普通であれば各表紙に描かれる登場人物はヒロイン達が順に登場するものなのだが、
必ずメインに据えられるのは本作の最大のトリックスター、
バイセクシャルの性豪ヒロインというチョイスで、読者の頭にクエスチョンマークを与える。
内容で言えば今巻の場合、その彼女が性豪へと至るまでのエピソードや、
浴場でヒロインたちが突如として始めるマットプレイ、主人公の男の娘化など、
見るものを唖然とさせられるコメディを超えたギャグの数々は更に読者の頭を混乱させるが、
これこそが本作の魅力、本質といっていいと思う。
しかしアクが強く絶対に人を選ぶだろうと予想され、
長いこと著者の作品を読んできた自分でも理解に苦しむことがあり、具体的には先の主人公の男の娘化がそれである。
現在では主人公の女装や、男の娘は珍しくない題材であるが、この二つは似て非なるものであり、
主人公が女装したら可愛くなるという描写はあったとしても、決してスカートの中は描写しないものである。
けれど、著者は女物の下着を履かせた主人公の股間のふくらみをチラッチラ、チラッチラ見せつけ、
主人公を男の娘という性の対象となるように読者に印象付けさせる。
これは今まで竿役として読者が感情移入してきた男に欲情させるということであり、
つまり同性愛と同時にナルシシズムをも読者に与える形になっているのである。
自分はこの場面を見てその意味を理解したとき戦慄を覚えた。
エロマンガ家には褒め言葉として「頭おかしい」と作者に対して冠し、評することがあるが、
自分はこの著者に対してはナチュラルなサイコパスの気を感じ、別の意味のおかしさを感じてしまう。
よく見ないと節操なくネタがちりばめられている様に感じさせられるが、
以上のようにおそらく著者は意図的に奇妙に描いているのではないかと想像され、
だからこそ本作をどういった結末で締めくくろうとしているのか非常に興味深い。
ついにバイセクシャル性豪ヒロインはメインヒロインである主人公の姉にまで毒牙を向け始め、
いよいよ収集が付きそうもなくなってきているが、著者の過去作の例を見ると、
清々しいノスタルジックな作品に纏めてしまいそうに思え、次の展開がどうなるのか目が離せない。