日が昇り魔法戦士が持ってきたパンを頬張りながら3人は話し合っていた。

「いつまで意地張っているの?」
天使から離れようとしない賢者とパラディンを少しからかうような口調で言った後、
二人から睨みつけられ魔法戦士は仰け反った。

「天使クンも幸せ者だね…。どう、元に戻りそう?」
二人に寄り添われ眠る天使は生気がなく人形のようにさえ見えた。

「昨日は、天使はどうしていたの?」
賢者は昨日天使に寄り添い、そのまま寝てしまった。
自分のこらえ性のなさを後悔しながら彼女は天使とパラディンの間で何かなかったか障りのないように尋ねる。

「ずっと空を眺めていただけだった……。」
目を擦りながらいうパラディンの目元にはクマが見えた。
彼女の表情から見てそれ以外には何もなかったのだろう。
賢者は一層の不安を感じつつもほんの少し安堵した。

「食事もとってくれない……。」
パラディンは言葉に詰まりながら言う。
「私たちが彼の仲間であることを気付かせるだけでいいのに……。」
パラディンは俯き声を押し殺すようにして涙を流し始める。
今まで彼女が見せたこともない弱い姿に事態の深刻さが表れていた。

今の天使はパラディンも魔法戦士も自分のことさえ上の空だ。
彼の失ったものは大きすぎる。自分がもし家族も友人もいなくなって
自分の存在を無かったことにされてしまったら、そう考えると背筋が寒くなる。
自分も耐えられず、彼と同じような状態になってしまうだろう。
だが、このままではいけない、彼をこのままにはしておけない。

でも、方法がわからない。

魔法戦士に背中を撫でられながら震えるパラディンをなだめながら
賢者もまた耐えられず涙を流した。