サムスピ総合エロ萌えSS 4
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0001名無しさん@ピンキー2006/11/20(月) 01:06:01ID:7zC1vlf2
ここはサムライスピリッツシリーズの
萌えSSやエロSSを書き込むスレッドです。

サムライスピリッツ天下一剣客伝公式
ttp://www.snkplaymore.jp/official/samurai_tenka/
0489アスペルガーなご飯炊き2012/01/21(土) 12:54:28.84ID:aox6Gs5f
>>488
悪いが、俺の望んでいる閑リムはなさそうだ……クソッ
残るは都築さんの描いたヤツのみ……
0491名無しさん@ピンキー2012/03/29(木) 01:23:19.77ID:I38SqkCj
陸捨肆氏のリムルル話・・・
ハッピーエンドを期待していたので、とてもむなしい。
この板を昨日見つけ、二日で全部読んだが、とてもすばらしいと思った。
もう最後の投稿から早四年となってしまったが、元気にしてるだろうか。


0494名無しさん@ピンキー2012/09/23(日) 01:57:02.53ID:4xsrsv3c
ほしゅ
0495名無しさん@ピンキー2012/11/04(日) 05:27:33.15ID:8womqw80
0496名無しさん@ピンキー2012/12/31(月) 21:26:15.25ID:TTVOStjy
来年
0499名無しさん@ピンキー2013/09/28(土) 13:38:24.76ID:qGwqPMCR
>>491
もう5年か…リムルルの人、どうしてるのかね…

とつぶやきつつ保守
0500陸捨肆2013/10/06(日) 09:28:18.26ID:xApXeJRz
そこは、暗く冷たい場所だった。

何も聞こえず、何も見えない。
五感を通して感じられるのは、ただ冷たいということだけの場所だった。
いつからここでこうしているのか。どうしてここでこうしているのか。
どうしてこんな凍えてしまいそうな場所で、じっとしているのか。
そんな疑問さえも、冷たさの中にすうっ……と動きを止めて、沈み、泡になって消えていく。
そして再び、思考も判断も必要としない世界が姿無き姿を見せる。
何十年、何百年……カムイ達の時代よりもずっと前からそこを動かない、澄み切った黒のような世界。

リムルルは、自らの心という深海の底に魂を沈め、眠っていた。

力を抜き去った身体をふわふわと水底に漂わせ、かすかな水流に身を任せていた。
何ひとつ、思うことも、考える必要もない。
時折、彼方に何かの気配を感じるだけ。それも、ほんのわずかだ。
リムルルはただ、冷たさに麻痺した身体を携えているだけだった。

… …… ………

――何か聞こえる。

まぶたを閉じたまま、リムルルはただ、そんな気がしたのだった。
大きな声、小さな声。男の声、女の声。子供の声、大人の声。でも、どれでもなかった。
喜んでいるのか、悲しんでいるのか……それも、分からなかった。
この海の底に降りてくるころには、みんな色を失ってしまうからだ。
大きな海の、ずっとずっと深いところにいるリムルルにに届くものは、何一つ無い。
しばらくすればまた、冷たく重たい静寂が戻ってくる。

――ひとりきりだ。

不意に心に言葉が芽生え、リムルルはぷくりと小さな泡を唇の間から逃がした。
やけに懐かしい言葉のような気がした。しかしその言葉は泡と一緒に浮き上がり、どんどん
リムルルから離れていって、やがて消えた。
昔は、その言葉にがんじがらめにされていた。そんな記憶があるような気がした。
その言葉のせいで、ずいぶんと苦しい思いをした気がするのに、今はどうだろうか。
誰も絶対に来ることは無いであろう場所に、リムルルは漂っている。文字通り――

――ひとりきりで。

あんなに嫌で仕方の無かったものが、今ではこんなにも身近にある。
しかしリムルルは平気だった。むしろ安心でさえあった。
子供みたいにかくれんぼで遊んで、絶対に見つからない場所にいるような感じだ。

日が沈むことも無いから帰る必要もない。
そもそも誰もいないのだから、何かに怯えることもない。

そう決めてしまえば、分かってしまえば、ただそれだけのことだ。
自分の足元から生える影を、恐れているようなものだったのかもしれない。
歩みを止めてしゃがんでみて、指で触ったところで、影は主の動きをまねるだけだ。
指を食いちぎることも、影の中に引きずり込むこともしない。
0501陸捨肆2013/10/06(日) 09:28:58.34ID:xApXeJRz
――ひとり……か。

リムルルはもう一度その言葉を胸によぎらせ、くぷくぷと泡粒に乗せて飛ばす。
泡は何の障害も受けずに、まっすぐに上っていった。そうなるのが、当たり前のように。
自分も泡みたいになったのだ、リムルルはふとそんなことを思った。
リムルルを邪魔するものは何も無いのだ。何万年も変わらない暗い景色に溶け込んで、
滑らかな砂と一緒に海底に沈んでいるだけ。これがリムルルにとっての当たり前だったのだ。

――そんなことにも気づかないで、わたし……遠回りしちゃったんだ。

ひとりきりは嫌だと、自分の姿を失わないように、水面に波を立たせ、水玉を蹴飛ばして。
滝壷の下から遥かな空を見上げては、その向こうで誰かが待っていてくれるような気がして。
そして自分が行くべき場所はこの滝を登った先なんだと、信じ込んでいたようなものだったと、
リムルルは思った。
何度も滝を登ろうとしては落ちて、それでも浮き上がってまた落ちて、本当は何が待っているかも
分からないその先を目指して……。そんなのは、辛いに決まっている。

――でも、もう分かったの。わたしが行くべき場所は……こっちだったんだ。

リムルルの思いを酌んだ海底の砂が、音も無く流れ出した。あり地獄のように落ち窪んだその中に、
リムルルは流され、溶けるように沈んでゆく。

――そう、下へ。こっちが、わたしが進むべき場所……。

滑らかな砂はリムルルを優しく包み、飲み込んだ。そしてするすると少女の身体を
深みへと誘い、しばらくして再び冷たい水の中に放り出す。海の底の底は、まだ遠い。
リムルルが願えば願うだけ、ひとりきりの闇は、リムルルの魂を甘く、黒く塗りこめていく。
光が、音が、また一段と遠くなった。何も見えず、何も聞こえない世界がより完璧なものに
近づいて、リムルルは奇妙な安堵を感じた。

ポクナモシリ(冥界)は、地底の奥深くにある――そんな古い言い伝えを思い出したが、
恐くはなかった。恐怖までもが、深海の冷たさに動きを止めてしまったかのようだった。

――死んでしまえば、みんな、ひとりきりになるのかな……?

