【キノの旅】時雨沢恵一総合スレPart?【アリソン】
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001名無しさん@ピンキー2011/10/19(水) 22:15:46.66ID:0mDoAwYE
過去ログが見つからなかったので1から作成
新刊も出たことだしエロパロスレも久々に始動します。
ageろだとかsageろだとか無粋な事言って荒らすとパースエイダーで頭撃ちぬかれます。

保管庫2(1と3は消滅)
http://www.asahi-net.or.jp/~qv4a-skym/mono/kino/

テンプレ持ってる人は↓に適当に記載してね!
0150名無しさん@ピンキー2012/04/27(金) 18:48:38.00ID:iiUvlmAd
キノが水浴びしてたら魚に触られた話って、あとがき以外にも載ってるの?
0155名無しさん@ピンキー2012/07/24(火) 09:02:31.78ID:+2lNHrzX
保守
0156名無しさん@ピンキー2012/07/25(水) 19:55:57.49ID:5FCAigiK
ほすー
作者に書いて欲しいな
0157名無しさん@ピンキー2012/07/29(日) 02:00:58.44ID:ujy2grXb
新刊いつだっけなー
0158名無しさん@ピンキー2012/08/02(木) 15:22:26.34ID:AhVJbgIt
保守がてらage
0159名無しさん@ピンキー2012/08/10(金) 19:27:23.99ID:HQyLZ7Bw
0162名無しさん@ピンキー2012/09/03(月) 11:32:53.54ID:FPjM/IQT
キノマダー?
0164名無しさん@ピンキー2012/10/12(金) 20:00:31.75ID:6zw11Cs3
消えたと思ってたけどこのスレ立ってたのか
気が向いたら何か書く
0165そして百年・b2012/10/14(日) 13:54:50.57ID:v6DTdKJ8
 幼い少女は呻き声を上げるように口をぱくぱくとさせていた。
 しかし声はもはや枯れており、その口から声は出なかった。
 それでも何を言いたいのかどうして欲しいのかは傍から見ても手に取るように分かった。
 何故なら少女は一糸まとわず露出したその秘所を、見せ付けるように腰を浮かしていたからだ。
 少年の一人が堪え切れず幼い少女の前に立つ。
「どうせ壊れているだろう?」
 他の連中にも聞こえるよう、わざと声を荒げて言い放った。
「見ろ、この姿を。これ以上小さくなることはないし、なるなら処分しかない」
 幼い少女の前の少年は周りの数人が頷いたのを確認した。
「だから今のうちに使ってやるのさ」
0166繁殖の国1/82012/10/14(日) 13:55:34.69ID:v6DTdKJ8
 一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)とその運転手は城門の前に立っていた。
 その城門の向こうには虚空が広がっているかのような静けさがあった。
「どう思う?キノ。廃墟なんじゃない?」
 モトラドが運転手に尋ねる。
「どうだろうねエルメス。さっき門番の人に『ちょっと待ってて』と言われた気がするけど」
 キノと呼ばれた運転手がモトラドに答える。
「きっと幽霊か何かだったんだよ。だって――」
 エルメスと呼ばれたモトラドが言葉を返そうとした。
 そのときギギギと音を立てて城門の下の小さな扉から門番と思わしき少年が姿を現した。
「いやいや大変お待たせしました旅人さん。入国審査が済みましたよ」
 門番は飄々とそういうと大きな方の扉を開けた。
 扉の先に虚空はなく都会の町並みが広がっていたが、門の前で想像できる程度に寂れていた。
 出歩いている人はそう多くなく、見渡せる範囲では少年が数人ほどいるくらい。
 逆を言えば少年しかいない。
 大人は見当たらないし、かといって少女もいない。目に付くのは少年だけ。
「失礼ですが、この国には大人はいないのですか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。逆です。この国に子供はいません」
 キノが首をかしげて言葉を切らした。
 何を言いたいのか察したのか門番の少年が口を開く。
「ああ、すみません。私はこう見えて実は大人です。もちろんここから見えている彼らもね」
「えー!どうみても子供じゃないの?」
「そういう体質なのですか?それとも流行の病とか」
「いいえどちらも違います。これにはこの国のことを知ってもらわねばいけませんね」
 門番の少年がコホンと咳を立て、キノに改めてお辞儀をした。
「もう何年も前のことになりますが、この国は酷い疫病が流行してしまったんです」
「やっぱり病だったんじゃないの」
「しっ。それで?」
「はい、そのせいで国民の大半が病に冒され死に絶えてしまいました」
「なるほど。それでこんなに寂れているんだ」
「エルメス」
 キノが語尾を強めて言った。
「いえ、いいんです。それが事実ですから」
「それでどうしたんですか?」
「このままでは国が滅びてしまいます。そう危惧した政府は人口を増やすことにしたのです」
 門番の少年が遠くを見るように空を見上げた。
0167繁殖の国2/82012/10/14(日) 13:56:06.58ID:v6DTdKJ8
「でも人口を増やすなんてそう簡単にできるものなの?」
「はい。まずこの国の科学者を集めて繁殖についての研究がなされました」
「繁殖、ですか?」
「一時とはいえ疫病が流行ってしまいましたし、他国からの入国者を集うのは絶望的でしたからね」
「なるほど」
「科学者たちの長年の研究の結果、見事繁殖を円滑にさせるための薬と装置を発明しました」
「へぇー」
「薬は妊娠を確実化させ、装置で胎児を早く成長させるのです」
「それは凄い発明ですね」
「ところが、この発明には大きな欠点があったのです」
 さも失敗談を語るように、少年はポリポリと後ろ頭を掻いた。
 少しの間、口を紡ぐような仕草を見せつつも少年は言葉を続ける。
「薬で生んだ子供は男しか生まれず、装置で成長させた子供も少年ほどまでで成長が止まってしまうのです」
「ありゃりゃ」
「なるほど。それでこの国には少年の姿の大人が多いのですね」
「はい。恥ずかしながらその通りです」
 少年が遠くの一際高い建物をそっと指刺す。その建物は見たところ病院のようだった。
「今でもあの施設で研究が進められていますが、欠点の解消はなかなか遅れています」
 しかし、少年は少し誇らしげに頬を緩めたように見えた。
「でもですね、ここ数十年、近年に研究は大きく進歩しました」
「それはそれは」
「旅人さんも一度見に行かれてはいかがですか?」
 再び例の建物の方を示すように手を差し出す。
 その目は一度は見ないと損だと訴えんばかりに輝かしく見えた。
 無人ではないとはいえ閑散としたこの国にある数少ない施設でもあるのだろう。
 寂れたこの国には不釣合いとさえ思えるほどの期待いっぱいの顔を裏切る理由はキノにもエルメスにもなかった。
 かといって、裏切らない理由もなかったわけだが。
「とりあえず料理がおいしい店を教えていただけますか」
 屈託もない顔でキノは静かにそう尋ねた。
「だよね」
 少年はビックリ箱の中身を当てられたかのようにガッカリしたようだった。
「まあいいでしょう、我が国の指折りのシェフが勤めるレストランをご紹介しましょう」
 そういって、懐から取り出したペンでメモに何かを書き始める。
 サッと書き終えて、メモを引きちぎると少年はキノに手渡した。
「ありがとうございます」
0168繁殖の国3/82012/10/14(日) 13:56:47.14ID:v6DTdKJ8
「ところでキノ、思ったんだけど」
 レストランから出たところで店の入り口の横に停められていたエルメスが聞く。
「なんだいエルメス」
「さっきの繁殖の話なんだけど」
「興味があるのかい?」
「いやそうじゃなくて、実質少年しか生まれない国だったらその母親ってどうなってるのかな、って」
「確かに大人も女性もいないのなら何処かで行き詰ってしまうだろうね」
 帽子をかぶり直しつつもキノが言葉を続ける。
「でもだからこの国には人口が少ないんじゃないかな」
 跨られたエルメスが返す。
「あの門番さんの話しぶりだと十年や二十年の話には聞こえなかったけどなあ」
「どういうこと?つまり何が言いたいんだい?」
「もしあの繁殖の話が本当だったとしてもこの国はとっくに滅びてるってことだよ」
 考えるまでもなく、男しか生まれなければそもそもの繁殖なんてできるはずがない。
 仮に母体となる女性がいたとしても人には寿命がある。
 どうあったってそれが何十年、何百年と続くことはない。
「実はこの国の人たちは百歳とか超えてるって説は?ずっと少年のままなんだから案外長命ってことも」
「それはないと思うよ。人の細胞には限界があってね。無理やり成長なんてされたら逆に短命になるよ」
 飲み込みかけた言葉を少しの間をおいて、キノは口から吐き出した。
「あまり考えたくはないけど、男同士でも繁殖ができる技術ができた、とか?」
「それもないと思う。それだったらこの国はこんな寂れてなくてもっと活気に溢れてるだろうし」
「それもそうか」
 キノはエルメスのエンジンを掛け、アイドリングのまま少し俯く。
「あの病院に行く?」
「ホテルを探すついでにね」
 寂れ苔むした石畳をならすようにタイヤが浅い線を作る。
 霜でも降れば少々走りづらそうな道路だったが、整備されてない土の道に比べればどうでもない。
 あの少年が指刺した建物からなるべく遠回りするように走った。
 おそらく中心街まで差し掛かっているはずなのだが、やはり目に付くのは少年の姿ばかり。
 五,六人ほどとすれ違った辺りでエルメスが一つ呟く。
「なんだかキノのことを見てるみたいだね」
「旅人が珍しいのかもしれないね」
「それにしちゃあなんだか血走ったような目をしてないかい?」
「よそ者が歓迎されることもそう多くはないだろ?」
 殺気にも近い視線は感じていた。自然とキノの意識が腰のホルスターに向く。
0169繁殖の国4/82012/10/14(日) 13:57:27.10ID:v6DTdKJ8
 そしてキノとエルメスは建物の前へと辿り着いた。遠目で見たとおり、やはり一際大きい。
 寂れていた町並みとは一転して小奇麗な印象さえある。
 まるでここがこの国の中心と言わんばかりだ。
「話聞けたらボクにも教えてよ。この国の仕組みについてをさ」
「すぐに戻るよ。ホテルのチェックインも済ませてないしね」
 エルメスを背に、キノはガラスの扉を抜ける。
 ツンとした病院特有の消毒液のような匂いや甘ったるい果実のような香りが鼻を刺激する。
 中は外観の通りに広く、外よりも大勢の少年たちが屯していた。
「やあ、貴方が旅人さんだね。門番の人から話は聞いているよ」
 受付向こうにいた少年がキノに気づくと立ち上がって声を掛けてきた。
「ここは我が国が誇る最新技術の宝庫。存分に見ていってください」
「あの門番の方も最近また進歩したと言っていましたね」
「はい!実はそうなんですよ!」
 その言葉を待ってましたと言わんばかりに受付の声のトーンが二段階ほど上がる。
「我が国で発明された薬と装置の話はもうお聞きになりましたか?」
「ええ、少年しか生まれず、成長も止まってしまうというところまでは」
「初めの五十年くらいはそんな欠点にも目を瞑り繁栄はしていたそうです」
「しかし、それではいずれ生む人間がいなくなってしまいますよね」
「はい、そこで当時開発されたのが生命維持装置でした。これにより母体となる人間を延命させていたのです」
 何かとてつもないことを一言で締めくくられてしまったような気がしたが、受付は言葉を紡ぐ。
「いつか母体となる女性が生まれる研究は長年続けられてきました」
 受付はあの門番のように遠い目をする。
「ところが、生命維持装置にもやがて限界が訪れ、母体も次々と使い物にならなくなってしまったのです」
 次第に受付は拳を握り、一層言葉に熱がこもってくる。
「このままでは国が滅びてしまう。そんなときに開発された技術は件のものです」
「女性も生まれるようになったということですか?」
「いいえ違います」
 きっぱりと否定する。
「生命維持装置をより高性能にし、できあがったのがそのものずばり若返り装置なのです」
「若返り装置、ですか」
「そうです。これにより母体は若さを維持し、死ぬときまでほぼ半永久的に繁殖力を失わないままでいられるのです」
「つまりそれにより国は安泰となったわけですね」
「それがそうでもありません。この技術が開発されたまではよかったのですが母体も数が少なくなってしまいました」
