処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第22話
ここは「処女はお姉さまに恋してる」と「処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー」のSSスレです。
優雅に礼節をもって進行していきましょう。
sage進行で。
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Q&Aテンプレは>>4-5 Q&A その1
(;´Д`)<オリキャラ出したいんだけど……
(・∀・)<オリジナルキャラが原作キャラよりも目立つ物、また、同程度の立場である場合、受け入れられない
事の方が多いようです。そんな作品の場合は投稿所の方が無難ですが、最終的な判断は作者さんに
委ねられます。
もし、これは大丈夫だ、と思ってスレに投下して、投稿した作品にケチをつけられたとしても、
それはそれで一つの事実ですので素直に受け止めましょう。
次の投稿時にその経験を活かしてください。
(;´Д`)<そんな固い事言ってたらオリキャラ使えないじゃん
(・∀・)<そんなことはありません。原作に登場してはいないものの、その世界に間違いなく存在しているキャラ
(一般生徒・店員・通行人)等のいわゆるMobは、登場させても問題ありません。
但し、それでもし投稿した作品にケチをつけられてとしても、それはそれで一つの事実ですので素直に
受け止めましょう。次の投稿の時に(ry
(;´Д`)<原作キャラの性格を弄りたいんだけど、どの程度なら大丈夫なの?
(・∀・)<極端に変わっていなければ大丈夫です。が、だからといってスレに投稿してケチをつけられてとしても、
それはそれで(ry
例外的に、笑いを取りに行った場合には受け入れられる事もあるようです。 Q&A その2
(;´Д`)<瑞穂ちゃんや千早ちゃんがあまりにも可愛いので、おかま掘りたいんだけど……
(・∀・)<どうぞ掘ってください。但し、作品が出来上がったときはスレの方ではなく、投稿所へお願いします。
逆に瑞穂ちゃんや千早ちゃんが掘っちゃった場合も投稿所を利用してください。
(;´Д`)<マリみてとか、極上生徒会なんかとクロスオーバーさせたいんだけど……
(・∀・)<クロスオーバー物は、混合物の元ネタを知らない人もいますので、投稿所の方へお願いします。
(;´Д`)<瑞穂ちゃんや千早ちゃんを襲った○○が許せません! お仕置きしてもいいですか?
(・∀・)<構いませんが、必要以上の暴力・陵辱・強姦・輪姦・監禁・調教・SM・スカトロ・グロ・強制妊娠・
達磨プレイ・死姦・人体改造・触手・食人等、読み手を限定してしまうような表現がある場合は、
投稿所の方へお願いします。
また、直接的な表現が無くても鬱な展開になった時は受け入れられない場合もあります。
(;´Д`)<携帯だから投稿所使えないyo!使えるけど投稿所ヤダ!
(・∀・)<仕方ないので事前に1レス使って傾向報告、あぼーんできるようにコテ、ケチつけられても
文句言うのはやめましょう。でも可能な限り投稿所利用してください。
(・∀・)<おとぼくの雰囲気に合わないと思われる作品は投稿所へ、どうすればいいか分からないときは
皆に聞いてみて下さい。 以上
テンプレ、追加記載などありましたら補完宜しくお願いいたします。 只今パソコンが無い環境のため、リアル執筆中
目標はクリスマス おおよそのプロット完成
PC ないので、スマホからチョコチョコと投稿することになりそうです。
あと、東の扉様のEカードネタ 使わせてもらいます >>11
ええ、どうぞ。投稿楽しみにお待ちいたしております。
私も後編がもうすぐ完成しそうな状況です。もうひと踏ん張りします。 Eカードの後編、完成しましたので投稿させていただきます。
18レス分を予定しております。よろしくお願いします。 「薫子お姉さま、陽向さま、ご安心ください」
そう思って立ち上がった矢先、史がそう言ってきた。
「史がお2人のご機嫌を直す余興をご用意いたしました」
史はそう言って自分のカバンの中から何かを取り出してきた。
「ふ、史、それは……!」
〜Eカード 後編〜
「ぱらららっぱらーん♪ 周りの人の脳みそをいい感じに破壊しちゃう爆弾♪」
史! それって前にも似たようなものを持ってきたけど、とんでもなく物騒な名前じゃないか!
だいたい脳みそをいい感じに破壊するってどういうことだよ!?
「史! そんなもの、誰がいつ作ったんですか!」
「史が一晩でやってくれました」
って、またそのセリフ!?
「そんなもの作る必要ないでしょう! 爆発物取締法違反ですよ、それは!」
「ご心配には及びません。(ピーッ)主義による治外法権により、罪には問われませんから」
って、アリか!? そんなのアリなのか!?
「とにかく史、そんな物騒なものはしまって……」
「じゃあ千早、あたしたちに面白くない気分のままでいろって?」
いや薫子さん、ジト目で見なくてもそんなこと言ってないでしょう! 気分を晴らす方法は何もそれじゃなくても……。
「そうだそうだ! 千早お姉さまは1位だから面白いんでしょうけど、こっちはそれでも見なきゃやってられませんよ!」
「ですから、面白い面白くないの問題じゃないでしょう! 身の危険が迫っているかもしれないんですよ!?」
僕が必死に説得しようとすると、意外な方向から攻撃が来た。 「私たち、前の時見れなかったよね、優雨ちゃん!」
「うん、わたしたち、みてない」
初音さんと優雨まで……しかも以前のスイカ物語の時のことを張り合いに出して……。
「というわけで、さっさと火をつけちゃいましょう!」
僕が2人のジト目にさらされているすきに、陽向ちゃんが導火線に火をつけてしまった。
「ちょ、ちょっと……」
ジジジジジジ……ボンッ!!
爆弾が爆発すると、以前同様、白い煙がもうもうと立ち込める。
「ケホケホ……」
「ケホケホ……あ、相変わらずすごい煙ですね」
って、初音さんはともかく、あまり体が丈夫な方でない優雨は大丈夫なのか?
「コホコホ……」
「ご心配には及びません。この煙は直接吸っても人体に影響はありませんから」
史、1人だけ防護服を着たまま言っても全然説得力ないんですけど!?
でも、優雨を見ると、そんな悪影響をもたらしたということもなさそうだ。僕は一安心した。
そんなことを考えていると、食堂のテレビがプッとついた。テレビにはなぜか母さんの姿が映る。
「はーい! 千早ちゃん、寮の皆さん、元気してる? 今年のエルダーマザー、妙ちゃんでーっす♪」
「誰が妙ちゃんですかっ! 誰がっ!」
ブラウン管の中の母さんに言っても聞こえるはずないのに、それでもツッコまざるをえない。他のみんなも唖然としている。
「これを見てるってことは、全員Eカードをやったのよね?
じゃあ、Eカードにちなんだ大会を開催した映像を見せてあげるわね。どーぞー♪」 なんで母さんがまりや従姉さんの作ったEカードを僕たちがやることを想定してるんだ?
母さんの言葉とともにテレビの画面が切り替わり、どこかの屋外のステージらしい場面が映った。
画面には主催者が数人、参加者が約30人ほどいる。何かのイベントらしい、ということまでは一目でわかったけど、
その大会名を見て僕はずっこけた。
「う、ウボァー大会……?」
なんなんだよ、その訳の分からない大会名は?
テレビを見ていると、その大会は1人ずつ舞台の上で「ウボァー!」と叫び、その迫力や面白さを競うというものだった。
しかもなぜか御門家主催になってるし。
「ウボァー!」
最初にエントリーした参加者は、普通にウボァーと叫んだだけだった。
「プッ……」
「くすくす……」
「あははは……」
それでも、ブラウン管の内外から笑い声が聞こえてくる。
「ウボァー!」
次に参加したのは女性だった。勇気があるというか、なんというか……。
ブラウン管の内外から、さっき以上の笑い声が響いてくる。 「ウッボッァーッ!!」
次の参加者は、「ウ」「ボ」「ァー」のそれぞれの発声のたびにパフォーマンスを加えた。
「ぶわはははははは!!」
「あははははははは!!」
「くっ……くくくくくくくく……」
「は……はひはひはひはひ……」
大会の見物人と櫻館の中の笑い声の声量が倍増する。
「ウボァーン♪」
今度は女性が色っぽい声を出して男を誘うように言う。確かに艶っぽくて男心をくすぐりそうだけど、
言う言葉がそれではよりいっそう笑いを引き出させるだけだった。
「あ……あうあうあう……」
「ひっひっひっ……」
そして、すべての参加者が「ウボァー!」を言い終わり、大会が終了すると、
僕たちは一人残らず笑い過ぎによる呼吸困難で筋肉がひくひく痙攣していた。
「ちょ……反則だよ、これは……」
「まったく……なんてことを企画するのかしら、千早のお母さんは……」
「ふ……史も……さすがに笑わずにはいられません……」
脳みそをいい感じに破壊しちゃう爆弾か……なるほど……って……!
「これ、何も爆弾を使う必要なかったじゃないですか!」 「ねえ千早、せっかくだから、あたしたちも“ウボァー!”って言ってみない?」
しばらくして落ち着いてから薫子さんはとんでもないことを言ってきた。そんなかっこ悪くてみっともないこと、
お嬢様学校に通う僕たちが……。
「いいですねえ薫子お姉さま! それやったら笑いの渦になること間違いなしですよ!」
「あ、あのね2人とも……なぜ私たちがそんなことを……」
「まあいいじゃないの。今回だけなんだから、悪い夢でも見たと思えば」
僕が止めようとすると香織理さんまでそんなことを言ってくる。
「わ、私もちょっと興味あるかな?」
初音さんまでどこか申し訳なさと好奇心が同居するような目で言ってくる。どうもこの場は流された方がよさそうだな。
「じゃあ、まずはあたしからね!」
さっそく薫子さんがみんなの前に出てきた。そして、大きく息を吸い込む。大声で叫ぶ気なのか?
「ウウボァー!!」
薫子さんが声を限界まで上げて叫ぶ。僕を含めて全員が思わず吹き出していた。やっぱりこれは何度やっても笑えるみたいだ。
「では、続きまして宮藤陽向、行きます!」
陽向ちゃんはマイクを持ってみんなの前に出る。薫子さんより響くように叫ぶつもりか?