振り落ちる砂粒ほどの価値も無い疑問と共に、リムルルは更なる心の淵へと沈んでいった。
0502陸捨肆2013/10/06(日) 09:29:33.90ID:xApXeJRz
########################################

降りしきる雪。止まらない涙。
「うぅっ、うっ……。リムルル……」
うっすらと積もった雪と、コンクリートの冷たさ。
――リムルル……何で……なんでだよぉ……?」
コウタは人気の無い裏路地に倒れたまま、ぎっと唇を噛んだ。
――お前のために、お前と一緒にこれからもずっと、過ごすために……
――今日という日を、特別なものにしようと思っていたのに……!
「どうして……こんなのアリかよ? 畜生! ちくしょおお!」
コウタの声は、静かに降り積もる雪に吸い込まれては、消えていく。
もう、どこにも届かないかのように。
「ちく…… しょ……!」
指先から、背中から……。身体を包み冷やしていく雪空の中、ひときわ涙だけが熱い。
もう帰ってこないというその人の事を思えば思うほど、涙が止まらない。
信じようと、信じまいと。どこに逃げようと、どんなに虚勢を張ろうと。
コウタを捉えた真っ黒な絶望と終わりの無い悲しみは、二度とその手を離さない。

「……きだ」

だから、コウタはその言葉を口にするしかなかった。

「リムルル……好きだ、好きだよ……?」

世界がどんなに暗くても、嘘に思えても、決して揺らぐことの無い事実を。
「好きなんだ……。バカみてえに、好きだ。リムルル……」
自分の本心を。
「ありがとう……リムルル」
本心?
「お前にっ 会えて……」
これが?
「本当に…………ッ」
こんな……諦めが、別れの言葉が、本心?
「……うううううう!!!!」
違う! 違うんだ!
「ううううううあああああばかやろおおおおおおおおおお!」
コウタは思い切りコンクリートに平手を突いて深い絶望の沼から顔を出すと、
膝立ちになって天を仰いだ。
「どこだああああ! どこだっ、リムルルううううううっ!」
そして、降りしきる雪をを跳ね返す勢いで、ありったけの力で、吠えた。
「俺はっ! 俺はここだ! リムルル! 聞こえてるんだろう!? お前の!
 にいさまは! ここだっ! ここだーっ! そうだほら……見ろっ!」
コウタは右手に握りしめていた、いびつな鞘に収まったハハクルを天に掲げた。
「お前のために作ったんだ! クリスマスのプレゼントだ! 酷い出来だけど……
 それでも頑張って作ったハハクルの鞘なんだ! リムルル! 受け取ってくれー!」
口の中に雪が飛び込むのも構わず、コウタは天に向かって叫び続ける。
「リムルル! レラさんもいる! ケーキもある! かくれんぼは今度にしろ!」
再び足元からすり寄る、絶望の淵を蹴散らそうと。
「教えただろ! 今日は楽しい日なんだって! お前だって楽しみにしてただろ!」
後ろからそっと抱きしめる、虚しさの虜にだけはなるまいと。
「カムイとか戦士とか、子供のお前には……。きょ、今日ぐらい忘れていいんだよ!」
もはや堪えることを放棄した、涙の熱に焼かれまいと。
「はぁ……はぁ……だから……」
コウタは肩で息をしながら、ハハクルを掲げた手をだらりと下ろし、つぶやいた。
もう、限界だった。

「リムルルを……返して……くれ……」
0503陸捨肆2013/10/06(日) 09:30:17.60ID:xApXeJRz
コウタを取り巻く世界は、再び静まり返った。
雪の日に特有の、無慈悲なほどに静かな世界。
自分の呼吸さえ聞こえない、白い息と、白い雪だけが動く世界。

だが、そこに――

かたっ、かたかた。

どれくらいの時間が経っていたのだろうか。
かたかたかたっ! がたっ! がた・がたん・がたっ!
腰のあたりから変な音がして、雪まみれとなっていたコウタは、はっと我に返った。
「……? んん?」
雪を払うのも忘れ振り返ると、レラに貰ったマキリがベルトの間で音を発して震えていた。
しかも――
『ちゃん! コウタにいちゃん! しっかりしてな!』
「おっ! うわっ!?」
リムルルと出会ってから何度か味わったのと同じように、誰かの声が頭に直接飛び込んできて
コウタは思わず大声をあげた。
『やっと聞こえたのな! だったらさっさと頭を下げてな!』
聞き覚えのある、甲高い少女の声だった。
「おっ、お前は……マキリのカムイ?」
『そうなっ! だから早く頭を下げ――』
『コウタっ!! このうすのろが!』
「はぁ? 何なん――? ぐえっ!」
今度は別の声が頭に響いたと思うと同時に、背後から乱暴に押しつぶされ、
コウタは再び雪道に突っ伏した。

その、瞬間だった。


ず 。 ど 。


何かに押しつぶされたのよりもはるかに激しい衝撃と地響きが、脳を揺さぶるほどの轟音と
共に、コウタの向かおうとしていた道の先で爆発した。

「ッツ――!? ヴうううううう!?」
圧縮された暴風と巨大な熱量が、伏せたままのコウタの真上を通り過ぎ、巻き起こる。
「あつつつつつつつつつ!?」
その正体を確認することなどできない。コウタはアスファルトに指と爪を突き立て、
火傷しそうなほどの熱風に吹き飛ばされないようにするのがやっとだ。
――何が? 一体全体!?
疑問で無理矢理こじ開けた視界に見えるのは、白だけだった。
時折まつ毛を濡らす綿のような、うっすらと鼠色の地面を覆い隠す雪。
その柔らかだった白の世界を塗りつぶす、熱い白。
暗いトンネルから抜け出した時のような、目を刺す白。

その異質な白は、コンルの記憶の中で見た、コタンを焼き尽くす揺らめく炎の白だった。
0504陸捨肆2013/10/06(日) 09:31:58.84ID:xApXeJRz
何かにのしかかられ、さらに熱風に煽られているはずのコウタの背中が、びしりと凍りつく。
――まさか、これは……!
最悪の予感が胸をよぎるや、頭上で渦巻いていた爆発音がひときわ大きく響き渡ると、
まるでスイッチを切ったかのように爆風が収まった。
コウタは握ったままのハハクルを抱き寄せて、再び反射的に頭を伏せた。
だが強烈な熱も、身体を引きちぎりそうな風も、不気味なほどに成りを潜めている。
『間一髪だったな……。コウタ、立て』
キーンという爆発の残響が耳にこびりつく中、明らかに外からではない声が、
再びコウタの頭の中に直接飛び込んできた。爆発の直前に聞いたのと同じ、
やけに落ち着いた、大人の男性の声だ。
背中にのしかかる重みもふっと消えて、コウタはようやくごろりと仰向けになる。
そしてコウタの目の前に飛び込んできたのは、闇の中にぼうっと銀色に輝く怪物。
たてがみもりりしい、巨大な狼のカムイだった。