 ふぅー、と深い深いため息をついて、受付は言葉を一旦とめる。
「若返りとはいっても不老不死ではありませんからね。寿命がくれば当然死にます」
0170繁殖の国5/82012/10/14(日) 13:58:03.65ID:v6DTdKJ8
 キノが周囲に不穏な気配を感じ取ったのはそのときだった。
 この建物の従業員だろうか。
 少し離れた位置の物陰からキノの姿を確認するように隠れ見ていた。
 視線自体には気づいていたが、何も行動を起こさなかったのは敵意はなかったと判断していたからだ。
 その数は数人程度。
 武器を構えている様子もなかったが、直感が察する。
 とっさにキノはホルスターのハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)に手を伸ばそうとした。
 その判断の切り替えはけして間違ってはいなかったが、キノの手はホルスターまで届くことはなかった。
 キノの目は焦点が合わなくなり、突然めまいを起こしたかのように前のめりになる。
「う……?」
「そこでですね、我が国は新たな母体を手に入れるべく他国の人や旅人でふさわしい者を探すことにしたのですよ」
 受付の男はキノの一連の行動がなかったかのように話を続けていた。
「合意など得られませんでしたから、手段は選ぶ余地もありませんでした」
「こ、これは……?」
「そう、例えば料理に少々細工をする、とかね」
 それは生まれたての仔鹿のように、キノの膝が折れて体は床に落ちた。
 この場所に訪れる前に立ち寄ったレストランでの食事に何かを盛られていたのだとようやく気づく。
 そうとも知らずにおかわりまでしていたことをキノは思い返し、顔を渋める。
 通りであんなに安価だったはずだと違和感を持たなかった自分を恨むように。
「迂闊、だった……」
「入国申請が遅いのを不思議に思いませんでしたか?」
 受付の少年はキノを見下ろし、話を切らない。
「あれはこちらの施設にある特殊なカメラで貴方の身体を調べていたからなんですよ」
 キノの手足は震える程度で、握りこぶし一つ作れない状態になっていた。
「検査の末、貴方が女性であると判断さえ、また母体への適正が認められました」
 周りの少年たちがキノを囲い、その中の一人がキノの腕をとる。
 近くに来て初めて気づいた。その少年たちの目はとても血走っていて、獣のようにも見えた。
 しかし、それは剥き出しの敵意というよりももっと別な何か。
 母体を獲得したことによる狂喜のそれだ。
 本能的に危険だとキノの頭は訴えかけていたが、どうもしようもない。
「この国の人たちは――」
「一先ず話の続きはこの奥でいたしましょう」
 キノの言葉をさえぎるように言葉を続けた。
「この国の誇る素晴らしいものをお見せしますよ」
 そして受付の男が合図を送ると、キノはまるで荷物か何かのように丁重に建物の奥へと運ばれていった。
0171繁殖の国6/82012/10/14(日) 13:58:52.56ID:v6DTdKJ8
「さあ、何処までお話しましたかね」
 建物の地下、粗末な明かりだけが照らす薄暗い部屋の中、ソファのような機械が置かれていた。
 横からパイプのようなものがはみ出していたり、背もたれに怪しげな液体の入ったガラス容器が備え付けられていたりと酷く不恰好な形をしている。
 そしてその中央のとても座り心地のよさそうなソファの部分にキノは鎮座していた。
 服も全て剥ぎ取られ、一見してみればゴミ捨て場に放り投げられた人形のようにも見える。
 その手足には黒い皮製のベルトが付けられ、腕や足の各所に点滴よりも少し太めのチュープのようなものが繋げられていた。
「この国の人たちは繁殖のことしか考えられないのですか?」
 ようやく薬の効果が抜けたのか、はっきりとした発音でキノが言い放つ。
 ただ今になってはもう遅く、完全な丸腰の状態でソファに拘束されているキノに抵抗の手段は残っていない。
「答えだけ言えばそうですと答えます。これも歴史が積み上げた賜物ですから」
 少年がいかにも無邪気そうな表情で笑う。
「疫病が蔓延し今に至るまで我が国の歴史は繁殖のみに塗りつぶされています。
 欠点のある薬や装置で無理やり繁殖させられ続けて、何処か壊れてしまっているのかもしれません。
 この国の歴代の偉い学者もそのような予見もしてきたようですしね」
 キノの周りにいる少年たちの視線がおぞましいほどに突き刺さる。
「さて、この装置の説明が足りていませんでしたね」
 少年が起動レバーと思わしきそれを倒す。装置がうなり声を上げ始める。
「うっ………」
「まず説明しましょう。今腕や足に取り付けられているチューブは丁度背後の薬品が入ったタンクへと繋がっています。
 そのタンクには様々な種類、効能のものが用意してあります。
 例えば、今流し入れた薬ですが―――」
「あ、あ、熱い……、あそこが……熱い……っ」
「もう体感していることでしょう。母体の発情を促す薬になります。
 ただ発情を促すだけではありません。排卵を誘発させる作用もあります」
「か…はぁ……だ、だめ…だ……疼いて……とまらな……」
「性交の後、受精が確認されましたら、装置からは特殊な電磁波が発せられ、胎児の成長を著しく早めます。
 その間、出産可能になるまで母体に負担を掛けないよう、栄養剤が投与され続けます」
 淡々と説明がされていく間もキノの体には薬の供給が止まることはない。
「この栄養剤も健康管理だけでなくアンチエイジングの効果もあり、供給し続けている間は事実上年をとらなくなります。
 これにより十年二十年三十年と変わらず出産に障害のない身体を保持します。
 おや旅人さん、どうかしましたか?」
「う、疼いているんです……とまらないん、です……お願いです、どうか……」
 キノの全身は滝のような汗が噴出しており、秘所からは洪水のような愛液が溢れかえっていた。
 そしてそれを見せ付けるように、キノは腹に力を込め腰を持ち上げていた。
 動かせない手足の代わりに腰だけ浮かせているその格好は身体をよじる芋虫のようで、滑稽だった。
0172繁殖の国7/82012/10/14(日) 13:59:28.11ID:v6DTdKJ8
「ボクもう限界なんです……頭がどうにかなりそうなんです……」
 顔中涙でぐじゅぐじゅになりながらも懇願した。
「しまった。濃度設定を間違えてしまいましたね。
 これは前に使っていた八十年目くらいの母体に使う濃度でした。これは失敬。
 やはり薬といえども抗体ができてしまうものですから濃度調整にも細心の注意が必要になるのですよ」
「あぁぁぁ…あはぁぁ……、あそこがとまらなくって……ぐじゅぐじゅにぃ……」
「と、もう聞こえていませんか。いやいやこれは失敗しました。
 母体に影響はないと思いますが、精神が触れるのも時間の問題ですね」
 少年が冷静に装置のレバーを戻す。
 ポンプの駆動音が徐々に弱まり、しばらくして供給がようやく途絶える。
「はぁ……はぁ……どうして……」
 息も絶え絶えに、キノがため息のような言葉を吐いた。
「いかがなさいましたか?」
「どうして……装置を止めたんですか?もう少しで……ぅぅ」
 その目にもはや光はなく、高潮しきった顔は何かを訴えていた。
 まるで美味しい料理や楽しい玩具を取り上げられた子供のように純粋で強い何か。
「この国の方針は非人道的であり他国の法すら破る行いもします。
 しかし、この国についてのことを説明することはこの国の義務です。
 あのままでは旅人さんも耳を傾けることはなかったでしょうから一時的に停止しました」
「そんなことはどうでもいいです……興味ありませんから、ですから……」
「えっと続きです。表面的な年齢を維持し続けるところまで話しましたね。
 ここまでの技術は長年行われてきたことなのですが近年になりまして――」
「うっ、ぐぅ……」
「――――の―――――が学会で―――――を発表し―――
 細胞から――――というもので――――――これが――――――」
 キノの言葉に対しては反応を示さず、少年は酔いしれたかのように説明を延々と続ける。
 その間も、キノの身体には薬の余韻が残り続け、脳髄ごと蝕まれるかのような陶酔に陥っていた。
「―――そして若返りの装置の完成となったわけです。
 寿命が続く限り、身体は幼退化し続け、より繁殖力を高めるのです。
 もう実践まで進んでおり、過去に母体となっていただいた実年齢八十数歳ほどの他国の人間も、
 十歳半ばかそれ以下の容姿で今も現役の母体として活躍しております。どうです。素晴らしいでしょう。
 おや?旅人さん?」
「……説明はもう、終わりですか?もう終わりですよね?終わったんですよね?終わっていいでしょう?」
 力ないか細い声を絞り出して冷静さのかけらもない悲鳴のような声でキノは叫んだ。
「ええ、終わりました。よってこれから早速繁殖に営んでもらいますよ」
0173繁殖の国8/82012/10/14(日) 14:04:21.02ID:v6DTdKJ8
「これが新しい母体か」
 先ほどまでの律儀で物腰柔らかい少年とは打って変わって、やけに強い口調の少年が現れた。
「装置使わなくても既に大分小さいみたいだな」
 ずっと息を潜めていたのか次々と少年がキノの前に姿を現していく。
「あなたがた、は?」
 聞くまでもない疑問が口から出た。
「何、この国の住人だよ。そしてお前も今日からこの国の住人になるんだ」
 キノの身体は震え上がっていた。それは恐怖ではなく期待込めた武者震い。
 少年たちの姿もキノと同じく一糸まとわず、繁殖の準備が整っていたからだ。
「繁殖ぅ……」
 想像だけで全身に電気でも走ったのか、キノの身体が跳ねる。
「もう知っていると思うがこの国の人間は短命でな、いくら増やしても減る方が多い。
 だから母体には死ぬまで百人千人と孕んでもらわなければならない」
「記録では一つの母体で一万人ほど孕んだって記録もあるが、お前にもそうなってもらわないとな」
「なぁなぁ、早くしようぜ。もう我慢できなくてよぉ」
 何人居るのか、少年たちの息遣いが獣たちの唸り声が聞こえるほど部屋中に響いていた。
「お願い……します……」
 規定外まで濃縮された薬で強制的に発情させられ、焦らされ続けたキノの身体は、一秒の我慢も苦痛だった。
 もはや相手が何者なのか。何を言っていたのか。そんなことはどうでもよくなっていた。
 キノの脳が、身体が、本能が繁殖したいと訴えかけていた。
 隙を見てか競い合うようにか、少年たちが我先にとキノに詰め寄る。
 それはわずかな獲物を奪い合う獣そのもの。キノがここに来るまでに感じた視線そのものだった。
「ふわあぁぁぁ……っっ」
 誰かのそれがキノの秘所に突き立てられた。誰だか分からないままピストンされ、一分とも持たずに膣内に射精された。
 そう思った矢先に突き立てられたそれが一瞬で引き抜かれ、また違う誰かがキノに挿入しピストンする。
「あっ、あっ、ああ……?ああぁぁぁっっ……!はぁぁぁ……っ!!」
 十分二十分と経った時点でもう既にキノの秘所は精液が溢れかえるようになっていた。
 しかしそれでも少年たちはまるでそれがローションか何かのように気にも留めずピストンを代わる代わる続ける。
 乱暴に扱われるも薬の効力か、キノの表情に苦痛はなく、これでもまだ足りないと言わんばかりに紅潮していた。
 だらしなくよだれを垂れ流すその顔に普段の冷静さなど微塵も残っていなかった。
「おいおいあまり無茶すんなよ。後百年は使う大事な母体なんだからな」
 出遅れて挿入しそびれた少年が後ろの方で恨めしそうにぼやく。
 もはやキノの周辺は少年たちの山のようになり、何処の辺りに装置があったかも分からなくなっている。
 隅を見れば無理やり引き剥がされたのか、傷だらけの血まみれで横たわる少年の山も出来上がり始めていた。
「あーあ、こりゃ順番回ってくるのは明日かな。まあいっか」
0174そして百年・a2012/10/14(日) 14:05:02.79ID:v6DTdKJ8
 キノがこの国を訪れて早百年以上もの月日が経っていた。
 ただ、キノと思われる人影はそこにはなかった。
 あるのは装置の上に人形にように置かれたとてもとても幼い少女の姿のみ。
 息もか細く目も虚ろで、かろうじて生きているように見える。
 そして、その少女を囲うように装置の周りには何人もの少年が立っていた。
 みな、裸同然の姿で、餌をなくして飢えた野獣のような目をしていた。
「なあ、もう駄目なのか?」
 少年の一人が尋ねる。
「繁殖率が落ちた。もうそろそろ打ち止めだ」
 尋ねた少年が聞こえよがしに舌打ちする。
0175名無しさん@ピンキー2012/10/18(木) 09:58:36.15ID:FrepubbX
保守!

