こういった内容の作品を「小林さんちのメイドラゴン」の作者のとか、
「ちょっぴりエッチ」といった文句で宣伝してしまう秋田書店に戦慄を覚えるのと同時に頼もしさも感じてしまう。
物語は会話劇と同時にモノローグや一人語りで構成され、日常的な話題は二人の掛け合いでコメディタッチで描かれ、
時折挟まれるシリアスな話題になると主人公目線で彼女や自分自身の難点、課題を鋭く考察する場面が描写される。
面白いのがその客観的な状況把握をしているのが第三者でなく主人公であるということと、
かつ、その考察に未熟な点がないということである。
普通の作品なら主人公を見守り諭す役割のキャラクターが第三者として存在するのだが、
この作品ではそれを主人公が兼任するという、一種のチートキャラのように設定されているのである。
そのため、二人の関係に亀裂が入ることがまず困難な状況であり、ラブストーリーとしては普通ありえない。
それでいながら緊張感のあるストーリーが展開されるのは、交通事故のように唐突に挟まれる重い設定のためであり、
これはチートキャラのラブコメディに丁度よいアクセントになっている。
ネタバレになるので既刊の話になるが、未だに本名を名乗れないヒロインであったり、彼女の母親が既に故人であったり、
こういった伏線がどの様に回収されるのかとても気になる。
しかし母親がモノローグで真面目な話をしている場面でもパイズリしているくらい比重は圧倒的にコメディよりなので、
余り気にせず気楽に読んでほしい作品。