僕がそう思っていると……陽向ちゃんは予想もしなかった行動に出た。 「ウボァーウボァーウボァー♪」
なんと陽向ちゃんはウボァーウボァーと歌い始めたのだ。しかも歌いながら踊ってるし。
僕たちはおなかがよじれるかと思うくらい笑った。
「ま、まったく私の妹はなんてことを考えるのかしら……」
しばらくしてようやく笑いが収まった香織理さんがそうつぶやく。もっともそうなるまでどれだけかかったか知れないけど。
「当然ですよお姉さま! この宮藤陽向、面白くすることには命を賭けてますので!」
賭けなくていい! そんなことに命まで賭けなくていいから!
そう思っていると、次は唐突に訪れた。
「うぼぁー……」
次に僕たちの前からでなく、席に座ったままの優雨が普段と変わらない口調で言う。瞬間、僕たち全員が脱力した。
「うーっ……」
不意打ちとなんとなく力のない「ウボァー」は、破壊力というか、僕たちの精力を奪うには十分だった。
僕が見回すと、まだ倒れたままピクピクと身体を痙攣させている人もいる。
「ウボァーっ♪」
次は、初音さんがにこにこ笑いながらおっとりして緊張感も迫力もないウボァーを口にした。
「うーっ……」
優雨に続いて初音さんの「ウボァー」も、僕たちの精力を奪うには十分だった。
僕が見回すと、やっぱりまだ倒れたままピクピクと身体を痙攣させている人もいる。
「……なんというか、初音と優雨ちゃんの『ウボァー』はすごく危険だね」
「そうね……」
薫子さんと香織理さんが苦笑しながら語る。恐るべし、迫力のない“ウボァー”……。 「では、次は史がやらせていただきます」
続いて史がやることとなった。史は基本的にほぼ感情のこもってない機械的な口調だけど、大丈夫かな?
「ウボァー」
史は、予想通りの口調で「ウボァー」と言った。
「………」
えっと、なんと言っていいのか……周りも沈黙したままだ。
「プッ……」
しばらく沈黙が続いた後、不意に誰かが噴き出した。
「くっ……くくく」
それを聞いた僕も、不意に笑いがこみあげてくる。
「くすくすくす……」
それから、連鎖反応が起こったようにみんなに笑いが広がっていった。一見地味で何の飾り気もない「ウボァー」だったけど、
一度誰かが笑うとそこから笑いが浸透していく。恐るべし、史の“ウボァー”……。
さて、次はいよいよ僕の番だ。どんな“ウボァー”を言うことにしようか……考えてみたけど、何も1つじゃなくてもいいはず。
だったら……。
「ウボァー!!」
まずは、大きく息を吸い込んで、出せる限りの大声で力強く叫ぶことにした。
「あははははは!!」
「くすくすくす……」
まずはお約束通りみんなから笑い声が聞こえてくる。
「ち、千早が力強くやると、“そう”とわかってても違和感すごくて笑えるわね……」
香織理さん……今の言葉に怒りがふつふつ湧いてくるんですけど? 「ウボァーっ♪」
次は淑女の演技で笑顔で上品に言ってみせる。
「………」
今度は寮生全員沈黙してしまった。みんなどうしたんだろう? そんなにつまらなかったのか……?
「プッ……」
「くすくす……」
そう思ったけど、それは間違いだったみたいだ。しばらく沈黙が続いてから、みんな必死でそれをこらえるように笑い出した。
「な……どうして? いったい何が?」
「いや、だってさ、思わず千早に見とれちゃってさ……でも“ウボァー”なんて言ってるのに見とれたのがおかしくて……」
見とれた? あんな間抜けなセリフを言った僕に……?
「まあ、確かに千早ほど淑女のイメージがぴったり合う人はいないからね。間抜けなセリフでも
絵になって見とれてしまうんでしょうね」
「さすが千早ちゃん、貴婦人さんをやらせたら天下一品、ですね!」
「ちはや、上品なとこがとってもきれい」
みんな僕のことを褒めてるはずなのに、なんだろ、ふつふつと湧き上がってくるこの殺意は……。
「いよいよ最後の締めくくりは、七つの声を持つお姉さまですね!」
陽向ちゃんがそう熱演する。そういえばスイカの劇でもその才能を存分に発揮したよね、香織理さんは。
香織理さんはみんなの前に出ると、なんと陽向ちゃんとはまったく別のやり方でウボァー攻めをしてきた。
まず香織理さんの指示で史が食堂の電気を暗くする。そして香織理さんは、自分で考えた物語の登場人物になりきって話を進めた。 「『私の名前はウボァー皇帝。日々よりよいウボァーを追求し、研究に研究を重ねるナイス皇帝さ!』」
ちょ……香織理さん、どこからとってきたんですか、そんな設定!?
「『思えば、ウボァーの修行中、師匠に飲まず食わずで修行をさせられたこともあった!
ウボァーの披露会で、民の笑いものにされたこともあった! しかし私は決してくじけなかった!
くじけずに、常に最高のウボァーを叫び続けてきた!』」
その後も香織理さんは、皇帝以外にもその婚約者、家臣など、いろいろな人物になりきって一人芝居を展開していく。
そのたびに、僕も含めて全員から大爆笑の渦が巻き起こった。
「お、お姉さま、これは反則ですよ!」
「か、香織理さん恐るべし……こんな笑える話聞いたことないよ!」
「香織理ちゃんにこんな特技があったなんて……驚きです」
香織理さんの一人芝居が終わっても、しばらく笑いの渦は消えなかったけど、それがようやく収まってきたとき、
みんなが口々に感想を言う。
こうして、この日の夜は僕たちのウボァー大会の感想の話に花を咲かせながら過ぎていった。 そして、その翌日……。
「こよりさん、私のカードはこれですわ」
朝教室に行くと、こよりさんたちが、僕たちが昨日やっていたEカードをやっていた。なんで!?
昨日の休日にやったばかりなのに、情報もカードもどこからどうやって手に入れてきたの!?
見ると、相手がめくったカードは瑞穂さんだった。
「私のカードはこれですわ」
こよりさんがカードをめくる。貴子さんだ。けど、そう思っていると、さらに予想外の光景が待っていた。
「ウボァー!」
なんと、こよりさんの相手が例の断末魔をあげた。
「な、何よ今の変な悲鳴は!?」
薫子さんもびっくりして問いただす。正直僕も同じ気持ちだ。
「何って、Eカードで負けた時はそう叫ぶのがルールではなくて?」
いや、ない! そんなルールないからっ!
「……千早、あたしたちがやった時はそんなルールなかったよね?」
「ええ。香織理さんからも聞いていませんし、私たちもやりませんでしたが……」
もしかして新ルールなのか? ルールが追加されることや変更されることはよくあることだけど、ここまでの超スピードとは……。
「おや、やっているみたいだね、Eカード」
「そうみたいですね」
そう思っていると、背後から茉清さんと聖さんが教室に入ってきた。 「おはようございます、茉清さん、聖さん」
「おはよう、Wまきよさん!」
「そ、そんな……何度聞いても恥ずかしいです」
「薫子さん……」
2人は恥ずかしそうに照れる。Wまきよというのは、“まきよ”さんと“まき”た“きよ”らさんの名前から
薫子さんが考えた名前で、そう呼ぶたびに2人は恥じらいの表情をするわけだ。
それはさておき、2人は早速今見たばかりのカードゲームの話題を口にする。
「せっかくだから私たちもやろうか、聖さん」
「そうですね」
そう言うと茉清さんが早速Eカードを出してきた。
「ま、茉清さんまで、どうしてEカードを……」
「どうしてって、今聖應中で流行っているじゃないか」
せ、聖應中で!? なんで当然のように言うんだ!? それは金曜日まで影も形もなかったのに……。
「昨日千早さんたちがやっていらしたそうじゃないですか。それで、みなさん、まりやさまにネットでご注文なされたそうです」
いったいどうやってそんな情報が広まったんだ!? それでどうして早速入手できるんだ!? 恐るべし、聖應の情報網……。 そして、放課後、修身室……。
「それでは、本日はここまでと致しましょうか」
「お疲れ様でした!」
今日も僕は雅楽乃と雪ちゃんに呼ばれて華道部に顔を出していた。そして部活が終わり、僕たちも帰ろうとしていた時……。
「あ、あの、お姉さま!」
ふと雪ちゃんに呼び止められた。なんだろ?