だ!
0176名無しさん@ピンキー2012/10/19(金) 11:33:14.95ID:eAxB4tlP
GJ!
久々にいいのを読ませて頂きました・・・
0177名無しさん@ピンキー2012/10/21(日) 03:07:17.38ID:0y42YRos
0178名無しさん@ピンキー2012/10/24(水) 20:09:25.39ID:x8C+ypd5
新作見たら単発かと思ってたフォトが普通に主人公やってた保守
0180名無しさん@ピンキー2012/10/27(土) 09:11:20.03ID:K/sa2T7p
フォトはのんびり屋で年下の男なんかと出会って幸せな家庭を築いて欲しいと妄想
築く行程についてはどうなるか
フォトはハマるととことんやるタイプだから色々なことをやりそうな
0181名無しさん@ピンキー2012/11/06(火) 07:44:29.52ID:Se3RtmSA
0182名無しさん@ピンキー2012/11/17(土) 05:55:23.82ID:NqF6S7EW
ほしゅ
0183名無しさん@ピンキー2012/11/17(土) 22:32:02.27ID:L3plROEL
落ちは思いついたのに開幕から終盤まで何一つ思いつかないっていう…
0184名無しさん@ピンキー2012/12/02(日) 08:33:16.29ID:Nq7Xjl9y
0185名無しさん@ピンキー2012/12/28(金) 18:30:16.87ID:n3Lo+Ldm
きたあああ
◆一つの大陸の物語〈上〉 〜アリソンとヴィルとリリアとトレイズとメグとセロンとその他〜
著/時雨沢恵一 イラスト/黒星紅白
トラヴァス少佐は、最新鋭の高速旅客機に乗り旅立つ。しかし機体はその後、墜落してし
まい――。「アリソン」から続く“彼らの物語”完結編の<上>巻。
0186名無しさん@ピンキー2013/02/04(月) 21:54:05.41ID:EOP4AyNH
アアアア
0187名無しさん@ピンキー2013/02/07(木) 07:10:12.01ID:BKIUNb6w
>>185
どう考えても「ヴィルが死んだ」と同じくらいの危機感しか感じませんw
0188名無しさん@ピンキー2013/02/10(日) 08:54:49.50ID:9obOKmkp
ほしゅー
0189名無しさん@ピンキー2013/02/14(木) 02:41:43.17ID:feO45J39
909 名前:名無したん(;´Д`)ハァハァ [sage] :2013/02/14(木) 02:35:56.59 ID:XuwzNB/c
美食の国
美食の国が生んだ偉大なる科学者によって美食界三大珍味が生まれた
一つ目:そこらへんにいる健康な一般男性の精液
二つ目:そこらへんにいる健康な一般女性の愛液
三つ目:そこらへんにいる一般人の尿
この国の人間の精液、愛液、尿はほとばしるほど美味い
酒と同じで免疫がある人とない人が存在する
因みに科学者が生んだ偉大なる発明とは精液、愛液、尿が美味くなる薬である

この薬をキノは服用し、自らの愛液や尿を好物として死ぬまで食すようになる
美食の国滞在中は精液を狂ったように飲み明かしセックス三昧の日々を過ごしていた
0196名無しさん@ピンキー2013/08/06(火) NY:AN:NY.ANID:ioJ6+osq
いじめの国

今日、ある国に旅人が到着した。
「三日間の滞在でよろしいですね」
「はい、お願いします」
「ではパースエイダーをお預かりしてよろしいですか」
「分かりました」
旅人はまずカノンという大口径のリボルバーを取り出し、次に森の人という自動小銃を取り出し、フルートというライフルを取り出した。
それらを全て差し出されたカゴに入れて渡すと、受付の人は少し驚いたような表情になった。
「お預かりしたパースエイダーは三日後に取りに来て下さい。」
「はい、ところで最後に一つだけよろしいですか」
「なんでしょう」
「この国はどんな所でしょうか」
受付の人はその質問に対し、少し考えた後に口を開いた
「国民全員がお互いの気持ちを思いやる素晴らしい国ですよ」
「そうですか、期待させて頂きます」
「えぇ、それではごゆっくりどうぞ、旅人さん」

旅人はモトラドを支えてゆっくりと歩きながら、街中を見て回ることにした。
レンガ作りの道路はゴミ一つ見当たらず、とても綺麗だった。

「ゴミが全然落ちてないや」
「うん、こんなに綺麗な街は珍しいね」

そんな事を話して歩いていると、歩いていた人が、手に持っていた飲み物の容器を地面に投げ捨てた。
その容器は地面に転がり、こぼれた飲み物が地面に染みを作っていく。
旅人はその光景をなんとも言えないような気持ちで見ていた。
すると、その容器を、少し恰幅の良い女の人がすぐに拾って、自分のカバンの中に放り込んで何事もなかったように歩いて行った。
近くを通った老齢の掃除婦ががレンガの染みを見ると、手に持っていたモップで綺麗に拭きとってしまった。

「へぇ、凄いね」
「うん、街中がすごく綺麗なのはこういう事なのか」

そして旅人は、綺麗なレンガの道を通り、食べ物と燃料を買い、ベッドとシャワーがついた安いホテルへとチェックインを済ませた。
旅人が泊まってくれた記念に食事をご馳走したいと宿屋の主人が申し出たので、夕食はごちそうになる事にした。
そして旅人は、お礼を述べた後、部屋に戻って熱いシャワーを浴びて、白いシーツのベッドに横になった。

「良い国だね、今の所は」
「うん、すごく良い国だ、今の所は」

旅人がベッドスタンドの明かりを消すと、部屋が真っ暗になった。

「おやすみ、エルメス」
「おやすみ、キノ」
0197名無しさん@ピンキー2013/08/06(火) NY:AN:NY.ANID:ioJ6+osq
「ねぇ、聞いた、今日旅人さんが来たって」
「あぁ、聞いた聞いた、うちの店の前を通ったよ」
「えっ、今日は旅人が来たのか、じゃあ何でうちの宿屋に入って来なかったんだ?」
「うちの料理屋は目の前を通っただけで素通りされたぞ」
「えっ、そんな事されたの?」
「わざと入らなかったんじゃないの?感じが悪い旅人ね」
「それにその旅人、目の前にゴミが落ちても拾わなかったらしい」
「何よそれ、この綺麗な国が汚れてもいいってこと?」
「ゴミが落ちても拾わないなんて、ゴミを捨ててるのと同じ事よ」
「許せないわね」
「あぁ、あの旅人だろ、汚い外の街を走ってきたモトラドを引きずってこの国を歩いてたんだぜ」
「俺も見た、泥だらけのタイヤがレンガに跡を作ってたんだぜ」
「その旅人さんなら、うちの宿屋に泊まってますよ」
「何で泊めたんだよ」
「え、いや、外から来た野蛮人を相手にヘタな事したら殺されるかも知れませんから」
「それなら仕方ないわね」
「全く、旅人は許せない奴だな」
「それにその危ない野蛮人が夜中に何をしでかすかわかりませんからね、放っておくのは私の正義感が許せなかったんですよ」
「なんて正義感に満ち溢れた宿屋なんだ」
「どこの宿屋だ、野蛮人がいなくなったら俺も泊めてくれ」
「それに、その野蛮人の汚いモトラドで他の宿を汚す訳には行きませんから」
「そこまで考えてたなんて、あなたはこの街の誇りね」
「危ないと思ったらすぐに助けを呼んでね」
「大丈夫ですよ、その野蛮人にはわざとカギの壊れた宿屋に案内しましたから」
「カギが壊れた?」
「あぁ、あの内側からは開かない部屋でしょ、一度そこに泊まった事があるわ」
「えぇ、その通りです」
「なんて準備の良い宿屋なんだ」
「凄いわ、野蛮人を相手にここまで完璧な対応が出来るなんて」
「それに、その旅人、個人的にも許せませんでしたからね」
「えっ、他にも何かされたのか?」
「えぇ、世間話のついでに、一応の挨拶として食事に誘ってみたんです、するとその旅人、本当に食事を食べて行ったんです」
「何よそれ、普通断るに決まってるじゃない」
「見知らぬ人から食事に誘われて、金も払わなかったんだろ、その野蛮人」
「なんて図々しい旅人なんだ」
「それで、あんまりにも腹がたったので、その旅人の食事にだけ、少し細工をしたんです」
「おお、一体どんな」
「気になるわ、早く教えて」
「簡単な事です、家中にある下剤をありったけ、その旅人の食事にぶち込んでやったんです」
「凄い、なんて発想力なんだ」
「転んでもタダで起きないなんて、まさに商人の鑑ね」
「おっと、野蛮人がこんな夜中に騒ぎ始めたようですぞ」
「夢遊病の気でもあるんじゃないか、こんな夜中に騒ぐなんて、周りの人の迷惑は考えないのか」
「やっぱり閉じ込めたのは正解ね、絶対に出しちゃダメよ」
「当然です。この街の安全は我が宿屋が守り抜きますよ、他のお客様はちょっと眠りづらいかもしれませんが」
「アンタ最高だよ」
「間違いなくこの街で一番の宿屋よ、ステキだわ」
0199名無しさん@ピンキー2013/08/06(火) NY:AN:NY.ANID:ioJ6+osq
「うーん・・・」

