同じアンドロイドを増やすという彼女の話に主人公は軍団を作って日本を征服するつもりじゃないかと問うと、
このままでは征服する価値もなくなるとシニカルに返し性倫理で自ら縛り滅ぶならそれも仕方ないと答える場面は、
主人公と共に読者も返す言葉がなく考え込んでしまうだろう。
題材はVRやヴァーチャル空間でのコミュニティに果てはラブドール業界へと、
一昔前なら完全に夢物語のSF話だったものがほぼ現実に起こりつつあるものが選ばれており、
設定の取捨選択とそれを物語に組み込む構成が巧みで面白く同時に現実の技術の進歩に改めて驚かされる。
物語は彼女を私物化・悪用しようとする存在により暗雲が立ち込め始めるという、
こちらもお馴染みの展開ではあるが現実に起こりうる状況と細やかな説明でかなりぞっとさせられる。
主人公の思い人がアンドロイドにレイプされそうな場面で人に危害を加えられないのではなかったのかと問うも、
指示した黒幕が自分の命令が優先されるのだと簡単に言い放つ場面にハッとさせられてしまった。
描画の面では著者がPC作画に移行してから女性の乳首の光沢など艶のある女性の裸体描写に磨きがかかっており、
本作だけに限らず過去作もそうなのだが性描写が淡白(絶頂描写がほぼない)なのがもどかしい。
王道とも言えるSFストーリーを全て現在現実に起こりうる技術で補いさらにエロティックに仕上げたとても高度な作品。