「なんですか、雪ちゃん?」
「も、もう1度私と勝負してくださいっ!」
「もう1度?」
今日も僕は雪ちゃんと活け花の勝負をしたわけで、まあ結果は……いつも通り。
「どうしてもと言うのでしたら別に止めはしませんが、もう少し今日のことを考え直してからの方がいいと思いますが……」
「いえ、今度は活け花じゃないんです」
活け花じゃない? じゃあもしかして……。
「Eカード、ですか?」
「ええ、その通りです」
雪ちゃんはそう言うと、ポケットから例のカードケースを取り出してきた。
「あまり遅くなってもいけませんし、1回だけですよ」
こうして僕は雪ちゃんとEカードをすることになった。雅楽乃がカードを繰り、僕と雪ちゃんに5枚ずつ配る。
「私は姉カード3枚と妹カード2枚です。雪ちゃんは?」
「うぐっ……私は姉カード2枚と妹カード3枚です……」
雪ちゃんは苦しげな顔をする。だけど、活け花はともかく、これはお遊びで、運否天賦の要素もかなり含んでいるんだから、
勝敗にそれほどこだわることもないと思うんだけど……。 「まず由佳里お姉さまです!」
早速勝負を開始して1回戦、雪ちゃんがそう言ってカードをめくる。
「私は一子さんです」
「ウボァー!」
僕がカードをめくると、雪ちゃんはやはりというか、例の悲鳴を叫んできた。
「プッ……くすくす」
ダメだ、これは何度聞いても笑いをこらえることができない。
「お姉さま! 負けた人をみっともないってあざ笑うなんて趣味悪いですよ!」
すると雪ちゃんが熱くなってそう抗議してくる。まあ噴き出してしまった時から予想はしてたけど。
「申し訳ありません。ですが雪ちゃん、それは誤解です。今のは“ウボァー!”の悲鳴がおかしくてつい……
そもそも私は負けがみっともないなんて思っていませんから」
「そ、そうなんですか?」
僕がそう言うと、雪ちゃんは怒りの熱を下げたようだ。
「そうです。そもそも私との活け花で雪ちゃんが“負けた”時、あざ笑ったことが1度でもありましたか?」
「い、いえ……」
雪ちゃんは少し弱気ながらも認めてくれたようだ。僕は安心して続ける。
「そもそも、負けは結果にすぎません。そこに恥ずべきことがあるとすれば、それは勝つための努力を怠った、
もしくは自らの慢心で相手を格下と侮っていた、そのどちらかでしょう」
僕が言うと、雪ちゃんも納得してくれたようだ。僕たちは勝負を再開した。 2回戦も僕が勝ち、次いで3回戦……。
「私は貴子さまです。お姉さまは?」
「……まりや従姉さんです。それではいきますよ」
僕が負けがわかっているカードをめくり、やる宣言をすると、雅楽乃と雪ちゃんは好奇心旺盛な瞳で僕を見る。
「ウボァーっ♪」
僕は昨日櫻館でやったように、淑女風に言うことにした。
「……ぷっ」
案の定、雪ちゃんは噴き出した。
「雪ちゃん、今のは、負けた私をみっともないと思ってのことですか?」
僕は穏やかな口調で雪ちゃんに問いかけた。
「ち、違いますから! 今のはお姉さまのウボァーがおかしかっただけですから!」
「では、雪ちゃんも私がみっともないと思って笑ったわけではないと理解していただけますね?」
僕がくすりと笑って言うと、雪ちゃんは決まり悪そうに、慌てたように言う。
「わ、分かりましたから! そもそもその前に2回連続で負けて、みっともないって思えませんから」
「理解していただけて嬉しいわ」
……確かにウボァールールを追加すると、負けた方にはいい罰ゲームになるかもしれないな。
「まあ! 雪ちゃんったらEカードを利用してお姉さまと心を通わせるなんて……相変わらず油断も隙もない策士なんですから!」
「ちょっとうたちゃん! なんでそうなるのよ!」
いつも通りふくれる雅楽乃にムキになって反論する雪ちゃん。 「でしたら雅楽乃、あなたも私とEカードをやりますか?」
「ええっ!? よろしいんですか?」
雅楽乃は嬉しそうに承諾し、今度は雪ちゃんがカードを繰って配り、勝負を開始することになった。
「こんなところ、かしら?」
1回戦、僕は選んだカードを伏せて提出する。雅楽乃もカードを選んで出してきた。
「私は瑞穂さんです。雅楽乃は?」
「奏お姉さまです」
僕がカードをめくると、雅楽乃もカードをめくる。今回は僕の勝ちだ。しかし、なんと雅楽乃は僕の予想外の行動に出てきた。
僕の前で制服の上着を脱ぎ始めたのだ。
「ちょ、ちょっと雅楽乃!? 何をしてるんですか!?」
「何って、こういう勝負で負けた方が脱ぐ……という話を耳にしておりますが?」
雅楽乃はとんでもないことを平然と言う。
「うたちゃん、野球拳や脱衣麻雀じゃないんだから!!」
確かに雪ちゃんのたとえではそういうのはあるけど、雅楽乃はどこからそんな情報を……。
「というか雅楽乃、聖應の生徒なのですから、淑女の嗜みとしてそれはどうかと……」
「今ここには私とお姉さまと雪ちゃんしかいないのですから、大丈夫ですよ」
「いやいや、大丈夫じゃないから!」
雅楽乃は満面の笑顔で言うけど、ほかの生徒が通りかかったらということも考えて……!
結局雅楽乃は上のワンピースの制服を脱いでブラウスとショーツの姿になった。 「2回戦……これにしましょうか」
最初はゲームのつもりだったのに、お遊びどころじゃなくなってしまったぞ……。
僕はまりや従姉さんのカード。雅楽乃は……。
「私は貴子さまです」
つまり僕の負けだ。ってことは……。
「さあお姉さま、脱いでくださいな♪」
雅楽乃が思いっきり艶っぽい表情で言う。そこで僕は雪ちゃんと説得してみたけど徒労に終わった。
「しかたありませんね、では……」
僕は仕方なく靴下を脱いだ。
「それだけですか? お姉さまずるいです!」
「靴下も衣装の1つよ」
僕が言うと、雅楽乃も反論できないのかあきらめてくれた。けど、待てよ?
もしこのまま負けが続くと脱ぎ続けなければいけないわけで、つまり……僕の正体が……!!
負けられない。絶対負けられない。かといって勝ち続けても、雅楽乃を脱がせることになるわけで……どうしたらいいんだ!?
「私は紫苑さんです。雅楽乃は?」
「私は由佳里会長です」
僕は絶句した。また負け!?
「ど、どうして姉カードを出している私が……」
連続で負けるのか、と言いかけると、雅楽乃が答えを言ってきた。
「私は千早お姉さまでしたらどのあたりのカードを出してくるか直感でわかるのです。愛の成せる技ですわ♪」
……これはとんでもないことになってきたぞ。雅楽乃の残りカードは姉カード1枚、妹カード1枚のはず。
僕の残りは奏さんと瑞穂さんだ。 3回戦、僕は何とか股間のものを間に隠してブラウスとショーツ姿になったけど、ここからも連敗だと、
下着も外さざるを得ない。それだけは避けないと……。
「これは……身体測定の時のワイシャツ姿も色っぽくて素敵でしたが、こちらも同じくらい素敵です♪」
雅楽乃は恍惚の表情で僕を見ている。はっきり言って、これは想像以上にやばい……ていうか……。
「身体測定の時、雅楽乃とはまだ出会ってなかったでしょう?」
「ええ、でも、その時の写真を持参していますから。生徒の間では出回って……」
(うたちゃん! それは他言無用だって必殺密売人Mから言われたじゃない!)
雪ちゃんがとっさに雅楽乃の口を塞いだ。なんか僕の知らないところでとんでもないことになってるような……。
4回戦は僕が奏さんで雅楽乃が一子さんだった。それで僕はブラウスを抜いて下着姿になった。
雅楽乃、息が少し荒くなってるような。
5回戦、雅楽乃の残りは姉カード。僕の残りカードは姉カードの中では最弱の瑞穂さんだ。
これ以上脱いだら間違いなくバレるのに……そう思っていると雅楽乃はカードを出した。
「私は瑞穂さんです。雅楽乃は……」
雅楽乃はカードをめくった。僕が焦りながらも見てみると……雅楽乃も瑞穂さんだった。
「た、助かったあ……」
僕は安堵からヘナヘナとなって畳の上に突っ伏してしまった。
「お姉さま! この状態からもう1度Eカードを……」
雅楽乃が表情を輝かせ、桃色の吐息を吐きながらお願いしてくる。
「うたちゃん、これ以上はまずいからやめましょうね」
と、雪ちゃんが雅楽乃をズルズル引きずっていった。
「ああん雪ちゃん! ご自分はお姉さまと心を通じ合わせておきながら、どうして私の時は邪魔をするんですか?」
……し、心臓、泊まる、じゃなくて止まるかと思った……。
危ない危ない、緊張のあまり、漢字まで間違えそうになったよ……。 その翌日、僕はいろんな女生徒に脱衣Eカードを挑まれて逃げ回ったり、みんなが“ウボァー”の思い出し笑いで
授業が成り立たなくなったりと散々だった。
初音さんに報告して、生徒会から脱衣系の賭けとウボァーを禁止してもらってようやく事態は収拾したのだった。
「はあああああ……」
授業が終わり櫻館に到着して、僕は思いっきり大きなため息をついた。
「千早ちゃん、だいぶ疲れてますね」
それを見て初音さんは冷や汗混じりに笑う。
「初音さん、ありがとうございました。正直生きた心地がしませんでしたから」
「い、いえ、生徒会長として当然のこと……ですから……それは……」
初音さんは真っ赤になって縮こまってしまった。どうしたんだろう?
時はさかのぼって、その日、例の部屋……。
「初音お姉さま、千早お姉さまの下着姿とブラウス姿の写真です! 販売されてはいかがですか? お安くしときますぜ?」
「ひ、陽向ちゃん! 私は必殺密売人Mですよお……」
「私は必殺密売人Hですよ?」
「うう……お姉さま方から引き継いだ伝統とはいえ、いつまでこんなことすればいいんですか……?」
「大丈夫よ。この必殺密売人Kが責任持つから」
「うう……ごめんなさい千早ちゃん……」
この日、千早脱衣Eカードの写真が隠し撮りされ、裸電球の部屋の人たちを通じて全校生徒に発売されていることを、
まだ本人は知るよしもなかったのだった。
Fin 以上です。>>28さん、支援ありがとうございました。
必殺密売人たちのM、H、Kという名前は、彼女たちの名前の頭文字です。
この3人、苗字と名前の頭文字かかぶるので、こうなりました。
3人合わせて某TV局になったのは偶然です(私も書いて初めて気づきました)。
それでは、本日はこれで。お目汚し失礼いたしました。 経過報告
半分くらいまでは書けた。
前にも伝えた通り、携帯からの投稿になります。
このスレも人が減ったため、
来週あたりから、1日1カキコを目標に投稿していきます。 全体量は?