旅人は、珍しく夜中にトイレへ行きたいと感じた。
スイッチを押してベッドスタンドを付けると、部屋の中を見回して、そういえばトイレは廊下にあるんだったと思い出した。
そしてドアノブに手をかけて開けようとした所で異常に気付いた。

「え?」

ガチャガチャッ、とドアノブを回すが、ドアが開かない。
カギを開けたり閉めたりして必死に開けようとするが、開いてくれそうな気配が全く無い。

「え!?え!?」

そうこうしている間にも下の感覚はどんどん強まってくる。
とても我慢出来そうにないと感じた旅人は、どんどんとドアを強く叩き始めた。

「すみませーん、ドアが開かないんですがー」

どんどん、どんどん、どんどん。
何度もドアを叩くが、ドアの向こうで誰かが反応してくれそうな気配は無い。

「うるさいよー、どうしたのキノー?」
「え、エルメス。ドアが開かないんだ!!」
「ふーん、壊れてるのかもね、それがどうしたのさ」
「と、トイレに行きたくて・・・」
「それで助けを呼んでるのか」
「で、でも、誰も来てくれないし、もうそろそろ、限界がっ・・・」
「あらら、それはご愁傷様」

ぎゅるるるるる・・・
旅人の下半身は先ほどから限界を訴えていた。
それをありったけの理性と自制心で堪えているが、決壊はそう遠くないと感じていた。

「やっ、やだっ、エルメス、どうしよう、どうしたら・・・」
「うーん、この部屋シャワーはあったから、そこでしてくるとか?」
「え、あ・・・だ、だめ、もう・・・歩いたら・・・で、出ちゃ・・・うぅ・・・」
「あーあ、じゃあもうどうしようもないね、諦めて」
「そ、そんなぁ・・・」

ぐるるるうるるるうううるるるるぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あっ・・・」

小さな声を上げた旅人は、自制心の敗北を悟った。
ドアノブに縋りつくような体勢で、恥辱の瞬間を迎えた旅人は、とてもとても悔しそうな呻き声を漏らしながら、ビチャビチャと汚物を吐き出していった。
部屋中に異臭が立ち込め、旅人の呻き声は嗚咽混じりの泣き声へと変わっていった。

「あーあ、やっちゃったね、キノ。」
「・・・・・・」
「それにしても凄い量だね、お腹でも壊してたの?」
「お願いエルメス・・・今は話しかけないで・・・」

旅人はシャワーで下半身の汚れを洗い流し、惨めさを噛み締めながら汚物だらけになったズボンをシャワーで水洗いした。
床に飛び散った分はどうしようもないので、仕方なく予備のタオルを一枚捨てることにして掃除した。
0200名無しさん@ピンキー2013/08/06(火) NY:AN:NY.ANID:ioJ6+osq
「旅人さん、なんてことをしてくれたんだ」
「・・・・・・」
「この宿が始まって以来初めてですよ、こんな事をされたのは」
「だって・・・ドアが・・・」
「ドアが開かないなら人を呼べばいいでしょう」
「何度も呼びました・・・」
「夜中なんですから、すぐに気付ける訳が無いじゃないですか、普通は何度も根気強く呼ぶものです」
「・・・・・・」
「それに、トイレが我慢出来なかったらそのまま漏らすだなんて、幼稚園児でもしませんよそんな事」
「う・・・うぅ・・・」
「いずれにせよこの部屋はもう使う事はできませんね、お客さんがウ○コを漏らした部屋なんて、人を泊める訳には行きませんから」
「・・・そ、その・・・」

床に正座した旅人の顔が朱に染まったのを見ると、宿屋の主人は、周りの人間によく聞こえるように更に声を大きくした

「一体どうしてくれるんですか、私の宿でウ○コを垂れ流した責任は」
「そんな・・・こと・・・いわれても・・・」
「ウ○コを我慢出来なかった旅人さん、早く答えてくださいよ」
「お願いします、もっと声を・・・小さく・・・」
「ウ○コを漏らしたのは事実でしょう、そんな大きなナリをしてウ○コ一つ我慢出来なかったんでしょう、旅人さん」
「うぅぅ・・・・・・」

ざわざわ、ざわざわ、と周りの人間がざわめき、ひそひそと旅人のことを話しているのが旅人の羞恥心をさらに煽る。
旅人は地面を見つめたまま、もう泣きそうになっていた。
そして、そのざわめきの中から、老人が進み出る。

「まぁまぁ宿屋の主人さん、怒るのは分かるがそういじめなさるな」
「ご隠居、しかしこの旅人さんは・・・」
「どうしても我慢し切れなかったんじゃよ、そうじゃろ?旅人さん」
「・・・は、はい・・・」
「仕方のない事じゃよ、誰しも出来る筈の事が出来ない人というのはいるものじゃ。」

旅人はやっと現れたように見えた味方に自分の羞恥心を思いっきり踏み躙られてる気分だったが、この場から逃げ出す事はできない。

「旅人さんが催したものを我慢出来ないのが今回の問題という訳じゃ、旅人さんが粗相をこらえていれば、こんな事にはならなかった訳じゃからな」
「それは、その通りですが・・・」
「人間誰しも間違いは犯す。大事なのは繰り返さない事じゃ、そうじゃろ、旅人さんはどう思う?」
「はい・・・もう二度とこのような事は・・・」
「いやいや、そんな言葉が聞きたいのではなくて、もう二度としない為に何が出来るか、という事を聞きたいのじゃよ」
「え・・・と・・・それは・・・その・・・」

旅人は言葉に詰まった。
もう二度としない、その為に何が出来るのか。
いくら考えても良いアイディアは出て来なかった。その間、重苦しい静寂と、ヒソヒソという陰口が場を支配し、旅人の精神をじくじくと苛んだ

「ふむ、考えつかぬか・・・」
「はい・・・申し訳ありません・・・」
「では、そうじゃな、あれを取ってこさせよう、おおい誰か、手の空いてる者はおらんか」
「何をするんです?ご隠居」
「ほっほっ、この旅人さんがもう二度と粗相をしないように躾ける道具じゃよ」
0201名無しさん@ピンキー2013/08/06(火) NY:AN:NY.ANID:ioJ6+osq
「では旅人さん、少し手を後ろに持ってきて頂けますかな」

老人は、指示して持ってきてもらった道具を手に持つと、旅人の手を要求した。

「はい」
「もう片方の手もお願いします」
「分かりました」

既に精神的に疲弊していたキノは、特に疑う事もなく温厚そうな老人の指示通りに両手を後ろに回した。
その手に老人は、持ってきた道具の輪っかを振り下ろすと、輪っかはがちゃっと旅人の手に嵌まった。

「なんですか?これ」
「今からする事はちょっと痛いかも知れませんからな、旅人さんが暴れないように押さえつける道具です」
「え?あぁっ!!」

旅人はがちゃがちゃと手を動かし、自分の手が完全に封じられた事を理解した。

「何をするんですか、外して下さい」
「事が済んだらちゃんと外しますよ、これは旅人さんが暴れないようにする為の道具ですので」
「・・・いえ、僕はもうこの国を出ます。今すぐに外して下さい。」

その声が聞こえなかったように、老人は周りに向けて指示を出した。

「さて皆さん、その旅人のズボンを脱がせて、だらしの無いケツの穴を見えるようにして下さい」
「ッッ!!!??」
「分かりました、ほら旅人さんじっとして」
「あっ、こら暴れるな」
「おい皆、この旅人さんを押さえつけろ、野蛮人だけあって凄い力だ」
「ふんっ」
「やった、蹴り飛ばしたら倒れたぞ。上から押さえつけろ」
「私は右足を抑えるわ」
「じゃあ俺が左足を抑えよう」
「よしっ、身動き取れなくなったみたいだ」
「ベルトを引き抜くんだ」
「よしっ、小汚い尻が見えてきたぞ」

両手が使えない上に、周りの大人たちによってたかって押さえつけられては、歴戦の旅人と言えど抵抗する事は出来なかった。
何人もの大人に押さえつけられ、床に押し倒され、ズボンを脱がされてしまった。

「こんな国だとは思いませんでした、僕は今すぐ国を出ます。離して下さい。」
「ダメじゃよ旅人さん。旅人さんが今いるのはこの国の中じゃ。この国にいる間はこの国の決まりに従ってもらわねばな」
「・・・・・・」

老人は持ってきてもらった道具から、細長い棒を手に持つと、コップに入ったぬるぬるとした液体をそれに塗りたくり、旅人の股間にあてがった。

「さて、ちょっと痛いかもしれんから、我慢するんじゃよ」
「えっ、冷ゃっ・・・ちょっ、えっ、痛いっや、やだあぁっ」
「うおっ、急に動くな」
「これこれ暴れるな旅人さんや、ヘタに動くととんでもない事になるぞ」
「中で折れたら二度と取り出せなくなるぞ」
「それどころか死んじゃうかもな」
「えっ、やっ、やだっ、やめてやめてっ」
「ホラ、旅人さん動くな」
「それがいやならじっとしてろよ」
「自分が悪いんだから我慢しなさいよ、非常識ね」
「全く、こんなに常識知らずな旅人だと知ってたら国の中にも入れなかったのに」

つぷ、つぷぷぷぷ、と旅人の小便が出る場所へ、細く長い棒が差し込まれて行った。

「あっ・・・あ、あ、あ、ああぁぁぁぁ・・・・た、助けて・・・師匠・・・・・・キノさ・・・ん・・・」
0205名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
こんばんは24です。久しぶりにアップしてみます。
シズキノしかかけないのでご容赦ください。

