今巻ではまた新しい登場人物がヒロインとして現れ主人公と深い関係となるが、
彼女は主人公の通う大学の女性准教授で敬虔なクリスチャンであり四十路にして処女という設定。
彼女の処女と言う設定は彼女を取り巻く物語の大きな鍵となっており、
宗教観や性倫理そして社会的地位といったものと深く関わっていると思われ主人公はそれらに飲み込まれてしまう。
本作はこれまでも社会的描写に風刺とも取れるものが所々見受けられてきたが、
今回はそれがより鮮明に描かれる様になっており例えばミサという名目で富裕層の乱交パーティーが行われていたり、
京都で開かれる学会の通り一遍等で中身のない空虚な内容の描写に表れている。
そんな中で生きる彼女の想いは…という大人のそれも大人の女性のさらに恋愛観でなく人生観を描いた、
男性作家が扱うテーマとしては珍しくまた難しい内容となっている。
しかし男性作家であるからこそこの様な内容でありながら男性読者にも訴求するものがあるのではないかと思う。
男性読者としては女性読者の感想を聞いてみたくなるそんな不思議な作品。