「し、しっ……シクルゥー!」

『無事か、コウタ』
「そ……それは、それはこっちの台詞だよっ!」
コウタは思わず、シクルゥの首を抱き寄せた。
ふわふわ、ごわごわした確かな感触に、コウタは再び涙ぐんだ。
「レラさんがボロボロになって帰ってきて……何も言ってくれなくて」
『そうか、レラは……生きているのだな』
「でも怪我してるし、もう、消えちまいそうなくらい落ち込んでる」
『生きていれば良い。我々も無傷では済まなかった。不覚にも片目をやられた』
「マジかよ!」
言われて、コウタはシクルゥの首から離れた。
確かにシクルゥの右目には、斜めに深々と裂傷が刻まれ、立派だった金色の月のような瞳は
片方のみが闇夜の中で輝くばかりとなっていた。血は既に止まっているものの、
傷と共に塞がれたまぶたが二度と開く気配は無い。
「ひでえ……何でこんな」
『私の事はいい。それよりコウタ、これを頼めるか』
言ってシクルゥが突きだした口元には、冷気を放つ小さな氷の塊が咥えられていた。
「コンル! こんなに小さくなっちゃって……」
『力加減が難しい。噛み潰してしまったら、事だ』
差しのべたコウタの手の中にころりと転がってきたコンルは、弱弱しく冷気を放ち、
息も絶え絶えといった様子だ。浮き上がることはおろか、呼びかけにも応じない。
「シクルゥ! 一体何があったんだよ?」
『今は詳しく話している時間は無い。だが、このままではアイヌモシリは……
いや、カムイモシリもポクナモシリ(冥界)も全て破滅する』
「はっ、破滅?」
『特別な力を持たぬお前が、私の声をここまで聞けているのもその証拠だ。
世界が不安定になっているのだ。あれのせいでな』
シクルゥの視線に促され、コウタは数瞬前の大爆発を思い出して立ち上がったが、
後ろを振り返るなり、言葉を失った。
0505陸捨肆2013/10/06(日) 09:33:25.94ID:xApXeJRz
闇夜の中、目を眩ませる白い炎に縁取られた空洞が、道のど真ん中に出現していた。
まるでサーカスの火の輪のように燃え盛るそれは、車が通り抜けられるぐらいの穴を
何もなかったはずの虚空に形作っている。しかし、決定的におかしいのはその日輪の中だ。
うっすら雪をかぶった道が続くはずのそこは、深さを持つ別の空間に繋がって
いるようだった。中は暗くて見えないが、どんよりとした紫色の霧が日輪の淵から
こんこんとあふれ出し、白い炎が放つ熱波に煽られ、コウタの足元まで達してきている。

だが何よりも、コウタと、そしてシクルゥの視線を釘づけにしているものが、日輪の中央に
存在していた。
『コウタ兄ちゃん……あれ、知ってるのな?』
「ああ。知ってる」
コウタはコンルをジャケットのポケットにそっとしまいながら、呟いた。
「なあシクルゥ……」
『コウタ、動いてはならんぞ。あれだけはまずいのだ』
そこには、コウタがかつてコンルと共に夢の中で見た、白い炎の怪物が立っていた。
燃え盛る白い炎に全身を覆われた、人のかたち。
右手には、全てを喰らい尽くす、先の折れた異形の刀。
リムルルの精神を踏みにじり、最後はリムルルの父と共に姿を消した、あの怪物だ。
十数メートル離れていても伝わってくる不気味な威圧感に、コウタはごくりと唾を飲む。
『イペタム(人喰い刀)……!』
シクルゥがそう呟いたのが先だったか。それとも、炎の怪物が揺らめいたのが先だったか。
怪物は道を滑るようにコウタとシクルゥの目前に一瞬で突進すると、そのまま跳び上がり
ふたりの頭上を越えた。
眼球が干からびそうな熱風とおびただしい火の子に煽られながら、コウタもシクルゥも、
一歩も動けなかった。
危ない、とも。衝突する、とも。避けなくては、とも。死んだ? 生きた? とも。
目前で起きたことを理解する余裕さえ与えない猛烈な速度で、炎の怪物は道路に炎の
軌跡を残し、二人の目前から姿を消した。

そして――

ガッ シャッ! ドゴオオオン!

炎の怪物が向かった先で爆発音が轟き、ようやく二人は後ろを振り返った。
少し遠くから瓦礫の崩れる音が響き、続いて光り輝く炎に照らされた白い煙が
立上り始めた。他の民家に阻まれて、この位置から建物自体の様子を見ることはできない。
それでもコウタは、その場所にある建物を知りすぎているぐらい、良く知っていた。
「レラさ――――――ん!」
喉が潰れるくらいの叫び声を発し、コウタは雪を蹴って駆け出そうとしたが、