 ベンチの背もたれの後ろに駐車された、銀のタンクを持つモトラドが声を出した。
「キノ、いつもの言えばいいじゃん」
 キノと声をかけられたベンチに座った旅人が振り向いて聞く
「いつもの?なんだい」
「シャワーとベッドのあるちょっと安くていいホテルにはやく行きたいんですって」
 キノは顔を赤くした。
「エルメス、今ここでそれをボクが言ったらダメなの、判らないかい?」
「なんで、ここに来る直前まで言ってたのに」
 キノの隣に座っている青年が言う。
「それは、失礼。
 キノさんは旅で疲れているんだから当たり前だね。
 じゃあ、いいホテルを紹介するよ」
「ありがとうございます。シズさん」
 バギーを取ってきます、とシズと呼ばれた青年が飼い犬である大きい犬を連れてベンチを立って去る。
 ほっとキノが安堵のため息をついて、エルメスと呼んだモトラドの横に立って行き、ポカンとタンクをたたいた。
「キノ、ひどいなぁ」
モトラドが言った。
0206名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
205 続き
「シズさんが、良いほうにとってくれたからいいようなものの、そんなのハシタナイと思われるよ」
キノが言う。
「シャワーとベッドのあるホテルに行きたいってハシタナイかな」
 キノは怒った顔でモトラドを見る
「……ごめん、そうかキノ」
「そう」
「ちがう意味に取られたら、とんでもなくハシタナイね」
「そのとおり、国に入って真っ先にシズさんに会えたのはいいんだ。
 けど、いつものそれをシズさんに言って意味を取り違えたらとんでもないことになる」
「でも」
「?」
「キノはそういう気持ち、ちっともないの?」
 キノはちょっと困った顔になった。
「うん、実は、……あるかな」
 キノは口元を押さえてちょっと首をかしげて考えるしぐさをする。
 ベンチの側の木の梢がゆれて、木漏れ日がキラキラと光った。
「でも、シズさんに呆れられるのはイヤだよ」
「そりゃそうか」
「そうだよ。
 だから、とりあえず『今日の夜食事をごいっしょしましょう』って言ってみる」
「うん、それは穏便だね」
「それで、なごやかに食事が出来たら、そのときにがんばって誘うよ」
「がんばってねキノ」
 キノがエルメスの言葉にうなずいてきゅっとこぶしを握る。
 そして振りかえって驚いた。
 足元に毛足の長い白い大型犬がしっぽを振って座っている。
 さっきシズといっしょに居た飼い犬だ。
「陸君!……いつからそこに?」
 陸と言われた大型犬が答える。
「キノさんがモトラドをたたいた時からおりました」
 シズさんは?と問いかけながらキノが視線をあげると、陸の後ろの程近くに立っていた。
 シズは申し訳なさそうな顔をしていた。
 キノが帽子のひさしに手をやって下を向いた。
「……ごめんなさい」
0207名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
206 続き

 シズがゆっくりキノのそばに歩いてきた。
「キノさんあやまることはありません。
 こちらこそすまない。立ち聞きするつもりはなかったんです」
 シズはこわごわとキノの肩に手をのせて、下を向いたままのキノが嫌がらないのを確かめてから、そっと抱き寄せた。
 耳元に顔をよせて小さい声で話す。
「今すぐキノさんを私の家に連れて行っていいですね」
 キノが小さくうなずく。
 シズはエルメスの荷台の荷物を、手早くバギーに乗せかえ、エルメスの後部にキノを座らせてエンジンをスタートさせた。
「陸、バギーの荷物番を頼むよ」
 シズは陸に声をかけると返事をまたずにエルメスに乗って走り出した。
「しっかりつかまっていてくださいね」
 シズはキノが身体に回した手を軽くたたきながら声をかけた。
0208名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
207続き
 久しぶりのシャワーを念入りに浴び、キノは用意されていたシャツに袖をとおした。
「わ、大きい……」
 肩も袖もまるで大きさがあっていない。
 洗面所の鏡に写った、だぼだぼのシャツを着た自分の顔を見て、髪をもう一度ゴシゴシとタオルで拭いた。
 先ほどの自分の失態を思い出して、恥ずかしさに顔が赤くなる。
 タオルをタオルかけにひっかけて、廊下に出てすすむ。
 さきほどシズが居たリビングには誰もいなかった。
 キノは、ふっと息をはいてシズの部屋の前に立った。
 ちょっとドアをにらんでから、小さくノックをする。
「どうぞ」
 部屋の主の声がした。
 ドアを開けると、シズはTシャツにジーンズの姿でベッドに腰掛け新聞を読んでいた。
 窓のレースのカーテンからは太陽光が入ってきていて、清潔な部屋を照らしている。
 シズはキノに顔を向けてにっこり笑うと、膝の上新聞紙を畳む。
 キノはドアをひいた姿勢のまま動けなくなった。
「バギーに荷物を置いてきてしまったので、代わりにと思って俺のシャツを出したんですが、やっぱり大きすぎますね」
 新聞紙をサイドテーブルに投げるように置き、シズが言った。
 キノは、やっぱり動けないでいた。
 シズはちょっと考えるようにした。
 それから両手を広げて
「キノさん、おいで」
 と言った。
0209名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
208続き
 キノは小さくうなずくと、部屋に入りシズの側に行く。
 キノが手の届く位置に来たところで、シズはキノを手で引き寄せてゆっくりと抱き寄せた。
 されるがままに抱きしめられ、キノはシズの首におずおずと手をまわした。
 シズはキノを、抱き上げて自分の膝の上に座らせ、キノの髪をやさしく撫でた。
「シズさん、ずるいですね」
 キノがつぶやく。
「え?」
 シズが驚いて身体を引いて、キノの顔を見た。
 頬を赤らめてキノはシズを下からにらんでいる。
「俺がずるいんですか?」
 不思議そうな顔でシズが聞いた。
 キノはうなずいて額をシズの肩に押し当て、そのまま、ぼそぼそと話した。
「ボクはこんなに恥ずかしいのに、シズさんはいつものままです」
 シズはキノの言葉に、驚いた表情をした。
 どう答えたらいいのか考えているようで、次の言葉まで間が空いた。
「……キノさん、俺がいつもどおりに見えているとしても、実際はそんなことはないんですよ」
「さっきボクが入ってきたとき、普通に新聞を読んでいたじゃないですか」
0210名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
209続き 
「ああ、新聞……」
 シズは、新聞か、とつぶやき、はははと軽く笑った。
 キノが顔をあげてシズを見た。
 シズは頭をかきながら言った。
「広げていただけで、文字は全然読めませんでした」
 キノを膝に乗せたまま、腕を伸ばして先ほど置いた新聞を取る。
 そして自分でそれを見て、また声を出して笑った。
「なにがそんなにおかしいんですか?」
 キノが不服そうに聞いた。
 シズはキノに新聞を渡す。
 競馬新聞だった。
「シズさん競馬をするんですか?」
 シズは首を振った。
「それより日付を見てごらんよ」
 キノが新聞の印字を見る。
 一月前の新聞だった。
「なんですか?これ」
 キノが不思議そうにシズに聞いた。
「ティーが同級生から押し花を教えたもらったときに使った新聞紙です。
 サイドテーブルの花瓶を包んでしまうのに使おうと思って、ここに持ってきてたんだ」
 シズはキノの手から新聞を取るとまたテーブルに置いた。
 そしてキノの肩を抱いて話す。
「キノさんがこの部屋にくるのを待っているとそわそわして落ち着かなくなって、
とりあえず新聞を読んでるフリをして自分をごまかしてただけなんだ。
 文字が目に入らないから、『一ヶ月前の競馬新聞』なんて意味の無いものを眺めてたのに気付かなかった」
 キノが噴出した。
「あはは、本当に意味が無いですね」
「うん」
 シズはキノの笑顔をまぶしそうに見る。
「君と、こんなふうにしているのに、俺が冷静で居られる訳がないよ」 
0211名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
210続き
 「そうですか、なんだかボクばかりのぼせてるみたいで恥ずかしかったんです」
 キノがシズの肩におでこをくっつけたまま言った。
 シズはちょっと迷ってからキノを抱き上げ自分の膝の上からベッドに下ろした。自分の服を脱いで椅子の上に置いた。
 キノをかき抱いて、ため息といっしょにつぶやいた。
「キノさん、会った時すぐにでも抱きたかったんだ」
 キノは、シズの首に腕をまきつけて言った。
「ボクも」
 シズはキノのあごを抑えて、キスをした。
 舌で唇をなぞると、キノが口を薄く開いて受け入れる。
 キノの小さな歯並びを舌で確かめてから、ゆっくりと中に押し入る。
 やわらかい唇の感触と、小さな舌のぬめりと動きに、ちょっと電気が走ったような快感を感じた。
 ちゅっと吸い上げて、顔を離すと上気したキノの表情を見る。
「シズさん」
 黒い潤んだ大きな眼がシズを見上げている。
「うれしい」
「俺もうれしいよ」
 もういちど唇をふさいで、深いキスをする。
 キノはのどを鳴らしてシズを受け入れる。
 シーツの上にキノの身体を横たえて、シズはシャツの上からキノの身体をまさぐった。
 細いからだは熱くなっていて、手のひらの動きに敏感に反応する。
 胸をまさぐると、乳首が硬くあたった。
 つまんで転がすと、キノはビクリと身体を振るわせる。
 シズはキスを終わらせて、顔を離してキノを見る。
 キノは恥ずかしそうに眼をそらした。
「脱がせていい?」
 キノは眼を閉じてうなずく
0212名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
211続き
 シャツのボタンを二つあけて、手を差し入れる。
 やわらかい胸のふくらみをさぐりながらまたキスをした。
 手の動きにあわせて、キノの息が上がってくるのがわかる。
 硬くなった乳首をまたつまむと、ビクンと身体が跳ねる。
 シズはキノの着ているシャツのボタンを全部はずし、前をはだけるとキノの上に覆いかぶさった。
 両手でキノの胸を揉んで、キスを繰り返す。
 キノが荒い息をはきながら、シズのキスに応える。
「キノさん」
 シズはキノの顔から唇を離すと、キノの胸に唇をはわせる。
 シズが動くたびに、キノは身体を震わせた。
 シズはキノの胸をすくう様に持ち上げると、乳首に吸い付く
「あっ」
 キノは、我慢しきれず声を出した。
 シズはキノの声に促されるように、胸へ執拗な攻めはじめた。
 舌と唇と歯で、甘噛みをし、なめ、ねぶり、両手でなぶる。
 キノはシズの髪の毛に手を入れ、くしゃくしゃとかき回し、嬌声をあげた。
0213名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
 強く乳房を吸い上げると、キノがひときわ大きな声を出し、指がシズの髪の毛のなかで硬くなる、そのあと全身が硬直した。
 シズはキノの顔を見た。
 眼をつぶって、息をとめている。
 すぐに弛緩がやってきて、シズの下でキノの身体から力が抜けた。
「キノさん?」
 頬に手を当てて声をかけると、キノは眼を薄く開いて、恥ずかしそうに笑った。
「久しぶりで、気持ちよすぎました」
 キノはくっくと声を出して恥ずかしさに笑い出した。
「ごめんなさい、ボクばかり……」
 そんなことないよ、シズは笑って謝るキノに頬をよせる。
 笑って上下するお腹を撫で、太ももに手をはわせる。
212続き
 汗ばんで熱くなった肌。
 キノがふうと息を吐くのにあわせて、シズはキノの膝を割って開き、自分の右足を割り込ませる。
 キノの脚の間に手を差し入れ、指をはわせると、キノはまたビクリと小さく痙攣した。
 キノは脚を閉じようとキュッと力を入れたが、既にシズの脚が間にあって、閉じられない。
0214名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
213続き
 「シズさん」
 キノが小さく呼ぶ。
 ふっと息を吐いて
「キノさん」
とシズが応えた。
 シズの手はキノの核心を分け入って、指でひだを分け、なぞり始めている。
 シズは、顔をキノの胸に寄せて、ゆっくりとなめ始めた。
「いやっ」
 身体の敏感な部分を2ヶ所同時に刺激されて、キノが叫んだ。
 シズが顔をあげて、キノに聞いた。
「痛い?」
 キノは首を振る。
「痛くは無いです、でも刺激が強すぎて、変な声がでちゃう」
 シズが笑った。
「たくさん、声を出してください」
 言いながら、指の動きは止めない。
「え、でも、あっ」
「キノさんの声、聞かせてください」
 ほら、と言いながら、胸の乳首をきゅっとつまんだ
「ああっ」
キノが声を出した。
「イイコだ」
シズがほめてキスをした。
「どこが感じるのか、声で探っているんです。
 だから、どんどん声を出してください」
 言いながら、シズは胸の攻めを再開する。
 キノは、首を振り、イヤイヤをしながらシズの攻めを受ける。
 右手は外側をなぞるのをやめ、指が身体の中に入り始めている。
0215名無しさん@ピンキー2013/08/26(月) NY:AN:NY.ANID:lhI8qafq
214続き
「中がこんなに熱い」
 シズがつぶやくのが聞こえキノは恥ずかしさと快感でおかしくなりそうになる。
「シズさん」
 キノが息のあいまに呼ぶ
「ん?」
「ボクも、なにかしたい」
 シズは、キノの手を取って導いて、自分のものを握らせた。
 そしてため息をつく。
「キノさん……とても気持ちいい」
 キノは相変わらず、シズのそれにまだ慣れない。
「シズさん、これ大きい」
 驚いてつぶやいている。
 シズはちょっと笑ってキノのほおにキスをし、差し入れた指を出し入れしはじめる。
 キノが指のうごきにあわせて小さな嬌声をあげはじめた。
 手の動きに合わせて、腰をくねらせる。
 シズの手のひらに柔らかい肉の感触のほかに小さくあたる部分がある。
 シズはちょっと不思議に思って手のひらのあたる部分を見た。
 キノの陰核が硬くとがって当たっていた。
 キノは無意識にその部分を手のひらに擦るように当てて来る。
 動きに合わせて、こねるようにしてやると、嬌声が大きくなった。
 シズの手のひらは、キノのせいでだらだらと濡れていく。
 ぬめりを使って指を熱い壁に擦るようにし、手のひらで外側を刺激する。
 キノの手がシズのそれからはずれ、シズの右手に添えられた。
「キノさん?」
 シズがキノを見ると、キノが眉根を寄せ歯を食いしばるようにして、シズの手のひらを自分に押し付け、指をめり込ませるそのまま手を脚ではさんでぎゅうっと締め付けた。
 と、しぼるような声をあげ、全身を緊張させた。
 あごをそらせ、両足脚をしめつけ、足の指がぎゅうぎゅうと丸まる。
 シズはキノの絶頂の姿をうれしさと不思議さの交じった気持ちで眺める。
「この人でもこんな風になるのだな」
 耳朶を打つ声が細くなり、緊張が解けて、キノは身体を緩める。
 小さい声で「ああ」と言いながらシズの首に腕をまわし、時折起こる痙攣を抑えるように腕に力をいれてきた。
 シズも左手でキノのビクビクと震える身体を抱きとめる。
 シズがゆっくりと指を抜くと、蜜がさらに滴り落ちた。
0219名無しさん@ピンキー2013/08/27(火) NY:AN:NY.ANID:3xJVxRCR
215続き
 上がった息を整ようと呼吸しながら、キノがシズを見て聞いた。
「シズさん、今指を何本入れたんですか?」
 ああ、指は一本です。
 え、一本ですか?
 はい、いつも一本しか入れていません。
 意外でした。でも充分きつかったように思うんですが。
 シズは微笑んでキノに聞いた。
 いいですか?
 キノは、不思議そうな表情をしてから、問われた意味に気がついて、うなずいた。
「さっきからボクばかりすみません」
 シズは身体を離しながら笑った。
 キノさんに感じてほしいからがんばっているんですから、謝らないでください。
 良かったですか?
 はい、とても……。
 キノはベットから降りるシズを眼で追う。
 シズが恥ずかしそうにしたので、キノはシズが用意をしている様子を見るのをやめ、シーツで身をくるんで背をむけた。
 キノさん、いいですか。
 シズがベッドに上がり、キノのシーツをめくる。
 キスをしながら、キノの脚に身体をわりこませた。
「キノさん」
 名前を呼びながら、シズは腰を落としキノの身体に押し入る。
 シズは、中の感触に身震いした。
「熱い」
 キノは眼をつぶって、息を吐きながらシズの身体を受け入れる。
 思いのほかするすると入ってくるそれがキノの中で強い圧迫感を持つ。
 両手をシズの肩に回し、その圧迫感に耐える。
 シズは、腰を落としきり、キノの奥まで自分の身体を埋め込んだ。
 ゆっくりとため息をついてキノを見る。
 キノはつぶっていた眼を開いた。
「キノさん」
 シズがもう一度名前を呼んだ。
 キノはうなずいた。
「とても、気持ちがいいです」
 シズはキノに口づけする。
0220名無しさん@ピンキー2013/08/27(火) NY:AN:NY.ANID:3xJVxRCR
219続き
 ただ、中に入っただけなのに腰に熱い塊ができたようになってシズは困った。
 動いてしまえば、直ぐに終わりそうな気にまでなってくる。
 キノの上気した顔を見ていると、ますます興奮が高まる。
 キスをして、表情を見えないようにし、そっと動き始める。
 浅い動きのはずなのに、キノが小さくだが、声をあげる。
 キスでふさいだ唇からあがる抑えた嬌声に背筋がゾクゾクとして、シズは動きが深くなる。
 キノと結びついた部分は、熱い沼のようで、奥へ進みたい欲望のほうが勝ってしまう。
 根本まで埋め、その柔らかさを堪能しまた攻め入る。
 深くすすむと、キノの声が甘くなり、だんだんすすり泣きのようになってきた。
「キノさん?」
 シズが顔を離して、キノの表情を確かめる。
 切なそうに眉根をよせているが、涙は見えない。
 名前を呼ばれたため、キノは眼を開く。
 潤んだ黒い瞳から焦点が合わない視線をシズになげる。
「泣いてるみたいな声が出てしまいます」
「いい声だ……」
 キノが戸惑っているようなので、シズは笑いかける。
 ただ、シズ自体もすぐに終わりそうで苦しい。
「キノさん、背中、いいかい?」
「?」
0221名無しさん@ピンキー2013/08/27(火) NY:AN:NY.ANID:3xJVxRCR
220続き
 シズはキノを抱き上げ、うつぶせにして腰を抱いた。
 今まで最中に体位をかえたことなどなかったので、キノは戸惑った。
「シズさん?」
 シズは後ろからキノを貫く。
「あーっ」
 初めての感触にキノが驚き声をあげる。
 シズは思いのほか強い快感に戸惑った。
 少しでも長くと思ったのに、背中から抱くと快感がますます強い。
 動けなくなって、息を吐きながら、キノの背中に口付ける。
「あ、シズさん、…ふ、深すぎます」
 キノが小さい声で言うのが聞こえた。
 うん、とシズが答える。腰を引いて、打ち付ける。
 キノが甘い声でうめいた。
 その声で、シズは自分の動きを抑えられなくなった。
「キノさ……ん」
 欲望のままに、深く、強くキノの身体に打ち込み始める。
「シズさん、深い、あ、奥まできてる……ん、ん」
 シズの動きに翻弄され、小さな身体を震わせながらキノは全てを受け入れていく。
 シズの顔からキノの背中に汗が落ちる。
 ぎしぎしとベッドのスプリングがきしみ、シズの動きがますます大きくなっていく。
 動きに合わせて、キノの身体の中もますます熱くなっていく、キノはその熱が耐えられなくなりそうになってきた。
「は」
 シズが大きく息を吸った。
 キノを抱き起こし、両手で胸を包んだ。
 ふーと息をはき、キノから身体を離す。
 はぁはぁと息を切らしているキノの身体を再び仰向けに横たえ、シズはキノに覆いかぶさる。
「やっぱり、キノさんの顔を見ながらが、いいな」
 荒い息の合間合間にシズが苦しそうにボソボソと言った。
 大きな声を出すと、終わりそうな気がしてシズは声を出せなかった。
 キノは焦点の合わない目のままでシズを見上げて少し笑った。
「シズさん、照れてますか?」
 シズが笑った。
「うん、恥ずかしいよ」
 二人は身体を重ねたまま笑った。
0222名無しさん@ピンキー2013/08/27(火) NY:AN:NY.ANID:3xJVxRCR
今日はここまで……。

