼びたいんだけど」
物理的距離の近さに心の距離を合わせることができるか、呼び方を変えてみようとする。
行動の方でも、重ねて握ってきていたあやみの手をこちらからも少し力を入れて握りながら。 「ふふ...こういう時だけですよ?」
下の名前で呼びたいという希望を了承してくれる。
こういう時、というのはつまり、二人きりの時のことだろう。
限定とはいえ、こういう時に名前で呼べるなら身体の距離に心の距離が追い付けるだろう。
「二人きりじゃないと、こんな風にできないから...」
外で見るあやみと今のあやみ、本性がどちらなのかはわからない。
だが、こういう風に言ったということは、本当のあやみはこっちなのかも知れない。
外では自分を抑えて、冷たい態度を取っていたのかも知れない。
あやみがまた座り直し体勢をかえた。
手は握ったまま、反対側の手を弘樹の太ももの上におく。
そして顔がぐっと近くなる。
「せんぱい...嫌がらないんですね?」
それは疑問というより、確認のような、嬉しそう声で放った問いだった。
今日一日ずっと目を合わせてくれず、カラオケに来てからも...
そんなあやみが、唇まで触れてしまいそうな距離で覗きこむ。 下の名前で呼ぶことを了承してくれた。
こういう時……二人きりの時だけということだが、それでも十分距離が近くなった気がする。
あやみのこんな姿は普段の態度からは全く想像できなかった。
どちらが本当の姿か戸惑う気持ちもあるが、二人になれるカラオケを選んだのはこういうことをしたかっただろう。
また座り直して体勢を変えたあやみが手を太ももの上に置いてきた。
暗い部屋の中でも顔が近くなったのははっきりわかる。
「嫌がるわけないよ……あやみちゃんだから」
よく知らない相手に急にこんな事をされたら戸惑うだろう。
でも、普段のあやみとはまるで別人のようであっても、目の前にいるのは確かにあやみだ。
ひなの予想を聞いていたからと言うのも少しあるが、例え聞いてなくても受け入れた気がする。
それに今、胸の内にあるのは、まだ好きと言い切れるほどではないものの、あやみに対する強い意識だった。
私服を見た時、甘えて来た時、そして迫るように顔を近づけられた今と、どんどんと感情が膨らんでいく。
「あやみちゃん……」
感情に突き動かされるようにして名前を呼ぶ。
呼んでから何を言おうか考えて、思い付いた言葉をすぐに口に出すのは躊躇って。
それから口を動かした。
「あやみちゃんは…俺で、いいの?」
確認する問い。
他の人のいる場所では甘えられない、だから二人きりになりたかった、そこまではよくわかった。
その相手が自分で良かったのかは、まだはっきりと分からなくて、そこを確かめるために。
ひなの予想が正解かどうか判明することにも繋がる質問でもあった。 「よくなかったら...こんなことしませんよ?」
そう言うあやみは笑顔だった。
それは以前カラオケに誘われた時に、別れ際に見せた笑顔だった。
太ももに置かれたあやみの手が、ゆっくりと上に上がってくる。
腹を伝い、胸を伝い、その手は首に添えられた。
優しく首を撫でながらあやみの顔が近付き、頬と頬が重なる。
熱くて、柔らかい肌が感じられる。
「せんぱい......」
あやみが何かをいいかけた時、
プルルルルルル...と部屋に電話がかかった。終了間際の知らせだ。
どうやら、思っていたよりも時間が過ぎていたらしい。
突然女の子に迫られ、時間の感覚がおかしくなっていたようだ。
君はこの後の行動を決めることができる。
>時間を延長する
>別の所に出かける
>これで切り上げる 「それもそうだね」
あやみの答えを聞いてその笑顔を見て、同じく笑顔を見せて納得する。
そうか、この笑顔を見たからひなはあやみが彼女だと思ったのか…と。
太ももに置いていた手をあやみはゆっくりと上に向かわせてくる。
お腹、胸を伝って首に添えられて、優しく撫でられながら頬と頬が重なった。
