男の子から一瞬にして禍々しいものを感じた。
離れなきゃ――思考が体を動かすよりも数段速く。
「ぐ…あ゛ぁぁーーーーーっ!?」
握った手を伝って強烈な痛みがあたしの体を焼いた。
肌を、血管を、骨を走るそれが強力な電撃だと分かった。
すぐにその場を離れたくても、彼の手があたしを放そうとはしなかった。
目の前が真っ白に染まる。
「――…っ、あ……う、うぁ……」
しばらくしてやっと電撃から解放され、あたしはその場に崩れ落ちる。
ハァ、ハァ…と呼吸を整えようとするが、呼吸器官までもが痺れてうまく機能しないらしい。
完全に不意打ちを喰らってしまった。
まだ霞む目を彼に向ける。そこにいたのは助けを求めていた彼では無かった。
悪魔――そう呼ぶに相応しい、禍々しい姿。
「……く、ぅ……一杯食わされた、ってか……小芝居ご苦労なことで……っ」
あたしを嘲笑いながら見下ろす真赤な瞳。
悔しさに歯噛みする。ハナっからあたしを狙ってたんだ。
「うぁ……や、やめっ……離せ、このぉ」
地面から不気味な触手が蠢き出る。見るだけでグロテスクなそれがあたしの手足に絡んで抑えつけた。
ただでさえ電撃で痺れて満足に動けないのに、えらい念の入れようである。
「……なめんなよ、おチビさん。ドッキリがたまたま上手くいったからってチョーシ乗んな☆」
言うことをきかない体で彼に言い返しながら、体の中の魔力をダメージの回復にまわし始めた。
ある程度動けるくらいにまで回復出来ればチャンスはあるはず。