>>17
(ユリアの「お客様向け」の言葉が、徐々に震えて、弱々しくなってくる)
(キラキラと光る涙を溜めた青い瞳は、頼るべきものがない悲壮感にあふれていて)
(それを鑑賞する男は、嗜虐的な興奮をかきたてられた)
(もし彼が、もっと即物的で短絡的な思考回路の持ち主だったら)
(この弱々しくも愛らしい、子犬のようなユリアへの欲望を抑えられず、押し倒すぐらいはしたかも知れない)
(実際、今も彼のチンポは、ユリアを犯したくて犯したくて、ガチガチに勃起しまくっていた)
(先ほど射精してから、まだ五分も経っていないというのに……まるで豚のような精力である)

(こんな見た目も態度も不気味な男に、アイドルとして長く対応し続けるのは、さすがのユリアでも困難だっただろう)
(実際、男から見たユリアは、もうそろそろ潰れてしまいそうな雰囲気だったが……)
(彼が「姪っ子」の話を持ち出すと、急に雲間から陽が射し込んできたかのように、ぱああっと表情が明るくなった)
(もちろん、男自身が怖がられているのは変わっていないが、それでも崖っぷちで踏みとどまったような感じはあった)
おっ! 覚えててくれたんだー!
ユリアちゃんなら、毎日たくさんファンレターをもらってるだろうに、その中のひとりをちゃんと覚えてるなんて、すごいねー!
ジャム、美味しかった? 姪はまだ料理始めたばかりで、しかもアレンジャーだから、ちょっと心配でねー。
フルーツや砂糖以外にも、健康にいいスパイスとかいろいろ入れてみたとか言ってたから……変な味になってなかったらいいんだけど。
まあ、ちゃんとカラダにはいいと思うから。全部食べてくれたら、きっとあの子も喜ぶよー。
……ところで、ユリアちゃんはどんな風に食べたのかな? やっぱりパンに塗ったのかなぁ? それとも、ヨーグルトに混ぜたりしたのかなぁ?
舌触りとかどうだった? ニオイは? ベトベト感はちょうど良かった?
それとも、若い子はもっとさらっとしたジャムの方が好きなのかな?
ファンレターの返事にも、アドバイスを書いてくれたみたいだけど、もっと細かい感想を教えてくれたら、あの子に伝えておくよー?
(先ほどまでとは打って変わって、姪っ子を可愛がっている普通の優しいおじさんのように、素朴で自然な笑みを浮かべて話す男)
(もちろん、リアルタイムで小学生アイドルの手にザーメンを塗り込んでいるという事実は変わっていないし)
(問いかけている内容も、結局はユリア自身に、ザーメンジャムの味の感想を喋らせようとしているようなものだ)
(……それにしても)
(架空の「姪っ子」を間に挟む方が、男自身が単独で挑むより、ユリアの警戒心を解きやすいようだ、と、話しながら男は気付いていた)
(だから、ついでに用意してきた仕掛けも、「姪っ子」を利用して、ユリアに渡そうと決意した)
……あ、そうだ。姪からね、ユリアちゃんにプレゼントしてほしいって、預かってきたものがあるんだよ。
ほら、これ……あの子の手作りのぬいぐるみだよー。可愛いでしょ?
(彼は、ユリアと握手していない方の手で、ズボンのポケットを探り、手のひらサイズの小さな熊のぬいぐるみを取り出した)
(ピンク色の布製で、ファンシーショップで売られていてもおかしくない程度には可愛いデザインだ。それを、ユリアに差し出す)
ジャムを受け取ってくれたユリアちゃんなら、きっとこれももらってくれるって言って、何日も頑張って縫ってたんだー。
よかったら、もらってくれないかな? 小さいから場所はとらないし、ぜひユリアちゃんのお部屋の、新しい住民にしてあげてよー。
(無害そうな、可愛いクマちゃんだが……この男のプレゼントが、無害なもののわけがない)
(実のところ、そのお腹の中には、高性能な盗聴器が仕込まれている)
(ガラスのビーズに見える目は、小型カメラのレンズだ)
(しかも、それだけではない。上の二つの機器の他にも、発信器を仕込んである)
(このクマを部屋に置いたら、ユリアはプライベートを自由に覗かれるようになってしまう上、自宅の場所さえバレてしまうことになるだろう……)

(その後、男は周りの人たちに怪しまれ始める前に、絶妙なタイミングでユリアから離れ、会場を立ち去った)
(彼が憧れのアイドルとの握手と会話を楽しんだ時間は、実に十五分近く)
(手に塗り込んだザーメンが、半分ぐらい渇くほどの長っ尻であった)