「そこをどおおおおっきゃあがっれえええええ! てんめえらあああああああああ!!」

コウタのそれより数倍でかい男の咆哮が、誰も居なくなったはずの火の輪の方からこだました。
どこか聞き覚えのある汚らしい怒声に、またしてもコウタは振り返り――

むんず。

「ぶべらあっ!?」
顔面を思い切り踏みつぶされ、仰向けにぶっ倒れた。
雲に覆われた鈍色の空から降り注ぐ雪に混じって、ちかちかと星が弾ける視界の中、
コウタは、踏んづけてきた足の持ち主が高く、高く宙を舞うのを見た。
男の手に握られた、艶の無い赤がべったり染みついた刀と、それそっくりの真っ赤な瞳が、
テレビで見た曳航弾のような残像を残し、2階建ての民家の屋根の上に消えた。
0506陸捨肆2013/10/06(日) 09:34:00.94ID:xApXeJRz
「痛ッ――! ッツ――!」
後頭部と鼻っ柱の両方を押さえながら、コウタは声にならない声を上げ、
芋虫のように雪道をのたうち回る。
『コウタ兄ちゃんっ! 大丈夫な!?』
「なわっけ……! ねえだろっ!」
『シクルゥのおっちゃん、兄ちゃん元気! 大丈夫そうなっ!』
「おまっ……どうしてそういう判断に……って、シクルゥ!」
能天気なマキリのカムイのキンキン声に頭をふらつかせながら、コウタは
火の輪の方へと歩んでいくシクルゥを呼びとめた。
「あいつが羅刹丸だ! 俺とリムルルを襲ってきたやつだ!」
『捨て置け。それより早く来るんだ』
「バカ言うなよっ! 今のレラさんじゃ、あんな化け物二匹も相手にできるわけ」
『分かっている!』
火の輪の目前に達したシクルゥはくるりと振り返り、牙を見せて唸った。
『レラには悪いが、何があろうと今はイペタムに近づいてはならん! みすみす死ぬつもりか!
私には、彼奴を再び封印する使命がある! お前には、リムルルを救う使命がある!』
「リムルルをっ!?」
『そうだ! 来てみろ!』
鼻頭の痛みも忘れ、コウタは全速でシクルゥの後を追い、火の輪の淵にたどり着いた。
ヘッドライトのような白い炎に縁取られたそれは、文字通り空間に風穴を開け、別のどこかと
つながっていた。その証拠に、火の輪の中、真っ暗の世界からあふれ出て足元にたなびく
紫色の霧の腐臭が鼻をつく。コウタは思わず顔をしかめた。
『よそ見をせず、しっかり見ろ』
コウタは衣服を燃やされないよう気をつけながら、火の輪の中に首を突き出し目を凝らす。
すると霧の向こうに、スポットライトのような光の中、ふわふわと浮かぶ人影が見えた。

「リムルル」

たったそれだけの情報だったが、コウタはその名を口にしていた。
「リムルル! リムルルっ!」
濃厚な霧の向こうの姿はあまりにも小さく、霞んで殆ど見えてはいない。
だが、コウタには分かった。手に取るように、リムルルのことを感じられた。
シクルゥの言った、世界の不安定の影響などではない確信が、コウタにはあった。
右手に握りしめたリムルルのハハクルとマタンプシ(鉢巻)が、まるで太陽のように熱い。
全身に優しい熱と力がみなぎってきて、足を絡め取って心までも蝕もうとしていた絶望の闇が、
ぱあっと霧散する。今や、怪物が残した火の輪の熱など、微塵も苦にならない。
『コウタ、私の背中に乗れっ!』
コウタは小さく頷くと、レラがしていたようにシクルゥにまたがり、たてがみを掴んだ。
『急ぐぞ。この裂け目がいつまで持つか分からん。それに私は、レラを見殺しにするつもりは無い』
「当たり前だよっ!」
コウタは、ハハクルを自分のマキリと同じようにベルトに挟んだ。
コウタのマキリが、再びかたかたと音を立てる。
『コウタ兄ちゃん! 「やばっ!」って思ったら、あたしの事使ってな?
ちゃんとお仕事、してみせるからなっ!』
「うん、頼む。えーと……」
『どうしたなー兄ちゃん?』
「その、俺、お前の名前聞いてなかったけど?」
『あーほんとなー。『キキヤイ』って呼んでな!』
「キキヤイか……」
名の意味までは分からなかったが、甲高くて元気な声に良く合った名前だと、コウタは思った。
「頼むぜキキヤイ。俺の相棒……。シクルゥ、いいよ!」
『振り落とされるなよ、コウタ! 口は閉じておけ!』
シクルゥが姿勢を屈め、ぐわっと顔を天に突き上げ、吠える。
「アオオオオオ――――ンッ!」
「うおおおおおおおおおおっ!」
『んんなあああ〜〜〜〜っ!』
雄たけびと咆哮と甲高い声を合わせ、ひとりと一匹と一振りは、火の輪を飛び越え異界へと突入した。
0507陸捨肆2013/10/06(日) 09:36:31.56ID:xApXeJRz
>>499
聞かないでください、オナシャス! 続き書きますから!

……先は長いですが頑張って完走しますんで、お付き合いください。
0509名無しさん@ピンキー2013/10/12(土) 11:31:08.17ID:eyZm6vD6
ネ申キタ━(゚∀゚)━!

これで勝つる!
完走頑張ってください!
0510陸捨肆2013/10/19(土) 08:12:45.67ID:I9Am4IzT
心の海に自らの魂を沈めて、どれぐらいの時間がたったのだろう。
リムルルは未だ、いつ終わるとも知れない暗い海の底へと向かっていた。
だが、冷たさも暗ささえも意味を失い、感じることができなくなってきた。

――『おわり』、かな……?

リムルルは、おぼろげに理解した。
誰も訪れたことの無いほどの深さ、感じることも許されない暗さが支配する世界と、
自分自身の魂が同一になろうとしているのだ。
話に聞いたポクナモシリは、ここには無かった――いや、そもそも自分は死ぬのとは違う、
リムルルはそう思う。ポクナモシリは死後の世界だ。死んだ先の話。死んだ後の未来の土地。
だが、リムルルが歩むものは――

――そう、ここは……『おわり』……

それは『終わり』としか言い表せないものだ。リムルルは『終わる』。

この深海そのものになって、動かなくなる。戻ることも進むことも無く、止まって、消える。
誰であろうと、リムルルの肉体も魂も見つけ出すことはできない。存在そのものが、
消えてなくなろうとしているのだ。

――お わ…… り………… 

緩やかな海流に帯が流され、纏っていた服が浮かびあがり、愛刀のチチウシが手を離れた。
リムルルの魂が、まだ若い乙女の肉体のかたちとなって闇に晒され、徐々に霞んでいく。
しなやかな指先が、柔らかな髪が徐々に存在を失い、四肢も闇の中へと消え始めた。
ちょうど夕陽が夜空に変わっていくように、だんだんと、しかし確実に終わってゆく。

違うのは、この夜空には星と月が無いこと。そして、二度と明日が訪れないこと。

まだ実体のある唇から、小さな泡がぷかりと漏らし、心の深海に遊ばせる。
リムルルはうっすらと、もはや用をなさない瞳を開いた。
浮かんだ泡が向かう先は、どこなのかも分からない。ただ、リムルルの終わりを免れた泡は、
主の身体から離れていくだけだ。
終わる直前の奇跡なのだろうか。何も見えないはずの心の深海に、豆粒ほども無い泡の
輪郭がどこまでも遠ざかっていくのを、リムルルは眺めていた。
もうすぐこの海さえ、閉じて無くなる。それまでの間、遊べばいい。
わずかに残された意識と泡は、まるで同調するかのようにどんどん離れてゆき、
最後に、一瞬だけふっと輝いて、弾けた。
リムルルの魂以外は存在しないはずの心の海の奥底、その片隅で、ふっと瞬いたのだった。