たとえば30本を1日1回とかだと、さすがにアレな気が。 わかった。やはり、もう少し書き溜めて
クリスマスあたりから投稿します。
ただ、携帯からの投稿は変わらないので
やはり1日に2~3本の投下となりそうです。
よろしいでしょうか。 >>40
宜しいでしょうかも何も、貴方のペースで投稿するのがよいと思いますよ。
ただ、読み手としては早く読みたいわけでして。。。
なので、私的意見で云うとそれで良いかと。。 個人的な意見でよければ、3,4回で貼り終えてほしい
というか、完成してからでいいと思います あけましておめでとうございます。
Eカードの後編、こちらにもUPさせていただきました。
爆弾やスイカの意味が分からなかった方へのメッセージも最後に入っています。
前編=http://takayan.otbk.root-node.net/ss/bbs_view.cgi?thread=000020&from=23&to=23
後編=http://takayan.otbk.root-node.net/ss/bbs_view.cgi?thread=000020&from=24&to=24
それでは、本日はこれで失礼いたします。 久々にSSを投稿させていただきます。
14レス分を予定しております。どうぞよろしくお願いします。 「それでは、本日はこれでお開きにしましょう」
「はい、ありがとうございました!」
僕はいつものように雪ちゃんにつかまって華道部へ連行され、部員たちに華道を教えることになった。
雪ちゃんとも勝負をすることになったけど、まあ結果はいつもの通り。
それはさておき、僕が雅楽乃、雪ちゃんの2人と一緒に片づけを済ませ、帰ろうとした、その時……。
「あの、お姉さま……!」
「雅楽乃、どうかしたの?」
ふと雅楽乃が思い切ったように声をかけてきた。
「あの……もしよろしければ、お夕飯は私たちとご一緒いただけませんか?」
「うたちゃん!?」
雪ちゃんが驚いたように雅楽乃を見た。どうも話を聞いてみると、今日雅楽乃も雪ちゃんも両親が仕事で遠方へ出かけており、
それで2人でどこかに食べに行く約束をしていたらしい。
〜サキュバスの晩餐 前編〜
「……ですので、よろしければお姉さまも」
「でもうたちゃん、お姉さまは寮に住んでるんだから、寮でのお食事もあるだろうし……」
雪ちゃんがそう言って雅楽乃をたしなめる。けど今日は寮母さんが夕方は休みだし、僕はその誘いに乗ってもいい。
まあ雪ちゃんとしては、滅多に来ない雅楽乃と2人っきりの食事の時間を僕に邪魔されたくないという気持ちもあるんだろうけど……。
「そうですよね……」
雅楽乃が悲しそうな表情をする。そういえば……。
「それで、お食事をするところは決めてあるのですか?」
「いえ、これから決めようと思ってるんですけど……」
そうか。それだったらちょうどいい機会だな。 「それでしたら、お2人とも寮までご一緒しませんか?」
「寮まで?」
「ええ。今日は寮母さんもお休みですから、私が夕食を作ることになっているんです」
「お姉さまが?」
「ええ。雅楽乃にいずれ手料理をご馳走すると約束しましたから、そのよい機会だと思いまして……」
僕がそう提案すると、雅楽乃はぱあっと顔を明るく輝かせた。
「本当ですか!?」
「……って、千早お姉さま、お料理できるんですか?」
「ええ。香織理お姉さまに聞いた話ですと、寮の方は全員千早お姉さまのお料理の大ファンということです!」
その後も雅楽乃は自分のことのように自慢げに僕の料理のことを雪ちゃんに聞かせる。
相変わらず僕のことになると暴走するみたいで、雪ちゃんもちょっと引き気味だ。
「まあ、うたちゃんがそう言うなら……せっかくですから……」
雪ちゃんが仕方なく……という感じで同意する。
「あら、雪ちゃんは仕方ない、という顔ね。これでは私もその顔を笑顔になるよう精一杯おいしいお料理を作って、
その考えを改めなくてはね」
実際僕の料理の腕前でなく雅楽乃が僕のことを自慢げに話すのが気に入らないんだろうけど。
「いや、別にお姉さまのお料理がまずいと思ってるわけじゃありませんから!」
「まあ、雪ちゃんったら相変わらずお姉さまに甘えるのがお上手ですのね」
そんなこんなで、僕たちは桜館に行くことになった。 「それで、2人も連れてきたってこと?」
「ええ。以前からの約束ですから。初音さんにはちゃんと連絡は入れてあります」
寮に戻ると、玄関にいた香織理さんが僕と一緒にいる雅楽乃と雪ちゃんに気づき、何かあったのか聞いてきた。
「そうだったんだ! まあ、絶対食べて損はしないよ! 千早の料理の腕は由佳里さんに負けず劣らずだし、
あたしも千早の作るデザートとかすっごい楽しみにしてるしね!」
「えっ!? あの由佳里お姉さまに!?」
薫子さんが言うと、雪ちゃんが驚きの表情で言う。由佳里って、確か初音さんの寮と生徒会での“お姉さま”だった……。
史に聞いてみると、その人の料理はプロ顔負けの腕前で、同年代の人で彼女と同じレベルの人は僕以外に知らないという。
「1学年上にそのような方がいらっしゃったとは……これはプレッシャーですね」
まあ、少なくとも薫子さんをはじめ寮の2、3年のメンバーはその由佳里さんって人の料理を食べたことがあるみたいだし、
その人たちが僕の料理を褒めてくれるってことは、酷評されることはないと思うし、料理に対する自信も失ったりしないけど。
そして約30分後、僕が作った料理がテーブルの上に並べられ、寮生たちに雅楽乃と雪ちゃんを加えた8名が席についている。
僕が作ったのはいつも寮で作られているイギリス料理だ。無論美味しいように味つけを工夫していて、
イギリス人たちも認めるまずい料理では決してない。 ちなみに今日作ったのは羊肉に大豆やグリーンピース、トマトなどの野菜を入れたシェパーズパイ、
ハギスを羊の内臓、牛肉、野菜で作ったものの3種、うなぎのゼリー寄せ、イングリッシュマフィン、デザートにトライフル。
あと優雨にも食べられるようにと、雅楽乃が好きだからという理由でポトフも作ったけど。
これは準備段階から100%僕の手作りで、物によっては数日前からすでに下準備を始めている。
「まあ、これをすべて千早お姉さまが!?」
「ええ。実はそろそろ雅楽乃との約束を守ろうと思っていたところですから。これ幸いですけど」
「なんか、都合がよすぎると思いますけど……」
まあ、雪ちゃんの疑念も無理はない。僕もまるっきり運で、ってわけじゃないんだから。
「実は、ケイリに占ってもらったんです。近いうちに私が雅楽乃に手料理をふるまうことになるって」
「まあまあ、そんなこといいからさあ、早く食べようよ!」
「そうですそうです! 美味しさを味わうのに、能書きなんてこれっぽっちも必要ありません!」
「陽向、薫子……2人とも淑女としての節度というものを……」
早くも食欲を優先させる薫子さんと陽向ちゃんに、香織理さんからのツッコミ。
「いやですねえ香織理お姉さま。淑女の節度なんかで腹はふくれませんよ?」
「そうだそうだ! 千早の料理のおいしさの前では、そんなものカレーの中で煮込まれたジャガイモも同然っ!」
「薫子……それ限りなく意味不明よ。ジャガイモに刺されたことでもあるの?」
「ジャガイモは主に芽に、全体にも微量にソラニンという毒が含まれておりますが、
突然変異でも起きない限り、刺すことはできないと思います」
と思っていると、今度は香織理さんの言葉に、思いもよらぬところからつなぎが出てきた。
「史ちゃん……そんなシリアスに答えられても……」 「まあまあみんな、確かにこのままではせっかく千早ちゃんが作ってくれたお料理が冷めてしまいますから、早くいただいてしまいましょう?」
パチパチパチパチ!
初音さんの言葉に、薫子さんと陽向ちゃんから拍手喝采があがった。
「でも、普段から淑女としての自覚を持った行動をするべきだとは思いますよ?」
「「うぐっ……!」」
「主よ、今から我々がこの糧をいただくことに感謝させたまえ。アーメン」
「アーメン」
史がみんなに料理を切り分けると、いつものように夕食が始まった。
「じゃ、いただきまーす!」
「いただきます」
そして夕食が開始されると、いつもどおりまず薫子さんと陽向ちゃんが食べにかかる。まあこっちは恐らく日常だろう。
いつもはいない雅楽乃と雪ちゃんはというと……。
「………」
「……うたちゃん?」
僕の料理を前に動こうとしない雅楽乃を、雪ちゃんが少し心配そうに見ている。
「いよいよ千早お姉さまの手料理をいただけるのかと思うと……心の臓の動悸が激しくなって、手が動かなくなってしまいます」
「そんな……いくらなんでも大げさよ、雅楽乃」
「ま、気持ちはわかるけどね。千早の料理はホント天下一品だもん」
「あの由佳里お姉さまにも全く引けを取らない腕前ですから」
僕が呆れていると、予想外の方向から攻撃が! 「ま、薫子に続いて千早教信者第2号だもの。そりゃそうなるのも無理はないけどね」
「ですから香織理さん、人をカルトなインチキ宗教の教祖みたいに言わないでください!」
とまあ色々言い合っていたけど、しばらくして雪ちゃんがきっかけを作るべく食べることにしたようだ。
「まずは私が食べてみるから……うわ、これホントに美味しい!」
その雪ちゃんが食べたことで、雅楽乃は意を決して料理を口に運んだ。
「んっ……!」
ごくん。
「ふぁあああああああっ!」
「ちょ、ちょっとうたちゃん!」
雪ちゃんが見ると、雅楽乃は頬を赤く染めてうっとりした表情をしていた。
「お姉さまの愛が私の身体全体に染み渡って、すごく感じちゃいました……」
「何をよ……」
香織理さんが呆れて言うけど、僕もびっくりしている。まさかここまで艶っぽい反応をするとは思わなかった。
「んっ……くうっ……あんっ……はあっ……」
その後も雅楽乃は、一口食べるたびにそんな嬌声を上げ続けるのだった。
「ね、ねえ……雅楽乃ちゃん……今何をしているんですか?」
「私の手料理を食べてる……だけのはずですけど……」
冷や汗混じりに恐る恐る聞く初音さんに、僕もためらいながら答える。他のみんなも初音さんと同じような表情だ。 「だけで、なんでうたちゃんがこんな風になるのよ!」
いや、それはむしろこっちが聞きたいぐらいで……。
「おおっ! ただ千早お姉さまがお作りになった夕食をいただくだけですのに、この桃色オーラ全開の展開!
まさに魔王ルシファーも頬を染めて全力で逃げ出して小惑星に激突して爆発させるような雰囲気です!」
「あのね陽向、そのわけのわからない表現はおやめなさい」
香織理さんのツッコミももっともかもしれないけど、僕には陽向ちゃんの表現よりこの展開の方がわけがわからない。
僕の作った料理を食べてるだけなのに、どうしてこうなるの?
「んっ……くっ……ああああああああっ……!!」
そしてしばらく食べ続けた後、雅楽乃はそう叫んだかと思うと、ぐったりしてしまった。
「はあっ……はあっ……はあっ……はあっ……」
「うたの……どうしたの? つかれたの?」
ぐったりしたまま表情を恍惚にゆがめて荒い息を吐く雅楽乃に、優雨が心配そうな表情で雅楽乃を見ながら言う。
「あのね優雨、雅楽乃は……」
疲れてない……と言おうとしたけど、こんな状況、優雨にどうやって説明したらいいんだよ……。
「優雨ちゃん、雅楽乃ちゃん大丈夫よ」
「はつね……でもうたの、苦しそうにしてるよ?」
初音さんがひきつった顔で説明するけど、優雨は納得できない、といった表情で言う。さすがの初音さんも困り顔だ。
「あのね優雨ちゃん、御前は千早お姉さまの手料理を食べて、千早お姉さまに変なことをされたような気分になってるんだよ」
「へんなことって、どんなこと?」
「どんなことでもないから! 優雨ちゃんに余計な知識を植え付けるのはやめなさい!」
と、食堂はすっかりカオス状態だ。ここは何とか強引にでもごまかさないと……。 「じゃあ皆さん、雅楽乃はどうやら風邪か何かをこじらせてるようですから、部屋に運んで看病しますね」
僕は早口でそう言うと、雅楽乃を抱きかかえてダッシュで自分の部屋へと逃げ去った。
「ふう……」
僕は雅楽乃を自分のベッドに寝かせると、ため息をついた。なんでこんなことになったんだろう……。
「あ……あん……千早お姉さま……」
雅楽乃は艶めかしい声で寝言を言っている。いったいどんな夢を見ているんだ?
