弥英子もまた内蔵の苦悶のなかにいた。
黒本を渡されたクリステルと違って、機械パルプで薄められたとはいえ、今では作られていない特殊な表紙が、弥英子を激しく苛んでいた。
クリステルにはタレント人気と未来の総理の夫がある。そのことが、弥英子の命取りとなった。
弥英子には、一TVマンの夫と、プライムニュースぐらいの出演しかなかった。

「ああ、『高校生と家庭教師』……」
「こいつは驚いた。弥英子のほうが先に間違えやがったぜ」
「ああ、あ……出る……出ちゃう……『エネマルディ』ッ」
編集長が便器をあてがうと同時に、弥英子はドッとほとばしらせていた。