今まで感じたことがないほど心臓が速く脈打っている気がする。
あやみの肌を感じて、感情が更に大きくなっていく。
「…っ」
何を言うのだろう、そう思った瞬間、電話の音が鳴った。
いつの間にか結構時間が経っていたらしく、完全に不意を突かれた。
電話に手を伸ばしながら、これからどうしようかと考える。
>これで切り上げる
延長はしなかった。
折角良い雰囲気だったのに勿体ないと思う気持ちもあるが、このままでは完全に流されそうだった。
勿論あやみに対する感情は決して雰囲気に流されただけのものではないが、一旦自分の中で整理もしたい。
「あやみちゃん、また二人で出かけよう」
電話を置いてそれからあやみに声をかける。
そう、今日の続きはまた二人で出かけた時にそういう雰囲気になったらすれば良い。
暗くしていた明かりを戻して、改めてあやみの姿を見れば、よく理性が保っていたと思う。
こんな魅力的な子とあんな距離まで近づいていて、あのまま延長していたら、冷静でいられる筈が無かった。 「あ.....はい」
あやみは残念そうな顔をして小さく答えた。
あのとき、覗きこまれるようにして見つめられてから、
あやみは再び目を合わせなくなった。
店を出ると、雰囲気や佇まいもいつも通りになって、なおさら別人のようだ。
あんな距離まで迫ったものを、今さら何かを話そうとしても上手く言葉が紡げない。それは、双方にとってそうだろう。
また黙ったまま歩いて駅まで着いてしまった。
頬まで重ねたのに、手を繋ぐことすらなく。
「それじゃあ、また今度......」
別れ際、カラオケに誘ってくれた時のような笑顔は表れなかった。
その代わり、頬が赤く染まり、それは困惑の色だった。
次に会えるのは月曜日だ。
いつも通り登校するとよい。 また目を合わせてくれなくなり、駅までの間も無言。
あやみの方から声をかけてこないのは勿論、こちらからも話せなかった。
この状況だけを見ると、切り上げたのは失敗だったかもとも思う。
「うん、それじゃ」
別れ際に笑顔も見せてくれない。
頬は赤く、困惑しているようにも見えた。
気持ちを抑えて一旦落ち着くために切り上げたのに、その日帰ってから、そして日曜も。
あやみのことばかり考えて過ごすことになり、かえって落ち着かなくなっていた。
そして月曜、いつもの通り学校に向かう。 電車の中でもあやみの姿は見かけなかった。
あんなことがあった後だから何か話したいものだが仕方ない。
一人で学校へ歩いて行き、教室に入る。
「おはよう」
隣から話しかけるのは鈴木ひな。いつも通り本を読みながらの挨拶だ。
だが、すぐに本をしまって話はじめた。
「土曜日、どうだったの?」
土曜日というのは間違いなくあやみのことだろう。
あやみが弘樹のことを好いていると予見したのも紛れもなくひなである。
しかし、この場で話すのは好ましくないだろう。誰かに聞かれるかも知れない。
だが話さない訳にもいかない、とも思う。
話すためには、場所を設定する必要がある。
>昼に食堂で
>放課後に教室で 登校中にあやみの姿は見つけられず、会話することはできなかった。
教室に入ると読書中だったひなから声をかけられる。
「おはよう。えっと、その話は…」
予想していたことではあるがやはり土曜日のことを聞かれた。
隠せるわけがなく、話さないといけない。
だが今この場所でというのは躊躇われて別の機会を考える。
>放課後に教室で
昼に食堂でというのも一瞬考えたが、またまおに見つかりそうだ。
あるいはあやみ本人に出会す可能性もある。
「放課後に話すよ」
悩んだと言うほどではないが考えた結果、放課後に教室で話すのが無難に思われた。 放課後に話す約束をして、その日は普通に過ごした。
全ての授業を終えると、生徒が次々と出て行く。
自分なりに暇を潰しながら誰もいなくなるのを待った。
しばらく経つとひなと二人だけになった。