「千早お姉さま!」
そう思っていると、部屋の扉をドンドンと叩く音が聞こえてきた。
「雪ちゃん? どうぞ。開いてるわよ」
僕がそう返事すると同時に雪ちゃんがドアを開けて入ってきた。見ると予想通り険しい顔をしている。
「お姉さま、いったい料理に何を入れたんですか!?」
「今日作った料理のレシピを聞いてる……訳じゃなさそうね」
「当たり前です! うたちゃんがこんなになるなんて、お姉さま、何を入れて何をするつもりなんですか?」
僕が念のために聞いてみると、予想通りの答えが返ってきた。わかってもらうのはちょっと難しいかな?
「少なくとも雪ちゃんの考えているようないかがわしい薬は入れていない……と言っても信用してはもらえないんでしょうね」
「当然です!」
うん、気持ちいいぐらいの即答だ。 「雪ちゃんは、ミステリー小説も結構読むのよね?」
「な、なんですか突然……もちろん読みますよ」
「じゃあ冷静に考えてみて。料理を作ったのは全員分をまとめてだし、取り分けたのは史だった、そうよね?」
「え、ええまあ……」
僕が確認すると雪ちゃんは少し弱い口調で同意した。
「その時史に何か雅楽乃に薬の入ったものをつかませるような動作をしていたかしら?」
「そ、それは……してなかったと思います」
「となると、残るは雅楽乃のお皿に薬を塗るくらいだけど、そのお皿も最初から並べられていて、座る場所は決まっていなかった
……そうよね?」
「そ、そうです……」
「だから、私が雅楽乃に薬か何かを盛るような機会はなかったことはわかってもらえるかしら?」
「くっ……」
「仮に何らかの方法でそれが出来たとしても、雅楽乃だけに薬を盛る必要が、それ以前に皆さんと一緒に食事をする時を選ぶかしら?」
「う……確かにそうですけど……と、とにかく、うたちゃんは私が連れて帰ります! いいですね!?」
雪ちゃんはわかってくれたのか、そう威圧的な声で宣言した。
「ええ。私からもお願いするわ、雪ちゃん」
「くっ……お姉さまのそういうところ、気に入りません……」
「あら、じゃあ『もうちょっとで雅楽乃の身体を思い通りに出来たのに、ちくしょう』とでも言っておきましょう。これで満足かしら?」
「お、お姉さまは筋金入りの口達者ですね!」
雪ちゃんは慌ててどもりながらそう言うと雅楽乃を連れて部屋を出て行った。
「ちょっといじめすぎたかしら?」
ちなみにその後、薫子さんと香織理さんからも問い詰められたのは言うまでもない。
もっとも香織理さんはからかい半分だったようだけど。 翌日、聖應女学院、修身室……。
「そういうわけで、雪ちゃんが気を失った雅楽乃を介抱してくれたのです」
千早は雅楽乃に気を失った後のことについて説明していた。
「まあ、そうだったのですか。ありがとうございます、雪ちゃん」
「いや、別にお礼を言われるほどのことでもないから……」
雅楽乃が雪ちゃんに感謝の気持ちを述べる。僕もそれを微笑ましく思える。
「けれど雪ちゃんの計算高さには本当に感心してしまいます」
「へっ……!?」
そう思っていた直後のその雅楽乃の言葉に、僕も雪ちゃんも唖然となった。
「だって、せっかくお姉さまと甘い甘い一時を過ごせる千載一遇の機会でしたのに……」
あ、あのね雅楽乃……あんなもの見せられた後にそんなことを期待されても……。
「ホントうたちゃんにとってお姉さまはまるで麻薬ですね」
雪ちゃんも僕に攻撃してくる反面、半ば呆れ気味だ。
「あの、先程から3人とも、いったい何のお話ですか?」
そこで、僕たちの話を部屋で見ていた華道部員の1人が聞いてくる。もうこうなったら話さないわけにもいかないだろう。
僕たちはみんなに昨日あった出来事を話した。
「まあ、それでは寮で御前と淡雪さんがお姉さまの手料理を?」
「ええ。それをいただいた瞬間千早お姉さまの愛が身体中に浸透して……いただくほどにお姉さまの愛がいっぱいいっぱいになって
……心が桃源郷をさまよってしまいました」
雅楽乃はうっとりとしながら語る。語りながらもすでにそのことを思い出し、心ここにあらずという感じだ。 「まあ、千早お姉さまのお料理の腕が琥珀の君に並ぶものとは聞いておりましたが……」
「まさか御前でさえもそこまで陶酔させてしまうような魔法の料理を作れてしまうなんて……」
「いや、うたちゃんだから……と言った方が正しいと思いますけど……」
雪ちゃんが僕にひそひそ声で言う。僕も納得だ。
「うらやましいーっ!」
な、なんか嫌な予感がするのは気のせいだといいけど……。
「そういえば確か、明日お姉さまのクラスは調理実習ではありませんでしたか?」
「ええ、そうですけど……」
「もしよろしければ、私にもお姉さまの手料理のおこぼれをいただけませんか?」
お、おこぼれって……。
「ま、あなただけずるいですわ。お姉さま、是非私にも……」
こ、この流れは早めに手を打った方がよさそうな感じだな……。
「わかったわ。それでは、華道部皆さんの分も持参いたしますから……」
キャーキャー
たちまち黄色い声の塊と化す華道部のメンバー。中には料理のことについてあれこれ議論をし始めている人もいる。 そして、翌日の調理実習……。
「もーっ! こんなの全然チンプンカンプンだよ!!」
「薫子さん、テンパっていても事態は何も好転しませんよ。とりあえず落ち着いてください。私が教えますから」
僕はうまく料理が作れなくてパニクっている薫子さんを落ち着かせ、手を取ってここはこうする、と手を動かして教えた。
「あ、う、うん……」
そうすると薫子さんは何に戸惑ったのか、恥ずかしくなったのか顔を赤らめておとなしく僕の言うとおり料理を作っていく。
「さあ、次は薫子さん1人でやってみてください」
「ちょ、ちょっと千早! 出来たんだしもういいじゃない!」
そして薫子さんの料理を作り終わったところでそう言うと、予想通り薫子さんは反論してきた。でも……。
「ダメです」
ここで終わらせても、薫子さんのためにならない。それはただの甘やかしだ。優しくするのと甘やかすのは違う。
「もう1度自分で作らないと身に付きませんから。さあ、私が見守っていますから、どうぞ」
そう言うと、薫子さんも反論していたが最後には折れて料理を作り始めた。
「千早の鬼い! 悪魔あ! A藤!」
「……A藤はひどすぎるでしょう。私は甘やかしては薫子さんのためにならないから機会を与えたまでです。
というか、薫子さんがあのマンガを読んでるとは意外ですね」
悪戦苦闘しながらようやく自分の料理を作り終えた薫子さんは、予想通りぐだーと机に顔を伏せながら僕に文句を言ってきた。
それにしても、あのマンガを読んだ人にならA藤の意味が分かるだろうけど、読んでない人にはまったく意味不明じゃないか? 「……別にほしいなんて言ってないから」
「あら、立派な淑女になるための特訓を願い出てきたのは薫子さんですよ? お料理の立派な淑女になるための一環ですから」
僕は笑顔で薫子さんの反論を封じていった。それをしばらく続けていると……。
「うう……千早の意地悪……」
とうとう薫子さんが目と同じ幅の涙を流し始めた。
「でも、そのおかげでここまで上達したではありませんか。ほぼ初心者でここまでできれば大したものですよ」
「どうせあたしは初心者ですよー。千早とはちがいますよーだ」
薫子さんは完全に拗ねてしまっている。褒めてるんだけどね。
「あのね薫子さん。誰だって最初は初心者ですよ。私が料理を始めたころに比べればずっと上手ですから」
それからしばらく僕は励ましたけど、落ち込んだままだ。
「仕方ありませんね。ご褒美に私の手料理を差し上げますから、それで機嫌を直してください」
「ホント!?」
すると薫子さんは今までの態度が嘘のようにハイテンションになって食いついてきた。いくらなんでも豹変しすぎ
……と僕は思わず苦笑。
「嘘をついてどうなりますか? 今日華道部のみなさんにおすそわけする約束をしてますから、多めに作ってあるんです。
ですから少しぐらい薫子さんにさし上げても支障はありませんよ」
僕がそう言うと、大喜びで食べ始める薫子さん。
「いやあ、しっかし千早もほんっと料理上手だよね。由佳里さんに続いて誰もが認める“お嫁さんにしたい方”コンテスト
ダントツのNo.1だもんね」
「薫子さん……それ、全然嬉しくないですから」 「あら、薫子は千早のこと褒めてるんだから、素直に喜んでおきなさいよ」
そう言っていると、いつの間にか香織理さんと史が調理室に来ていた。
「香織理さん……私の性別のこと忘れてませんか?」
「あら、性別はどうあれ褒めてることには変わりないじゃない」
ジト目の僕の反論にも、香織理さんは澄ました顔のまま返してきた。
「あのね……もし香織理さんが“男の中の男”なんて称号をもらったらどうですか?」
僕がさらにジト目で言うと、香織理さんは途端に笑顔になった。
「もちろん、全力で辞退させていただくわね」
「うぼぁーっ……!」
ガーン!!
