「フフフ、いい女だぜ。たまねぎ男さん好みのいい尻した子持ちの人妻でねえ。元はファーストレディをやっていたんだ」
走る車の中で立花は日本に逃亡したたまねぎ男に説明しはじめた。
政権与党党首のことだ、誘拐してきたか、政界スキャンダル解決のカタにしてN国党の商品にしたにちがいない。
「小泉クリステルという女でねえ。毎晩客の指名が多くて、たまねぎ男さんにまわすのもひと苦労だったんだぜ」
立花は恩きせがましく言った。

なかに入ると、女がいた。小泉クリステルだ。
なるほど、思わずふるえがくるすごい美人だ。
徹底してみがきあげられたのであろう、洗練された美しさがきわ立った。
髪はアップにまとめられ、化粧は一分の隙もないほどで、薄いブルーのドレスに身をつつんでいるさまは、人工的に完成された肉人形と言ってもよかった。
「クリステル、客にあいさつしねえか」
立花がドスのきいた声で言った。
「小泉クリステルです。よろしくね……今夜はどんなことでもなさって」
クリステルはつくり笑いをした。
「フフフ、クリステル、今夜は特別に気合を入れてつとめろよ。いいな、朝まで休まずに、ビシビシと尻をぶっこわされてもらうんだ」

「いい女だ。あんた本当に元ファーストレディか」
「小泉クリステル、43歳。れっきとした野党に転落した元首相夫人ですわ」
「日本のポピュリズムは怖いねえ」
たまねぎ男はわざとらしく言った。

「クリステル、浣腸されたいわ……お尻を責められるのが好きなの」
クリステルはフスマを開くと、浣腸の用具を取りだした。三千CCも入る巨大な浣腸器、グリセリン原液の薬瓶、コールドクリームに脱脂綿などを机に並べていく。
「あなた、これ使ってみる?クリステルにはつらい責め具だけれど」
クリステルは不気味に光る金属の器具を見せた。肛門拡張器である。
「こんなものを使われると思うと、身体がふるえるわ。お尻の穴のなかまで見られるのね、あなたに」
「フフフ、うれしくてふるえてるんじゃねえのか」
「…………」
クリステルは黙って、子供用のオマルを取りだした。
「ここで出してみせますか?それともおトイレ?あなたのお好みしだいですわ。でも、できることならおトイレで……」