女子高生の羽月彩水(あやみ)さんもいた。
しかし―
「里奈さん、咲さん!やなぎ住宅街の方へ逃げましょう!」
「わかったわ…」
その彼女は、この島の開発に深く関わった、いやむしろ完全に主導した立場に
あった羽月建設社長の娘さんであったりもして、つい今しがた市役所前の
ドでか〜いモニター画面一杯に映った社長の「島に住んでる奴等が悪い!私が地震被害の事なぞ知るか!」な、
もはや開き直り会見としか言えないものが最悪なタイミングで放映された為に、
島民の怒りが爆発し、何故だか社長の娘だとバレた彩水に向けられ、私たちは
とにかく人目のつかない場所へと一目散に逃げ出していた。
「里奈?!危ないッ―!!」
「きゃ?!―な、何す…」
突然、咲さんに体を突き飛ばされた私は一体何事かと思って抗議の声を
だそうとしてやめた。
(な、なるほど。こりゃ咲さんに感謝だわ…)
突き飛ばされた直後、私と、咲さんと彩水さんとを二分するに十分な大量の土砂が
降り注いだから。
「よくもやったわね咲さん!明日学校の自分の下駄箱に蛙、くらいは覚悟してよね?」
「私、もう社会人よ!ま、その減らず口が叩ける元気「だけ」はあるみたいで感心したわ」
「お、お二人って…」
しかし、軽口を言いながらもお互いにすべき事はもう把握していた。
(咲さん、彩水さんの事、よろしくお願いしますね!)
(ええ…里奈も、必ず後から合流しに来てね)