地味と思える人妻が不倫をする話、ハンドルネームで呼び合う男女が旅行する話、
暴力的な男からストーカーされる女性を匿う話、態度の悪い妻に気弱な夫が傅きながらデートする話、
とある女性に自身の恋人との性体験を告白する話など、
終盤まで進んだ展開に意外なオチが用意され舌を巻くその読後感は、
テレビドラマ「世にも奇妙な物語」とか「ミステリー・ゾーン」などのようなそれに近い。
フィクションといっても現実離れしたオチがあるという訳ではなくどの話も実際にあってもおかしくない物で、
これまで数多くの体験談を執筆してきた著者がそれらに「こうだったらどうだろう」と妄想したものではないかと思う。
しかしそれは自然にある美しさに人為的に手を加える盆栽や剪定のようなもので下手をすれば台無しになりかねない。
その点で本作はとても上手く調整されておりまるで白昼夢を見ているかの様な、
現実とも夢とも思える奇妙な印象を受けながら読み進めさせてくれる。
ネタバレになってしまうので詳しく説明できないのがもどかしいのだが、
これまでの著者の作風を知っているとより楽しめるのでできれば前作、
「淑女たちの都市伝説 〜蜜桃のしたたり〜」を読まれてから本作を楽しんでもらえればと思う。