 さ よ な ら 。
0511陸捨肆2013/10/19(土) 08:13:19.26ID:I9Am4IzT
小さな唇が、誰に宛てるでもなく、その言葉を形作り――

『どうして?』

微かな女性の声だった。遠い瞬きが、突然リムルルに問いかけた。
だが、閉じかけた扉の向こうからの呼び声に、リムルルは応じるつもりは無い。
落ちていく自分そのままに、光の届かない方へと沈み行く。
『こんなに若くて、清らかな魂……。どうして自ら終わろうとしているの?』
今にもはじけそうな瞬きは、なおも問いかける。
『こんなに暗くて冷たい場所に、何を隠しているの? 何を……恐れているの?』
返事も無いまま、消え行く深海の主へと言葉を投げかける。
『分かるわ。どんなに辛い過去が、この闇の中に隠されているか……でも』
その時だった。遥か遠くの星よりも微かだった光が、ちかっ……ちかっと光を強めた。

――う……。

消えかけていたリムルルの魂の輪郭が仄かに映し出され、うめく唇から泡が浮かぶ。
その泡に瞬きは反射し、墨を溶かしたような世界を照らす光点が次々と現れた。
『あなたの魂は、辛い冬を乗り越えて、春を待つだけの力を残している……』
女の声に誘われたのか、蛍のように弱い光が次第に数を増し、リムルルの幼い身体を
真っ暗の海の中に白く映し出してゆく。

――めて……

脱力しきっていたリムルルの眉間が、苦しげにぴくりと寄せられた。
唇と鼻からぽこぽことこぼれた泡が、リムルルを囲んで照らす光の種となっていく。
それに連れて、女の声がよりはっきりとしたものとなってきた。
リムルルの周囲、光の粒全てから、その音が聞こえてくるかのようだ。
『さあ、起きて……。眠っていてはだめ』
――や……め……!
『この夜を照らすのは私。でも、夜を超えるられのは、あなただけ』
――やめてぇ……ッ!
『だから、もう一度光を……あなたの魂を輝かせる光を……!』

「やめ……ッ! ごぼごぼ……」

あらゆる方向から声に包み込まれたリムルルは、首をのけぞらせ、肺に溜まっていた
空気を吐き出してしまった。

『さあ、もう一度目覚めて……強く美しい少女!』
リムルルの周りを漂う光の粒が、大きな泡目がけて吸い込まれるように集まり、
小さな女性のかたちとなった。
『この光で、私は、あなたを、助けたい』

その声に、リムルルは思わず目を見開き、つぶやいた。

「ねえ……さま?」

リムルルの目が開くのを待っていたかのように、光の奔流が海底に爆発した。

「やだ……だめ……やめてええええっ!」
0512陸捨肆2013/10/19(土) 08:14:58.60ID:I9Am4IzT
########################################

ぎひーっ、ばたむ。
玄関の扉がそっと閉まる音がして、コウタの部屋を流れる時間が、再び止まったかのようだった。
一糸纏わぬまま、レラはがっくりとうなだれ、ひとり、その空間に取り残されていた。
本当に、時間が止まってしまったのだろうか……そう感じるほどの静寂だった。
だが、窓から吹き込む風がむき出しになったレラの身体を撫ぜ、肉体に刻まれた無数の傷が
ひりつくような痛みを訴えた。非情なほどに、時は流れ続けている。
レラはひとり、身を硬くした。
「うっ……ううう」
嗚咽を漏らす頬に、寒風に晒されたのとは違う、熱い、熱い痛みが伝い、畳に砕けた。
「私はっ、私は……何てことを……!」
涙を拭うことも忘れ、レラは後悔の言葉を消え入るような声でつぶやいた。
――戦士としての使命も、姉としての使命も……果たすことはおろか、
  妹の思い人に、あんなことを……!
額に血と泥でへばりついた癖のある前髪を、震える手でかきあげ、レラは瞳を閉じる。
ぼろぼろぼろと再びあふれ出す、熱く鮮烈な痛みのしずく。
「私は……私はっ、間違ってなんて……無いはずなのに……! 戦いの中で、私は確かに、
あの男の瞳の中に……」

――雌犬。

「うぅっ!」
脳裏に浮かんだ言葉をかき消すように、レラは額に当てた手を畳に振り下ろした。
――雌犬!
――おまえは、雌犬だ!!
振り切ろうとしても振り切れない。あの男の、魔界の狂った命の、羅刹丸のあの声。
剣を交えた死地の中で初めて理解した『真実』が、レラの全身にこだました。
「あああ! あああああ〜〜……」
レラは髪を振り乱し、頭を抱えて床に突っ伏した。
羅刹丸に刻まれた無数の傷が痛むたび、カムイの森での戦いが脳裏を駆け巡る。
戦士に生まれ、幾多の戦地を潜り抜けてきたレラではあったが、あれほど苛烈な戦いを
経験したことは無かった。ナコルルの中で眠り続けた百年以上を経て、尊いカムイ達の庭を
汚すものを排除できる役目が来たのだ。これほどの光栄は無かった。しかも、全力を出しても
足らないほどに腕の立つ、敗北さえ予感させる相手と手を合わせられることが、この人生のうち、
一体何回あるというのだろうか。
一太刀一太刀がまざまざと思い出せる。痛みのせいだけではない。疲労を引きずる身体を
かたち作っている筋肉、神経、骨の髄。闘争本能をむき出しにした戦いの記憶は、胸の真ん中まで
染み込んでいる。今すぐにでもその再開を、あの男との再会を、待ちわびているのだ。

すべて脱ぎ捨て、爪と牙だけで語りあう、一匹の獣となれる瞬間。

肉体と肉体のぶつかり合いの果てに、男の濁った瞳の中に確かに垣間見た、
たったひとつの真実の続きを求めて――

「はぁ、はぁ……だから……私はっ」
嗚咽交じりの声で、レラはつぶやく。
「私はあなたの瞳が、あなたが私に伝えた真実の通りにしたのよ!? めっ、めす……」
屈辱で心を一杯にしながら、レラはようやくその言葉を形づくる。
「めす……いぬ……らしく!」
0513陸捨肆2013/10/19(土) 08:15:33.57ID:I9Am4IzT
レラは両肩を抱き、爪を立てた。そうでなくても痛む全身に、さらに追い討ちをかけるように。
「なのに……なのにダメだったわよ。ねえ、何で? 何でなのよ!? 私が見た真実が
間違っていたとでも?あなたと、あなたとの命の遣り取りは、絶対の真実だったでしょう? 違う?」
両手を肩から腕に、腕から胸に。
「ひとつ、ふたつ、みっつ……」
レラはカムイの森で刻まれた傷を丹念に数えていく。
「とお……痛ッ……! ほら、全部っ、全部本当」
腹、背中、太もも。
川底のように冷え切った部屋の中、痛みに顔を歪めながら、それでもレラは傷をなぞる。
「ここまで私を追い込んだ、他でもないあなたが刻んだ傷……全て、真実でしょ?」
不可解なまでに存在を放つ傷のひとつひとつを、愛でるように。

「真実……」

ナコルルの反面としての自分。
戦士としての宿命。
隣人として、尊き存在として信じてきたカムイ。
レラにとって数々の意味を持つ『真実』という言葉。
レラは、いつだって真実は絶対だと、変わるものではないと信じていた。息絶える直前まで
行き先を示し導き続けてくれる、魂の拠り所だと思っていた。
しかし、今やその真実は玉虫のように色を変え、レラを幻惑するばかりだ。

――時の流れが……真実を、変えたの?

