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改行くらいしような

美少女文庫、もといジュブナイルポルノ小説、そしてライトノベルでは、実在する特定の地方が物語の舞台となりその地方在住のキャラクターがその地方を愛すること、というのはほとんどない。
業界の間では厳に慎まれている「暗黙のルール」があるのかもしれない。
しかし、今作の美少女文庫「信長とセーラー服 時をかける大和撫子」は、そんな「暗黙のルール」を大胆に打ち破った作品であろう。
ヒロイン一条静香は愛知県名古屋市在住であり、名古屋市内の名門お嬢様学校に通う女子高生である。
物語の中には、静香がタイムスリップし物語のカギとなる場所である名古屋城を始め、
大津通・出来町通・外堀通・桜通・名古屋市役所・地下鉄市役所駅・名古屋市役所交差点・名城公園・庄内川・地下鉄久屋大通駅・日本銀行名古屋支店・名古屋駅など、
名古屋市の実在する名所や道路・スポットが序章から終章まで随所に出てくるのだ。
静香の通う学校も、劇中にある全寮制ではないが、文中から名古屋三大お嬢様女子高「SSK」のうちの一校がモデルとなっているのも、名古屋市在住の読者なら容易に想像がつくだろう。
何せ、学校名がその実在する名古屋市の地名・区から容易に想像させるものでもあるからだ。その近くにはこれまた実在する愛知県有数の超進学校がモデルとなった学校もチラッと出てきたりする。
このため、名古屋市在住の読者・美少女文庫ファンにとっては、今までにない「郷土愛」を読めば読むほどに、「ああ、あそこでこんなことが起こっている」とこの上ないワクワク感を全身で読み込んでしまう一冊である。