「ぜんりょくで、じたい……ぜんりょくで、じたい……ぜんりょくで……」
「あら、地雷を踏んでしまったかしら?」
「はい、リーチ東ホンイツドラ2裏4の威力4億8000万の核爆弾級の地雷かと」
「史ちゃん……そのネタ、一部の人にしかわからないわよ」
「いえ、薫子お姉さまも同じ作品のネタを使っておりましたので、問題ないかと……」
意識が小笠原海溝に沈没した白銀の女帝をよそに、香織理たちはのんきな会話を繰り広げていた。
To be continued…… とりあえず、これで一区切りです。残りは現在執筆中です。
完全に過疎化してしまった中、ご覧下さる方がどれだけいらっしゃるかわかりませんが……。
それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。 >>74
久々の投稿堪能させていただきました。
後編も楽しみにしています。
でも漫画ネタはさっぱり分からなかったorz ご期待ありがとうございます。
>>75
漫画ネタは、借金まみれのお人よしのギャンブラーが、
高利貸し財閥主催の極悪ギャンブルで勝ちあがっていく漫画です。
千早くんは、そういうヤツらが悪役の漫画を薫子さんが見ているのが意外だ、と言ったわけです。 他の人のSSはもう来ないんでしょうか?
ししがみさん以外の方のSSなら大歓迎なんですが。 お久しぶりです。東の扉です。
サキュバスの晩餐、後編が完成しましたので、投稿させていただきます。
17レス分ありますので、よろしくお願いします。 〜サキュバスの晩餐 後編〜
そして僕が調理実習で料理を作った日の放課後、修身室……。
「お待たせしました。皆さんへのお約束の調理実習で作ったお料理です」
僕はそう言って華道部のみんなに1つずつ僕が作った料理を渡した。
「まあ、ありがとうございます、千早お姉さま」
「どういたしまして」
部員たちが一通り僕にお礼を済ませると、さっそく興奮気味に雅楽乃へ味の確認を行った。
「御前、千早お姉さまのお料理って、ものすごくおいしいのですよね?」
「ええ。口に入れただけで、千早お姉さまの愛情が手に、足に、胸に、おなかに、足の付け根に、
それこそありとあらゆるところに染み渡って、それはもうすごく感じてしまいました」
雅楽乃は恐らくはその時のことを思い出し、桃源郷に浸りきったように恍惚の表情を浮かべて語った。
「はい、雅楽乃の分です」
僕はそれ以上語るのをやめてほしいので、雅楽乃に渡して口を封じた。
「まあ、私にもいただけるなんて! 千早お姉さま、本当にありがとうございます!」
いつものように無邪気な喜びプラスはしゃぎようでそれを受け取る雅楽乃。そして、さっそく口に運ぶ。
「んっ……! あ、千早お姉さまの愛情が、全身に優しく染み渡ってきます……ああんっ!!」
その後も、雅楽乃は自分の気持ち、自分がどれだけ感じているかを口に出し続け、
完食した時には寮の時と同じく達してしまっていた。
「はあ……はあ……はあっ……はあっ……」 「まあ、御前がここまで美味しいと感じるなんて……」
「そんな千早お姉さまのお料理をいただけるなんて、私たちはなんて幸せ者なんでしょう……」
他の華道部員は、そんな雅楽乃の様子を見て、食べる前にすっかり舞い上がってしまっている……。
「お姉さま……なんか嫌な予感がしませんか?」
「奇遇ね。私もそう思ってたところよ、雪ちゃん」
その予感は的中した。華道部員たちは、全員雅楽乃の言葉と様子に感化されて、食べ終わった時には
雅楽乃同様に桃源郷の中をさまよっていた。
それから3日後、僕の3ーAが調理実習の時……。
「千早お姉さま、私にも調理実習のおすそわけをいただけませんか?」
「白銀の姫君、私もお願いしてよろしいですか?」
「ええ、わかりました」
僕はおすそわけを欲しいという生徒が来ることを想定して、調理実習に作る材料を数倍用意しておいた。
けど、僕の想定は相当甘かったらしく、いざ調理を始めるころには、さらにその数倍の量を急遽買いに行く羽目になった。
「なぜ調理実習でこれだけ注文が殺到するんですか……」
「千早はエルダーの威光を甘く見過ぎだって。あたしも奏お姉さまと一緒にいたけど、それには驚きの連続だったもの。
それに加えて、来年度のエルダー候補筆頭の雅楽乃さんのお墨付きなのも加わってるんでしょうね」
薫子はニヤニヤしながら言う。 「薫子さんもニヤニヤしながら言うことじゃないでしょう。薫子さんだって似たような立場で……」
「まあね。あたしは半分あきらめてるから……」
「確かに、今さら何を言っても仕方のないことかもしれませんね」
しかし、この時僕たちは知らなかった。本当に大変なのはこれからなのだということを……。
「これで全部ですね」
ようやくすべてのおすそ分け用の料理を作り終えた。途端に、それを待っていた生徒たちが部屋になだれこんでくる。
「わあっ! ちょっとちょっと、そんなに急がなくてもたくさんありますから!」
猪突猛進の勢いで我先にと僕の手料理を求める女生徒たちにたじたじ。本当になんなの……。
「私が先ですわ!」
「いいえ、私の方が先です!」
「先に約束したのは私ですわ!」
八方から取り囲む女生徒たちがおしくらまんじゅうのように押しつ押されつして自分の都合だけを口にし、手料理を要求する。
「ですから、慌てなくてもちゃんと用意してありますから! 並んでください!」
結局クラスメイトのみんなに協力してもらって、ようやく女生徒たちを並ばせた。
パクッ
まず、最初に料理を受け取った女子が、その場で料理を食べた。
「ああ……お姉さまの愛が私の中に……」
そう言ったかと思うと、その女子は恍惚のあまり気絶してしまった。 「ああ……お姉さまの愛が身体の中に入っていく……」
そうして、僕の料理を口にした女子たちが、次々に気絶していく。薫子さんをはじめとするクラスメイトは、
気絶した女子を邪魔にならないように移動させていく。
「しかし、まさか食べてすぐ気絶してしまうなんて……」
「恐るべきはエルダーのご威光……か……」
それから数分後、僕の作った料理はあっという間に底をつきかけた。あれだけ用意していたにもかかわらず。
「まさか、急遽買い足しに行ってもこうなるとは……」
もう新たに料理を作る時間も材料もない。今回はこのまま終わらせるしかないだろう。
「お姉さま、私の分を……」
「ちょっと! あなたはさっきお姉さまのお料理をいただいていたではありませんか!」
「もう一度食べたいと思うのは当然でしょう! あれだけおいしいのですから!」
気絶から回復した女子たちも、もう一度料理を食べようと列に並んでいた。
「また次の機会に作りますから! 申し訳ありませんが、一度召し上がった方は今回は遠慮していただけないかしら?」
なんとか一度食べた人は引き下がってくれたものの、それでも一度も食べられなかった女子はかなりいた。
「う……ううう……」
「あ、ああ、泣かないでください! 次の調理実習の時には、必ずあなたの分は渡させていただきますから!」
さすがにかわいそうだから、即席の“優待券”を食べられなかった女子たち全員に配った。次の調理実習の時に、
これを持っていれば優先的に分けてもらえるというものだ。それで、今回食べられなかった女子たちも機嫌を直してくれた。 「しかし、まさかこれほどとは……」
昼休みの時間、寮のみんなと一緒に昼食を食べてる最中、調理実習の時のことを話していた。
「ひょっとして、由佳里さんの時もこれだけの大騒動が……」
「起きてませんよ。由佳里お姉さまのお料理の評判が良かったことは確かですけど、
こんな騒動は千早ちゃんが初めてではないでしょうか?」
生徒会で情報を入手した初音さんがそう語った。
「もう全生徒の話題になってますね! この宮藤陽向、その場にいられなかったのが残念です」
「陽向、あなたは時々寮で千早の料理を食べてるでしょうが」
「いやいや香織理お姉さま、この宮藤陽向としては、その熱気をじかに体験したかったわけでして……」
「しかし、こうまでなるのは私の料理が、由佳里さんよりずっと上ってことでしょうか?」
「ううん、料理の腕自体は千早も由佳里さんも大差ないはずだよ? あたしは千早の料理の方がおいしいと思うけど、
どちらかといえばってレベルだもん」
「ではなんなのですか、この差は……?」
料理の腕で大差ないというのに、向こうは「おいしいな」程度で終わり、こっちは大戦争、気絶者多数、
この状況は納得できるものではない。
「それはやっぱり、エルダーの威光でしょうね」
「あと、由佳里さんには雅楽乃さんのような人がいなかった、ってことだね」
初音さんと薫子さんが僕の疑問に苦笑しながら答える。雅楽乃のような人?
「次期エルダー候補筆頭と名高い御前のお墨付きに加えて、彼女が桃源郷に沈んだこと、“千早の愛が身体に染み込んでいく”
発言で、生徒全員が洗脳というか、そういう食べ物だという暗示にかかってしまったんでしょうね」 「はあ……では、もうしばらくこの展開が続くんでしょうか……」
香織理の話を聞いて、沈んだ気持ちになる……。
「“もうしばらく”ですめばいいけどね」
そして、少し楽しそうに話す薫子さんだった。
「さあ、皆さんの分をお持ちしました」
そして放課後、調理実習で食べられなかった人のために僕は新たに材料を買いに行って手料理を作り、彼女たちにに分け与えた後、
華道部に注文された全員分を持って訪れた。
「まあ、今日も千早お姉さまの手料理をいただけるなんて……」
「千早お姉さまが華道部にいらっしゃってほんとうによかったですわ」
「いえあの、私は華道部に入部していませんから……」
こんな反応をされると、そういえば、みんな何しに華道部に来てるんだ? と思ったりする。
「ちょっとみんな! 活け花をしに来たんでしょ? お姉さまの手料理をいただくのが目的だと勘違いしてるんじゃない?」
雪ちゃんがさすがに耐えかねたようだ。
「そうですね。では、これは活け花が終わった後で差し上げましょう」
そう言うと、みんなはいつも通り活け花を始めた。ただ、いつもより気合が入っているように感じるのは気のせいか……。
活け花も終わって、いよいよ僕の料理をみんなが食べ始めた。 「ああ……お姉さまが身体に入ってくる……」
「ああ……お姉さま……」
そして、食べ終えた時には死屍累々の山……僕が作った料理でなんでこうなるのか理解に苦しむ。
「なんでお姉さまの手料理1つでこうなるんでしょうね。美味しいのは認めますけど、こんな事態になるのは
私には全然理解できませんけど」
「私も全く理解できませんよ」
この時は本当に雪ちゃんの言葉が救いになる。いや、本当に。
「では、私もいただきましょう」
雅楽乃も僕の手料理を食べようとする。ちなみに雪ちゃんは気絶した部員たちを保健室で診てくれている。
でも雅楽乃、なんで僕の料理を食べるだけで修身室に鍵をかけるの?