レラは思う。人間と大自然、すなわちカムイとの関係は共生なのだと。四季の流れが、
星月の流れが人間たちに数え切れないほどの恵みを与え、人間はそれに感謝する。
それこそが、レラにとってのこの世の理……真実だった。
しかし、再び目覚めたこの大地に、そんな人間がどれだけいるというのか。
他のあらゆる生物を差し置いて個体数を爆発させ、我が物顔で地上を闊歩する人間達。
自然に耳を傾けず、ただ一方的に貪る行為の中に、レラが知っている真実は無い。

――人間が勝手に、真実を盗み出した?

人間はアイヌモシリを統べるものなのかもしれない。そうだとしても、カムイモシリの
使いであるカムイ達無しでは生きていけない。それに、大自然の猛威の前には今も無力だ。
人間は、どこまでいってもカムイの手のひらの上の存在だと、レラは思う。カムイの恵みを
拒否し、征服したと思っていたとしても、カムイから見れば子供のような存在なのは、
今も昔も変わらぬ真実ではないか。

――じゃあ……カムイが真実を捻じ曲げたの?

羅刹丸との戦いを繰り広げたカムイの森で、シカンナカムイとパセカムイ達は、
森中の木々を震わせこう宣誓したのだ。

「我らカムイと人間の絆は、とうの昔に消えうせた」

「我らカムイに残されし、最後の供物……大樹に蓄えられし大自然の力」

「その力をもって、閉ざされし魔界の門を今こそ打ち開き」

「アイヌモシリと魔界に、新たなる秩序をもたらすであろう試練を与えることにした」

「人間……いや、人間の皮を被った、穢れた存在たちよ」

「味わうがいい、我らの受けた苦しみを」

「何の手立ても無く、ただ一方的に虐げられ、搾取し続けられる惨めさを、孤独を!」
0514陸捨肆2013/10/19(土) 08:17:09.18ID:I9Am4IzT
レラには返す言葉は何も無かった。彼らの怒りはもっともだった。
アイヌモシリに罰を与えたければそうすればいい。しかし、全部がぜんぶ納得は出来ない。
カムイのやろうとしていることが真実だとは、到底感じられないのだ。

――なぜ……魔界の門を開こうなどと?

想像を絶するほどの災厄と地獄が封じ込められた、いわばこの宇宙の禁忌……魔界門。
かつて、幾多のウェンカムイや、ウェンカムイにとりつかれた人間達が魅入られ、
こじ開けようとし、何度封じ込められてきたというのだろう。
レラもその実体は見たことは無い。しかし一度開けば、大地はおろか太陽をも飲み込み、
その魔の手はカムイモシリやポクナモシリ(冥界)にまで及ぶことは、容易に想像がつく。
連綿と続いた世界の、終わりの始まり。それが魔界の真実だ。

――でも今では、その魔界の存在でさえ……真実をくらましている。

命とみれば見境なしに摘み取って優越に浸り、人が苦しみもがく姿を糧に生きる魔界の存在。
心と呼べるようなものは欠片も持たず、肉体はチチウシでないと滅ぼせない。
レラが刃を交えた羅刹丸は、まさに絵に描いたようなおぞましい魔物だった。
しかし、真実を見せたのは何もレラだけではない。
レラもまた、戦いの中に垣間見た羅刹丸の真実を、しっかりと記憶している。

――死にたがる魔物……それが真実?

チチウシでしか滅ぼせないのであれば、それは殆ど不死身に近い存在だ。切り刻まれようと
蘇るのなら、この世の全てを手中にすることだって、いつかは可能ではないか。
己の思うがままに全てを動かし、手に入らないものの無い世界に、何の不満があるだろう。
しかし羅刹丸はレラの手によって不死身を奪われ、歓喜していた。
チチウシを、その持ち主であるレラを欲し、殺し合う悦びをほとばしらせて。
赤黒く濁りきった瞳の奥に、レラの真実をギラギラと輝かせて。
四つんばいのレラの尻をわしづかみにし、猛り狂う剛直を容赦なく後ろから――

「めすいぬ……みたいなかっこうで……あなたを……あっ……」

時流。人間。カムイ。魔界。羅刹丸、そして自分。
自分を取り巻く全ての真実を巡ったレラの右手は、いつしか自分自身の真実へと、
身体に無数に刻まれた傷よりも、はるかに熱く火照った秘裂へと達していた。
「あ……う……」
手の平で覆うように触れると、秘められた蜜が染み出して、その手を内へと誘おうとする。
柔肉が少しでも快感を得ようものなら、今にも中からどろりと滴り落ちそうだ。
これがあの男の指だったら、どうなってしまうのだろう。
「ふあ……ああ」
想像するだけで、恐怖と期待がない交ぜになって鼓動が高鳴る。
興奮に震える胸の先では、微かな刺激を逃すまいと乳首がしこり立っている。
そんなことをしなくても、やりすぎなぐらいにこねくり回してくれるに違いないというのに。
「くぅ……ん」
開け放した窓から流れる冷気が、ひやり、ひやりと裸体を撫で回すたび、レラは子犬のように
切ない声を漏らした。
きっとこんな生易しい愛撫ではない。そもそも愛撫など有り得ない。
土足で家に上がりこんで家人を打ちのめし、宝を奪っていく盗人のように、レラの貞操もまた、
何の躊躇も無く散るさだめにあるに違いなかった。
そんな恐ろしい未来を心に描いてもなお、レラの泉はふつふつと甘い蜜を煮立たせる。

