開いた……っ
(思っていたよりも雨が強くなるの早くて、玄関に辿り着くころには制服はすっかり濡れていました)
(半袖から伸びる腕も水の中に突き入れた後のようで、そんな手で扉に手を伸ばすと、すぐに開きます)
(思わずホッとしたような声がもれました)
(扉に鍵がかかっていたら、ここで雨宿りか森の中に戻るかするしかなくて、きっと風邪を引いてしまっていたでしょう)
お邪魔します……
(もしも誰か先客がいた時のことを考えて、一応声をかけて入りますが、返事はありません)
(靴箱の上にある人形が最初に目について、興味を持ちながらもまずは周りを確認しておきます)
(靴が置かれていたりせず、本当に誰も居ない無人の廃墟のようです)
(……いいえ、こんな状態ですから靴のまま上がったという可能性も一応あります)
(私も土足で入るべきかと一瞬考えましたが、雨で濡れた靴を履き続けるのも気持ちが悪かったので脱ぐことにしました)
(黒のハイソックスは埃が付くと目立ってしまうのでそれも嫌でしたが、見た目を気にしている余裕はありませんから)
不思議な人形……入らせてもらうね?
(ローファーを玄関に並べて置いてから、さっきの人形を確かめます)
(埃が被っていてもその人形は何か存在感があって、どういう物かは何もわかりません)
(日本の物…とも言いきれず、ヨーロッパの物とも言いきれない…目的も役割も手がかりが何もありませんでした)
(もしもこれが怪談ならきっと動き出すのでしょうが、まさかそんなことは無いだろうと思いつつ、挨拶をしておきます)
(もしかしたら、この人形が廃墟の「主」……なんてことがあるかも知れません)

(挨拶を終えてから、私は暗い廊下の方を慎重に進んで行こうとします)
(玄関の扉は開けたままにしておいて、光を取り込むようにしていますが、それでも奥は暗く見えません)
(雨宿りが目的ならこの玄関だけで十分なはずですが、一度館に入った私には、入る前の迷いは無くなって好奇心の方が勝っていました)

【森に入る所から書こうとしたらいきなり長くなってしまいました。読み辛かったらごめんなさい】
【雨が降るのは行動の理由として助かりましたし、確定という程でもないと思うで大丈夫です】