「ふぁあああああああっ……!!」
僕の料理を食べ終えた雅楽乃が以前と同じくそう嬌声をあげた。
「あ、千早お姉さまが染み込んできます……あああ……また身体が熱くなって……乳首がたってえっ……」
雅楽乃は自分の胸と股間をまさぐり始めた。ちょっと、僕の前で!
僕は見ないように雅楽乃から眼をそらし、耳を塞いだ。 「お、お姉さま、ダメです!」
ところが、それに気づいた雅楽乃が、僕の手をとって自分の方に振り向かせてきた。
「ど、どうしたの?」
「雅楽乃を見てください! お姉さまが見てくださると思うと、なぜかとても興奮して、
気持ちよさがどんどん膨れ上がってくるんです!」
雅楽乃! 僕の理性を崩壊させたいんですか!?
「わ、わかりました……ちゃんと見てますから……」
そう言うものの、世の男たちにとっては垂涎の状況かもしれないけど、僕にとってはそのまま理性を保たなければならない、
ある意味生き地獄だ。
「ああ……千早お姉さまが、雅楽乃のはしたない姿をご覧になってくださってます……」
雅楽乃、そういうこと口に出して言わないで!!
「くはあ……もう下着もびしょびしょになってます……!」
なんかもう、それ一般的には犯してくださいって言ってるようなものだよ!? 僕だけだからいいけど、
もうちょっとその辺考えようよ!
「千早お姉さま……千早お姉さま……あああああっ……!!」
結局雅楽乃は、僕が見ている前にイってしまった。また……。 「やっぱり、お姉さまにご覧いただく方が心地いいです……♪」
「そ、そう……」
僕はいったいリアクションすれば……。
それから、僕はとりあえずの応急処置として、寮まで僕の女性用下着を取りに行って、雅楽乃にはかせた。
けど下着が僕のだと言った途端、雅楽乃がまた欲情しているような表情を見せてたけど……。
僕が調理実習に参加するのって、授業の妨害をしていることにならないか?
「そ、そんな……」
「もうお姉さまの手料理がいただけないなんて……」
次の日、梶浦先生と初音さんに呼ばれた僕は、調理実習に対しては教える側に回り、作らないでほしいという頼みを受けた。
理由は、僕の手料理目当ての女生徒たちで逆に授業の妨げをしている、というものだ。
「千早ちゃん……生徒会に苦情が殺到してます……」
「やはりそうですか……」
寮での夕食、僕は初音さんの愚痴を聞いていた。
「まあ、世の中そんなうまくはいかないよね」
「私も千早お姉さまのサキュバス旋風を巻き起こすのを楽しみにしてましたからね。もっと起こしてくれないとつまらないですよ」
にやりと笑いながら言う薫子さんはまあいいとして、陽向ちゃんは勝手な熱を吹かないでほしいんだけど……。 「面白いつまらないの問題じゃないです。それに誰がサキュバスですか」
「あら千早、自覚ないの?」
「今や千早の手料理って、ヘタな催淫剤よりよっぽど効きそうだからね」
「くっ……」
それを言われて否定できないのが悲しい。正直、梶浦先生と初音さんたち生徒会の頼みは、
僕の料理がそうなっていくのを防いでくれるから助かった、と思っていたのに……。
「さいいんざいって、なに?」
ゆ、優雨……それを聞かないで……。
「さいいんざいっていうのは……そう、芸能人とかのサインをもらうための材料ですよ」
「ちはや、ウソついてる……」
う……ごまかせると思ったけど、優雨は感受性が鋭いからな……。
「わかりました。正直に言いますよ。でも、それは優雨がもっと元気になって、立派なお姉さまと呼ばれるようになったらね。
それでいいかしら?」
「わかった」
なんとか納得してくれたようだ。ああビックリした……。
「授業は円滑に進める。皆さんの欲求は満たす。どちらもやらなくちゃいけないんですよね……」
初音さんがため息をつく。優雨は心配して大丈夫かと聞いてくる。こちらも何とかしないといけないのか……。 「じゃあさ、代わりに次の休日に千早の手料理でパーッとパーティーでもやるってのはどう?」
薫子さん……他にどうしようもないとは思いますけど、楽しそうですね……。
「いいですね! 不肖宮藤陽向、成功のために全力を尽くさせていただきますよ!」
「面白そうね。私も協力するわよ」
香織理さんと陽向ちゃんがそう言って何やら2人で準備にかかる。いったい何をするつもりだろう?
変なこと考えてなきゃいいけど……。
「……それで、得たのがこの金ですか?」
「そうですよ。いやあ、もう売れに売れて……」
「そうねえ、こうなるんじゃないかとは思ってたけど、予想以上だったわね」
香織理さんと陽向ちゃんがパーティーの参加チケットを作り、それを売った結果を僕に話していた。
「まさかぼったくりとかしたんじゃないでしょうね?」
それで得た金額の多さを見せられると、そうとしか思えない。
「いやですねえお姉さま。材料費ぐらいしかいただいてませんよ」
「陽向の言う通りよ。それでこれだけ大量に売れたからこの額なの」
……なんなんだいったい? エルダーの威光って。
「まあ、呆けていても何も始まりませんから、早速メニューを決めて材料を買いに行きましょう」
僕はこれから作ることになるだろう料理の量の多さに頭を痛めながらも腹をくくった。 「これなら高級料理も作れそうな額ですが……後が恐ろしいのでやはり普通の料理にしましょう」
「そうね。あたしもその方が賢明だと思うよ」
「はい。それでは、早速メニューを皆さんで決めましょう」
僕たち寮生は早速パーティー当日のメニューを決める会議に入った。
そしてパーティー当日……。
「いよいよこの日がやってまいりましたね」
「私、今日をどれだけ待ち望んでいたことでしょう……」
いや、そんな大げさなものでもないでしょう?
「私、この時のために、昨日から食事を我慢しておりましたのよ!」
ちょっとちょっと、それ色々間違ってますから!
「……それにしても、場所を食堂に選んで正解でしたね。ここでなければとてもすべての事態に対処できませんよ」
結局、僕の手料理を作るパーティーは聖應の食堂で行うことになった。ここならどんなに想定を超える大量注文があっても
一番迅速に対応できる。
「とは言ったものの……」
料理を作りながら受け取りの窓口を見ると、まるで大人気のレストランのように、すでに長蛇の列が出来上がっている。
いや、というよりむしろ龍か……。
「どうやら、無駄口を叩いている暇はなさそうですね」
いくら僕でも、これだけの人数の料理を短時間で作るのは難しい。どうやってなるべく短時間で美味しい料理を作るか……
僕は考えながら手を動かしていく。 「ああ……千早お姉さまの愛が私の身体の中に……」
そして、まず最初に料理を受け取った1人が、僕の料理を一口食べるなり、すぐに桃源郷の海へと沈んでいった。
椅子に座ったまま、テーブルに突っ伏して夢見心地に向こうの世界でいろいろ言っている。
ゴクッ……。
と、それを見た女生徒たちからつばを飲み込むような音が聞こえた。なんかすごく嫌な予感がするんだけど……。
「千早お姉さまの手料理をいただいてあんな風に……」
「しかも、どなたよりも早く……」
「「うらやましいーっ!」」
いや、あのですね、そんなに言わなくてもちゃんと全員分の料理は用意してありますから!
