牧村里奈は、それなりに自身の身体は自信をもっていた。いや、世の女性なら
人並みに持ち合わせているプライドの一貫だと言えなくもないかもしれないが。
それゆえに暴徒の男が、服を着たままの自分の身体をまさぐり始めた時、
恐怖はもちろんあったが、それと同時に「ああ、やっぱりそうなるよね」とした安堵に近い感情も湧いていた。
最初は確かめるように暴徒の男は里奈の乳房を力任せに握った。
そして里奈が「あっ!」と、声をもらす。次に暴徒の男がならこれもアリか?とばかりに
股間に手をまわしてきた―
さすがに里奈もこれは性急、いきなり過ぎと感じたが、それでもその手を
強く払い除けたりはせず、相手をいきり立たせたりしないよう、少し間を置いてから
「…雰囲気、つくってよ…」
自分から相手に、暴徒の男に、腕を首の後ろにまわして接吻を迫り、
舌まで出して絡める深い交わり方をした。
(ごめんね、咲さん―私、もう「無事」には再会できないかもしれない…)
「どうして―」
(…?)
「どうしてお前は…そこまで…人を、他人を庇えるんだよ?…」
それは。
暴徒の男が初めて里奈に見せた、人の「恐怖」する顔だった―