大自然の戦士という重責からレラを開放し、たとえ歪んだ形であっても、本当のレラを、
レラだけを、心から必要としてくれたあの男のために。
0515陸捨肆2013/10/19(土) 08:17:48.82ID:I9Am4IzT
「ふ ふふ」
レラは、縮めた肩を震わせて弱く笑うと、それ以上の行為にふけることは無かった。
――なるほど ね。コウタ……あなた、私なんかより、何枚も上手だったってわけね。
右手を濡らした蜜をぺろりと舐めて、深いため息をひとつ。
レラは、戦いでぼろぼろになった服に、再び袖を通し始めた。
「確かにあなたの言うとおり……私が欲しかったのは、あなたじゃないわ。隠すまでも無い。
私に必要なのは……羅刹丸。私を必要としてくれる、あの男だけ」
腰紐をぎゅっと締めて、レラはもう一度白い息を吐き、精神をひとつにしていく。
玉虫色に輝いて自分を惑わす『真実のようなもの』を追い払い、心の中から不純物を取り去っていく。
すると、レラは自分の内側から、力強い波動が蘇ってくるのに気がついた。
驚くべき充実感で心が満たされている。今までに無いくらいに身体が軽い。
己の名前がしっくりと馴染む。

「レラ(風)。私は、レラ」

冷え切った部屋にゆるやかな波が生じたかと思うと、突如、レラを包むかのように
つむじ風が巻き上がり、窓や台所の鍋を鳴らした。
レラは思わずにんまりとする。今までに無いほどの『仕上がり』だ。
目を閉じたままでも、この狭い部屋の中のあらゆるものが手に取るように分かる。
わざわざ腕を伸ばさなくても、何もかも操れるような気さえする。
「ひゅっ」
レラはその直感に従い、右手を掲げて鋭い息を吐いた。
すると、部屋の隅に追いやられていたチチウシがぱぁんと宙を舞い、主の手中に納まった。
「いいわね」
冷たい柄の感触を楽しみつつ、レラはゆっくりと傷ひとつ無い刀身をこの世に曝け出す。
白銀の粒子が飛び散り、絶望に沈みかけた部屋を一瞬にして神聖な空間へと塗り替えた。
その声無き光が、カムイ達がレラに与えた最後の使命を想起させる。
一言一句。忘れ得ぬその言葉を、レラは自らの声でつぶやく。

「レラよ。ナコルルの半面よ。人間の、アイヌモシリの最後の槍よ。我らを楽しませてみよ」

「絶望の淵に、我らが伝えし刀舞術をもって、いかづちの花を咲かせてみせよ」

「死を恐れるな。死なせはせぬ。ナコルルの力で、お主を何度でも蘇らせよう」

「闇を払い魔を穿つ、そのチチウシの輝きが、お主と魔の血に濡れ、消えうせるまで」
0516陸捨肆2013/10/19(土) 08:18:19.60ID:I9Am4IzT
「ふっ、くくく……あははははは!」

真面目ぶった口ぶりから一転、レラはこらえきれず、腹を抱えて笑い出した。
「大自然の戦士? 半面? ははは! いい加減にして欲しいわねぇ、本当に」
自分以外には誰もいない部屋で、チチウシをしまうことも忘れ聞こえよがしに、大声で。
「供物だの何だの、失われた命を蘇らせるだの! あなた達、いい加減にしなさいよ」
カムイの森で言い渡されたときの衝撃は、もはやどこにもなかった。それどころか、
思い出すほどに滑稽で、ばかげた話に感じられてくる。
「いいこと、教えてあげる。私はねえ、風なのよ! あなた達にも、時代にも、宿命にも
縛られることはないの! そして私自身にもね!」
視界が、五感が、どこまでも拡がっていくかのようだ。
レラは胸すく思いに全身を硬直させ、叫んだ。

「私は風の吹くままに生きる! 私の真実は、風が決める!」

カムイ達の悔しがる声が、遥かカムイモシリから聞こえてきそうだった。
型から抜け出した心が自由に舞い踊り、胸にたくさんの希望を匂わせる。
与えられた希望ではない。レラの内側から吹き出し、心をはためかせる本物の希望だ。
そしてそのどれを選ぼうと、それも自分の自由だった。
レラは、開け放たれたままの窓に一歩近づき、雪の舞う冬景色を見据えた。
――次の風が吹いたなら、その先へ向かうわ。
コウタ、ナコルル、リムルル。絶対に守らなくてはならない幾つもの存在が頭をよぎる。
不安には感じない。レラは完全に解き放たれていた。

――私は風。戦う風。誰にも止められない。

――私をさらえるのは……もっと強い、あのつむじ風だけ。

――そう、あの男だけ。

ぴくっ。

「来たわね」

大気の向こうから迫る微かな気配を、レラは眉間に感じとった。
0518名無しさん@ピンキー2014/01/17(金) 08:22:22.42ID:iEjdTYzv
なんかとんでもない御方キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
今更ながら健在が分かって嬉しいです
またの投稿をお待ちしてます
0519名無しさん@ピンキー2014/05/21(水) 18:02:00.71ID:8+i7XK42
過疎ってるのであげ…陸捨肆さんかむばっくノД`
0520名無しさん@ピンキー2014/06/11(水) 22:37:24.75ID:dhbywER7
ミナの腋クンカクンカしたい。
ミナの胸モミモミしたい。
ミナのパンツ見たい。
0521名無しさん@ピンキー2014/12/09(火) 23:40:17.88ID:yBabzMIs
ナコルルを縛りたい。
紫ナコルルを泣かせたい。
レラさんといちゃいちゃしたい。
リムルルの頭をなでなでしたい。
0522名無しさん@ピンキー2014/12/11(木) 14:46:29.77ID:ilUUPKrM
赤ナコ縛ったエロ同人は一時期はやったなあ・・・
触手よりも拘束の方が多かった気がする・・・
0524名無しさん@ピンキー2015/02/27(金) 01:05:42.24ID:aTiCjWuF
ほしゅ
0525名無しさん@ピンキー2015/08/25(火) 23:25:42.51ID:pHUqSxdu
陸捨肆さんかむばっく
0526名無しさん@ピンキー2015/12/22(火) 18:16:00.52ID:dySHJEh3
求む挑戦者
0527名無しさん@ピンキー2016/04/03(日) 21:55:23.06ID:Tz9ZxPuM
保守
0528名無しさん@ピンキー2016/10/29(土) 21:40:51.51ID:YDuC1n8t
「いやぁーっ!だ、誰かぁっ!」
ある村娘が村に突如現れたミノタウルスに追いかけられていた。

繁殖期を迎えたミノタウルスは人間の女を求め降りてきた村で鼻息を荒くし村娘を追いかけていた

ミノ「ゴアアッー!」
ドタドタと追いかけてくるミノタウルスから必死の形相で逃げる村娘を恐怖のあまり助ける事も出来ずに見守る事しか出来ない民衆を押し退けある女性が声をあらげる

いろは「おやめなさいっ!」

ミノタウルスも動きをとめ、皆の視線がいろはに集まる。
いろは「ほら、アナタも早くみんなと避難してください!
そこの牛さんも痛い目にあいたくなければ巣に帰っていただきたいのですが…

ミノ「フゥー…フゥー…!