読書をしていたひなが本を閉じて話し掛ける。
「それで、どうだったの?デート」
早速本題から入った。
あの状況をどう説明しようか。嘘をついてみても構わない。
>何もおこらなかった(嘘)
>少しいい感じになった
>凄いことした(嘘) 授業が終わって教室に残り、ひなと二人だけになるまで適当に過ごして待つ。
ようやく二人きりになるとすぐ、そして本題をいきなり切り出してくる。
どう答えようか少し考える。
>少しいい感じになった
何も起こらなかったとか、逆に凄いことをしたとか、嘘をついた場合を考えてみる。
きっとひなから追求されてしまう、あるいは見抜かれてしまうだろう。
確かな推理力があるのは既に知っているのだから、下手な嘘は付けない。
「まあ、少しいい感じにはなった……かな。
ああいうの慣れてないから、あれで良かったのかわからないけど」
いい雰囲気になったのは、事実。
だがその後で延長をせず途中で終わってしまったことで、少し引きずるものがあったのもまた事実。
その微妙な感じは、何とも言い難いような口ぶりからも伝わるだろう。
具体的に何が起きたのかは、当然明かす気はない。 「へぇ〜どんな感じ?......言うつもりはないのかな?」
ひなは起こった出来事を細かく言うことを要求する。
しかし、具体的なことを明かすつもりのない君が黙っていると、
距離をぐっと詰め覗き込んでくる。
かなりの至近距離で見つめるがカラオケでのあやみ程ではない。
暫く見つめて言うつもりはないことを察するとニヤニヤし出した。
「あそう...。手、くらいは握ったかな?」
そう言うと、君の手を握ってくる。
「それとも抱き締めたり?」
君の胸に手を置く。
「キスも...しちゃったかな?」
今度は何もアクションを起こさなかった。
しかし、ニヤニヤともニコニコともつかない、不気味だが純粋な笑顔がある。
突然手を握ってきたり、身体に触れてきたり、明らかに普通ではない。
でも、キスまではせず、この距離...あの時のあやみと感じが似ている。
これが読書家ひなの推理力なのだろうか。
しかも二人きりの教室...誰かに見られればまずいことになる。
また、このままでいたら何をしてくるか分からない怖さもある。
君はこの状況をなんとかしなければならない。
「ねぇ弘樹くん...少しいい感じって...どこまでしたの?」 「……」
細かく言うのは拒否するために無言でいると、ひなが距離を詰めてくる。
カラオケでのことを思い出すが、そこまでの距離ではなく、まだ落ち着いていられる。
だが、手を握られて、胸に手を置かれ、距離をさらに近くされると、動揺してしまう。
そこまでして知りたいのだろうか、という疑問が沸く。
同時にひなもまた可愛く、そんなに近くでいると冷静でいられなくなりそうにもなる。
この後、何をしてくるのかわからない不気味さもあった。
そして、ここはカラオケとは違ってただの教室であり、誰かに見られるというリスクも。
当然それらを考えた上でのひなの行動なのだろう。
「い、言うから…」
結局正直に話すことにしてしまった。
「手握ったり、少し顔が近づいたり…そんな感じだよ」
観念して言う態度に演技らしさはなく、正直に明かしたことは伝わってくれるだろう。
窮地を脱するためにこんなことを喋って、あやみには申し訳ないことをしてしまった。 「ふ〜〜ん......なーんだ」
じっくりと見つめると、本当のことを言っているとわかって離れる。
少し残念そうな顔をしている。
「ちょっと期待してたんだけどなぁ〜...」
そう言うとまた近づいて、耳打ちをしてくる。
「...エッチぃこととか......///」
それだけ言って、じゃあねと去っていく。
普段大人しいひなだが、ひとたび話せば鋭い推理力を見せてきた。
今日は今までになく大胆な行動、発言だった。
教室を出る時、誰かに軽い会釈をした気がする。
まさか、誰かが見ていたと言うのだろうか?