>>217
ありがとうございます。
>>218
ありがとうございます。
投下楽しみに待っています。
0223名無しさん@ピンキー2013/08/28(水) NY:AN:NY.ANID:rIvUxVQA
221続き
 シズはキノの足首をつかんで開き、また身体を埋める。
「あ、シズさん」
 キノは不安そうな声を出し、シズの肩をつかむ。
「苦しい?」
 シズがキノの顔に顔を寄せてたずねると、キノは首をふった。
 はぁはぁと息を荒げながら、言葉を出す。
「あの、シズさん、入っているんですよね?」
 シズは、自分が彼女とつながっている部分を見る。
 彼女の蜜と、自分の体液でぬめり光っているそこに、自分のものが根本まで埋まっていた。
 キノが息をするたび、ちいさくその部分もゆれている。
「ボク、見えないので……」
 ああ、そうか。……ほら。
 シズはキノの手を握って、その部分に導く。
 キノの細い指が、シズと彼女の身体のつながった部分をなぞった。
「あぁ!すごい」
 自分の体にシズが埋め込まれているのを確かめて声を出した。
「本当に入っている……」
 シズは、キノが本気で驚いているのが、ちょっとおかしかった。
0224名無しさん@ピンキー2013/08/28(水) NY:AN:NY.ANID:rIvUxVQA
223続き
「キノさんの中、とても気持ちが良いです」
 耳元で言うとキノが息をふっと吐いてから笑った。
「ボクもこうして抱き合っているの、とてもいい」
 シズは彼女に深いキスをする。舌を吸い上げ、上あごを舐め、唇を軽くかむ。
 キノは荒かった息をますます荒くする。
 キノの興奮にあわせ、シズも熱くなり始める。
 シズは、キノの身体に自分を打ちつけはじめた。
 ゆっくりにしようと思いながら動き始めた筈が、抑えきれずに大きな動きになってしまう。
 身体から受ける快感で頭がいっぱいになってきた。
 キノはシズにしがみつきながら、だんだんに動きを合わせ腰を動かし始める。
「シズさん……熱い」
 キノが吐く息の甘さに、シズは眼が眩むような気がした。
 いつも冷静なキノが汗を流し、乱れて、自分に腕をまわし喘いでいる。
 シズは、胸がいっぱいになった自分の中の感情を探り、彼女の今の姿を見て湧いた気持ちを言葉にする。 
「キノさん、好きだ」
 キノはシズの動きに翻弄されながら、閉じていた眼をうっすらと開ける。
 そして、切れ切れに言葉を出す。
「シズさん、ボクも」
 波のように揺らされながら、キノはシズが全身に与えるあらゆるキスと愛撫を受ける。
 指がなぞり、唇があたる部分はそのたびチリチリとした小さな快感となり、キノは溺れたように息をつぐ。
 シズにつかまり、また手を離し、相手の動きを受け入れ、与えられる行為を感受し、咽の奥から甘い声をもらす。
 キノは上を向いているのか、下を向いているのか判らなくなりながら、シズの身体の感触を愛おしく感じ、求める。 
 あぁ、と小さく喘ぎ、キノはのけぞった。
 首をいやいやをするように振ってシズの肩に手をかけ、息を吐いたあとやっとで続きの言葉を出した。
「シズさんが好き」
 少しでも長く、彼女の様子を眺め、中に留まっていたいと思っていたが、声を聞いてシズの限界が来た。
「キノさん!」
 キノの名前を搾り出すように声にすると、大きく身体を打ち付ける。
「あー!」
 シズの動きに合わせてキノが嬌声をあげる。
 キノの中で、シズがひとまわり大きくなり激しく動く、その力強さに、快感に翻弄されていたキノも頂点に達した。
 キノはシズの身体を乗せたまま、背をそらし身体を硬くする。
 シズは、自らのほとばしりのためにゆっくりとした動きに変わった。
 キノに視線を投げながらシズの頭の中は真っ白染まる。
 シズのあごから汗がしたたり、キノの胸にパタパタと落ちていった。
 全身の筋肉を硬直させシズは苦しげな声をあげる。
 キノはまぶたに光が走るのが見え、自分ののどからすすり泣くような声が出るのをどこか遠くで起きている事のように聞いた。
 シズの声が切れるのと同時に、シズはキノの上に落ちてくる。
 キノはまだすすり泣きのような声を出し続けていた。
 シズの汗で濡れたほおがキノのほおに当たる。
 キノは、シズの髪に自分の指をゆっくりと入れて、髪をくしゃくしゃにした。
 しばらくしてキノの身体がやっとでゆるみだした。
 シズは身体を起こし、キノにキスをした。
「大好きだ」
 ため息といっしょにもう一度言った。
 
