「うぁー、うー……」

3時間目の体育のために着替えている最中も、私は先程の事故のことを思い出して一人で謎のうめき声を上げていた。

通学路での一件ではまだ私に注目している人は少なかったし、一瞬の出来事だったのでまだ救いがあった。

しかし、ホームルームの時は違う。周りの男子たちが私に注目している目の前で、パンツが丸見えになってしまった。
それも、足元まで落ちたスカートを引き上げるまでの数秒もの間たっぷりと。

間違いなく私のパンツは、クラスの半分以上の男子に見られてしまったことだろう。改めてそう考えると、顔から火が出てきそうだ。

「ええと……萌葱も、災難だったよね。でもまあほら、そういう日ってあるじゃん?
寝坊して遅刻ギリギリの朝に限ってパパがトイレを占拠してたり、踏切がいつまでたっても開かなかったりとか……」

流石に一抹の申し訳なさを感じているのか、セクハラ魔の早紀が珍しくフォローを入れてくれる。

「そ、それにさ! よく考えてみたら、別にちょっと下着が見えちゃったくらい大したことじゃないよ!
今だって、私も萌葱も下着姿だけど、全然平気でしょ? ほら!」

早紀がブルーのブラとお揃いのショーツを見せつけるように腰に手を当てる。

カーテンを閉め切った更衣室で着替えのために下着姿になるのと、男子の視線がある教室の真ん中でスカートが脱げてしまうのとでは大違いの気もするが、
自分も下着を見せることで少しでも私の恥ずかしさを和らげてくれるつもりなのだろう。
程よくくびれたウエストに、同世代と比べてやや大きめだが、張りがあって柔らかそうな胸。
まったく、同性の私ですら少し見入ってしまう見事なプロポーションだ。羨ましい。

「そりゃ、今は女子しかいないから平気かもしれないけどさ……」
「いやいやー、ちゃんと男子だって、あのカーテンの向こうで悶々としながら色々妄想を膨らませてると思うよ? 『いきなり更衣室のカーテンが全開になったりしないかな〜』みたいなバカなことをさ!」
「ぷっ……あはは、言えてるかも! 男子ってバカだからねー。そんなこと絶対起きるわけないのに」

そんなバカな集団がカーテンの向こうにいるのかと思うと、その滑稽さに笑えてきた。そして同時に、なんだか先ほどまで沈んでいたことがバカバカしく思えてくる。
あれこれ悩むのは、とりあえずやめよう。少なくとも今この空間では、私や早紀を含めて多くの女子が、平気で下着姿を見せつけているのだ。
たとえ先ほどのように超能力が暴発しても男子の視線に悩まされることはないのだ。そう、更衣室のカーテンがぴったりと閉まっている限りは。

気が楽になり、早紀の真似をして下着姿で堂々と腰に手を当てて笑っていると、久しく忘れていた「あの感覚」が鼻の奥で蘇ってきた。

「ふぇ……ふぇ……ふぇっくしょん!」

女子更衣室のカーテンが全開になった。

(つづく)