ミノタウルスは先ほどよりも興奮し、いろはの体をなめ回すように見ている

いろは「仕方ありませんね…では、行きますよっ!

ミノタウルス「オオァぁ!

ミノタウルスは雄叫びを上げいろは目掛けて突進をしてくる

いろは「ッッ!?(速いっ!

一瞬で距離を詰め、巨体から繰り出される豪腕の一撃を咄嗟にガードするいろは

いろは「あっ…ぐうう…っ!

直撃を受けたいろはの腕はギシギシと音を立て苦痛に顔を歪ませるいろはは後ろに飛んで距離をとる

いろは「不味いですね…こんなものまともにくらっては…
0529名無しさん@ピンキー2016/10/29(土) 22:01:23.31ID:YDuC1n8t
いろは「はぁっ…はぁっっ…くっ…!?

その巨体から繰り出される超高速の連撃に防戦一方のいろはの体力はどんどん奪われていく

いろは「くっ…このままでは…はぁっ!

一瞬の隙を突き繰り出されたハイキックはミノタウルスの則頭部をまともに捉える。が、いろはの蹴りをものともせずにバランスを崩したいろはの足を掴み上げる

いろは「そんなっ!?やっ…

宙吊りにされたいろはの胸はこぼれ落ち、あらわになった下着とともに観衆の前に晒されてしまう。

いろは「なっ…まっ…いやぁっ…!

はだけた胸元を隠すいろはの下着を剥ぎ取り長い舌で愛撫を始めるミノタウルス

いろは「んっ…やっ…こんなっ、ところで…あっん…

太く、ざらついた舌で責められ続けるいろはは体をビクビクと震わせ反応してしまう

必死に抵抗するいろはの胸をミノタウルスは鷲掴みにし、そのまま持ち上げてしまう

いろは「んあっ…いや…おっぱいちぎれちゃ…いま…あ゛あ゛っ!?

そのままいろはの秘部に性器をねじ込むミノタウルス

いろは「あ゛っ…いや…痛い…あ゛あ゛っ…

いろはの脹ら脛程はあろうかという巨大な肉棒はブチブチとを立て裂かれていくいろはの秘部に深く差し込まれていく

いろは「あ…あっ…

愛液と血にまみれた秘部を突かれ続けるいろはは痛みのあまり意識を失いそうになっていた

体制を変えようとするミノタウルスの隙を突き這いつくばって逃げようとするいろはだったがアッサリと再び挿入をゆるしてしまう

いろは「ん゛っ…あ゛っ…いや…もう、いやあっ…ひっ、なっなに!?中で更に大きくっ…
0530名無しさん@ピンキー2016/10/29(土) 22:05:05.84ID:YDuC1n8t
いろは「まさかっ…いやっ、いやあああっ

悲痛な叫びを上げるいろはをよそに蛇口を全開にしたような量の精液が注ぎ込まれる

いろは「はぁっ…はぁっ…いやあっ…私、旦那様ぁ…

ぐったりと倒れ、精液でパンパンにお腹の膨らんだいろはを抱え、巣に帰っていくミノタウルスを村人たちはただ呆然と見ている事しか出来なかった
0531名無しさん@ピンキー2016/10/29(土) 22:15:05.66ID:YDuC1n8t
それから半年間が過ぎ、何度も種付けをされたいろはは身籠った命の誕生を今迎えようとしていた

いろは「くっ…はあ…はあ…ミノタウルスの子供…なんて…でも…

ミノタウルスの子を孕んだと分かったいろはは毎晩のように泣いていたが、次第に母性が、芽生え始め内心我が子の誕生を心待ちにしていた。

いろは「んっ!?あっ…あっあ゛あ゛あ゛っ!

味わった事のない凄まじい痛みに耐え、産み落とされた子供は産まれ出るなりいろはの乳房にむしゃぶりついた。

いろは「あんっ…ダメ…なんだか…力が吸われ…

母乳を吸われていくうちにいろはは少しずつ衰弱していく。

ミノタウルスの持つ巨体に育つまでに必要なエネルギーは膨大であり、エネルギー源でもあるいろはの体への負担は並では無かった。

いろは「はあ…はあ…でも、私が頑張らなければ…この子は…
0532名無しさん@ピンキー2016/10/29(土) 22:19:50.05ID:YDuC1n8t
村娘「いやぁっー!誰か、誰かぁー!」

突如現れた繁殖期のミノタウルスに追いかけられ逃げ惑う村娘を見守る事しか出来ない民衆がざわめく中ある女性の声が鳴り響く

?「おやめなさいっ!」

動きを止めたミノタウルスと村人の視線の先にはもう一匹のミノタウルスの肩にのるいろはの姿があった

いろは「浮気は許しませんよ。旦那様っ?


終わり
0534名無しさん@ピンキー2016/12/30(金) 21:40:41.08ID:blxc/uvN
いろはが好き過ぎてツラい
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0535名無しさん@ピンキー2018/10/17(水) 22:18:07.38ID:JF/78qq6
零spが千円で買える時代になったし、新作も動き出してることだし、自分も何かひねり出してみようかなと思いつつ
陸捨肆氏や半蔵の人の凝り具合を見て、殆ど触ってもいない自分が手を出していいものかと悩んだり
0536名無しさん@ピンキー2021/05/01(土) 23:19:33.61ID:kxfHXIkL
>>532
右手!「イヤーッ!」「グワーッ!」左手!「イヤーッ!」「グワーッ!」右手!「イヤーッ!」「グワーッ!」左手!「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
0537名無しさん@ピンキー2021/08/30(月) 23:39:34.73ID:fsNc1E79
居酒屋ばく コロナ感染 飲酒運転 路上駐車
コロナ感染 野田市 居酒屋ばく 猟銃
居酒屋ばく 逮捕 飲酒運転
居酒屋ばく 路上駐車 逮捕 犬放し飼い
居酒屋ばく 路上駐車 交通事故
食中毒 居酒屋ばく 野田市 保健所
居酒屋ばく 飲酒運転 野田市 死亡事故
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