0225名無しさん@ピンキー2013/08/28(水) NY:AN:NY.ANID:rIvUxVQA
223続き
「キノさんの中、とても気持ちが良いです」
 耳元で言うとキノが息をふっと吐いてから笑った。
「ボクもこうして抱き合っているの、とてもいい」
 シズは彼女に深いキスをする。舌を吸い上げ、上あごを舐め、唇を軽くかむ。
 キノは荒かった息をますます荒くする。
 キノの興奮にあわせ、シズも熱くなり始める。
 シズは、キノの身体に自分を打ちつけはじめた。
 ゆっくりにしようと思いながら動き始めた筈が、抑えきれずに大きな動きになってしまう。
 身体から受ける快感で頭がいっぱいになってきた。
 キノはシズにしがみつきながら、だんだんに動きを合わせ腰を動かし始める。
「シズさん……熱い」
 キノが吐く息の甘さに、シズは眼が眩むような気がした。
 いつも冷静なキノが汗を流し、乱れて、自分に腕をまわし喘いでいる。
 シズは、胸がいっぱいになった自分の中の感情を探り、彼女の今の姿を見て湧いた気持ちを言葉にする。 
「キノさん、好きだ」
 キノはシズの動きに翻弄されながら、閉じていた眼をうっすらと開ける。
 そして、切れ切れに言葉を出す。
「シズさん、ボクも」
 波のように揺らされながら、キノはシズが全身に与えるあらゆるキスと愛撫を受ける。
 指がなぞり、唇があたる部分はそのたびチリチリとした小さな快感となり、キノは溺れたように息をつぐ。
 シズにつかまり、また手を離し、相手の動きを受け入れ、与えられる行為を感受し、咽の奥から甘い声をもらす。
 キノは上を向いているのか、下を向いているのか判らなくなりながら、シズの身体の感触を愛おしく感じ、求める。 
 あぁ、と小さく喘ぎ、キノはのけぞった。
 首をいやいやをするように振ってシズの肩に手をかけ、息を吐いたあとやっとで続きの言葉を出した。
「シズさんが好き」
 少しでも長く、彼女の様子を眺め、中に留まっていたいと思っていたが、声を聞いてシズの限界が来た。
「キノさん!」
 キノの名前を搾り出すように声にすると、大きく身体を打ち付ける。
「あー!」
 シズの動きに合わせてキノが嬌声をあげる。
 キノの中で、シズがひとまわり大きくなり激しく動く、その力強さに、快感に翻弄されていたキノも頂点に達した。
 キノはシズの身体を乗せたまま、背をそらし身体を硬くする。
 シズは、自らのほとばしりのためにゆっくりとした動きに変わった。
 キノに視線を投げながらシズの頭の中は真っ白染まる。
 シズのあごから汗がしたたり、キノの胸にパタパタと落ちていった。
 全身の筋肉を硬直させシズは苦しげな声をあげる。
 キノはまぶたに光が走るのが見え、自分ののどからすすり泣くような声が出るのをどこか遠くで起きている事のように聞いた。
 シズの声が切れるのと同時に、シズはキノの上に落ちてくる。
 キノはまだすすり泣きのような声を出し続けていた。
 シズの汗で濡れたほおがキノのほおに当たる。
 キノは、シズの髪に自分の指をゆっくりと入れて、髪をくしゃくしゃにした。
 しばらくしてキノの身体がやっとでゆるみだした。
 シズは身体を起こし、キノにキスをした。
「大好きだ」
 ため息といっしょにもう一度言った。
 
0227名無しさん@ピンキー2013/08/28(水) NY:AN:NY.ANID:rIvUxVQA
224続き
 身体をよせて二人は少し眠った。
 シズが目を覚ますと、キノが大きな眼でシズを見ていた。
「起きてましたか?」
「いえ、今さっき起きたばかりです。
 それまでぐっすり寝ていました」
 シズはキノの肩を抱いて言う。
「旅の疲れもあるでしょうからゆっくり眠ってください」
 キノはうなずいてから、もじもじとした。
「あの、シズさん」
「はい」
「いつも最後とても苦しそうなんですが、苦しいんですか」
「最後?」
「はい、最後に唸り声を出して……」
 シズは『ナンてことを言うんだろう、この娘は、』と恥ずかしくなった。
「キノさん、俺が苦しそうに見えてたんですね」
 キノは真面目な顔でうなずく。
 シズは『キノさんは、どこまで知らないんだ』と困った。
「あの、あれは……」
 キノは真剣に聞いている。
 シズは恥ずかしさに赤くなり、キノを抱きしめ自分の顔を見られないようにしてから言った。
「とても強い快感で、そういう表情になってしまうんです」
 キノはシズの髪を撫でた。
「そうなんですか?
 それなら安心しました。
 ……苦しいんだったら申し訳ないなって思ったんです」
 シズはキノの答えに、はははと声を出して笑った。
「ボク、バカみたいな事、言ったんですか」
 キノが聞いた。
 シズは身体を離し、問いかけるキノの顔を見てまた笑って言った。
「知らないとそんなふうに思うんだなって。
 それが可愛いくて笑っただけですよ」

おしまい。お粗末様でした。
0229名無しさん@ピンキー2013/09/05(木) 13:50:57.05ID:df2+TI7t
ほす
0232名無しさん@ピンキー2013/10/10(木) 19:49:49.60ID:D4TZNmrF
仕方ない。
リニューアル版も買うか。
16冊だから1万近い出費だ。
0233強制移住の国2013/10/14(月) 01:47:45.40ID:3vhzWhNs
見渡すかぎり一面の平原に伸びる道を、一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。
「ここは走りやすいね、キノ。湿度も温度もちょうどいい」
「ボクもそう思うよ、エルメス。汗をかかないで済むに越したことはない。」
キノと呼ばれた人間が、エルメスと呼ばれたモトラドと話をしている。
「ねえキノ、そろそろ次に行く国の情報を話す頃だよ?」
「それが、あまり情報を得られなかったんだ。でもその情報を得られなかった理由にちょっと引っかかってる」
「どうして?誰もその国に行ったことがないとか?誰も入れてくれないとか?それともすでに滅びているパターン?」
「何でも、その国を訪れた旅人は、一度入国すると、二度と国から出てこないらしい」
「それ、まずくない?監禁されてるって事でしょ?」
「そう思って、ボクもこの国は見送ろうかと思ったんだけど、その次の国はどこかで燃料補給しないと届かない距離なんだ。
だから、どうせなら寄っていこうと思って」
「なるほど。監禁は怖いけど、動けなくなるのはもっと嫌だから、そうするしかなさそうだね」
雑談をしながら代わり映えのない平原をひたすら走り続けて、キノとエルメスは城門の前に到着した。城壁はとても長く、どこまでも続いている。
キノは城門の百メートルほど前でエルメスを止める。
「すごく大きい国みたいだね、キノ。広すぎて、旅人はみんな道に迷って、みんな出られなくなるとか?」
「そうだといいんだけど、たぶん現実はそんなに甘くない」
「なあんだ、気づいてたのか」
エルメスにまたがったまま雑談するキノは、城壁の上のほうをしっかりと確認していた。
そこには、機関銃の着いた監視カメラが、等間隔にいくつも配置されていた。
「全部、赤外線カメラ付きのすごい高性能な奴だよ。その気になったら、この距離からでも寸分の狂いなくキノの頭を狙撃できると思う」
「確かに、そう簡単に脱出するのは困難みたいだ」
「どうする、キノ?あの銃に狙われたら、ぼくの足じゃぜったいにかわしきれないよ。キノにモトクロスの技能があったとしてもね」
「あれだけ高性能な監視カメラを作れるんだから、装甲車くらい作れるさ。ちょっと借りればいい」
「まったくもう、ちゃんとぼくを載せられるやつにしてよね?」
呆れるエルメスを、どこまでも楽観的なキノが発進させた。
0234強制移住の国2013/10/14(月) 23:56:13.74ID:3vhzWhNs
城門をくぐったキノとエルメスは入国審査を受けた。
入国審査官は軍服を着た若い男性で、パースエイダーを腰につけていたものの、特に変わったところは無い。
キノは審査官の指示通り、書類に記入をした。年齢、身長、体重、持参品、重病経験など、記入事項は一般的なものだった。
しかし、一つだけ、いつも書いているのに、書くべき場所がない事項があった。
「あの、この書類、滞在予定日数がありませんよ?」
「ああ、お気になさらず」
軍服を着た入国審査官は笑顔でキノに答えた。
全ての記入を終え、キノが書類を提出すると、入国審査官が説明を始める。
「それでは旅人さん。この国では、政府が指定する決まったところに滞在してもらう事になります。その場所までは係の者が案内しますので、モトラドさんと一緒にどうぞ」
城門を抜け入国すると、気だるそうな警察官と思われる中年の男性が一人、パトカーに乗ってキノを待っていた。
「ああ、旅人さんだね。宿まで案内するよ。このパトカーにモトラドは載せられないから、走ってついて来な」
警察官はパトカーから降りもせずそう言って、発進した。キノは慌ててエルメスにまたがり、それを追う。
パトカーは片側三車線の広い道路を軽快に走った。国境が近いからか、交通量は少なかったものの、走って行くにつれ自家用車がどんどん増えてきた。
周囲は農地だが、ちょっと遠くを見渡せば小さな集落、あるいはビルの並んだ都市区画も見える。
「そうとう発展した国みたいだね、キノ」
「そうだね。これだけ農地があれば食料は十分あるだろうし、自動車がたくさん走っているということは、経済と科学技術が十分発展している」
「問題は、これからどこへ連れて行かれるかだけど」
「それは着いてみないとわからない。なるようになるさ」
パトカーは広い道を一時間くらい走った後、都市に着いた。賑わう商店街、工場、学校の区画などを抜け、住宅街に入り込む。
何度か住宅街の細い路地を曲がり、パトカーは前庭付きの、きれいな平屋の家の前で止まった。
「立派だねー。宿にしては豪華すぎる。別荘地みたいなものかな?
「いや、ここはどう見ても住宅街だよ。まあホテルみたいにエルメスを室内に入れなくて済むのは便利かな」
「ひどい」
キノとエルメスが感想を言い合っていると、警察官がパトカーから降りてきた。
「着いたよ。ここがあんたの家だ。これは書類な。土地の権利書とか、国民番号とか」
「土地の権利書?国民番号?一体どういう事ですか?」
普通旅人には与えられないそれらを訝ったキノが質問する。
「何?あんたら、移住しにこの国へ来たんだろ」
「え?」「へ?」
キノとエルメスが素っ頓狂な声をあげて驚く。
「知らないのか?この国には、移住目的以外での入国は認められない。一度入国したら死ぬまでここに住み続けてもらう」
「そんな説明、受けていません」
「そう言われても、俺の仕事はあんたを送り届ける事だけだ。文句があるなら国民移民局に言ってくれ。じゃあな。騒動は起こすんじゃないぞ」
終始面倒そうだった警察官は、まともに取り合う気もなく、パトカーに乗って行ってしまった。
「どうする、キノ?この国に移住するの?」
「そうだなあ。とりあえず、昼食を食べられるところを探そう」
0235名無しさん@ピンキー2013/10/15(火) 23:31:22.84ID:1+a80+uP
キノは荷物を置いた後、エルメスに乗ってダウンタウンに出かけた。
モトラドをレストランの中に入れる習慣は無さそうだったので、屋外のテラス式の店を選んだ。
キノはハンバーガーのような、パンで挟んで肉を食べる料理と、この地方特産というとうもろこしのスープを頼んだ。
「おいしい。食材の鮮度がちゃんと保たれてる。携帯食料には絶対に付かない魅力だ」
「それは、この国の農業のクオリティが高いってこと?」
「いや、それもそうだけど、新鮮な野菜を素早く配送し、適切に保存出来ている、ってことだ」
「つまり科学技術と経済が発展してるって事、それ、ちょっと前にも言ったよね」
「それくらい重要な事なんだよ」
雑談を交わしながら、キノはハンバーガーの味をゆっくり楽しんだ。噛むたびに肉汁が口の中で溢れ、すべてキノの胃袋にあますことなく吸収された。
「ねえキノ」
「うん、ありがとうエルメス。気づいてるから」
キノは、食事を楽しんでいたが、その視線は料理ではなく、もっぱら別の物に向いていた。
一人の老人が、キノよりは控えめなメニューを、ちびちびと食べていた。
その手は徐々にスピードを失い、ついに止まり、老人は手先から全身にかけて痙攣しだした。
「あの人は倒れるね」
エルメスが他人ごとみたいに、呑気につぶやく。
「うん、倒れるね」
「そして、近いうちに死んじゃうね」
「そうだね。顔に黄疸が広がってる。そう長くはないだろう」
キノとエルメスの予想通り、まもなくして老人は倒れ、他の客や店員が救助活動を始めた。と言ってもできるのは応急処置だけで、その老人が今まさに死のうとしていることは明白だ。
「あんた達、この国に新しく来た移民の人?」
野次馬として騒動を鑑賞しているキノとエルメスに、若い男が話しかけてきた。
「いえ、定住するつもりはありません。あと二日で出国する予定の旅人です」
「あーそうなの。みんなそう言うよ。でも最後はこの国に定住するんだ。そしてあの病気で死ぬ」
「あの体が震える病気は、この国特有のものなのかい?」
エルメスが興味なさそうに聞く。
「ああ。交通事故でもない限り、国民のほとんどはあの病気で死ぬ。あの年寄りはいいけど、若くしてかかる場合だってある」
「そりゃ大変だねー」
「旅人さんも覚悟しといた方がいいよ。どうせこの国で死ぬことになるんだろうから」
若い男はそう言い残してその場を去った。
「どうにかしてこの国を出ないと・・・」
老人が救急車に載せられるさまを見ながら、キノがつぶやいた。