「あああ……」
と、その時、だいぶ後列に並んでいた女生徒の1人が、その気を失った女生徒の料理に引き寄せられるように、
うつろな目をしながらフラフラとそこへ歩み寄った。
「ち、千早お姉さまの……」
そう言って、残りの料理を自分の口に入れようとする。いや、多分衝動的なもので自分でも何をやってるのか
わかってないんだろうけど……。
「ああ、ずるいですわ!」
「私も、私も千早お姉さまの手料理を……」
と、それをきっかけとして後列に並んでいた女生徒たちが、みなその僕の作った料理のところに向かう。
みんな、何してるの! そんなことしなくてもちゃんと渡すから、というか、わざわざ取り合うほどのものじゃないでしょ!? 「ちょっと、みんな! 何を獣みたいにお姉さまの料理を横取りしようとしてるの!」
「すぐに千早ちゃんのお料理を召し上がりたい気持ちはわかりますけど、千早ちゃんはちゃんと皆さんの分を作ってくれますから、
落ち着いて順番通り列に並びましょう。ね?」
それに気づいた初音さんたち生徒会のメンバーが暴走しかけた女生徒たちを必死に止めに入ってくれた。
凄く先が思いやられる光景だ……。
「はあああああ……」
それから、途中で何度か材料を追加で買いに行ってくれた分もあわせて、ようやくみんなの分を作り終えたころには、
料理を配るのを手伝ってくれた寮のみんなや僕の親友も疲れ果てていた。
僕の料理を食べた女生徒たちは、ほとんどみんな一口食べるごとに恍惚の表情を浮かべて気絶して、
しばらくしたらまた起き上がって一口食べて……を繰り返していた。
そして、もう1度料理を注文する生徒も1人や2人じゃなかった。
「しかし、どうすればいいんでしょうか、これを……」
恍惚の表情で桃源郷に浸っている聖應の生徒たちを前にしてそう言った。
「うーん……バスかタクシーでも呼んで、家まで送り届けてもらえばいいんじゃない?」
薫子さんはそう言うけど、住所はどうやって……。
「初音さん、皆さんの住所はわかりますか?」
「ええ、生徒会室に行けば……ちょっと見てきますね。沙世ちゃんたちにもお願いできるかな?」
そして、生徒会のみんなの協力もあって、全員をそれぞれの家まで送り届けることができた。 「みなさん、本日はどうもお疲れ様でした。本当にご協力ありがとうございました」
「何言ってんの。一番苦労したのは千早じゃない」
「その言葉、そっくりそのまま千早さんに返すよ」
僕が手伝ってくれたみんなに礼を言うと、みんなも僕にねぎらいの言葉をかけてくれる。けど、一番苦労したのが誰であれ、
みんなのおかげで僕の苦労が軽くなったのは確かだから、ちゃんとお礼をしたい。
「では、みなさんも召し上がってください」
僕はそう言って、みんなのために作った料理を、すべて終わって休んでいるみんなが座っている席に運んだ。
「え……? あたしたちも食べていいの!?」
「ええ、もちろんです。もう夕食にはちょうどいい時間ですからね」
僕が笑顔でそう言うと、みんなも喜んで料理を食べようとする。まあ、沙世子さんの反応は微妙だったけど。
「では、いただきましょう。主よ、今から我々がこの糧をいただくことに感謝させたまえ。アーメン」
「「アーメン」」
「じゃあ、いただきまーす!」
初音さんがお決まりのあいさつに続いて、みんながそう言うと、早速料理を食べ始めた。
「いやあ、やっぱり身体を動かした後の料理はおいしいよ! 千早の手料理だからなおさらだけどね」
「本当にこういう時の千早の料理はまるでオアシスね」
薫子さんと香織理さんはよく僕の料理を食べてるのに、そう喜びをあげる。多忙な時間の中で仕事をやりとげた後だからだろうか? 「む……ま、まあ思ったよりはおいしいわね」
「いやいや、お姉さまのお料理が直に味わえるなんて、生徒会冥利に尽きますよ」
「確かにかなりの美味だな」
生徒会のメンバーは食べるのは初めてだと思うけど、予想よりは好評そうだ。沙世子さんはよく僕たちにつっかかっているからか、
ツン状態になってるけど。
ちなみに寮のみんなの反応は、いつもの通り。薫子さんと陽向ちゃんは大はしゃぎで
香織理さんは「滋養効果の強い料理なんて、相変わらず小憎らしい心遣いね」と感想を述べ、
初音さんと優雨は仲の良い母娘の絆オーラをムンムンに醸し出しながら「おいしいね」「うん、おいしい」と言ってて、
史は自分の料理との違いをみんなに講釈していた。
ケイリは「千早の料理は台風を呼ぶようだね」と言いながら料理を味わっていて、
雪ちゃんは「悔しいけどやっぱりおいしい」と言いながら食べて、雅楽乃は……聞かないでいただきたい……。 それから数日後……。
「お姉さま」
「雅楽乃、何か悩み事ですか?」
僕が1人で歩いていると、雅楽乃が声をかけてきた。表情から悩みでもあるかと思ったのでそう聞いてみた。
「ええ、よろしければ、ご相談に乗っていただいてもよろしいですか?」
「ええ。私にできることでしたら」
僕はそう安易に引き受けてしまったんだけど……。
「千早お姉さまのお料理、いったいどこでいただこうかと……」
「? 別に食堂でも修身室でもどこでもよろしいではありませんか?」
僕は雅楽乃が悩む意味がわからず、そう言ったんだけど……。
「学校でしたら千早お姉さまの作りたての温かいお料理をいただくことができるのですが、自慰をする場所に困ってしまいますし、
お家でしたら自慰をする場所には困りませんが、お姉さまのお料理は冷めてしまってますし……」
「……えっと」
どう答えればいいんだよ、こんな相談……。
僕は結局その後、時々料理を作りに雅楽乃の家に行くことになってしまったのだった。
Fin 以上です。 ID:PFrpdAZ90さん、ご支援ありがとうございました!
欲を言えば、千早くんの手料理でみんなが桃源郷に沈む話、もっと大きくしたかったのですが……。
しかし、このスレでは、まだ私以外誰も投稿していませんね。
発売からだいぶ時間が経過している以上、仕方ないのかもしれませんが……。
ともあれ、私は他の方からのSS投稿も大歓迎ですので、よろしくお願いします。
それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。 支援中に寝オチしてしまうとはorz
ちーちゃんの料理に入ってる愛情は色々まずい。
おもしろかったです! 後編も面白かったです。
ただ千早は3-Cじゃなかったけ、そこだけが気になって……。 ゆきちゃんがシロップ付きのエルダースティックをprprしながら
こっちの方がおいしいのにね、って言ってる所を妄想するとうたちゃの暴走もかわいく思える すいません。テンプレにある投稿所ってのはどこでしょううか? >>109
テンプレにある「投稿所」とは、テンプレ作成当初、「おとボクSS投稿掲示板」(>>1にあるとおり廃止されている)を指していた。
いまは……はてさて……。 このスレ向きでないSS公開したいなら
自分のblog作るとか、pixiv等の小説投稿サイト使えばいいんじゃね? ご無沙汰しております。
年末くらいに書き上げつつも
なんかいまいち感があったので放置してたけど
さっぱり育つ気配もないので、ひさしぶりに書いてみます。
ゲーム本編ではなくGA文庫基準でひとつよろしくです。5本くらい? ----------------------------------------------------------------------
『すとれいしーぷ』
それは香織理の停学騒動が解決してから数日後のこと。
午後の活動を終えた水泳部の部室には
シャワーを浴び終え、止め処もない雑談に興じる部員達。
「ケイリお姉さま!」
「ん? 陽向 どうしたの?」
「先日の我が姉が起こした騒動に関連して
千早お姉さまがシスターを言葉責めにしたって、本当ですか?」
あまりに唐突すぎるその言葉に、ざわりと部室の空気が揺れる。 「えと‥。それは誰からの情報だい?」
「学院長室での状況を薫子お姉さまにお聞きした際に
ちろりとそんな発言がでたのですが、その後すぐに言葉を濁されてしまいまして。
でも、まぁ、直後に薫子お姉さまが見せた 失敗したなぁ的てへぺろ感 を考えると、
その発言そのものは比較的真実を含んでいたのではないかと!」
「ふむ‥」
「さすがに千早お姉さまに直接伺うわけにもいきませんし。
残るは最後の弁護人、ケイリお姉さまに伺うのが真実への唯一の道!!
というわけで質問した次第にござりまする。なにとぞーなにとぞー」
そういって、樹脂ベンチのうえにスカートのまま正座して
無駄に平伏を始めた陽向を眺めること数秒。
「しかたないな。それなら、少しあのときの会話を振り返ってみようか。」
「まぢですか、やった!」
「「「きゃー!!」」」
ふふりと笑みを唇の端に浮かべたケイリの一言に
がばりと面を上げる陽向と、喜ぶ水泳部員一同。
「おやおや、これは今日は帰りが遅くなりそうだね」
周囲の興味津々な眼差したちを眺め
そう呟いたケイリはすこし姿勢を正し。
「それでは。どこから話し始めようか。」 ‥‥‥。
‥‥。
‥。
「といった感じで、最終的には学院長に一任することになったわけ。
その後の結果は周知の通りってとこかな。」
自分の生い立ち周りをさりげに省略しつつ、
ケイリが一通りの事情を説明し終えると。
「そういう事情だったのですね」
「さすが千早お姉さまですわ」
きゃいきゃいと周囲の部員達が感想を言い合う中で
ぶつぶつと何かを呟く陽向の姿。
「陽向、どうかした?」
「えっ? いえ、なんでもありません!
えぇと、ケイリお姉さま、ありがとうございました!
それで申し訳ありませんが、急用を思い出しましたので
宮藤陽向、これにて失礼させていただきます!」
「え、あ、そ、そう?」
うぉぉ!創作意欲がーーー!と叫びながら走り去る陽向の後ろ姿を見送って
ぱちくりと瞬きを一つ二つ。
「これは‥あとで千早に怒られることになりそうかな?」
なんとなくの事情を察し、苦笑しながら頭を掻くケイリであった。 ***
時は流れ。
裸電球が揺れる小部屋にて。
実のところ、それなりの頻度で利用されているその部屋には
薄ぼんやりとした明かりに照らされる数人の人影があり。
紙をめくる音とともに、満足そうな溜め息がそこかしこから漏れ出していた。
「以上で、神無月の会の読み合わせは終了です。
次回、霜月の会に向けて、各自の精進よろしくお願いします。」
「よろしくお願いしますー」
「お疲れ様でしたー」
「今月も力作が多くてよかったですねー」
終了宣言とともに雑談の声が広がる。 「いやぁ、千早お姉さまの言葉責めは実にいいものですねぇ‥。」
「涙目なシスターに具体的な描写を強いるところの追い詰めっぷりは
本当にご馳走様でした!って感じですよねぇ。」
「ほんと、情景が目に浮かびますわぁ。」
「正直、もう少しシスターの恥辱っぷりを書きたかったんですけど
なかなか難しくて。力不足ですいませんー」
「いえいえ。十分満足できましたわ。」
「で、で、この落ちは次回に続くんですよね!?」
「いやぁ、どうしましょうかねぇ。実はあんまり考えてないんですよー」
「だってだって、学園長のにこやかな笑顔を見てシスターが怯えるなんて
当然、この後は学院長によるシスターの再教育ですよね!」
「O・SHI・O・KI! O・SHI・O・KI!!」
「やっぱり学院長の隠し部屋ですか? それとも礼拝堂の地下室ですか?」
「そうかー。礼拝堂にはやっぱり秘密の小部屋がありましたかー。
わたくし、前々から怪しいとは思っていたんですよねぇ」
「いや、ないから。」 「それにしても。壁際に追い込んだのち
股下に膝を入れて身動きを封じるあたりは実に萌えますよねぇ。」
「吐息が触れそうな状態で必死に顔をそらすシスターの首筋に
唇を這わす千早お姉様の妖艶さといったらもう!」
「今月のベストシチュといっても過言じゃありませんわ!」
「あっ!? いいこと思いつきました!」
「どうしました?」
「生徒会劇の脚本でそのシーンいれれば‥」
「「「きゃーーーーー!!」」」「それよ!」「ナイス!!」
「でもでも、台本は先日製本終わっていませんでしたっけ?」
「まだ生徒会に初版を提出していないはずですし、まだ間に合うかも!?」
「ほかには?ほかには? ほかに入れたいシチュは?」
「千早お姉さまを涙目にしたい!」「薫子お姉さまのヘタレ攻め!」
「ヘタレといえば初音会長を外すわけには!」
「茉清お姉様も交えた三角関係!」「そこまでいくならNTRとか!!」
「いやあそれはどうかと」「えー」
血迷える子羊たちの喧噪は、もうしばらく続きそうである。
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ばれると停学必至な裏文学部活動。 乙です!
ちーちゃんにばれてもご褒美にしかならないね。 ユキちゃんエンドの後でうたちゃんがシングルマザーになって生まれてきた子供の髪の毛が銀髪で修羅場になる妄想をしながら今日も生きてるよ 俺は薫子エンドでどうにかして史ちゃんも巻き込めないか考えてる おとぼく3が発売されたのにまったくここに人がいない・・・