期待とは裏腹に予想外の状況となってしまい、狼狽する男たちの声でザワつきを見せる中、ただ一人行動を起こす者がいた。
「…………くそっ……こうなればこれで!!」
山崎刑事である。
彼は状況を確認出来ないような計算外の事態に、咄嗟に胸ポケットから何かのスイッチを取り出し押すのだった。
シャドウレディから発せられた光は衝撃を生み、張り巡らされたワイヤーを次々に弾き飛ばしていく。
あまりに強い光に誰も見る事の出来ない状態であったが、次第にゆっくりと発光が収束していった。
すると先ほどまで完全にボロボロだった彼女の衣服が、形状こそ違うが見事に修復されているのであった。
リフレッシュアップとは衣服が破損などした場合にカスタムリペアする能力であり、チューブトップのレオタードのような衣装となっている。
改造修復している為か布地は全体的に少なくなり、タイツもアームカバーも殆ど無くなっている状態ではあるのだが、破損など一切ないキレイな状態に仕上がっていた。
「フフッこれで………」
リフレッシュアップが終わった彼女は、周りの男たちの目が眩んでいるのを確認すると自由落下に入る。
思惑通りに事が進み得意気な顔を浮かべていたが、その顔が曇るまで時間はかからなかった……
「!?」
修復されたはずの衣服が破れ始め、再びワイヤーと釣り針が張り巡らされた釣り針クモの巣地獄へと捕らわれてしまうのだった。
「ど…どうして?」
あまりに予想外の事態に彼女の顔からは、これまでに見せなかった驚きの色が見えていた。
シャドウレディもただ男たちをからかっていたわけではない、しっかりと釣り針が無くなる位置を見極めた上での脱出である。
リフレッシュアップを発動した時点では、地上まで距離こそあったが釣り針などありはしなかった。
「くっくっく!思い知ったか!こんなこともあろうかと可動式の予備を用意しておいたんだよ!」
本当に勝算などあったのかは疑わしいが、目の眩みから解放された山崎刑事は、再びかかった獲物を見て勝ち誇ったようにスイッチを掲げる。