家に戻ると、玄関の前でスーツの中年男が一人立っていた。
「いやあ、待っていましたよ。ようこそこの国へ。私は国民移民局の者です」
人当たりの良さそうな中年男は笑顔で名刺を差し出したが、キノは受け取らずに、
「移民するためにここへ来たのではありません。ボク達は明後日にも出国します」
中年男は対して困った顔もせず、笑顔のままだった。こういう旅人の扱いに慣れているらしい。
「申し訳ありませんが、この国の法律で、一度入国した人間は移民してもらうと決まっているのです。文句は裁判所にでもどうぞ。まあ移住して三年は市民権が制限されますので、その後になりますが」
キノは何か言おうとしたが、やめた。
「それよりも旅人さん、明日の昼ごろ、旅人さんの今後の運命を左右する、重大な来客がありますので、その時間は絶対に家に居てくださいね。会っておかないと後々面倒な事になりますよ。では、私はこれで」
0236強制移住の国2013/10/17(木) 00:54:06.61ID:/Gn+6pM0
翌朝。
キノはいつも通りの時間に起き、いつも通り何度か抜き撃ちの練習をした。
「お客さんを撃つことがないといいんだけどねー」
背後にいたエルメスが突然そう言って、キノは驚き、パースエイダーから手を離しはしなかったものの、抜いた直後の照準を大きくずらしてしまった。
「どうしたのさキノ、そんなに驚いて」
「エルメスがこんな時間から起きているなんてね」
練習を終えた後、キノは昨日買い込んでいた食材を使って朝食を作った。調味料をたくさん買う金が勿体無かったので、卵とベーコンを焼いただけの、まずく作りようのない料理だった。
それから少し暑かったので、真っ白なシャツと黒い長ズボンに着替える。
「お昼まで何するのさ、キノ。無視したらまずいんでしょ?」
「この国に関する資料がこの家にあるから、それを読むよ。国の中を見て回れないのは残念だけれど、今は無事に出国する事だけを考えないと。三日以上かかってもそれが最優先だ」
キノは家の本棚にあったいろいろな本を読みあさった。まずこの国の地図帳を読み、かなり複雑で高企画な道路網が張られていることを知った。
それから簡単な歴史書を、要点だけかいつまんで読んだ。それによるとこの国はいくつかの小さな国が結集したもので、国力を増大するため移民を積極的に受け入れ続けた結果、今のような広大な国になったらしい。
国内には広い農地があり、鉄鉱山や製油所などの資源もあり、工業も発達している。国内で必要なものをほぼ全て取り揃えている稀有な国であることもわかった。
歴史書だけでは時間が余ったので、少しだけこの国でよく読まれている小説などにも目を通したが、キノには退屈だった。
午前11時ころになって、キノは何があっても大丈夫なように、再びパースエイダーの抜き撃ち練習をした。その他自分の防衛に必要な準備はひと通りやった。

来客は、ちょうど正午にやってきた。
家の中にいたキノとエルメスは、かなり馬力のある車のエンジン音が、ちょうど玄関の前で停止するのを聞いた。
「来たね、キノ」
「ああ、悪い人じゃなきゃいいんだけど」
まもなくチャイムが鳴り、キノは腰のパースエイダーを確認した後、玄関のドアを開けた。
「こんにちは」
対面したキノとその客人は、思わず言葉を失った。
「シズ、さん・・・?」
「そういう貴方は・・・キノさん?」
そう、キノを訪れたのは、緑のセーターを着た、一度生命をかけて戦った相手でもあるシズだった。
シズの後ろには、さきほど聞いた馬力のあるエンジン音の元と思われるバギー。そのバギーの中では、シズを追うためバギーを降りようとしている、白いふさふさした毛を持つ大型犬・陸を、銀髪の少女、ティーが上から押さえつけて静止していた。
0238強制移住の国2013/10/21(月) 00:58:28.80ID:HXBNwf7H
「とりあえず、お話は昼食を食べながらにしませんか?」
シズと玄関で対面してから十五秒後にお腹をぐーっと鳴らしたキノが少しはにかんで言った。
「それなら是非、私の持ってきた食材を使ってください。この国に到着してすぐの方だと聞いたので、食材があった方がいいと思いまして」
シズはそう言ってバギーから大きな木箱を降ろした。米や色とりどりの野菜、それに調味料など、完璧な食材が揃っていた。
「じゃあ、ボクに料理させてください」
「いいのですか?旅の疲れがまだあるでしょうから、私がやってもいいのですよ。ただキノさんの料理を食べてみたいという気持ちはあります」
何となく顔全体が緩みながら話すシズを、ティーは陸の背中にもたれたまま、黙って聞いていた。
「あーあ。シズさん、どうなっても知らないよ」
エルメスがどうでもよさそうに一人、つぶやく。

一時間後。
テーブルに座るシズとティーの前に出された料理は、すべてもとの食材の色彩を失っていた。極端に辛い臭いや、甘い臭いがしてシズの嗅覚を苦しめた。
「どうぞ。ボク一人では食べきれないので、いくらでも食べてください」
「は、はあ・・・」
シズは料理を一種類ずつ口にして、そのたびに苦悶の表情を噛み潰し、それから意を決して一気に食べた。
ティーはおそるおそる料理を口にしたあと、
「・・・」
無言で、皿をお座りして待つ陸に差し出したが、
「流石にそれは失礼かと」
と陸に宥められ、机の上に戻した。
「美味しい野菜ですね」
「え、ええ、良い野菜に間違いはありません」
すでに味覚を失っているシズは、キノの言葉だけを信じて話を合わせる。
「どうしてシズさんは、こんなに美味しい野菜をたくさん持っているのですか?」
「実は、この国に移住しようと思っていまして、今日で約一ヶ月になります。この街からだいぶ離れた農村部で、主に農業をやっています」
「強制的に?」
「は?何のことでしょう?」
初めて、シズが意外な表情をした。
「僕達は、ここに三日間しか滞在しないつもりだったのに、この国に入国したら、絶対に移住しなければならない、なんて言われたんだよ」
エルメスが軽く説明すると、
「ふん、後先考えないポンコツ機械が」
陸が反論したが、
「あのさ、一応言っとくけど、入国するのを決めたのはキノだからね」
そうエルメスが補足すると、シズは陸の横腹を蹴っ飛ばし、陸は壁まで吹っ飛んだ。
「いくら忠実なお前とてキノさんの侮辱は許さん」
「ま、まあ、後先考えていなかったことは事実ですし」
突然豹変したシズに、キノは若干驚いて言った。
「私達は入国する時、いつも移住を前提で交渉するんです。だから旅人が強制的に移住させられるなんて気づかなかったんだと思います」
「なるほど。では何故今日、ボクの家に来たのでしょう?」
「実を言うと、私にもよくわかりません。昨日の夕方、国営移民局の役人が来て、これを持ってここに行くように、とだけ言われました。とにかく行ったらわかる、これは移民の大事な勤めだ、と」
シズは以前刀を提げていたはずの腰から、腰巾着を取り出してキノに渡した。
「これは何でしょう?」
キノが怪訝そうに腰巾着を観察する。
「わかりません。ここの家に居る人に開けてもらえ、としか」
「開けてみましょう」
キノは腰巾着の紐を引き、袋を開いたあと、
「・・・っ」
突然、真っ赤な顔になって、椅子から床にふらっと倒れた。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況