君は確認することにする。
>あやみ
>まお
>気のせいだった (離れたひなは何故だか残念そうに見えた)
(一体何を期待していたのかは分からないがとりあえず離れてくれたことにホッとしていると)
「……っ!」
(再び側に寄ってきて耳打ちされた内容に思わず目を見開いた)
(そんなことまで予測していたのかという驚きと共に、そんなことは絶対無いと否定しようとするが)
(驚いているうちに去っていた)
(大胆な振る舞いに加えてその行動力、普段のひなからはまるで想像できない姿だった)
(そんなひなの後ろ姿を驚いたままの顔で見送っていると、教室を出るときに会釈しているように見えた)
(まさか誰かいたのか、咄嗟に危機感を抱く)
(出口の方に自分も歩いて行き、そこにいるはずの人を確認する)
>まお
「……あ、渋川先輩。こんにちは」 「あ...えと......」
まおも流石に今回は困惑の表情を見せる。
「彼女、いたんだね......ゴメンね、前『浮気かー』なんて言って...」
そう言うことではない。
確かにあのときからかわれたのは困ったが、
そう言うわけではなかった。
完全に勘違いされてしまっているのは明らかだ。
きっと教室内でのひなの一連の行動を見ていたのだろう。
しかしなぜ、まおは一つ下の学年である弘樹の教室前にいたのか...。
まおの困惑には別の感情も混じっているように見える。
きっと申し訳なさなのだろうが、それも少し違うような気がする。
「あの、会話の内容は聞こえなかったから......そ、それじゃ!!」
あたふたした様子で走っていってしまう。
走っていくまおのポケットから何か小さな紙がひらひらと落ちた。
拾い上げてみると、そこに書かれていたのは
(カラオケSONGLOVER50%割引券!!)
君はまおを追いかけてもいいしそうしなくてもいい。 まおは困惑の表情を見せていた。
やはり見られていて、しかも勘違いされているようだ。
「いえ、違うんです。そういうことじゃないんで」
否定するが、さっきのひなの行動がどういうものか説明するのは難しい。
そもそも自分ですら全く予想外で驚かされていたのだから、言葉が出てこずに考えてしまう。
結局、勘違いを解こうとする前に、まおは走っていってしまった。
追いかけようとも思ったが、なぜあんなにあたふたしていたのか分からない。
それに、走っていく途中で紙を落としていたのを見た。
拾い上げてみると割引券…店名を見るにまおが働いている店のだろう。
この間店に行くと話したから、わざわざ割引券を持ってきてくれた…そう推測できる。
今追いかけるよりも、店に行って話をすればいいと考えた。 それから何日か経ち、金曜日。
弘樹はいつも通りに学校へ登校した。
あれ以来ひながからかって来ることもなく、
今まで通り朝に読書をしながら挨拶してくる、それだけの関係に戻った。
あやみも会う機会が少なく、あまり会話らしい会話をしていないが、
前のように少し無愛想なくらいの態度に戻った。
ただ変わったのはまおだった。
冗談を言ったりからかって来たりというのもなくなり、
避けられているわけではないが遠くなった気がする。
色々と困らせる先輩だったが、こうなるとなんだか寂しい気もする。
今度カラオケ店へ会いに行ってもいいが、
そういえば以前ひなにも誘われていた。当の本人も忘れているんだろうが。
そんなことを考えながら食堂で食事を摂っていると、
「先輩、こんにちは」
あやみがやってきて隣に座った。
「明日って空いてますか?突然ですみませんが...」
君は土曜日の行動を選択することができる。
>またあやみと出掛ける
>ひなとの約束を守る
>まおの店へ会いに行く 【来れない日が続いて間隔開いてしまった、申し訳ない。まだ見てたら続きお願いしたいけど大丈夫かな?】 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています