街中で不意に感じた感覚、それは脚を進めるごとによりはっきりと研ぎ澄まされていく。
本部に顔を出した帰りのスーツ姿にも構わず、あたしはその方向へ駆け出していた。
(それだけじゃない……誰かが助けを求めてる)
正義の味方の直感というものだろうか、自慢じゃないがこの勘がハズれた事は一度も無い。
そこには必ず危機に陥った誰かがいる。そう思うと少しでも速く、と体が突き動かされる。
徐々に現場が近づく。奥まった路地のそのまた奥、黒く大きな体がいくつも見える。
そしてその中にひときわ小さく震える、守るべき命が見えた。
「――お待たせっ!助けに来たぞ☆」
アスファルトを蹴って飛び上がる。
空中であたしは姿を変えた――守りたいものを守れる力を纏った、戦士の姿へ。
「うるぁぁあああっ!!」
落下の重力を乗せた踵落としが黒い獣の頭部に叩き込まれる。
着地点は助けてと叫んだ男の子の目の前、彼の盾になるようにそこに立つ。
【こちらこそよろしくお願いします〜】