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(毒と剣撃の共同作業で、悪魔の優位で進んでいた戦いは一気に押し切り、決着をつけることとなった)
(裸身に剥かれたナオの身体は、惨めな姿であるとともに、清浄な式場にふさわしく傷一つない白で)

(ナオの制止を、誰一人気に留めることはなく――)

ちゅぅ……
(重なった唇は、見せつけるように、長く、唇を絡め合わせるもので)
(これをもって、花嫁は悪魔のものへ、完全に堕ちる――魔法的契約の意味をも持つ、決定的なキス)
(ナオが、今まさに、彼女を守れなかったことを知らしめるキスだった)
(鐘の音が響く中、ナオの全てが終わる。あるいは、始まる――)


(ナオが目を覚ますと、最初に感じられるのは、窮屈さだろう)
(身体をぎゅっとコルセットが締め付け、レースをふんだんに使った、ドレスの下に着けるための下着が着せられている。)
(先の毒が抜けないか、あるいは別の毒でも飲まされたか、身体はじんじんと痺れて、満足には動けないまま)

お目覚めかな?さて、君にもお嫁さんになってもらうよ
(声をかけてきたのは、先ほどの悪魔。上半身裸で、ラフなズボン一枚の姿で)
(ほのかに女の臭いが漂ったままであるが、ナオはこの臭いを知っているだろうか)
(つまりは、”初夜”のあとであった)

ハネムーンに行く間もないが、次の式を挙げるのを先にさせてもらうことにしたよ。そしてだ、君には特別幸せな結婚を迎えてほしくてね
(芝居がかった物言いで、ドレスを持ってくる)
(先ほどの花嫁が着ていた、薄くクリーム色がかった白ではなく、青みがかった透き通るような白いドレス)

君の為に、新しくしつらえたものだよ。シャインエンジェルの青いイメージに合わせてあるんだ
その次が、これ。君の持っていたものから、デザインを借りたんだ。相対して感じたけれど、恐ろしくも、天使の力を帯びた君は、本当に美しかった
(ナオの短剣をミニチュアにしたブローチ。それはシャインエンジェルとしてのナオへの、最大の賛辞であり、)
(同時に、もはや敵ではないという冒涜でもあった)