古すぎて自分でもネタが解らないのですが、
バンブーブレード(初期)のコントSSがあったので
当時を覚えている方は是非ご笑覧下さい。

◆1/3

昼休み、室江高校剣道場。

先鋒、ピンク。

「でね? でね? あたしがホテルで目を覚ますと、
 ダン君がこーんな大きな薔薇の花束持ってね!?
『おはよう。そして、誕生日おめでとう、ハニー』って!!
 もうあたしすんげー感激しちゃって! んもー! 絵になりすぎなのよ!! これがッ!!!」
 キリノとタマに、惚気話を披露するミヤミヤ。
 興奮の余り、ピンクモードの言葉遣いすら忘れている。

「もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅもぎゅんむ。 ……すごいです。映画みたいです」
 咀嚼を待ってから、感想を述べるタマ。
 相変わらず表情こそ変わらないが、やや頬が赤いのは『ホテルでのゴージャスな一夜』の下りのせいか。

(いッ、言えないッ……!
 「にゃははは、どう見ても若手芸人の体当たりギャグにしか見えないよー」
 なんて言えないッ……!!)
 口の中の惣菜を、今にも吹き出しそうになるのを命懸けで堪えるキリノ。

 他の部員達は、用事やら休みやらスランプやらスペースシャトルで遭難中やらで、剣道場には居ない。
 三人だけだったので『この顔触れなら、たまにはこういった話もいいだろう』と思ったのか、ミヤミヤが振った話題は色恋ネタであった。
 彼女が熱弁する、ハーレクイン・ロマンスの如きダンの武勇伝は、
脳内フィルタで徹底的に美化され全米を100回泣かせるクライマックスを迎えていた。

 そんな二人の微妙なリアクションにややテンションが下がったのか、
「……ま、お二人はあんまりこういう事はないでしょうねぇ……」
 ミヤミヤは勝ち誇った風に、溜息をついてみたりする。

「ん、ん!…… んー。まぁウチはもう少し、フツーかなぁ」
 何とか惣菜を飲み下したキリノ。
(まったく、色んな意味で規格外だよあんたらは……!)
 呼吸困難だったのか少し顔が青かったが、そこは“みんなのお姉さんキリノ部長”の根性と度量で話を繋いだ。
 全米は101回泣いた。

「もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅもぎゅんむ。 ……はぁ。フツーですか」
「そうだねー フツーだねー」
「ではせっかくですから、ここは一つ部長のお話も……」

 剣道部内ナンバーワン・カップルの座を賭けて、女達の静かなる戦いが始まっていた。