破瓜のそれとわかる血や、男の体液の混じったものが垂れている恥ずかしい部位の写真。行為の最中の耳をふさぎたくなるような肌のぶつかり合う音・・・。
免許証やスマホのデータを抜き取られ、警察に訴えると職場や友達にばらすぞと脅しを掛けられた。
「いい体だったぜ・・・またな」
うずくまる彼女の背中から尻を名残惜しそうに撫でまわすと男はアパートから立ち去った。しばらくすると近くでバイクのエンジン音が響いてきた。
男が立ち去り、しばらくは放心状態でいたが、やがて気を取り戻した。泣きじゃくりながら浴室に駆け込み、ボディーソープが空になるまで体を何度も何度も洗い続けた。
部屋に戻ると、もう外は空が白みつつあった・・・。
整頓された彼女の部屋には似つかわしくないほどに乱されたベッドのシーツは、男のおぞましい匂いが残され、シーツには純潔であったことを示す赤い染みがところどころについていた。
(警察・・・)
彼女はふと思ったが、次の瞬間、動画や写真、奪われた個人情報を思い出した。脅された文句が彼女の耳にこだまする。
警察に行って、自分のされたことを刑事さんに説明するなんて、とてもできない・・・。それにもし万が一あの写真や動画がばら撒かれたら・・・。
彼女は、自分だけでなく他の女性も暴行魔の毒牙にかかっているだろう、自分が勇気をもって警察に行けば、次の女性が被害に遭わずに済むかもしれない、ということは分かっていた。
ただ、勇気が出せず、頭ではわかっていてもどうしてもできなかった。
「はい、申し訳ありません、熱が出て今日はとても出社できません・・・」
その日の朝は出勤できずに家に閉じこもっていた。
(病院・・・)
でも医者とはいえどとても昨夜の出来事を説明するわけにはいかなかった。まだ痛みこそあるけど、出血は止まったし・・・。
体の傷よりも今は、妊娠していないかだけが怖かった。
一日一日時間が経った。あの時のシーツや、身に着けていて引き裂かれたパジャマや下着はすぐに処分してしまった。
怖くて眠れず、なにより一刻も早くあのアパートから出たかったので、先週アパートも別のところに移ったし、ベッドも新しく買いなおした。
本当に幸いなことに、生理も来た。