■創作彼女の恋愛公式■+1 SC H3
ずっとフルプラボリュームで読みたいと思っていたライター、工藤啓介さんの作品でめっちゃ期待していた本作。結果2021年で一番期待に応えてくれた作品となりました。
成長を軸に恋愛を絡めて展開していくストーリーは、王道ながらもキャラクターを魅せるつくりになっていて読み応えがありました。
工藤さんと言えばウソシリーズで有名な方だと思いますが、あの作品群からも分かる通りロープラでもキャラクターをしっかり作り込む事が出来る方です。
そんな氏が共通部分を長く取って各キャラクターを掘り下げていく、これが見たかったんですよこれが。
ロープラだと削らざるを得ない箇所が丁寧に描写されていて非常に良かったです。些細なしぐさひとつとっても、時間の積み重ねがある事でより可愛く見えました。
一方成長物語としてどうかというと、こちらも王道ながらも非常に丁寧。
主人公やヒロイン達が葛藤や挫折を経験しながら夢へと進んでいく姿は、ただただ眩しく憧憬すら覚えるものでした。
一転光あれば影もある。夢に向かって努力を重ねて、それでも圧倒的な才能の差に絶望して。そこで狂気を抱えて修羅の道を進む者もいれば、諦めて次代に夢を託す者もいる。
境遇の違うキャラクター達の感情の奔流は、そのどれもが共感を覚えるものでした。
このあたりの対比までしっかり描かれている点がこの作品の最も優れた点だと思っています。
クリエイターモノという事でプロットの重要性が作中で語られる場面があったのですが、作品自体の出来に通ずるものがあって工藤さんの力量が感じられました。
あえて文句をつけるなら逢桜と桐葉のとあるHシーンですかね。
せっかくキャラクターを大事にしてるのに、ちょくちょく描写に違和感を覚える箇所があったのは残念です。
と、文句も一応つけましたが間違いなく良作でした。次回も是非フルプラボリュームで読みたいライターさんです。